顧客満足のためのアンケート調査
顧客が「モノ」を求めて、不便でも高くても、また不愉快でも、我慢して買うという時代は過去の話です。
たとえば、誰でも、レストランで不愉 快なサービスを受け、もう二度と来るもんかと思っても、他にそれなりのレストランがないから また行ってしまうという経験があったのではないでしょうか。
お客が長い行列を作る行列店では、欲しいものを手に入れるために長い時間を待ちつづける「忍耐」が必要とされます。
行列店に並ぶ人たちは、自らの意志で行列に参加し、欲しいものを手に入れるために進んで若干の犠牲を払っているのです。
しかし、お客が犠牲を払ってまで商品を手に入れたいとは思わないような場所で、不本意な犠牲を強いられたとしたら、それは即座に不満へと変わることになる。
この傾向は都市の規模によって違うということはありえない。
こうした中で蓄積された顧客の潜在的な不満を、売り手側が重要な経営課題として とらえはじめたことが、企業が顧客満足度向上に力を注ぐ源になっているといえるのではないでしょうか。
・競合店や競合商品が増えた
・商品情報や販売情報が広く行き渡って、従来の商圏概念が崩れた
という状況下では、本当に顧客を満足させているかどうかが「売り手」側の死活問題となって当然です。
このように、お客さんの意識の変化中で、「顧客満足度」調査のための顧客アンケートのポイントと手法について考えてみましょう。
アンケート調査が通りいっぺんの「イエス・ノー」式質問では なかなか顧客の潜在意識の実態をつかめない。
単なる「質問用紙」ではなく、質問の中にあなたの姿勢と喜ばれる顧客対応への決意のようなものが織り込まれていなければならないのです。
一方的な調査を行っていたのでは、調査自体で顧客を逃がすことにさえなりかねない。
アンケート調査で注意すべき点
アンケート調査をすると、多くの人が「満足」と応えるのに、どうも実体は違うような気がすることは少なくありません。
ある情報サービス会社が実施したアンケートでも、「現在提供される情報は『質』『量』ともにほぼ満足」という解答が一番多かったことがあったという。
それにもかかわらず、情報サービスに対する新しい引き合いはこないし、顧客が活性化するということもない。そこで、これは質問の仕方に問題があるのではないかと考え、もう一度「イエス」「ノー」の質問ではなく、さまざまなタイプの情報提供を提案して「選択」してもらうことにした。その結果では、現有サービスを望ましいとして選んだ顧客は少数だったという。
つまり、「満足ですか」と質問されるのみでは、顧客も自分が満足しているのかどうか「イメージ」がわかないということだったのです。
それが「提案型」の質問形式になって、「イメージ」をつかむことができたと思われる。
特に「変化」が求められる「不満」社会では、何か「提案」がないと顧客の「深層」にアプローチすることは難しいと認識すべきです。
有益なアンケート調査を実施するための要件として、
・調査対象を「マス」でとらえず、さまざまな角度から分類できること
・調査側の先入観が強過ぎないこと
・協力してくれない人を観察する方法が織り込まれていること
・すべてが「選択式」で、それぞれの選択基準が明快であること
・文書がきれいで読みやすいこと
・短か過ぎないこと、また長過ぎないこと
上記それぞれの要件について、そのポイントを整理してみます。
1 調査対象を特徴別に分類する
例えば、「この一年間で通信販売を利用しましたか」という質問に対して、58%の人が「利用した」と答えたとする。これをどう判断するか。
多いとも少ないともいいづらいのではないだろうか。しかし、分類をしてみると、もっと詳しいことが分かる。
例えば、
20歳代の女性は70%の人が通信販売を利用しているが、
30歳代の女性では利用率が90%を超えるとか、
40歳代の男性は、通信販売利用がほとんど ゼロ に近いが、20歳代の男性では、50%以上の利用率がある
ということが分かるのです。
年齢や性別を聞くだけで、アンケートの価値は大きく変わる。
