安全安心な職場づくり

 「きちんと片付けなさい」「使った物はもとの所に戻しなさい」「整理・整頓しましょう」いずれも小さい頃、家庭や学校で言われ続けてきたことです。

 当時はその意味を深く考えることもなく、なかなか身につかない躾の一つくらいにしか捉えていなかったのではないでしょうか。

 そして、大人になった今、また同じことを言われるわけです。

 その意味や目的は単なる躾の域にとどまらず、ケガをしない(させない)、職業病にかからない、仕事のムリ・ムダ・ムラを省いて高い生産性を維持する といった安全衛生管理の基本として位置づけられます。

 これは、厚生労働省が平成23年度より取り組んでいる第三次産業における労働災害防止対策において、4S活動(整理、整頓、清掃、清潔)の普及促進を取り上げていることからも分かります。

 一般に言われることですが、5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)の徹底度は業種を問わず、その作業現場を一目見ればある程度判断できるものです。

 すなわち、5S活動は実行すればその成果が表れ、目ですぐに確認でき、不十分であればすぐに改善でき、またその結果がすぐに確認できるという、実に管理しやすい活動であると言えます。

 現場の管理監督者が安全衛生管理に取り組む場合、まず5Sの徹底からはじめ、その効果を目で確かめながら活動をすすめていくうちに、「安全で快適な職場環境の確保」「品質の向上」「作業能率の向上」「コストの削減」「モラールの向上」「良好なチームワークの構築」などの果実を得ることができます。

 5S活動の最大の特徴は、成果が目に見える活動であり、安全衛生活動の基本として最初に取り組むべきものであるといえます。

 

災害発生の三要因

 5S活動は事故や災害(ケガ)を防止するための基本ですが、ここで、その理由について考えてみましょう。

 事故や災害が発生する背景には三つの要因があるといわれている。

 直接原因としての“不安全状態の放置”“人の不安全な行動”と、根本原因としての“不十分な安全衛生管理/不活発な安全衛生活動”です。

 この中の一つである不安全状態の代表的な例が、いわゆる5S不良による乱雑な現場なのです。

 原材料、半製品、廃棄物などが雑然と置かれていたり、掃除されることもなく床面が油で汚れていたりする作業場では、ケガにつながる危険の芽も覆い隠されて、結果として転倒、踏み抜き、激突、切創(切れ)などさまざまな災害につながる。

 

現場における5S

整理

 要るものと要らないものを区別し、要らないものは処分する。

 ・必要なものと不要なモノを分けること

 ・不要なモノを捨てること

 この2つを実行することが「整理」です。

 管理監督者は何が不要かの基準を明確に伝えることが重要です。

 

整頓

 要るものを所定の場所にきちんと置く。

 ・必要な材料や工具などを見つけやすくする

 ・材料や工具などを間違いなく利用・活用しやすいようにする

 ・利用後、正しく戻しやすいようにする

 この3つが揃って生産性が向上するのです。

 そして、これらの要素を満たす知識・知恵の活用が求められます。

 

清掃

 作業場所や周辺を掃除して、ゴミ、汚れのないきれいな状態にする。

 「清」=清める(ほこりをふき取る)

 「掃」=チリを掃く

 

清潔

 整理・整頓・清掃を徹底して実行し、汚れのないきれいな現場を維持する。

 「整理」「整頓」「清掃」が徹底し、維持されている状態を「清潔」という。

「清潔」は「整理」、「整頓」、「清掃」の上に成り立つ形となる。

 

 マナー・ルールを守る、守らせる。

 

 「整理」「整頓」「清掃」「清潔」の4つが身について実行できる状態、これを躾ができた状態という。

 

5Sは何のために

1 当たり前のことが当たり前にできているか

 製造業、建設業、物流業、メンテナンス・サービス業、病院、ホテルなど業種を問わず「5S」に再注目する企業が増えています。

 整理、整頓など、どんな会社でも当たり前のこと、清掃をし、清潔な状態を保つことなど、できていて当然のことと思われるかも知れません。その当たり前のことを当たり前にやることが今日では簡単ではなくなってきていることも確かです。

