社員はお金で動くか

 成果を上げた社員に対して報いたいという意味で、一時的に報奨金を渡すのはありうると思います。しかし、恒常的な仕組みとして、成果と給料を連動させると、別の問題が出てきます。

報奨金や歩合制度を導入すると、多くの社員はお金になる仕事しかしなくなるという弊害です。逆に言えば、お金にならないことはしない という選択をし始めます。報奨金の対象とならない商品は売らなくなります。お客様の喜びよりも、自分自身の稼ぎを優先する人が出ます。クレーム処理などの評価の対象とならない後ろ向きの仕事は敬遠されるようになります。その結果、お客様の満足度はどんどん低下していきます。

お客様に満足していただくための条件は、必ずしも数値化できるものとは限りません。笑顔や接客の態度、コミュニケーションの取り方、行き届いた掃除など、様々な要素がからみあって満足度が決まってきます。されは相手に奉仕したいという気持ちがないとできません。しかし、歩合制を入れると、お客様のためにではなく、自分のたるに働くことを会社が奨励することになってしまいます。

また、ノルマや歩合制を導入すると、会社と社員の関係や社員とお客様のとの関係が「お金だけのつながり」に変質しやすい という弊害もあります。もっと条件のよい会社があれば、腕利きのセールスマンほど ほかの会社に移ってしまいます。場合によっては、集団で移動することもあります。

お客様と接していても、「買ってくれるかどうか」「いくらお金を持っているか」などということばかり考えるようになります。そこには「奉仕」とか「サービス」とか「ご満足」といった考えはありません。もちろん、一部の腕利きセールスマンのなかには、歩合制であっても、お客様の満足を追求する人は少なからずいることは確かです。しかし、大半の平凡な人は、そういう境地に至ることはなく、単純にお金のために行動するようになります。そして、それが「社風」になります。

金銭的な報酬によってお客様の満足度を高めることは困難です。従業員がお客様の満足を高めるような行動を取ってもらうためには、まず経営者自身が率先垂範で実践していることを前提に、顧客第一主義を経営理念掲げ、繰り返し社員に訴え、組織風土になるまで浸透させるしかありません。

また、厳しいノルマは、いわゆる「自爆営業」の温床になります。自爆営業とは、締め切り日までに契約が取れない場合に、受注ゼロで終わらないように、自分で商品を買うことです。販売不振だからといって、必要もないのに自社の車を2台も3台も買ったら大変です、お客様に喜んでいただくという本質から外れていますし、誰も幸福にしないやり方です。自爆営業は「責任感の現れ」と肯定的に解釈することもできるのですが、セールスマンのモチベーションを著しく下げることになります。

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