さらに、「買い物(保険商品)はじっくり時間をかけて、いろいろ商品を比較しますか」とか、「毎年バーゲンを利用していますか」などという質問結果と、通信販売の活用の有無との「関係」を見ると、もっと面白いかも知れません。
こうした分類を行う目的は、お客様の満足度を得るために どうすべきかを考える前に、今のサービスや商品でも十分満足してくれるお客様を捜し出すこと。にある。
例えば、ある商品やサービスについて、30歳代で独身のOLが満足する傾向が強いことが分かれば、徹底的に30歳代女性をターゲットとした宣伝やサービスや新商品を企画する。
顧客を満足させる方法の第一は、満足しそうな人を捜して、商品やサービスの存在を伝えることにあると考えるべきです。
分類を行う2つ目の目的は、満足しない顧客層が何を考えているかを知って対応策を検討することにあります。
例えば、40歳代の男性が通信販売を利用しないからといって、この層が通販の対象とならないと考える必要はありません。
そもそも、この層には自分で買い物をする人が少ないのです。
そして、その理由がどの店に買い物に行っても、「女性」ばかりを相手にした店作りや商品設計をしており、働き盛りの男性が楽しめるものがないからであったりします。
これが分かれば、男性の満足を犠牲にしても女性顧客を志向するか、男性を取り込む企画を新たに考えるか、という次の検討項目が見えてくる。
従って、アンケート調査作りでは、調査対象を分類する要素をどれだけおり込めるかが真っ先にポイントとなるのです。
顧客満足のためのアンケート調査の目的は、あなたに満足してもらい、新規の契約をしてもらい、固定客として継続して商品を購入してもらうことが目的。小冊子やニュースレターも顧客満足(増収)のためのツールであり、これを継続して活用することが収益拡大につながります。
調査対象分類の例
調査対象の分類目的は、次の行動につなげるために行うものです。分かりやすいものにしなければならない。あるいは、アプローチしやすい分類であることも重要です。
そこで、以下に分類視点の例を整理してみます。
1 見た目で分かる分類
性別、年齢、体格、靴や服装の趣味、肌の色 など
2 場所を重視した分類
自宅の住所、会社や学校の住所、通勤経路、通勤電車やバス会社、行きつけの店、リゾートスポット など
3 家庭を重視した分類
既婚未婚、子供の有無、兄弟の有無、二世帯同居の有無、長男長女かどうか、離婚の有無、持家賃貸、一戸建てマンション、家庭のリーダーは誰 など
4 社会的ステイタスを重視した分類
役職、肩書、収入、学歴、資格など
5 ライフスタイルを重視した分類
趣味、特技、所属する私的団体、いつが休日か、自動車所有の有無、最新式電化製品の購入度合、ブランド志向の有無 など
6 行動パターンを重視した分類
慎重:即断、目的意識:無目的行動、規則正しい:不規則、単独:集団、家族:友人、出たがり:引っ込み など
7 情報入手先を重視した分類
新聞、定期購読雑誌、好きなテレビ番組、FAX所有の有無、コンピューター所有の有無、親しい人 など
相関関係を見る
ただし、単なる分類ではなく、「相関関係」を見ることも大切です。
例えば、
・ミニスカートを好む女性はパスタを食べたがる傾向が強い
・ネクタイに凝る男性はアウトドア商品をよく買う
・茶髪の女性は靴の趣味にうるさい
などという傾向を、アンケート調査の中から見つけ出す必要があります。
この点から考えると、一回行った調査を一回集計することで終えず、さまざまな角度から何度も見直すという姿勢も重要となることが分かります。
効率のよい分類集計法
以上のように、分類をすると、次にどんな手を打てばよいかが分かってくるが、アンケート結果を何通りもの分類で整理するのは大変な作業だと感じるかも知れない。
しかし、だからといってコンピューターシステムが絶対に必要であるわけではありません。
なぜなら、手作業でも十分用をなします。
例として以下のような方法もあります。
1.アンケートの回答用紙を、まず分類したい項目に従って分ける。
例えば、年齢で分類したければ、年齢別に回答用紙を区分けすることから始める。
バーゲンを利用したかどうかで分けたければ、その項目で区分けする。
