資金計画

運転資金の考え方

 運転資金は、事業を行うために日常的に必要なお金のことです。例えば、人件費、外注費、広告費などの諸経費が該当します。また、商品や材料の仕入れ代、賃料や納付する税金も運転資金になります。
 起業時においての必要な運転資金は、これらの費用の3~6ヵ月分、月商の2倍前後といった見方があります。いざ事業を開始してみるとなかなか売上が伸びない、あるいは、予定以上の費用がかさむといった事態もありえますので、運転資金は余裕をもって準備するようにしましょう。

 

自己資金の考え方

 自己資金については、起業前に十分に準備しておくことが大切です。
起業時にある程度の初期投資が必要な飲食業などの業種は、500~1,000万円程度、その他の業種でも数百万円は準備しておくとよいでしょう。

 

借入による調達

 金融機関からの借入を検討する場合は、起業に必要な資金総額の3~5割程度の自己資金を確保するようにしましょう。自己資金がしっかりと準備されているということは、事業計画が練られているのと同じように、本気度が高いう印象につながります。起業するために、資金をコツコツと貯めてきた人は、借入を依頼する金融機関からも良い評価を得られるはずです。
 親族からの借入を検討する場合は、対外的には自己資金と同等に見られることもありますが、厳密に考えれば、将来返済が必要になる借入です。親族とはいえ、むやみに借りるのではなく、自己資金を確保したうえで必要額を借入することが大切です。

 

資金計画

 資金計画は企業の安定・維持・成長のために必要な資金を調達・運用し、利益を生み出すための計画です。

 資金計画は、大きく分けて「資金調達計画」「資金運用計画」「資金繰り計画」の3つから構成されます。

 資金調達計画とは、設備投資資金(建物、生産設備、店舗など固定資産の取得などに使用する資金)などを調達するための計画を言います。
 資金運用計画とは、調達した資金の「使い途」を示したものです。

 また、資金繰り計画とは、現実の事業を存続させていくために、常に現金がショートすることなく循環させるための計画です。

 前者2つの計画は比較的長期の資金を扱いますが、資金繰り計画は、日々の債権回収、債務支払いなどの短期資金を扱うのが特徴です。
 資金計画の策定においては、必要な資金計画のレベルとして、それが社内の一部門(プロジェクトも含む)で策定される事業計画では、一企業レベルで行うような厳密な資金計画は必要とされません。基本的には、経理や財務部門が資金の調達、運用などについて一元的に管理を行うからです。

 ただし、ベンチャー企業や、大手企業であっても事業部制や社内カンパニー制をとっているところであれば、独自の厳密な資金計画を立案する必要があるでしょう。

資金調達計画の作成
 金調達の源泉としては、自己資本(資本金や内部留保金)か、他人資本(金融機関などからの借入金や社債)になります。

 自己資本を当てるのであれば、自己資金の手持ち状況をチェックしたうえで、その資金を利用しても問題が生じないかどうかを検討する必要があります。
 他人資本で調達しようとする場合には、金融機関によって借入金額の限度枠や返済期間、その利息などが異なることにも留意し、場合によってはその事業(プロジェクト)が、利息などの面で事業者に優遇措置が施される制度融資の適用対象となるかどうかも調査・検討しながら、資金調達計画の策定を行います。

 特に設備資金については、投資しても売上利益を通じて回収されるには長期間を要するため、長期の資金で調達することが望ましいと言えます。

 また、その他の留意すべき点として、予め考慮しておかなければならない点として、決算資金や季節資金という臨時の資金需要が発生することがあることです。

 決算資金とは、企業の決算に伴って発生する法人税などの支払いや役員賞与、配当金などの支払いによって必要となる資金のことです。
 季節資金とは、毎年特定の季節に定期的に発生するもので、売上が特定の時期に集中するために発生する在庫手当や従業員への夏期・冬期賞与などに必要となる資金を言います。

