マネジメント・システム論

 ミシガン大学社会調査研究所所長レンシス・リッカートが確立したのが、マネジメント・システム論です。現場監督者を対象として行った研究で、経営組織の業績と組織構成員のモチベーションとの相関関係を理論化しました。組織をシステムと捉えたこの理論は、4つのパターンで構成されています。

1 権威主義・専制型

 権威主義・専制型は、徹底した課題志向で、統制の主体はリーダーです。リーダーと組織メンバーがお互いに作用することはほとんどなく、統制的な機能はリーダーの手中にあります。古くからある権威を重んじる権威主義的管理方法で、リーダーは絶対的な存在になります。

 メンバーは、いかなる意思決定も認められないだけでなく、脅迫、懲罰などにより働かされ、ほんのわずかな報酬を与えられるだけです。

 現代社会ではなかなか見られることが少なくなってきたパターンのリーダーシップ論ですが、成熟していない組織や、中小企業などで多く見られるワンマン社長が君臨している組織などでは、この権威主義・専制型のリーダーシップが根深く残っているケースもあります。

 

2 温情・専制型

 温情・専制型も統制の主体はリーダーにあります。権威主義・専制型のリーダーシップと違うのはリーダーが温情を持っている点です。

 リーダーは、温情を持っているため、組織メンバーに対してある程度の思いやりがあり、信頼しています。一定の範囲でならメンバーの裁量も認めているのも特徴です。

 しかし、多くの意思決定においては、リーダーが専制的に主導します。ときに報酬、懲罰といったものをちらつかせながらメンバーの動機付けを行うこともしばしばです。目標を達成するという観点から考えれば、専制的なリーダーのもとである程度の結果が出せるでしょう。しかし組織内の人間関係は希薄で脆弱です。

 

3 参画協調型

 参画協調型のリーダーシップは、統制の主体はかなりの部分で組織メンバーにあります。メンバー同士のやり取りもある程度活発になり、相互作用による効果も期待できるでしょう。リーダーの権限よりも、組織メンバーへの裁量委譲が特徴的です。

 この場合、目標を達成するという課題志向と組織内の人間関係を構築する人間関係志向がほぼ同程度で捉えられます。

 リーダーは、基本方針や全体の決定権のみ保有し、その他の個別案件は個々に権限委譲され、部下はリーダーからの信頼のもとコミュニケーションを取りながら積極的に目標達成に向けてアクションを起こします。状況によって懲罰なども用いられるケースもありますが、リーダーとメンバー、メンバー同士といった組織内の人間関係は良好に保たれるでしょう。

 

4 民主主義型

 民主主義型のリーダーシップの統制主体は組織メンバーです。評価と統治は全面的にすべての階層でリーダーからの権限委譲がなされています。どちらかというと、企業の目標を達成する課題志向よりも組織内の人間関係に重きを置く人間関係志向が高まった状態になります。

 リーダーは、組織メンバーを全面的に信頼するため、上下左右のコミュニケーションが活発に行われ、メンバー全員で目標決定、プロセス構築、アクションプランの作成などに取り組みます。

 モチベーションも非常に高いのが特徴で、広範囲な相互作用が良循環を生み出します。民主主義のメリットを最大限享受したような組織運営を行うので、メンバーは働きやすい環境を得られるでしょう。

 ただ、目標達成志向が低下する場合もあり得るため、企業としてどの程度までそれを許容するのかの線引きは常に必要です。

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