問題解決の方法

問題解決の重要性

 問題解決の重要性が ますます高まってきています。なぜでしょうか。それは、問題を解決できなければ、その問題に悩まされ続けるからというだけではありません。
 その「問題の枠を大きく超え、会社全体を揺るがせる問題に発展することさえある世の中になってきた」からです。

 その反対に、優れた問題解決ができる人材がいる組織はどうでしょうか。すばやく問題を解決してしまえば、将来の挑戦的な改革に取り組むことができます。マイナスの問題がいつまでも解決できない企業との差は開くばかりです。問題解決は組織の重要なスキルになってきたのです。

 もう一つ理由があります。それは、「問題がユニークになっている」ということです。これまで、問題解決というと、ある程度することは見えていました。自社製品の性能アップ、コストダウンなど、おおよその問題はそこにありました。
 おおよそ見えている問題をそれぞれの部門に落とし込み、その解決に向かって邁進することが これまでの問題解決法でした。しかし、これからは違います。

 問題はとてもユニークです。誰に、いつ、どんな問題が発生するのか、予想もできません。このような事態に立ち向かうには、組織の構成員一人ひとりの問題解決スキルをアップする必要があります。一方、どこかに解決の良いヒントを与えてくれる人は組織のどこかにいるものです。「なぜもっと早く言ってくれなかったんだ」という、その人にいち早くたどり着けるようにしなければなりません。それには、自分自身が問題解決スキルをアップさせるだけでなく、「問題解決に悩んでいる人がいたらコーチングをしてあげること」が組織全体としても重要になります。「ここでどう考えたらいいだろうか」「私の考えに間違いがないだろうか」と誰かから問いかけられたとき、みんなからの適切な支援と励ましが得られる組織ほど強いものはありません。ユニークな問題に前向きに取り組める組織風土になる必要があるのです。

 

問題とは何か
 辞書には問題とは何かの説明がいくつか列挙されています。「問題とは解決が必要な未解決な事項である」となるそうです。この定義では、「解決していない」とか「解決しなくてはならない」という面が強調されています。
 また、誰にとって解決していないのか、誰にとって解決しなくてはならないのか、という面もポイントです。学校で出される試験問題は生徒にとっては問題ですが、先生にとっては問題ではありません。
 問題であるためには、2つの条件が必要なようです。
 一つは立場です。
 「解かなくてはならない」という立場にあることが一つ。一方、解けるのが当たり前のことは問題ではないのです。「3+2=」は小学1年生にとって問題ではありますが、6年生にとっては問題ではありません。容易にできることは問題ではないのです。
 たとえば、パソコンを使い慣れている人にとって、パソコンを仕事で使うことは問題ではありません。しかし、パソコンを使って仕事を効率よくやってもらいたいのに、パソコンが使えない人は「問題児」です。その人にとってはパソコンを使えるようになることが立派な問題です。
 しかし、「問題とは解決が必要な未解決な事項である」という定義は、仕事上の問題や人生で遭遇する問題に絞った場合、適当といえるのでしょうか。解決が必要だから問題になるのではなく、問題だから解決しなくてはならないのだろうに ということです。しかも、問題によっては、必ずしも解決に乗り出すとはかぎりません。問題が重要でなければ、あるいは重要なのだけれど実現可能な解決策が見つからなければ、放置されていることがあります。
 地球の砂漠化の問題がそうです。放置されていても問題は問題なのです。
 問題解決の仕方を教えたり、コンサルテーションする人が大体賛成する定義があります。「問題とはあるべき姿と現状の姿との差である」というものです。
 あるべき姿に現状は達していない、その程度や範囲が大きいほど重大な問題だということになります。この定義では、解決が必要かどうかにはふれられていません。しかし、現状があるべき姿にないのなら、いつかはあるべき姿にしようとするのが人間の持つ本来の姿勢です。
 なお、TQM(Total Quality Management)では、「問題」 を標準状態から逸脱した状態を元に戻すこと、「課題」を標準状態に向上させること、という定義を導入しています。課題は、課された題、つまり「解決せよ」と組織の上位者から指示された問題または自分自身で解決しようと決意した問題です。つまり、課題とは、問題の種類ではなく実行するかしないかに関係した言葉です。問題は解決し、課題は達成する と紛らわしくいいますが、問題を解決すること、すなわち課題達成なのです。
 なお、課題には、毎日1万歩歩くという課題のように、問題とはいえない(容易な)課題もあります。

