現代の日本人には「人脈力」が必要

日本人の人脈に対する見方の甘さ

 日本人は、会社に入って「面白くない」と思うと、「紹介さえあればもっと良い会社に入れるのに」「親の力がなかった」とか、「いい学校に入っていなかった」ということを理由にしがちです。自分の力を省みることなく、良き人脈を求めるのは、日本人の良くない特徴です。

 「人脈のある人」は、「もともとのお金持ち」と同じに受け取られています。けれども、功利的、あるいは便宜的に、人脈を考えるのは、軽々しいと思うのです。人脈の本質を考えなければいけません。

 人脈とは、結果的に自分に得をもたらすものですが、まずは自分が相手に得をもたらすことが前提のはずです。人脈がないと嘆く前に、私は どのようなことで他の人の役に立ってあげられるのかと考えることが大事です。例えば、困っている人を助けるための支援をしたり、解決に役立つ人を紹介してあげたりするということになります。

 自分が何もしないで、「親が悪かった」「学校が悪かった」「運が悪かった」などと考える、心の貧しさのほうがよろしくないと思います。

 こう考えがちになる原因には、日本の文化の影響もあると思います。日本人は、もともと村落共同体の中で生きてきました。そのため、人脈は村の中にあり、生まれた瞬間に、人脈は与えられるものだったのです。共同体の中で お互いに作業をし合うなかで、損得のバランスを取りながら人脈を作り上げてきて、親から子へと受け継がれるものでした。

 ところが、安定した村落基盤の無い西洋社会や中国社会など、人間関係が流動的で厳しい国では、信頼できる人脈を持たないと生きていけません。今は、日本も そういった人間関係に近づいています。よい学校に入っても、あるいは大手企業に入っても、いつリストラに遭うか分からないという状況です。

 

人脈は「価値の貸し借り」の関係

 人脈とは、「価値の貸し借り」の関係だと考えています。そういう社会では、自分の価値を磨き、その価値を提供して、互いに貸し借りしあう関係を自分で作る必要が出てくるわけです。

人脈には3段階ある

 まずは短期人脈です。これは短期的な貸し借りの関係で、日々の仕事が円滑に進むように助け合う関係といえるでしょう。これは すぐ返す必要があります。

 中期的な関係は、例えばこの若者はできるな と思ったら、「今は一生懸命教えてあげよう。しかし、この人は5年くらい後には、私にいいアイデアをくれるに違いない」と思って支援するような関係です。つまり、自分が努力して得た社会的な立場や自分の生み出す価値を提供する代わりに、自分にない価値を提供していただくということです。こうしたアイデアや実行力など能力の貸し借りの関係は3年や5年という幅で成り立ちます。

 長期的な関係になると、「信念」や「思想」「理念」を共有するという意味での貸し借りの関係になるわけです。これらは一生の価値ですから、頂いて返すのに時間がかかるわけで、一生かけても返せるかどうかが分かりません。

 世の中の役に立つように一生懸命勉強し、自分のあとを継いで世の中にお返してくれればそれでよいという関係です。

参考

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