QC7つ道具

 品質管理は企業にとって重要です。品質管理を効率よく行うために必要なのが「QC7つ道具」と呼ばれるものです。

 「QC」とは「Quality Control」の略で、品質管理という意味です。

 「QC7つ道具」は品質管理に特に効果を発揮する7つの道具のことをいいます。定量的なデータを分析することができるので、主に製造現場の品質管理、改善手法として広まりました。

 

1 パレート図

 パレート図は、全体の中で大きな影響を占めるものが何であるかを明確にし、重要な問題を特定するための手法です。この手法はパレートの法則に基づいています。パレートの法則とは上位2割が全体の8割を占める、という法則です。

 「売上の8割は全顧客の上位2割が占めている」「売上の8割は全商品のうちの上位2割によって生み出されている」ということを耳にしたことはありませんか? これがパレートの法則です。

 パレート図を用いて検証したい作業の工程や項目を「見える化」すると、全体の工程の中で大きな影響を与えている問題点を抽出することができ、何を改善すれば大きな効果が出るのかが分かります。
 その結果、不良品の割合を減少させたりすることが可能になります。

 

2 チェックシート

 チェックシートとは得られたデータを記録したり、整理したりするための記録用紙のことです。
 チェックシートは2種類あります。ひとつはデータ収集に利用する記録用チェックシートで、もうひとつは点検用チェックシートです。これは日常の業務が正常に実行されているか点検するためのものです。

 記録用紙に記入することで、誰が見ても同じように記録、点検ができるようにします。また集計したデータはグラフ化するなどして活用します。ただ記録を残すだけでは意味がありません。集計したデータを解析し、活用することが最終目的です。

 

3 グラフ

 グラフは複数のデータを視覚的に示すことができる図のことです。グラフには様々な種類があるので、目的によって使い分けると良いでしょう。

 例えば、円グラフは全体において各項目の比率を確認する時に便利です。棒グラフは各項目の差を見比べる時に役に立ちます。折れ線グラフは日々の推移や動向を確認するときに使用し、帯グラフやレーダーチャートは前年比と割合の変化を確認するときに便利でしょう。用途や目的によって適切なグラフを選び、データを分析していきます。

 

4 ヒストグラム

 ヒストグラムは、測定データが存在する範囲をいくつかの区間に分けて積み上げたもので、工程のバラツキ状態を見るための手法です。

 どのような分布構成になっているか視覚で理解できるため、人口分布など統計でもよく使われます。品質管理では、ヒストグラムでバラツキの特徴を把握することで何が起きているのかを推定するために使用します。

 

5 特性要因図

 現在、抱えている問題が持っている特性と、それに影響を与えている要因とを矢印を用いて整理した図です。その図の見た目から魚の骨と呼ばれることもあります。

 ひとつの特性に対してまず背骨を書き、それから大骨を書きます。大骨には要因と考えられるもの(人、機械、材料、方法など)を大まかに記入します。そして細かな要因を魚の小骨や中骨のように周辺に記入していきます。
 そうすることで、問題に影響している要因を客観的に把握することが可能になります。

 

6 散布図

 散布図は、データを点の集合によって表現した図です。散布図上の点の散らばり方によって相関関係の有無を把握することができます。

 分析を行う際は以下の4つの点について検証します。

(1)相関関係があるか

 点の散らばり方が直線的な関係である場合は「相関がある」と表現します。散布図を見ると相関の有無や強さの度合いも分かります。

(2)異常点はないか

 点の集まりから異常に飛び離れた点はないかチェックします。異常点の多くは作業者や材料、作業条件の変更など特別な原因に基づいています。異常点を見つけた場合は原因を徹底的に検証する必要がありそうです。

(3)分けて考える必要があるか

 原材料別、機械別、季節別などある条件に従って分けて考えると有効な情報が見つかる時もあります。

(4)偽相関ではないか

 相関関係が無いのに、散布図上では相関関係がある状態を示す場合もあります。これを「偽相関」といいます。得られた結果をそのまま信用するのではなく、本当にそのような関係が成り立つのか検証することが大切です。

 

7 管理図

 現在の工程が正常か異常かを客観的に判断し、さらに工程を安定した状態に保つために活用する手法です。

 まず、製造工程において偶然によるバラつきを加味した「正常値」という規定の範囲を設けます。その正常値の範囲を超えた場合は何かしらの異常が発生しているということになります。
 不良発生件数が管理限界値を超えた日に何があったのか、その原因を究明するときに活用します。