問題の種類
 どんな問題も一つの手順でやればよい と主張する人がいますが、冷静に考えれば問題の種類は いくつかに分けたほうがよいでしょう。
 たとえば、製品事故が起こってしまい、その処理と再発防止の対策を講じなくてはならない問題と 新製品を早急に開発しなくてはならない問題を、同種の問題と考えるのはいかがなものでしょうか。
 前者では、問題が起こった原因を追究する必要があり、それが重要です。しかし、後者では、原因など追究する必要はありません。よい仮説を思いついたり、仮設の検証を効率よくおこなうことが大事になります。また、コストを削減する問題は再発防止の問題とやはり違います。

たとえば、ある特注部品が過剰品質であることが分かれば、それを汎用品に取り替えればコストが下げられます。その場合、なぜ過剰品質の特注部品が使われたか という原因究明は必要ありません。このように、いろいろなケースを考えると、問題はいくつにも分類することが可能です。
 そもそも、問題とは すべて固有だ ということも可能です。しかし、問題の種類を数多く挙げればいいというものでもありません。種類はなるべく少ない方がよいのです。解決の方法がやたらと多くては、覚えることができません。最低3つに分ける必要があるでしょう。

 

問題解決に共通な心得

(1)問題を解決する責任者は誰かを明確にしておく
 問題を解決することになったら、それは課題であり、課題になったら担当者がかならず決められます。しかし、担当者が複数の場合は、役割を明確にしておくべきです。
 責任者(指揮者)は誰、支援者は誰、助言者は誰と決めておきます。責任者に指名されると心構えが違います。助言者は気楽な立場でものを発言しますが、かえってそれが客観的でよい場合もあります。

(2)課題を定義する
 問題を、課題として上司から与えられた場合、あいまいな形で引き受けず、どこまでやらなくてはならないのかを明確にします。
 事故の対策を命じられたら、事故が及ぼした被害への処置対策をいうのか、事故の再発防止対策も講じなくてはならないのか、さらには、他所での類似事故の発生を防止することまでも含むのか、ということを明らかにします。すると、責任を分担したほうがよい ということになる場合もあるでしょう。
 新製品開発なら、与えられた品質目標を実現する技術仕様書を確立することで終わりなのか、お客に試しに使っていただいて確認するまでなのか、最初の本格生産まで面倒みるのか、それぞれの責任者は違うのか ということです。
 課題を明確にすれば、目標も明確にできるでしょう。課題は定性的に表現され、目標は測定が可能なように定量的に表現することが望まれます。

(3)現状をよく調べる
 何の問題であれ、現状をよく調べることが大切です。先入観や偏見や独断で認識間違いをしていないか、現場に出かけ現物で確認します。あるなら過去の文献を調査します。事前の調査をちゃんとする人かそうでない人かで、問題解決の力量が歴然とわかれてしまいます。
 記録がない場合は関係者にヒアリングしなくてはなりません。データを採る必要がある場合もあります。そういう場合、サンプリングが偏らないようにしなくてはなりません。ヒアリングでは、自分の思惑(仮説)を前面に出して相手を誘導するようなことをしてはいけません。
 研究報告の結果がほんとうかどうか追試実験する場合もあります。新聞の報道などでも、本当かどうかウラを取る必要があります。客観的な事実をつかむことに精力を使います。

(4)柔軟に構える
 原因はこうではないかとか、こうすればコストが低減できるのではないか、という仮説を抱くのはよいことです。なんらかの仮説も持たないで、やみくもに調査はできません。しかし、その仮説を裏切るようなデータが出てきたら、あっさり仮説を引っ込めることです。
 はじめから「この問題はこうに違いないと思うよ」 などと言わないことです。後で引っ込みがつかなくなります。

