経営の中で生じる矛盾に苦しむ社長が「今すぐ」するべきこと

 誰もが知っている経営の神様ピータードラッガーは「マネジメント 基本と原則」で経営について次のように述べています。
 マネジメントの重要なファクターとして時間を挙げています。
 すなわち、「マネジメントとは、常に現在と未来、短期と長期をみていかなければならない」と。
 確かに、経営には、長期的視点と短期的視点の両方を見ていかなければいけません。例えば、利益に関して言えば、短期的利益だけを追えば、損得勘定の度が過ぎるようになり、理念経営ができなくなります。長期的利益だけ追って短期的利益をないがしろにすれば、たちまち目の前のキャッシュがなくなり、倒産してしまうでしょう。

 また、ドラッカーは、マネジメントの役割として管理的活動と起業家的活動を上げています。
「マネジメントは管理する。と同時にマネジメントは起業家とならなければならない。成果の小さな分野、縮小しつつある分野から成果の大きな分野、しかも増大する分野に資源を向けなければならない。そのために昨日を捨て、すでに存在しているもの、知られているものを陳腐化しなければならない。明日を創造しなければならない。」と。

 つまり、経営とは、「顧客に対して独創的な商品サービスを開発し、ブラッシュアップすること、ないものを生み出すこと。すなわちアートフルである」と同時に、「独創的な商品サービスを意図的に、そして効率的に販売していく仕組み=管理的機能が必要である、つまりサイエンスも必要である」と言っているのです。

 最近では、CS(顧客満足)が先かES(従業員満足)が先かという議論がありますが、2つのバランスをとることは経営の課題と言えるでしょう。

 経営とは、他人を通じて事(事業)をなすこと、したがって、「人を動かす」ことが経営の本質である。会社とは「感情のない、効率性で判断できる仕事の集合体」であると同時に「感情のある、効率性とは無縁の人の集合体」であり、この矛盾する2つの統合するのが経営者の役割です。

 これら見解をまとめると、

 ・長期的利益と短期的利益

 ・社会穂貢献と企業内部

 ・創造性と合理性

 ・現在と未来

 ・人と仕事

 ・ミクロとマクロ

 ・制約と自由

 ・決断と感謝

 すなわち、経営とは、相反する2つの事象を同時並行的に統合する作業のことなのです。こういった矛盾する難解で複雑な案件は次々と経営者には降りかかってきます。

・長期的に利益を出すために投資をしたいが、今利益が出ていないからお金がない
・社員のモチベーションを上げるために長所を見つけて褒めて伸ばそうとするが、全然仕事ができないので、褒めようとしてもすぐにイライラしてしまう
・従業員第一主義か、顧客第一主義か
・明日の仕事を生み出すためにイノベーションを起こすべきか 今の仕事の生産効率を上げるべきか

 こういった矛盾に社長はかなり苦しみます。経営は実に複雑怪奇でアクロバティックなものなのです。だから社長は混乱して当たり前です。

 では、この事象を何で統合すればよいのでしょうか。それは「経営理念」です。

 経営理念という一つの目的に向かって、すべての事象を統合していくことが経営者に求められているのです。経営とは、「企業の目的(経営理念)のために、相反する事象(未来・現在・長期的利益・短期的利益・人・組織・創造性・仕組管理等)を同時変更的に統合しながら永続的に成長発展し続けること」であると言えます。

 経営者は、意図的に時間をとってこういった事象を把握し、熟考し、経営全体をデザインしていかなければならないのです。

参考

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