 事業を進めるうえで、このような資金需要があることを踏まえて、そのような資金をどうやって調達するかを考えていくことも必要となります。

資金運用計画の作成
 資金運用計画とは、調達した資金の「使い途」を示すものですが、資金の調達と資金の使途とを対比すること、すなわち、資金の調達(当期利益、減価償却費、借入金、前期繰越金など)と、資金の用途(投資、借入期の返済、租税公課など)を考慮に入れて計画することが必要です。そのためには、通常、年度ごとの資金運用表を作成します。資金運用表とは、年度計画を実現するため、資金の流れを計画するものです。この計画を基に資金調達が行われます。

 

資金繰り計画の作成

 事業(プロジェクト)を推進するうえで、資金繰り計画の作成は欠かせません。

資金繰り計画とは、事業(プロジェクト)の遂行に必要な現金をショートさせることなく循環させていくための資金計画のことをいいます。資金の「入」と「出」を的確に見積もり、支払不足に陥らないように対処することです。
 そして、この資金繰り計画に基づいて、銀行からの借り入れや増資、債券の発行などの対策が実施されることになります。

 具体的な策定方法としては、月次計画や週間計画、日々計画を基に、資金繰り表を作成します。
 資金繰り表を作成する目的は、資金の収支から資金残高を計算し、資金不足を起さないように管理していくためのものです。

 一般的な内容としては、3ヵ月程度の資金の回収、資金需要と残高を計算できるように作成します。

 売り上げによる売掛金がいつどのように回収されて、買掛金や給与、経費の支払いにいつどのように消えていくかを明らかにします。

 資金繰り計画の作成にあたっては、借入金の増減や月々の返済額の推移に留意する必要があります。

 また、その他の留意すべき点としては、商品を販売する事業形態の場合、支払いでウェイトが高いのは、やはり仕入代金である買掛金の支払いです。
 仕入代金の支払いは、売上代金の回収に基づいて自社でルールを決められるために計画自体は立てやすいと言えますが、場合によっては支払条件が取引契約で定められていたり、売れ筋商品などの場合には、在庫を切らさないように在庫手当による仕入も必要となることがあります。

 したがって、資金繰り計画における「支払い」は、仕入、売上、在庫の各計画と連動させて、その他の必要経費なども含めて計画を作成する必要があります。

 

現在の金融機関からの借入残高が月商の何ヵ月分かを把握しているか

 金融機関から資金調達をする場合には、短期融資にしても長期融資にしても、借入総額や返済金額を資金繰り表の中に入れてシミュレーションを行うことが大切です。そのうえで、借入総額・返済期間・返済方法・1回ごとの返済金額を決めることによって、資金繰りが円滑に行われ、黒字倒産が避けられます。借入金の返済方法としては借入金額の元本を均等割りして返済する元金均等返済の方法が一般的です。借入実行後は、1ヵ月ごとの元金返済金額を資金繰り表の中で常に確認すると同時に、現在の借入残高が自社の月商の何ヵ月分に相当するかなど、その金額を常に明確にして管理することが重要です。

 

 

長期的な資金需要を予想して適切な資金計画を立案しているか

 資金調達には、株式や社債の発行による直接金融、金融機関からの借入れによる間接金融、売掛金や受取手形による企業間信用、そして、留保利益や減価償却による自己金融があります。一般的に、中小企業では株式や社債の発行は困難を伴うことが多く、借入にあっても安易に金利の高い資金を導入することは危険です。従って、設備投資などの長期的な資金需要にあっては自己金融を基本とすべきです。しかし、それだけでは不足する場合には、具体的な設備投資計画のもと、国や地方自治体、政府系金融機関の設備資金など低利な長期資金を組み込んだ資金計画を立案することが重要です。

 

 