(5)責任追及ではなく仕組みの不具合を追究する
 問題の原因を人に持っていくのは問題解決法として得策ではありません。人が原因では人を代えるしか解決策はないことになります。人の性格は簡単には変わらないからです。原因は究極的には仕組み、システムに求めるように持っていきます。
 根本的な解決策が人の訓練ということもあるにはありますが、その場合も、訓練の仕組みとか訓練の資料とかを対象にすればよいわけで、解決策の対象を人にしないことです。「解決策:作業員の教育訓練」などという答えは、答えになっていません。どんなことをどんなふうに教育訓練するのかが明示されてはじめて答えなのです。

(6)問題の構造を考える
 複雑な問題では問題の構造を解きほぐす必要があります。構造とは、問題を構成しているものごとの関係を明らかにすることです。複雑な問題の構造を表現するには、文章は適当ではなく、2次元的な図で表現するのが適切です。
 その図は、典型的には系統図(樹状図)かフローチャートです。系統図は原因結果の因果関係を表し、フローチャートはものと情報の流れを示します。系統図は全体と部分、結果と原因(目的と手段)の関係を表すときに適しています。
 特性要因図とか連関図と称する図で表しても、基本は同じです。フローチャートはプロセスを表すのに適しています。プロセスとは何かをなしとげる過程のことで、硬く定義すれば「プロセスとはインプットをアウトプットに変換するために資源を使用する一連の活動」(ISO9000)です。
 機能(ファンクション) という言葉を使えば、機能と機能の順序を表すとプロセスになります。

 問題の構造(関係)を図で表せれば、問題は半分解けたようなものです。問題が難しいとか、問題自体が分からない、というのは構造(関係)が分からないということと同義なのです。

難しい問題とは、構造が複雑なために図に表現できない問題か、構造の中でなにか不明な部分が残っている問題です。たとえば、経済の問題がつねに難しいのは、その超複雑な構造を誰も図示できないからです。化学製品で、技術上のブラックボックスになっている部分があると、標準通り作業をしてもときどき不良品が発生しますが、構造の細部が不明だからです。

 

問題解決のスキルアップ

ロジカルシンキング

 問題の原因を特定し、それを解決するための対応策を策定するという問題解決のスキルをロジカルシンキングといいます。
 ロジカルシンキングは、文字通り、物事を論理的(ロジカル)に考える(シンキング)ということです。
 論理的に考えるとは、「客観的事実に基づき、筋道を立てて考える」ということを意味します。

問題解決能力
 問題解決の重要性がますます高まってきています。なぜでしょうか。それは、問題を解決できなければ、その問題に悩まされ続けるからというだけではありません。
 その「問題の枠を大きく超え、会社全体を揺るがせる問題に発展することさえある世の中に
なってきた」からです。その反対に、優れた問題解決ができる人材がいる組織はどうでしょうか。すばやく問題を解決してしまえば、将来の挑戦的な改革に取り組むことができます。
 マイナスの問題がいつまでも解決できない企業との差は開くばかりです。
 問題解決は組織の重要なスキルになっています。
 もう一つ理由があります。それは、「問題がユニークになっている」ということです。

 これまで、問題解決というと、ある程度することは見えていました。
 自社製品の性能アップ、コストダウンなど、おおよその問題はそこにありました。
 おおよそ見えている問題をそれぞれの部門に落とし込み、その解決に向かって適進する
 ことが これまでの問題解決でした。
 しかし、これからは違います。
 問題はとてもユニークです。
 誰に、いつ、どんな問題が発生するのか、予想もできません。
 このような事態に立ち向かうには、組織の構成員一人ひとりの問題解決スキルをアップする
必要があります。
 一方で、どこかに解決の良いヒントを与えてくれる人は組織のどこかにいるものです。「なぜもっと早く言ってくれなかったんだ」という その人にいち早くたどり着けるようにしなければなりません。それには、自分自身が問題解決スキルをアップさせるだけでなく、「問題解決に悩んでいる人がいたらコーチングをしてあげること」が組織全体としても重要になります。
 ここでどう考えたらいいだろうか、私の考えに間違いがないだろうか、と誰かから問いかけられたとき、みんなからの適切な支援と励ましが得られる組織ほど強いものはありません。ユニークな問題に前向きに取り組める組織風土になる必要があるのです。

