嫌われる叱り方と感謝される叱り方

部下は3日で上司を見抜く

 「うまい叱り方」とは、プライドが高いなどの相手のタイプに合わせたシチュエーションで、相手の仕事ぶりを褒め、いつも気に掛けている様子を伝える。その後、事実ベースで問題点を指摘し、改善策を示す叱り方です。最後にフォローの言葉を掛けると、部下のやる気がアップする。

 こうした「褒める→叱る→期待する」というやり方は、人材教育法の一つである「コーチング」でも推奨されている。

 「上司が部下を見極めるのは3年、部下が上司を見極めるのは3日」という言葉があるように、上司のちょっとした口癖や考え方などから、部下は上司の器の大きさを評価している。

 上司は多くの人を惹きつける徳力を磨くためにも、叱り方のスキルアップは必要不可欠です。

 

叱り方の知恵

部下のやる気をなくすNGワード

 「どうせ」「やっぱり」「またかよ」「言ったよね?」「だからダメなんだ!」「〇〇さんはこうなのにね」「普通するよね」「それ常識だから」「今まで何してたの?」「そんなの決まってるじゃん」「そんなことも知らないの?」

叱る前に言われると心が開く一言

 「いつも頑張ってくれてありがとう」「忙しいのに、気配りが上手だよね」「前のプレゼンよかったよ」「前よりも、ここが伸びているよね」「君は早く来ていて偉いね」

叱った後に言われるとやる気が出る一言

 「まだまだ成長する可能性がある」「あなたには長所があるから、頑張ろう」「仕事にかける思いはよくわかる」「誰にでも、失敗はある」「信じているよ」「期待しているよ」「もっと上を目指そう」「君のことを応援している」

 

アンガーマネジメントの極意

 怒りを鎮め、人間関係を調和させる心構えはどうあるべきか。

 叱る行為は、する方もされる方も、お互い気持ちのよいものではない。そんなもやもやした思いをどうスッキリさせるのか。

深呼吸で怒りを”鎮火”

 怒りについて、日本アンガーマネジメント協会代表の安藤俊介氏は、「出来事そのものがあなたを怒らせているのではなく、あなたは、あなた自身で時と場合に応じて『怒る』という行動を選んでいる」と指摘している(『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版))。つまり、人は腹を立てる選択を瞬時に行っている。

 頭がカッとする感情のピークは6秒間続くという。一瞬の怒りで人間関係を”炎上”させない簡単な方法は まず「深呼吸」です。心の中で10秒数えながら、息を丹田(へその下あたりの下腹部)に下ろすように深く呼吸すると、心がだんだん穏やかになる。これは基本的なやり方だが効果的です。

怒りの原因を客観視する

 怒りを落ち着けた後は何をすべきか。ある20代男性は「問題点と自分の感情を分けるように紙に書く」と話してくれたが、これも有効な手段だろう。

 日時や出来事、感情、行動、結果などを紙に書いて 見える化 すると問題点が絞られていく。

 ただ、「そうはいっても自分は正しい」という思いが生じ、感情の落とし所が見つからないことはよくある。

 幸福の科学の斎藤哲秀専務理事は次のように話しておられた。

 「心を見つめる際には、心が透明なガラス箱の中に入っていることをイメージして客観視します。また、頭でも胸でもなく、丹田の深いところに心を下ろして考えてみることです。

 例えば、『自分が尊敬する人や偉人も、自分の立場なら同じように考えるか』をシミュレーションしてみる。ある意味、将棋の感想戦や推理小説のように、過去の出来事を巻き戻し、『よりよい結果が生まれるにはどうすべきだったか』を考えるのです。

 さらに、相手の健康状態や家庭状況、経済事情などに思いを巡らせ、本人の立場になってみる。それでも自分には非がないと思うなら、『こうすれば嫌われる』というように相手を反面教師にして、教訓を引き出す。

 最後には『天はこの経験から何を教えたいのか』を考え、自己変革することですね」

 この態度でいれば、第三者の気持ちが次第に分かるようになり、名作家の吉川英治氏が語った「我以外皆我師」(心がけ次第で自分以外のどんな人からも学べる、の意)という境地に近づくという。

