コア・コンピタンス経営

 コアコンピタンス経営とは、むやみに多角化に走らず、事業ノウハウや製品開発力、技術力など、得意とする分野にヒト、モノ、カネなどの経営資源を集中して競争力を高める経営のことを指します。
 コアコンピタンス経営の代表例として、ソニーの小型化技術、米フェデラル・エクスプレスの物流管理システム、トヨタの生産管理方式などが挙げられます。

 

1991年を底とするアメリカの不景気から、それ以降120ヵ月10年も続く好景気にアメリカは波に乗りました。

1994年にゲイリー・ハメルと恩師のC.K.プラハラード(1941~2010)は、「コア・コンピタンス経営」を出版します。

過去のポジショニング派・ケイパビリティ派の戦略は、時代、時代によってあわなくなっていきます。

既存の事業基盤にこだわりながらも、そこからの成長戦略を唱えた「コア・コンピタンス」は、攻めの姿勢に転じていた経営者らに進むべき方向を与えたのです。

・企業が収益を生む源泉は、事業のポジショニングにも業務の効率性にもない

・その中心に位置する「コア・コンピタンス」が大切であり、その中でも競争力やニーズ対応力の素になっているものが「コア・コンピタンス」

これまでの経営戦略論には、こういった「収益につながる持続的で競合上優位なケイパビリティ=コア・コンピタンス」という概念が欠けていたからダメだったのだ、とハメルらは主張しました。

企業が意識した「コア・コンピタンス」。現在でも企業の存在価値を意味します。

コア・コンピタンスは、技術でもチャネルでも人材的なものでも構いません。

 

「リエンジニアリング」は、米国産業の1991年を底とする不景気とバブル崩壊前後の日本企業が直近で一番輝いていた時期に、事業縮小と人員整理の道具に使われた節もあります。

その後の120ヵ月、10年にも及ぶアメリカ史上最長の景気拡大の波に乗ったのは、後ろ向きの策に使われたリエンジアリング(またはリストラクチャリング)ではなく、拡大志向・成長志向の「コア・コンピタンス経営」の方でした。

既存の基盤事業にこだわりながらも、そこからの成長戦略を唱えた「コア・コンピタンス戦略」は、攻めの姿勢に転じていた人々に、どの方向に進むべきか の指針を与えた。

2000年前後のITバブル崩壊まで、好調を続けた米国経済では、大企業が積極的にM&Aを展開し、大きく企業規模を拡大させます。そのM&Aも、従来の多角化を目指すのか、それとも同業種の中でのシェア拡大を目指すのか、投資機会をどのように利用するのか、米国の大企業は投資先選定の基準を求めていた時機を丁度捉えることに成功したのです。

 

ポジショニング学派の大家である、M.ポーターとの論戦の中で、「企業にとって大事なものが『コア』という主張は全く持って循環論である」という批判も浴びました。しかし、ポジショニング学派が唱える「持続可能的な競争優位をもたらす要因」の一要素として、一般には、「コンピタンス」「コンピテンシー」という経営用語が用いられている。

 

 

自社のコア・コンピタンスを見極めることは自社の未来を見通すこと

その後、RBV(Resource-Based View:資源ベース戦略論)を唱えたバーニーによる経営資源が持続可能な競争優位の源泉となる4つの条件(のちにVRIOフレームワークとなる)を示したことから遡及して、コア・コンピタンスの構成要件も次の視点から評価・整理されるようになりました。

1.模倣可能性 (Imitability)

2.移動可能性 (Transferability)
3.代替可能性 (Substitutability)
4.希少性 (Scarcity)
5.耐久性 (Durability)

 

自社の中で、このような条件を有している要素を見つけ出して、それを有効活用できれば、市場で有利な立場になれる(競争に打ち勝つことができる)というのが、ケイパビリティ学派の主要なテーマとなりました。

 

業界分析が戦略の要などというのは神話に過ぎない。まずは自社と未来の競合相手をよく見比べて、自社のコア・コンピタンスを見極めよ。その上で、それが効きそうな、未来(5~10年先)の顧客・市場・サービスを見つけ出して自ら市場を開拓せよ

「ケイパビリティが先、ポジショニングは後」と言い切り、M.ポーターとの激しい論戦の火ぶたが切られたのでした。

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