優れた問題解決者が持つ資質
 優れた問題解決者には、重要な2つの資質があります。
 1番目は、「問題解決プロセスを知っている」ということです。問題解決のプロセスとは、解決の手順、碁や将棋でいえば定跡ということです。定跡は、先駆者の知恵のエッセンスをまとめたようなものです。定跡は、ここではこのようにするほうがよい、その後、このような展開になるだろう、といったことを教えてくれます。定跡には、自分が間違って不利にならないようにするにはどうすればよいか、たくさんの事例を元に英知がまとめられています。
 問題解決にもこのような定跡があります。ここではこれをすればよい。次にはこれを抜かしてはいけないといったことを知っていれば、自分自身のガイドになりますし、他の人へのコーチングの道具にすることができます。
 2番目は、「失敗思考の恐怖を知っている」ということです。
 なぜ問題解決に失敗したのか、その原因を扶っていくと、あることをきっかけにして問題解決プロセスを外れてしまったことがわかります。たとえば、すぐに解決しなくてはいけないとベストの解決策を考え出さずに、誰かのアイデアに飛びついてしまったり、たぶん間違いないと事実確認を焦ってしまったりといったことです。
 失敗思考のきっかけになったのは、突き詰めて考えると自分自身の弱さです。早く何とかしないとしかられてしまうといった恐怖や、ここでホームランを打てば自分がとても目立っことになるという名誉心です。これは、誰にでもあることで、必ずしも悪いことではないのですが、それだけにやっかいです。
 問題解決が上手な人は、ここでは このようにすればよい という正しいプロセスと、ここでは これをしてはいけない という失敗思考の両方を知っているのです。

問題解決のプロセス

1.問題の認識  問題は目の前の問題だけではない
      ↓
2.ゴールの設定  どこに行くかを決めてから走り出す
      ↓
3.問題を固定する 決意し、問題から逃げない
      ↓  
4.事実を知る   事実は自分でも知らないもの
      ↓
5.原因を究明   原因は必ずある
      ↓
6.解決策を決める それが本当に最善の解決策なのか
      ↓
7.将来に備える  レベルアップした私にできること

1 問題は様々あるが、気がついていない
 問題はそれだけですか? それが一番に取り組まなくてはいけない問題ですか? このような質問に「ハイ」と答えられる人は少ないものです。また、答えた人でも、ちょっと刺激をするだけで、もっといろいろな問題に気づかされるものです。目の前の重大な問題に頭を抱えてうなだれてしまう前に、顔を上げてもっと視野を広げましょう。チャンスに浮かれて走り出す前に落とし穴に気をつけましょう。
 いろいろな問題に気づかせてくれる便利なスキルは SWOT分析です。
 SWOT分析とは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)で構成される枠組みを使って、自分や組織の問題を整理するための分析ツールです。
 以下の質問に答えながら、自分にはどのような問題があるのか、整理してみてください。
 ・(強み)蓄積してきた知識、ノウハウで、これから活かせるものは何だろうか。
 ・(弱み)学習を怠っていたので、自分の弱点になっているものは何だろうか。
 ・(機会)自分には、どんなチャンスがあるだろうか。
 ・(機会)強みを活かし、チャンスをもっと広げられないだろうか。
 ・(脅威)弱みがあることで、どのような心配があるだろうか。
 ・(脅威)強みを活かして、脅威を弱められないだろうか。

 目の前にある問題はすぐに書けます。大切なことは、それ以外の問題にも目を向けることです。そして、いろいろあることに気がつきます。すると、脅威だけでなく、機会もあることがわかりますし、たいしたことがないと思っていた機会も、改めて見ると意外にもよいチャンスだということに気がつきます。他の人に問題解決のコーチングをしているときには、「こんな強みを持っているんだったら、これが機会にならないかな?」といった問いかけが力を与えることもあります。