 

叱る、叱られる際の心構え

 では、「正しく叱る」には具体的にどうすればよいのか。

 結果を見て叱るのは誰でも簡単にできます。そうではなく、何が原因なのかという『原因結果の法則』をもとに叱るのです。

 また、ついワンパターンの言い回しで叱りがちですが、人にはそれぞれ違いがあります。人を観察し、相手のタイプを見極めたうえで、理性的に叱りましょう」(40代幸福の科学幹部)

 その時に問題になるのが、叱られる側が言葉で傷つき、やる気をなくす。

 これに対し、幸福の科学大川隆法総裁は、叱られる側は「相手の言葉を水に字を書くように、さらさらと受け流す態度が必要」と教えている(法話「アンガー・マネジメント」)。

 叱られると、人はオールオアナッシングになりがちです。尊敬できる人なら話を聞くが、そうでなければ聞きたくないというように、100か 0 かになりやすい。相手の言葉に反発するプライドや言い訳などをいったん脇に置き、100%相手のことを受け止めるのです。そして、相手が何を問題にしているかを知りましょう。物事の一面だけですべてを理解したかのように錯覚することを『群盲象を評す』と言いますが、分かった気にならないことです。

 人の言葉を正しく聴く「正聴」の態度がいるというわけです。

 

言い訳と戦う胆力を磨く

 片や、人は叱る時に相手から嫌われたくない気持ちも出てくることがある。この思いを制し、叱るにはどうすればよいのか。

 問題を客観視し、本当に必要なものを相手に伝えるのなら、時には恨まれてもよいという覚悟を持つことです。部下が後々分かってくれればいいと割り切るのです。

 その一方で世の中には理不尽な叱責も往々にしてある。

 叱られると、自分が否定された気持ちになりがちですが、その痛みはオリンピック選手の練習の痛みのようなものと前向きに捉えます。

 他人は自分には分からない自分を見て叱っているのだから、それを成長の糧に変えることです。

 また、叱られると つい言い訳したくなりますが、丹田でグッとこらえると胆力がつき、少々のことでは動じなくなります。

 感情がブレない「胆力」を磨けば怖いものなしなのです。

 

部下に手を合わせられるか

 大事なのは、叱る方も叱られる方も「共通して話し合えるところはどこか」をお互いで考えることです。会社で言えば、経営理念や方針に基づいて、何が正しいのかを考える。

 同僚への愛の思いが根底にあれば、たとえ厳しい叱り方になっても人はそこに「愛」を感じる。

 感謝される叱り方とは「人間の可能性を信じる」ことから出発する。

 

怒りを鎮め「人間通」に

 叱る行為一つとってみても、様々な人間模様があり、「人間通」への道であることが分かる。叱られる回数が多い人ほど、人の気持ちがよく理解でき、上手に叱ることができるのだろう。

 怒りを鎮め、叱り方をマスターすれば、仕事での出世や組織の活性化につながる。さらに、個人の徳力も磨かれ、人間学の有段者にもなれる。まさにアンガーマネジメントは「帝王学」そのものなのです。

 

叱り方の基本技術

・相手のタイプを見極め、叱るシチュエーションを考える

・相手の仕事を把握し、気に掛ける言葉を掛ける

・叱る時は、「原因結果の法則」をもとに問題点を具体的に指摘し、改善策を示す。その時、人格を否定しない

・叱った後は、フォローも忘れない

 

アンガーマネジメントのやり方

・カッとなったら、深呼吸し、心を穏やかにする

・心を見つめ、怒りの原因を「客観視」する

・言い訳と戦い、感情をブラさない「胆力」を磨く

・人間の可能性を信じ切る「愛の思い」を持つ

参考

松下幸之助の叱り方の流儀

 松下幸之助の叱り方については、「お前はダメだ」と人格を否定したり、「なんでこんな売上げしかないんだ」とノルマで理詰めしたりしません。「君には能力があるんだ。だから、熱意を出せや。情熱出せや。この問題は君やったら解決できる!」という感じで、可能性を信じて叱ってくれるのです。

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