中小企業が生産性を向上するには

 少子高齢化による労働力人口の減少、長時間労働の見直しなど働き方改革が求められる中、変化が大きい時代を企業が生き残るためには、限られた人員・限られた資源で収益を上げる「生産性の向上」は企業が取り組むべき大きな課題です。

 

生産性向上とは

 「生産性向上」とは、「従業員数や労働時間数に対してどれだけの成果が出せたか」を表す指標です。

 『生産性』とは、その効率性を指す概念であり、これを定量的に表す指標の一つとして『労働生産性』が用いられています。労働生産性とは「1人当たりの付加価値額」のことです。
 生産性には、ほかにも「物的生産性」や「付加価値生産性」がありますが、日本では「労働生産性」のことを指すことがほとんどです。

 

企業が競争力を強化するためには生産性向上が必須

 生産性向上が必要とされている大きな理由の一つは、国内の「労働力人口の減少」です。高齢化が進む日本では、最も働き盛りの30歳以上は減少の一途をたどり、2000年には4,686万人だった人口が、2030年には4,501万人になると予想されています。多くの業界・企業で、人材不足が起きることは明白で、今までと同じはたらき方をしていては、衰退していく一方です。

また、近頃は「働き方改革」の促進によって、「ワークライフバランス」を実現した働きやすい環境を従業員が求めるようになっています。生産性向上への取り組みが進んでいない企業ほど、従業員の総労働時間が減らない傾向にあり、ここから脱却しないことにはいずれ人材の確保が難しくなるのは間違いありません。
 このような背景から、一人ひとりの生産性を上げることが近年さらに重要なテーマとなっているのです。

 

生産性向上は利益向上にもつながる

 生産性向上は企業に大きなメリットをもたらします。
 まず、時間や工程の効率化により、コスト削減だけでなく、短時間、かつ、少人数で業務を進めるようになります。既存製品やサービスの付加価値向上が売上増加につながる可能性も大いにあるでしょう。これまでよりも低コストで利益が得られるようになるのです。
 また、AIやRPAの導入による生産性向上は、人材不足の解消につながると考えられます。これまで人が関わってきた仕事を自動化できれば、従業員は「人にしかできない仕事」に集中でき、限られた人材でも効率良くはたらけるようになるのです。残業時間の削減によって労働環境も改善され、従業員のモチベーション向上にもつながります。

 

生産性向上の方法

 生産性(労働生産性)を上げるためには、下記のような2つの方法があります。

・効率の向上  

(例)業務の省略可、業務プロセスの効率化など

・付加価値の向上 

(例)既存製品・サービスの高付加価値化、新規製品・サービスの展開など

 時間や工程を効率化し、革新的なビジネスを創出するなど、サービスの価値を増大させることができた時に生産性向上が実現します。

 

生産性向上と業務効率化

 「生産性向上」は、しばしば「業務効率化」と混同されます。この2つは厳密には異なります。生産性向上が「成果」を重視しているのに対し、業務効率化は、時間や費用のコストを下げるなど「改善」に向けた取り組みを指しています。
 業務効率化は、労働投入量(従業員数もしくは労働時間数)の効率化につながるため、生産性向上を達成するための手段の一つと認識すべきでしょう。

 

生産性向上の心得と注意点

 「効率の向上」と「付加価値の向上」が生産性を上げるとはいえ、やみくもに実行してしまうと かえってマイナスの結果を生み出しかねません。

1 自社の理念に立ち返る

 自社が何を目的とする会社なのか、自分たちが提供しているサービスは何のためにあるのか、今一度その理由を考えてみましょう。このとき、消費者視点に立って「それは社会のニーズに沿っているのか」に注意することも大切です。

 

2 事業コンセプトを再構築する

 自社の理念が明確になったあとは、事業コンセプトに目を向けましょう。ここで重要なのは、①「誰に」②「何を」③「どのように」提供するのかを考え、常に一貫させること。どれか一つでもズレてしまっていたら、生産性向上にはつながりません。

 具体的な考え方は以下です。

「誰に」を考える
 自社のサービスや商品の特徴を見極め、顧客層を特定します。同時に、潜在的な顧客の顕在化にも目を向けると、サービスや商品の提供範囲が広がり、生産性向上につながります。

「何を」を考える
 「誰に」が定まったら、顧客のニーズに合ったサービスを考える必要があります。自社が過去に提供していたサービスや他社との差別化要素もしっかりと見つけておきましょう。顧客の期待価値を上げることは、生産性向上に欠かせないプロセスです。

「どのように」を考える
 「誰に」「何を」提供するかが決まったら、どのように実行に移すかを考えます。例えば、どんなサービスを提供しているのか情報をしっかりと開示することは重要でしょう。それを見て、顧客は自分のニーズと合致しているかが判断できるため満足度が上がります。

 以上のことを考えた上で生産性向上に取り組みましょう。

 

生産性向上に取り組む際の注意点

 生産性向上の取り組みはすぐに変化が表れるわけではありません。研修を導入したりマニュアル化したりと、コストだけかかって一向に効果が出ないと不安に感じることもあるでしょう。
 しかし、「こんなことをやっても意味がないから、予算は別に回そう」と諦めず、生産性向上のための投資は長期的視点で取り組む姿勢が大切です。中小企業でも、IT設備など成長のための投資を惜しまない企業は、効果を発揮しやすい傾向にあります。
 決裁において何人ものハンコの確認が必要などアナログなやり方を変えないと、生産性は下がっていく一方です。変化を恐れずに新しいものを取り入れる姿勢も生産性向上には欠かせません。

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