2 ゴールを設定する
 困っている問題がなくなったら、それでどうなるのでしょうか。スッキリするという答えでは不十分です。問題がなくなれば誰でもスッキリしますが、次には別の問題が待っているでしょうし、何をもってスッキリしたといえるのか、不明確なままだからです。
 たとえば、ライバルの営業所の数字にいつまでたっても追いつけないという問題があるとして、追いつければ問題は解決するのでしょうか。ライバルを遥かに引き離すところまで行かなくてはいけないのでしょうか。問題は、問題が解決したときの姿、ゴールを具体的にイメージしなければ、それがどれほど難しい問題かわかりませんし、何をすればいいかもわかりません。
 このように、ゴールは すぐに答えの出るものではありません。それは、目先の問題にとらわれていて、改めて意識して考えていないからです。けれども、ゴールが決まらなければ問題解決は完了しないのですから、しっかりと考えておく必要があるのです。
 問題解決をゴールに至る山登りにたとえるとわかりやすいでしょう。ゴールが高ければ、すなわち、目標を難しくすれば登り道が急になります。解決までの時間が短ければ、ゴールを多少低くしたとしても問題解決は難しくなります。かといって、あまりゴールを低くしたのでは、簡単すぎて、問題解決をしたことによる満足レベルに到達したといえる状態にはなりません。 WOT分析からひとつ問題を取り上げてゴールを設定してみましょう。

ゴール設定のためのチェック
・どのような状態になったら、その間題が解決したといえるだろうか
 それは理想的な状態だろうか? それとも理想から遠い、低すぎる状態ではないだろうか
・そのほかのゴールは考えられないだろうか
・解決までにどれだけの時間をかけることができるだろうか

3 問題を固定する
 ゴールが定まったら、「何としてもその間題を解決するのだという宣言」をします。
 問題解決の過程では状況がさまざまに変化します。柔軟な対応が必要ですが、安易な妥協は禁物です。問題が思ったよりも難しいからと、別の問題にすり替えてはいけません。
 このために、自分がどのような問題に取り組もうとしているのか、誰にもわかる形で表現します。

問題から逃げ出すことがないように明確にしなくてはいけませんし、誰にもわかりやすいように簡潔でなくてはいけません。そのために、「~(①問題解決の対象)に~(②どのような問題なのか)が起こっている」という形で記述してもらいます。こうすると、単に「困っている」「解決したい」というだけでは、まったくの記述不足であることがわかります。
 例えば、「クレーム増加」という問題ステートメントは、何が不足しているでしょうか。答えは①問題の対象がはっきりしていません。「製品クレーム増加」ではどうでしょうか。これは記述としては結構ですが、製品すべてを対象としているので、もっと絞り込む必要がありそうです。
 あなたもご自身の問題の問題ステートメントを記述し、チェックしてみましょう。

問題ステートメント
 対象と問題は明確ですか
 焦点を絞り込んでいますか
 “不良”や“遅い”といったあいまいな表現を使っていませんか

 この後、いよいよ焦点を当てた問題に入り込んでいきます。慣れてくれば、問題解決ステートメントまでは、すばやく進めることができるようになりますが、くれぐれも手抜きにならないようにし注意してください。

4 事実を知る
 なぜ、改めて事実を知ろうとするのでしょうか。
 悩んでいる問題のことなど、今さら事細かに調べなくてもよく知っていそうなものです。ところが、実際は そうでもないのです。
 販売不振に悩んでいる製品のことは よく知っていると言いながら、いつから不振が始まったのですか? どこで売れないのですか? どのような傾向を示しているのですか? と聞いていくと、答えられないということは少しも珍しいことではありません。
 また、一口に、事実といっても、「事実にはいろいろなものがあり、使い分けなくてはいけない」ということを知らずにまとめて事実と言っている場合がほとんどです。わかっているから と言わずに、「謙虚に事実に耳を傾ける」ことが問題解決では重要です。
 まず、事実分析の基本である 5W1H(What:何が、Where:どこで、When:いつ、Who:誰が、Why:なぜ、How:どのように)に、「Which:どちらが」と「How many/much:どのくらい」を加えた 6W2H で事実を収集します。このとき、起きていない事実も集めるとヒントになります。そして、「確かに発生したという事実」と「~と報告があった」「~と推定されているという報告事実、推定事実を区別する」ことが大切です。

