忍耐の時代の経営戦略

 これからは「何をやっても成功する」という時代ではない。企業レベルでは、少しでも利益や売上を上げて生き残ることを考え、社員レベルでは、「企業内企業家」として利益部門を作り上げることを考え、それぞれが小さな成果を上げていくことが求められる。

 だが、一つひとつの成果は小さくとも、それを積み重ねていけば確実に大きなものになっていくのです。

参考

具体的には

1 わが社の現状分析から必要な基礎固めを行う

市場の地位はどうか

 まず市場における自社の地位を知るところから始めます。いったい自社の市場シェアはどれくらいか を把握することです。

 売上が伸びているからと言って安心できません。他社が自社以上に売り上げを伸ばしていれば、相対的に占有率は下がっていることになり、限界生産者に近づきます。また、業界全体の伸び率よりも、自社の売上の伸び率が低ければ、同様に占有率が下がっていることになります。

売上の傾向(年計)はどうか

 売上は絶対額ではなく、傾向が大切です。そのために「年計」という見方をします。年計とは、現在を起点として、過去12ヵ月分の売上累計を見ていく方法です。

 これによって、

 ・長期的な変動を見れる

 ・景気の変動を見れる

という利点があります。

 月々の売上推移を見ている会社は多いと思いますが、これだと季節変動やその時々の運などを考慮することが出来ません。そこで年計が役に立ちます。

 年計は、総売上、商品別、顧客別に作成し、グラフ化して傾向が見れるようにします。

生産性はどうか

 生産性は、その会社が”儲かっているかどうか”を示す数値です。

 生産性は、売上総利益/総経費

で計算できます。いくら売上があったとしても、粗利(売上総利益)が低ければ、実は生産性が低い、という会社もたくさんあります。

 生産性を高めるには、分母を小さくするか、分子を大きくするかという二通りしかありません。一倉先生の考えでは、分子を大きくすることが第一です。分母を小さくするのは、内部管理の領域であり、先生が毛嫌いする領域でもある。

商品の収益性と将来性はどうか

 いうまでもなく、会社の利益は商品によって生み出されます。したがって、どのような商品構成にするかが会社の将来を決めると言っても良いでしょう。そこで、一倉先生は、以下のように6つに商品分類をすることを勧めています。

・昨日の商品(斜陽商品)

 過去に売れていたが、徐々に需要が減っている商品

 成行に任せて収束させる。

・今日の商品(安定商品)

 今最も収益を生み出している商品

 そのうち”昨日の商品”になるので、投入資源を減らしていく。

・明日の商品(成長商品)

 まだあまり売れていないが、将来性がある商品

 資源投入を増やし、将来の収益増加を目指す。

・不必要な特殊品

 ごく限られた用途や顧客にしか売れない商品

 将来性が無いので、切り捨てていく。

・経営者の我の申し子

 社長の肝いりで作ったが、将来爆発的に売れる見込みがない商品

 ひとりよがりの商品である可能性が高いので切り捨てる。

・シンデレラ

 収益性と将来性が高いが、社内の日の目を浴びていない商品

 資源投入を増やし、育てていく。

 大切なのは、これらのうち、収益性が高くて、将来性のある商品に力を入れることです。「明日の商品」「シンデレラ」がそれにあたります。他の商品は切り捨てるか、資源投入を減らしていきます。ちなみに、先生によると、多くの社長は「捨て去る」が出来ないと言います。

 

得意先はどうか

 すべてのお客様は同じではなく、良い得意先から悪い得意先まで存在します。手間はかかるけど、全然儲からない顧客を相手にし、本来、注力すべき顧客に資源を注げていないということもあるのです。

 したがって、得意先についても、

 ・どのような業界か?

 ・占有率はどれくらいか?

 ・収益性と将来性はどうか?

ということを考慮しなくてはいけません。

95%の原理(パレートの法則)

 得意先の分析をするために、先生の提唱する95%の原理を活用します。これは、得意先別の売上を分析し、下位5%にリソースを割かないようにするための方法です。いわゆるABC分析(パレート分析)というものを行います。

 先生の経験によれば、得意先の半数で売上の95%を占めていて、あとの半数は残りの5%にしか貢献していないとのことです。5%にしか貢献していない得意先に社内のリソースを割いているのは何とももったいない という。したがって、下位5%を切り捨てて、効率の良い活動に投入します。

 この原理は、得意先別の分析だけではなく、商品別の分析にも同じように活用できます。

2 商品と市場を限定して、この中で占有率を高めていく

 分析が出来たら、商品と市場を限定して、この中で占有率を高めていきます。これを「重点指向」と呼んでいます。

商品を絞るのではなく品種を絞る

 商品を限定すると言っても、一品勝負にしろ というわけではありません。一品勝負ではリスクが大きすぎます。そうではなく、商品の品種を絞り、その中で品目を多様化することです。

 たとえば、同書の中では、サンドイッチに特化したお店が紹介されています。このお店は、一つの種類のサンドイッチを販売しているわけではありません。これだと味に飽きられたり、素材の仕入れが出来なくなったらもう終わりです。そうではなく、様々な種類のサンドイッチを展開する、というのが正しい絞り込みです。これによって、”サンドイッチを買うならあの店”というブランドが築かれるわけです。

3 新しい商品と市場を開発して事業の複合を行い、さらに総合化を行う

 重点指向で占有率を高め、利益が上がる会社になったら、今度は多角化していきます。これによって、会社全体の安定性やさらなる成長が見込めるようになります。

 具体的には、

 ・業界の組み合わせを増やす

 ・得意先の組み合わせを増やす

 ・商品の組み合わせを増やす

という感じで多角化していきます。

 ここで大切なのは、まったく関係のない業界や商品にいきなり参入しない ということです。すなわち、「内部的には専門技術を深化させ、外部的には市場を多角化する」ということです。

自社事業の定義づけを行う

 このフェーズで大切なことは、自社の事業の定義づけを行う ということだと思います。多角化を進める際、注意したいのは、”なんでも屋”になってしまい、どれも中途半端になることです。そこで、改めて、自社はいったい何屋なのか? を定義することで、事業の一本筋が通り、”なんでも屋”にならずに済みます。自社は顧客にどんな価値を提供しているのか? 何を売っているのか? を定義しなおすことです。

 これに関して参考になるのは任天堂です。任天堂は、カードゲームの開発から始まり、ファミリーコンピュータ(ファミコン)で世界的に大ブレイク、その後、様々な形態のゲーム機本体とゲームソフトをヒットさせ続けています。任天堂は、自社の事業を”カード屋さん”ではなく、”ホームエンターテインメント”と定義し、時代の環境に合わせて自社が開発するものを変化させ続けているのです。

4 事業全体を見直して、スクラップアンドビルドを行うことにより、市場に確固たる地位を築いていく

 順調に成長してきた会社であっても、年商30億円~50億円くらいで踊り場になることが多いという。その原因は、行っている事業の制約条件があるからです。どんなに頑張っても、工夫をしても、これ以上は成長できない というわけです。一方、社長としては、事業が持続成長するようにしていかなければいけません。そこで、事業全体を見直し、スクラップアンドビルドを常に行っていかなければいけない ということになります。

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