就業規則(6)

第3章 服務規律

 就業規則に労働者が従うべき服務規律を定めることが多いです。 これは、企業が、統一的な事業主体として、多数の労働者を組織し、施設や設備を用いて活動を行うものであることから、労働者に対して、企業組織の構成員として活動する上でのルールを定めることが必要となるためです。

 判例においては、服務規律を含めた企業秩序という概念を認め、「企業秩序は、企業の存立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠なもの」であり、「労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによって、企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負う」(富士重工業事件 最高裁第3小(昭和52・12・13))との判断を示しております。

 

○服務規律の内容

 使用者が定める服務規律の内容は、労働の遂行に関する規律や、企業施設の管理に関する規律、企業外での行動に関する規律など、多岐にわたります。

 ここで、労使間において、このような服務規律に労働者が従わなければならないかどうかをめぐって、多様な紛争が見られ、裁判例においても、服務規律の内容によって、個別に判断を示しています。

 服務規律とは、会社を適切に運営し秩序を維持する、従業員の行動規範となるべきもので、従業員が日常守らなければならない一般的な心得や遵守すべき事項を定めたものです。

 この服務規律によって維持される会社の秩序は、懲戒処分によってその実効性が担保されます。そのため、服務規律は会社に合わせてより具体的により詳細に規定する必要があります。

 服務規律の内容としては、労働者の服務に関する基本的原則と、具体的な遵守事項に分けられます。  就業規則には、まず基本的な心構えを記載します。  労働者の服務に関する基本的原則は、精神的・訓示的な定めであると解されるものが多いです。  例えば次のような事項があります。  (1) 規則を遵守すること  (2) 職責を重んじること  (3) 忠実義務     など

 そして、労働者の具体的な遵守事項は、基本的原則に比べてより具体的な事項についての制約を定めたもので、次のようなものが挙げられます。

1.労務提供に関係する規律

 労務提供に関係する規律とは、企業の規則・通達や上司の命令・指示を尊守する事項、職場規律を維持すべき事項などに関係する規律です。  ・遅刻・欠勤  ・離席・外出  ・会社への入退社  ・職務専念義務  ・職場の命令関係  ・協力関係  ・安全衛生に関する事項  ・職務上の金品授受の禁止 などです。

2.企業財産の管理保全のための規律

 労務提供に準ずる義務として、施設、物品などの物的保存を図る事項を加えることができます。

 ・職務上の金品授受の禁止  ・備品持ち出し禁止  ・会社施設の利用に関すること  ・集会や宗教活動の制限  などです。

3.従業員の地位身分による規律

 従業員の身分を取得したことによる尊守義務があります。従業員である以上、尊守しなければならない義務です。  

・異動の届出 (結婚や離婚・出産など)    

・会社の名誉、信用を守る義務  ・公職(政治家)立候補や就任の取り扱い  

秘密保持義務  

二重就業の禁止  

退職後の競業避止義務 などがあります。

4.その他    

 服務規律の条項に追加または別規程を作成して運用した方が良い条項を下記に記します。  

セクハラパワハラに関する条項  

・個人情報保護法による条項    など

 労働者は雇用契約上「企業秩序遵守義務」を負っています。私生活上の行為であっても、企業の名誉や信用を損なうような行為であれば規制の対象となりえます。

 就業規則には、職場外での職務に関係のない私的な行為であっても、会社の名誉や信用を害すると思われるような事由も規定しておくべきです。

 会社側としては、退職後も守秘義務があることを就業規則に定めます

  退職時に秘密保持誓約書を取るのは困難なケースが多いので、「誓約書」は入社時にとるとよいでしょう。その誓約書の中では損害賠償等についても定めておきます。

 また、特に必要のある者については、退職後の守秘義務契約競業避止契約を退職時に結ぶのがよいでしょう。そして、これらの誓約に違反したときは、損害賠償請求をすることがある旨を付記しておくとよいでしょう。

 

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