目標を大きく持つ人は成功が終わらない

   未来への羅針盤 No.294

 人生の成功論として、大目標・中目標・小目標ぐらいは持っておかなければいけません。

 すぐ成果が出るのは小目標で、例えば、目先の学年末試験でいい成績を取るとか、英語の資格を何か取るというあたりです。このあたりは、人生にとっては大目標であってはならないと思います。就職を有利にするとか、そんなことのためのちょっとした手段にしかすぎないのです。

 中目標というのは、もう少し時間がかかります。「十年以内ぐらいにはこういうことができるようになっておきたい」というようなアバウトなスパンで努力を続けられるようなものが、だいたい中目標です。

 大目標になると、やはり一生を通して、このぐらいのものがしたいな、やりたいなと思うようなものです。

 すぐ天狗になりやすい人は、大目標を持っていないことが多いのです。小目標しかないので、目先のものがすぐ完結してしまえば、あとはもうない、と。だから、「大学に入るまでの人」とか、あるいは、中に入っても頑張るけれども「卒業までの人」とか、「会社へ入社するまでの人」とか、けっこうよく言われましたけれども、実際、その通りなのです。

 「これだけ頑張ったのだから」と、要するに無理をしたのでしょう。「無理をしたから、もう、後はご褒美を欲する」「入学したんだ、後はご褒美くれていいじゃないか」と。けれども、「社会に出てもまだ大変だよ」ということは知っていなければいけません。「まだご褒美じゃないんだよ」ということです。大学に合格したご褒美に、春休みにちょっと遊びに行けるぐらいはあっていいかもしれませんが、ずっと四年間雀荘で遊んだら、それはそう言ったって、先は悲惨です。「はい、早稲田大学”雀荘学部”卒です!」というようなことで入れるところもあるかもしれないけれども、先は、どうせろくでもないです。はっきり言って。どうせドロップアウトして、フリーターでしょう。先は見えています。そんなことは、ある程度見えています。

 みんながやっていることもやらないで、大学卒の肩書だけで生きていけるほど、世の中甘くないのです。自分より勉強ができなかったと思う人が、どんどん仕事が進んでいくことを、やがて知ることになると思います。

 

一定の量をこなすことが天才の条件になる

 天才というのは、一本ホームランを打てるというような、そういう素質も大事なのだけれども、やはりある程度、量を考えておいたほうがいいと思うのです。一定の量を達成しようと思っていると、「出来上がらない」のです。簡単には出来上がってこないので、この辺を知っておいたほうがいいです。

 エジソンなどでも、発明の数はすごく多いでしょう。千も二千もあったと思いますけれども、一定の量をこなすことが、やはり私は結果的には天才の条件になっていくと思うのです。

 一冊ぐらいの本を書いて、すぐ出来上がってしまう人とか、それで「芥川賞を取りました」と出来上がってしまっても大作家にはなれないのです。大作家になった人は皆、全集ができるぐらい書いています。それだけ書けるというのは、筆力もあるし才能もあるでしょうし、読まれなければ書き続けられないから、読まれて人気も出たのだろうけども、勉強もし続けているのです。

 全集ができるほど書けるというのは、それだけ仕込みを続けたということは言えるわけです。だから、大目標を持ってやっていた。生活自体が、大作家になるような生活を送っていたからそうなったのであって、一発当てればいいというような考えではおそらく、なかったと思います。

 

千曲近い作曲はメカニカルで勤勉な仕事の賜物

 天才の例に出していいかどうかは分かりませんが、AKB48とか乃木坂とか、欅坂とかいろいろありますけども、作詞を主としてやっている秋元康さんという人がいます。年齢は私とそんなに大きく変わらなくて、一、二歳下かもしれないけれども、放送作家から始めて、手を広げてやっている方です。

 私も映画の音楽の作詞などもしているので、いちおう、彼の作品なども観たりもしています。はっきり言えば、一つひとつのものを見たら、大したことはない。通常の、普通の言葉で若い女の子たちの心情みたいなのを書いていています。”キュンと来る”ようなところがちょっと入ってきますが、ありきたりの、日常的な言葉でたくさん書いてはいます。