 あなたの問題で、どれほど事実がわかっているかを確かめてください。もし、不明なことがあったら、それが問題解決の鍵になる可能性があります。

5 原因を究明する
 どうしてそんなことが起こったのか、事実を整理し、不明点を調査すると新たな気づきがあって、そこから原因を見つけ出すことができるものです。

 問題が起こったのが夏で、それ以外の季節には起こらないのであれば、夏の何かが問題の原因になっていると考えられます。ある人に問題が集中しているのであれば、その人の特徴と問題が結びついていると考えられます。

 6W2Hの表を眺めながら、WhyとHowを除くそれぞれで特徴がないかを調べてみましょう。
 ・What:問題を起こした対象物には、どんな特徴がありますか?
 ・Where:問題が起きた場所には、どんな特徴がありますか?
 ・When:問題が起きた日時には、どんな特徴がありますか?
 ・Who:問題を起こした人には、どんな特徴がありますか?
 ・Which:問題を起こした側には、どんな特徴がありますか?
 ・How many/much:問題が起きた数には、どんな特徴がありますか?

 次に「変化に注目」します。
 今までと違うことが行われれば、たとえ それがよいと思ってやったことでも、問題の原因になってしまいます。
 ここまで来ても問題の原因がわからないとすれば、原因は意外なところにあるはずです。自分で忘れていること、思わず誰かがやってしまったことも含めて、変化に注目しましょう。

 このように、変化を調べるときには、自分の記憶の中だけでなく、調査の範囲を広げることが重要になります。

6 解決策を決める
 原因がわかれば、もう終わったようなものです。
 しかし、だからといって、一気に突っ走っていいかというと、必ずしもそうではありませんいくつか注意をしなくてはいけないことがあります。
 解決策を考えたら、「もっといい方法はないかと必ず考える」ようにしましょう。後で気がついても遅いのです。他の人にも参画してもらい、知恵を出し合うと、あなたが考えた解決策に磨きがかかります。案が改良されていきます。他の人たちも、自分たちの考えを組み入れた解決策であれば、力の入れ具合が違ってきます。複数の案を考えると、ベストの案がどれほどいいかがわかります。飛び抜けていいのか、不満が残るけれども他に有力案がないのでこれで行くしかないのか、といったことがわかります。選ばれた解決策を実行すれば、問題は解決です。それで ほめられることはあっても、何も困ることはないはずです。確かにそうなのですが、これからの時代は違います。
 さらに一歩を踏み込むと、やがて大きな違いになってきます。それが次の問題解決のプロセス「将来に備える」になります。

 

問題解決に使える5つのフレームワーク

 問題解決のスピード化をはかる解決策のひとつであり、簡潔で効果のあるツールが「フレームワーク」です。

 フレームワークとは、課題やその発生要因の分析を行うプロセスにおいて活用できるツールで、考えをまとめやすいようにポイントを押さえて構成されています。

問題解決の方法を考える

 ビジネスにおいては、日々さまざまな問題が発生しま。その中で、手をつけなければと考えている勘案事項をたくさん抱えているマネジメントの方も多いでしょう。そのような現状の中で重視されるのは、問題解決をスピーディーに行うことです。

 企業内部の経営者や従業員が、多種多様な問題解決の方法をそれぞれ個別に考えていった場合、多くの時間と労力が必要となります。解決のための時間と労力が確保できなかった課題は後回しにされ、問題解決に長い時間を要することになります。

3C分析

 問題解決のためには現状分析が必要です。企業の現状分析に適したフレームワークに「3C分析」があります。3C分析とは、自社(Company)、顧客(Customer)、競合(Oompetitor)を基準にその関連性から現状を分析するツールです。

SWOT分析

 企業の事業戦略やマーケティング戦略の問題解決のために適したフレームワークに「SWOT分析」があります。外部環境や内部環境を強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) の四つの要因から、問題を解決するための戦略を分析します。