 

新QC7つ道具

 「新QC7つ道具」とは、主に言語データ(定性データ)を分析し、課題解決を図ることができるツールです。さまざまな要因が輻輳する中で、因果関係をあらかじめ予測して原因究明を行うアプローチです。

 新のつかない「QC7つ道具」が、問題点の把握や原因追及に対して「定量的」に分析を行うのに対し、「新QC7つ道具」は「定性的」に問題構造を明らかにするもので、以下の7つがあります。

 

1 親和図法

 親和図法は、数多くのデータの中から親和性の高いデータをグループ化していき、問題構造の全体像を明らかにする手法です。親和性の高い(=似ている)データをグループにまとめ、共通化したり、そこから新しい発想を導いたりします。未来・将来の問題、未知・未経験の問題など、はっきりしない問題によく使用します。

 日本の文化人類学者である川喜田 二郎(1920年 – 2009年)がデータをまとめるために考案した手法で、KJ法とも呼ばれます。

 

2 連関図法

 連関図法は、問題の発生要因が複雑に絡み合っている場合に、それぞれの要因データと結果データを矢印で結ぶことにより、問題構造を明らかにしながら、主要な要因が何であるかを明確にする手法です。

 原因が複雑に絡み合う問題を整理する事ができるので、計画段階から広い視野で全体を見渡せ、メンバーのコンセンサスを得ることが容易になるなどのメリットがあります。

 

3 系統図法

 系統図法は、目的と手段を多段階に展開することにより、系統的に問題解決法を導出する方法です。具体的には、ある目的を設定し、それを実行する手段を考えます。さらにその手段を達成するために(その手段を目的とした)第2階層の手段を考えます。このようにして、実現可能な手段を明らかにしていきます。

 事象を系統的に論理展開しやすく、ヌケ、モレが少なくなります。

 

4 アローダイヤグラム

 アローダイヤグラムは、スケジューリングにおける「PERT」のことです。作業開始から完了までの複数の経路の中で最良の経路であるクリティカルパス上の工程を重点的に管理します。

PERT

 PERT(Program Evaluation and Review Technique)は、前後関係を持つ複数の作業において、矢印を利用してネットワーク図を作成し、全体像を明らかにするものです。
 EPST(最早着手日)は、作業を最も早く開始できる日をいいます。
 LPST(最遅着手日)は、作業を最も遅く開始できる日のことで、遅くともその日までに完了していないとプロジェクトのゴールが遅延してしまいます。

クリティカルパス

 EPST(最早着手日)とLPST(最遅着手日)が同じ日の結合点は、作業が開始できるようになったら即作業を始めないと全体の納期が遅延することになります。プロジェクトの中で、作業開始から完了まで複数の経路が考えられますが、そのうち最長の経路をクリティカルパスといいます。

 

5 PDPC法

 PDPC法(Process Decision Program Chart)とは、スタートからゴールまでの達成方法(ルート)を複数洗い出し、実際にタスクを始めた後に不測の事態が発生した時、目標に向かってどのような軌道修正をすればよいかをあらかじめ明らかにしておく手法です。過程計画決定図ともよばれます。

 1968年、東京大学工学部教授の近藤次郎(1917年 – 2015年)が東大紛争の解決のために作成した手法です。

 

6 マトリックス図法

 マトリックス図法は、2つの要素を行と列に配置し、それぞれが「交差するフィールドに相互の関連に基づいて記述していく手法です。問題の関連性を網羅的に整理できます。

 

7 マトリックスデータ解析法

 マトリックスデータ解析法は、マトリックス図に現れたデータを2次元のグラフにマッピングし、問題解決を図る手法です。「新QC7つ道具」は言語データを扱うツール集ですが、このマトリックスデータ解析法だけが、唯一数値データを扱うツールです。マトリックス法を数値化して分かりやすくするときに使います。

 

 製造現場では日々、多くの課題や問題を抱えています。これらの課題や問題を解決、改善することが企業にとって重要なのです。そのためには積極的に問題に取り組もうとする自主自立的な人材と「QC7つ道具」が必要なのです。

 「QC7つ道具」は事実に基づいた客観的なデータを基に現在起きている問題を把握し、分析し、解決するための道具です。現場改善をするためには課題解決に前向きに取り組む従業員の協力も必要ですが、その効果をより発揮させるために「QC7つ道具」も活用しましょう。

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