概念の起源としての軍事戦略

 「strategy」(戦略)という言葉の語源は、ギリシャ語の軍事用語「strategia」、すなわち、将軍の術、軍隊への指揮能力である。記録のある最古の軍事戦略の理論書は、紀元前500年頃に中国の孫武およびその子孫 などによって書かれた「孫子の兵法」だと言われている。

一方、世界史の近代において、プロイセンの軍事学者であるカール・フォン・クラウゼヴィッツが著した『戦争論』(1832 年)では、軍事戦略の理論を体系化し、「戦術とは一戦闘中における戦闘力使用の学問であり、戦略とは戦争目的遂行のために数戦闘を使用する学問である」と、軍事の戦略と戦術を区別している。

上記の『戦争論』において、クラウゼヴィッツは、戦略を「戦争という目的に沿って戦闘を運用する方策のことである」とし、「戦略は作戦計画を立案し、行動の手順をその目標に結び付け、行動が目標を達成するように按配する」とその概念を解釈している。さらに、「これらすべての事柄は大部分前提なしには規定され得ないものであり、しかも、その前提はあらゆる場合に当てはまるものではないし、他の多くの詳細な規定はあらかじめ与えられるものではないから、戦略は実際に戦場に赴き、個々の事柄をその場で秩序立て、全体に対する不断の修正を施さねばならない。それ故、戦略は一瞬たりともその仕事から手を引くことができないのである」と指摘し、戦略が如何に戦闘などの諸戦争活動の実施にも直接関わり、戦場の動向によって設計・修正されなければならないかを示している。

戦略は単純な戦争の方針や計画のようなものだけではなく、「創発」の一面を持つものであることを示唆していると言える。特に、クラウゼヴィッツは、戦略の諸要素として、精神的、物理的、数字的、地理的、統計的要素に区分し、戦略の体系を述べている。このことから、経営戦略という概念を考える時も体系的に捉える必要があると考えられる。

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