 『あなたの職場では、当たり前のことが当たり前にできていますか』

2 競争の基盤づくりのために

 昨今の厳しい企業間競争を勝ち抜くためには、業種を問わず常に新たな経営手法や新しい製造手法の導入が求められています。

 ところが、新しい取り組みがうまくいかない(定着しない、時間がかかる)会社があります。

 「新しい取り組みがうまくいかない会社」に共通していることの一つに、職場(現場)が「きたない」ことがあります。

 5Sができていない会社は、決め事が守られなかったり、方針が徹底しなかったりと、ルーズさが目立つ職場の風土となりがちです。

 5Sすらできない職場(現場)では、新しい手法の取り組みが素早く、正確に行われ、高品質の製品(商品)の提供ができるわけはない、ということです。

 これらのことから、5Sは安全管理だけでなく、品質管理、工程管理の基盤といえるし、そのことが企業の競争力強化にもつながるといえる訳です。

 

5S活動の実践と評価

1 5Sの評価基準

 すべての活動に共通することですが、まず行うべきことは職場の5Sの現状がどのレベルにあるかを知ること(現状把握)です。

 その上で、改善を重ねレベルアップを図ることが確実な成果に結びつくことになります。

2 5S実施のポイント

まずは、現在の5Sレベルを把握し、問題点を見出し、実情に応じたレベルアップを図ることです。

 また、実施はされているもののマンネリ化に陥っている場合には、その改善が必要となります。

(1)5Sレベルの把握

 5S組織運営状況なども含め、5Sレベルを全社、部門別に把握します。

 5Sレベルの低い場合の要因としては次のようなものが考えられます。

 ・トップの方針が不明確で5Sの認識が低い

 ・5S推進組織や運営方法が不備(5Sの教育不足を含む)

 ・5S手法活用に不慣れで5S実践の重点が不明確

・継続して5S維持ができてない

 ・設備の清掃、点検知識・技能が不足

(2)マンネリ化傾向の調査

 5S活動が長く続くとマンネリ化し、油断や惰性に陥り、実行が伴わなくなることがあります。

 その背景には次のような要因が考えられます。

 ・5S委員会や職場活動の停滞・不活発(やらされ感の蔓延)

 ・役割・責任体制が不明確

 ・点検チェックシートの結果を上司が確認しない

 ・5Sに起因する災害が多発

 ・5S関連マニュアルや管理水準が長い間未改訂

3 5S活動改善方法

(1)レベルアップ対策

 把握した会社や職場の5S水準により、目標を定め段階的に整備し定着させる進め方が効果的です。

〔例〕整理・整頓・清掃(3S)を重点的に整備し、ついでに清潔・躾(5S)を定着させます。

 実行する際の改善の要点を次に例示します。

全般:トップの方針の明確化と組織運営の見直し

整理:整理基準の明示、赤札などによる大幅整理の実行

整頓:物の置き場所、置き方、保管方法の明示/目で見る5Sの管理方式の採用

清潔:5Sマニュアル(手順、基準)類の整備

 躾:現場規律の見直し、明るい職場づくり

(2)マンネリ化対策

 制度:トップの5S方針宣言、特別点検の実施

 運営:5S点検方法及びチェックリストの見直し、5S起因災害の再発防止、小集団活動での5S活発化

 啓発:5S特別キャンペーン、全員による5Sスローガンのワッペン着用、従業員の家族に対する5Sポスター募集による家庭協力の推進

4 効果の評価

 5S活動の診断及び効果の測定・評価項目とそのポイントについて、全社レベルでの評価だけではなく、部門に特有な要素を盛り込んだ具体的な評価項目表を作成して運用することがより効果的です。

 いずれにしても、それぞれの項目について定量的に評価し、好ましい改善策があれば他部門への水平展開につなげ、改善の余地があればそれによる効果を教育するとともに、具体的な改善策を考えていくようにします。

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