MECE

 MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)は、問題解決の方法を考えるときに使える基本的なフレームワークです。MECEとは「重複なく、漏れなく」という考え方で問題点や原因の分析をするときの細分化や整理の基準になります。

PDCAサイクル

 問題解決を実行する場面で使えるフレームワークに「PDCAサイクル」があります。PDCAサイクルとは、(計画)、 Do(実行)、 Check(評価)、Act(改善)の4つのサイクルを繰り返し実行していく手法で、机上ではなく現実に実行されている問題解決の作業を評価、分析して、さらに次の計画へつなげていく上昇スパイラル効果が期待できます。

緊急度・重要度マトリクス

 多くの問題が発生した時には問題解決の優先順位をつける必要がでてきます。そのような時に役立つフレームワークが「緊急度・重要度マトリクス」です。問題を緊急である、緊急でない、重要である、重要でない、という4つに分類して、優先順位をスピーディーに明確化することができます。

 

論理的思考で問題解決

 問題解決には、論理的思考(ロジカルシンキング)を活用したプロセスが重要です。ロジカルシンキングとは、筋道をたてて考えるスキルで、「問題を明確化する」「原因を考える」「解決策を立案する」「実行する」というプロセスで問題を解決します。

 論理的思考では、「問題」を「現状」と「あるべき理想状態」とのギャップと考え、ギャップをつくっている原因を洗い出して、ギャップを埋め、「現状」を「あるべき理想状態」にすることが問題解決となります。

 スピーディーな問題解決のために、論理的思考(ロジカルシンキング)を活用したプロセスの場面でフレームワークを活用するのです。問題を明確化する、原因を考える、解決策を立案する場面では、問題点や原因、解決策の分析に「MECE」を採り入れます。実行する場面では、「PDCAサイクル」を使うことで効果の最大化が期待できます。

必ずしも考えることに「固執しない」ことが重要

 経営者が抱える問題は多種多様で、問題解決の方法を考えるには時間と労力がかかります。フレームワークは問題解決の方法や基準をパターン化したツールですので、フレームワークを使うことで、経営者は時間と労力を抑えることができます。

 一方、事業に重要なのは実践です。数多くのフレームワークを知っているというだけでなく、フレームワークに基づいた行動に従って数多くの実戦経験を積み上げていくことで、初めてそれが使えるかどうかがわかる様になります。常に実践を重要視するようにしましょう。

フレームワークは経営問題解決に有効か

 「自企業の業界における立ち位置は?」「利益を上げるためにどうしたらよいのか」、経営者であれば自社の経営問題を解決するために自問自答していることでしょう。そんな時に有効なのが「フレームワーク」です。英語でフレームワークとは骨組みや枠組みを示す単語。ビジネスフレームワークといえば「ビジネスにおける課題を解決するための考え方」と置き換えてよいでしょう。

フレームワークが経営現場で利用されている理由

 多くの経営者は、「収入」「コスト削減」などの経営課題を抱えていますが、すべての経営者が経営課題の改善に全力を傾けることができるでしょうか。中小企業であればなおさら、経営者自らが業務についている場合もあり、目の回るような忙しさです。「一人で経営改善をやっていて方向性を誤ったらどうする?」「経営改善計画を考えている暇さえない」「改善案を実行したが部下がイマイチ本質を理解していない」、そのような問題を起こりにくくするもしくは解決してくれるのが『フレームワーク』です。

 

フレームワークを使うメリット

 「フレームワークってよくわからなくて苦手」という経営者は かなりの損をしています。フレームワークを利用することによるメリットがあります。

・経営課題に直接改善のメスを入れるので、時間の削減ができる(早い)
・フレームワークの考え方を共有した複数人で経営課題の改善ができる(わかりやすい)
・自分達では考えつかなかった新たな課題や視点を発見できる(盲点が少ない)

 近年の世界情勢及び経済状況の激変により、これまで頼りだった経営者としての勘や経験がなかなか当たりにくくなっているのです。そこで、勘や経験に頼らない経営課題解決に役立つのが「ビジネスフレームワーク」なのです。

経営と真理 へ

「仏法真理」へ戻る