2.区分けされた「山」ごとに他の項目を集計します。
3.別の項目、例えば「買い物の際に時間をかけて選択するかどうか」という分類で傾向を見たければ、同じような作業を再び行う。
4.回答用紙の数が非常に多い場合は、何人かで同じ作業を分担し、その結果を集計する。
コンピューターによる集計は、一見効率よく感じるかも知れないが、プログラム作成とデータインプットに時間がかかるため、1回きりしかないアンケート集計のような作業では人海戦術に劣るといわざるを得ない。
2 先入観を持たない
アンケート調査作成のポイントとして、まず、仮説を立てることがよく挙げられている。
仮説をたてるとは、アンケートを行う前にあらかじめ結論を想定し、そこから逆に質問を作り上げるということ。まず、アンケートによって「あきらかにしたいこと」を決め、それが「明らかになる質問は何か」を考えるのです。
以上の考え方は、アンケートに「社長や役員会を説得する材料作り」などの明確な目的がある場合に有効な面もあるが、その反面、アンケートの設問が自己満足的になってしまう危険もはらんでいる。
もちろん、きちんとしたアンケート調査は、誰をも説得する力を持つが、意図的に作られたものには、正しい結果が反映されない場合もあると考えた方がよいでしょう。
顧客の実像を知るためのアンケートを作成するためには、先入観を排し、回答となる「選択肢」をできるだけ客観的にすることに尽きます。
例えば、「あなたは大切な買い物に時間をかけますか」という質問の回答選択肢が、
①十分な時間をかける
②ほとんど時間をかけない
というものであればどうでしょう。
- を選ぶ人はほとんどいないのではないでしょうか。
しかし、同じ質問で、
①商品を見てから考える
②買い物に出る前に買うものをだいたい決める
という選択肢を用意すれば、意味のあるアンケートになる。
有効な選択肢になるかどうかについては、気をつけて気をつけ過ぎることはない。何度も、まず自分で答えてみる次に身近な人に試しに答えてもらう、という作業を繰り返すことが大切です。
3 協力してくれない人を無視しない
調査に協力してくれない人は非常に重要なキーになり得ることが決して少なくない。非協力的な人は、とにかくどんな人であったかを記録し、別の機会に似た人のニーズをさぐるという姿勢は、大切なポイントを逃さない行動につながる。
4 選択肢を明確にすること
アンケート調査が、選択肢方式でなければ、集計できないため意味をなさないということは、当然だといえる。
また、単純な選択ではなく、書き込むことが多い調査は、調査される側にとっても大変面倒であるということも忘れるべきではない。
選択肢が明確かどうかも重要な問題である。例えば、酒の量を聞くのに、「沢山飲む」「普通」「余り飲まない」では調査にならないからです。水割りなら5杯は飲むといった、誰が見てもあきらかな基準が必要となる。一方、日本酒2合という表現では、量が分からない人もいる。そのような場合には、「おちょうし(とっくり)3本」という分かりやすい言葉に代える必要があります。
さらに、一項目の選択肢は5つ前後が妥当。それ以上多いと調査される側が選択に迷ってしまう。
ただし、多くの選択肢がどうしても必要な場合は、複数回答も可という形で選択の面倒さを軽減する工夫も必要です。
また、5つの選択肢が2ページにまたがるのは避けた方がよい。5つ選択肢があるなら、5つとも同時に眺められなければ、アンケートに応じる人はイライラするものである。
5 その他の要件
その他の要件としては、
・文書を読みやすくすること
・ちょうどよい長さにすること
などがある。
文書の「読みやすさ」は当然だが、1枚におさめたいという思い入れが非常に小さな文字のアンケート調査用紙を作る動機になることが少なくありません。
しかし、それは調査側の理屈であり、小さい文字を読まされる側はたまったものではないことを忘れるべきではない。
一方、「長さ」はアンケート調査の種類によっても違うが、顧客対象の場合は、3問以上10問以下の間で考えるのがノーマルでしょう。1つか2つの質問では、顧客がかえって警戒するし、10項目を超えると答えるのが嫌になるからです。