労働時間の起算点・終了点
労働時間にも労働基準法上の労働時間と就業規則上の労働時間があるように、労働時間の起算点・終了点にも「労働基準法上の起算点・終了点」と「就業規則上の起算点・終了点」があります。
労働基準法上の起算点は、労務提供のため使用者の指揮命令下に入ったと認められる時点から始まり、それから離脱する時点で終了します。
一方、就業規則上では、会社と社員が始業・終業時刻として労働契約上定めた労務提供義務の開始および終了時点をいいます。たとえば、タイムカードを打刻してから、始業時刻になり実際の業務を開始するまでの間を自由に過ごすことができるとした場合、次の2通りが考えられます。
(1) 就業規則に「始業時刻とはタイムレコーダーを打刻した時とする」とした場合、業務開始という実際の指揮命令下にいなくても、打刻時刻が労働時間の起算点となります。
(2) 就業規則に「始業時刻10分前までにタイムカードを打刻すること」と両者を区別した場合は、打刻時刻でなく、始業時刻が労働時間の起算点となります。
一般的に、労働時間とは「使用者の指揮命令下にあって労働力を提供している時間」と考えられています。簡単に言えば、働いている時間に対して給料を支払うということです。つまり「ノーワーク、ノーペイ」ということです。
タイムカードの退社時刻と仕事の終了時刻に乖離が見られる場合には、タイムカードの退社時刻までを実労働時間とみなして残業手当を支払うのではなく、仕事の終了時刻(あるいは実労働時間)を別途申告させて把握する方法をとっても差し支えありません。
タイムカードは労働時間把握の一つの方法にすぎず、絶対的なものではないからです。いずれの方法とするかは、業種や勤務の特性などを勘案の上決定してください。タイムレコーダーの位置から終業場所まで距離がある等、タイムレコーダーの打刻時刻と実作業開始時刻にギャップが生じることがあります。この場合には、実態に応じたルール(例えば、10分間のギャップが生じるのであれば、タイムレコーダーは実作業開始時刻の10分前に打刻すること)を労使で協議して定めておくのが望ましいでしょう。
なお、退社時刻から全員一律に何分かを差し引いて実働時間とみなして処理することは、常に労働者の不利になり、法律に違反するので留意してください。
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