 ただ、それだけ見たらそうなのだけれども、例えば、彼がAKB48だけに作詞のほうでつくった曲ですけど、何年か前に当時、八百何十曲か書いたと言っていたから、今だったらもう、千は超えているかもしれません。一つのチームを維持するために、八百数十曲の歌の作詞をしたというのは、これはただものではないというのは、見たらすぐ分かります。

 それだけではありません。乃木坂46だとか、欅坂とか、名古屋何なんだとか、九州の博多何だとか、全部知らないですが、いろいろなところにもたぶん出しているのだろうと思うのです。それも彼がつくっている。別の人がやっているのかなと思ったけれども、紅白などで曲を見たら、秋元さんが書いています。乃木坂も欅坂も彼がやっているので、同じ人が書いた曲がレコード大賞の競争をやっていたり、紅白で競争したりしているという、まことに不思議なことをやっています。

 彼は企業家としての才能も持っていることはよく分かるけれども、そういうところまで行く前の段階でまず、一つのところで、八百何十曲も書いているのを見ると、それはそうとう勤勉でないと書けないです。書けるものではないので。いつもメモを持っていて、チャンスがあれば言葉を書き取って、辞書の編纂者ではないけれども、いい言葉、気の利いた言葉があったら書き取って、そして、詞を書き続けているはずです。一個一個見たら、そんなに天才的な詞には見えない、よくあるようなものだけれども、どれかがヒットするのです。

 今、AKBの曲が何曲あるか私は知らないけれども、私が知っているものだって、十曲もなかなか覚えていられないぐらいですが、一つのAKBというグループに千曲ぐらいはつくったのだとしたら、これは相当なものです。これはバカにならないです。一曲つくってそれをヒットさせるという人はたまにいますが、続かないのがほとんどです。

 たくさんつくれる人が、そうしていろいろなチームからヒットを出して、ミリオンを出したりできるというのは、相当な才能があることはよく分かります。この仕事の仕方は、だいたい推定がつくわけで、そうとうメカニカルに働いていて、勤勉だと思います。体調の良し悪しとか、昨日は酒を飲んだからといって今日はできないとかいうことはなくて、毎日毎日こなしていっているタイプで、仕事を絶対やっているに違いありません。

 

「波状攻撃」で量が質に変わる

 それから、これは一般の人には見えにくいところだけれども、作詞家にはあるまじきことのようには見えるかもしれませんが、彼は銀行みたいなファイナンス機能まで持っています。

 昔、高額納税者が発表されていた時には、だいたい、「その他部門」、文化人の部門で、彼は三番目ぐらいあたりで私と競争していたのです。他に競争していたのは、歌手の宇多田ヒカルさんとか、お茶の裏千家の千宗室さん、東京藝術大学の学長をやっていた画家の平山郁夫さんで、このあたりの五人が、ベストファイブあたりでいつも順位競争をしていたのです。税金を納めた額で。

 彼はお金を持っていました。ですから、ファイナンス機能を持っていたのです。AKBみたいなチームをつくっても、売れない時代に彼女らを食べさせることができました。秋葉原の砂かぶりの席みたいなところで、客は直接二十人ぐらいが歌うところが見えて、あとは握手会ができるみたいなスキンシップができるところから始めて、それを五年以内にそれを”大化け”させるということをやりました。三年を過ぎたあたりから、損益分岐点を超えて収益が多くなって、五年ぐらいになったら一流になって、全国的に知られているように、次々と波状攻撃をやっています。

 AKBをやって、乃木坂をやって、欅坂をやって、他のグループもいっぱいつくっている。あれは「波状攻撃」なのです。ですから、これが潰れてもこちらがある、これがある。センターの交代をいっぱいさせていて、卒業してはまた出てくる。あれは、「波状攻撃の理論」を使っているのです。多極化しながらやっています。やはり、つくっている量を見て、一定の量をつくれる人は、その量が質に変わるときがあるのです。これは、極めて大事なことです。

参考

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