投資資金は自己資本(純資産)や長期借入金など安全資金で調達されているか

 固定資産への投資は長期にわたって資金を固定化させるため、できるだけ返済義務のない自己資本でまかなわれることが望ましい。しかし、中小企業の資金調達の現状を考えた時、実際に自己資本だけでまかなうことは非常に困難です。従って、自己資本のほかに、長期借入金など返済期限の長い固定負債を加えた長期の安全資金でまかなうようにしたいものです。

「固定資産÷(自己資本+固定負債)」の値を「1」以下にするよう管理することが重要です。返済期限の短い短期借入金などの流動負債まで投入することは資金繰りをきわめて困難にし、非常に危険であるため避けなければなりません。

 

 

投資の際、投資の予定回収期間を算定し、借入金の返済期間とのバランスを考慮しているか

 設備投資のチェックは、その内容として資金運用と資金調達に合理性が保たれているかという視点が重要です。資金運用については、投資計画の設定に無理がないか、設備投資の経済性の計算が十分になされているかが要点となります。また、資金調達については、必要資金量が確保されるか、借入金利などの資本コストは設備投資による収益との適合性があるか、財務の安定性を維持できるか などが検討事項となります。特に算定した投資の予定回収期間と借入金の返済期間とのバランスが崩れると、資金繰りに与える影響も大きいため、資金の調達と運用の両者を総合する観点からの管理が肝要です。

 

主要取引銀行に対して、定期的に業績の報告と事業計画の説明を行っているか

 主要取引銀行から円滑に資金調達をするためには、まず、経営者自身の経営能力や財務管理能力を高めることが必要です。経営者自らが決算報告書や資金繰り表をチェックすることよって、主要取引銀行の担当者との交渉も円滑に進めることが可能となり、担当者の信頼を得ることにもつながるからです。同時に、事業計画書や決算報告書、月次試算表、資金繰り表などを開示して、定期的に業績と事業計画の説明を行うことが重要です。仮に赤字決算の場合にも原因分析をして、「このような事業計画を実行することによって、いつまでにいくらの黒字に転換する計画です」という説明が必要です。

 

 

主要取引銀行から必要な時に必要な額を調達できるか

 中小企業にとって、安定的な資金繰りを行うためには、日頃から主要取引銀行から必要な時に必要な額を調達できる体制を準備しておくことが肝心です。資金調達の際、まず重要なことは、必要資金は運転資金なのか、設備資金なのか、その具体的内容など資金使途を明確にすることです。次に、借入金の償還能力を示せることです。つまり、資金繰り表を提示して、何のために いつ どれだけの金額が必要になり、いつ どこからの原資によって返済できるのかを明確に説明できなければなりません。そのためにも、必要とされる資料を適切な頻度で迅速に提出するとともに、得意先の開拓状況など定性情報の積極的開示も必要です。

 

資本の充実など企業財務の目標や計画を持っているか

 企業財務を管理することは、企業における資本の調達と運用に関する意思決定を行うことといえます。資本調達については、株式の発行や金融機関からの借入など資本調達方法の決定のほか、調達期間や最適な調達割合なども決めなければなりません。一方、資本運用については、売上債権の回収計画、設備投資や在庫投資の規模やタイミングなどを決定します。こうした意思決定項目について、資本調達については自己資本比率や負債の返済計画などを、資本運用については売上債権回転率と買入債務回転期間とのバランスや設備投資計画など、それぞれの目標となる指標や計画に基づいて管理していきます。

 

 

現在の借入金の借入金利を知っているか

 金融機関が企業に融資する際の金利は、主にプライムレート(最優遇貸出金利)を目安とした基準金利に基づいて決められています。企業への貸出金利は、プライムレートに企業ごとの信用格付や担保差し入れ状況などを勘案して決定されます。ただし、単純に財務内容などによって機械的に決まるわけではなく、金融機関との交渉も重要な要素となります。従って、企業が融資を受ける際、金融機関から通知を受けた金利をそのまま受け入れるのではなく、自社の借入金利と金融機関の定めるプライムレートとの乖離状態を把握するなど十分な検討をして、金融機関に対する交渉力を持つことも必要です。

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