交通革命は「未来への投資」である

交通革命は産業の創出とセットで

 全国にリニアを通し、都市鉄道の輸送量を4倍にする。バス感覚で飛行機に乗り、海外への出張はスペースプレーンで日帰り。さらに高速道路の出入口を増設し、一般道も主要交差点を立体交差にして車の流れをスムーズにする。新たな高速艇の開発で海上輸送も時間短縮を図る。「交通革命」が社会に与えるインパクトは計り知れない。

 だが、これらの交通インフラを整えても、利用者の少ない不良債権になっては元も子もない。

 交通革命とセットで、地域に産業を興し、人や物が集まる仕組み、移動する目的・理由をつくらなければいけない。産業創出には、国や都道府県、市区町村が、企業誘致やベンチャー企業の育成などに積極的に取り組み、法人税を10年間ゼロにするなどの大胆な政策を打ち出すことも必要でしょう。

 一つの産業が興れば、雇用が生まれ、その人たちが納める所得税や住民税も増える。製品を運ぶ物流などの関連産業も発達すれば、さらなる税収が見込め、働き口ができれば都市部への人材流出も止まり、地方の人口も増えていく。

 交通革命によって地域に付加価値が生まれれば、使ったお金は経費ではなく投資となり、国や自治体にとっては財産が増えたことを意味する。要は、そうした構想を実現できる経営力が政治家や役所に求められるということです。

 

3分の1の時間短縮で年収も税収もGDPも3倍増

 交通革命の実現には相応の資金が必要だが、その算段の心配には及ばない。

 景気が低迷しているとはいえ、世界中には多くのお金があまっていて、投資家たちが魅力的な投資先を探している。国内でも1400兆円の個人金融資産が眠っているが、政府が「全国リニア網の整備」「スペースプレーンの開発」を宣言し、国家再開発債を発行すれば、国内外から膨大な資金が集まるはずです。

 また、他にもさまざまな規制緩和や制度改革が必要になるでしょうが、何より大事なのは政治家の決断です。

 首相就任直前に発表した『日本列島改造論』で、田中角栄氏は自身の構想を説明した。

 「9千キロメートル以上にわたる全国新幹線鉄道網が実現すれば、日本列島の拠点都市はそれぞれが1時間の圏内にはいり、拠点都市同士が事実上、一体化する」

 角栄氏は日本中を「一都市」にするビジョンを持ち、新潟や富山を「東京都内」にし、島根や高知を「大阪市内」にすると語っていた。また、以下のような予測もしていた。

 「人間の1日の行動半径の拡大に比例して国民総生産と国民所得は増大する」

 これはある程度、実感できる。新幹線開通前の1956年、東京~大阪間の移動は7時間半かかっていたが、1992年には3分の1の2時間半に縮まった。その36年間で日本の1人あたりの実質GDP(国内総生産)は3倍に増えた。つまり、国民の所得が3倍になったのである。

 田中角栄氏が当時示したリニアも含めた新幹線構想は、まだ3割しか実現していない。超低金利で金余りの今、5年から10年ぐらいで全国に一気に開通させる努力をすれば、GDP3倍増を再現できるのではないでしょうか。

 例えば、新大阪から松江までは岡山経由で約3時間半かかる。それが「山陰新幹線」ができると約1時間半。移動時間が半分以下になれば、島根や鳥取の人たちの所得が2倍以上になる可能性があることを意味する。

 

 18世紀のイギリスで興った産業革命では、蒸気機関の発明によって工場の大量生産システムが生まれ、その後世界に広がり、世界中の富が爆発的に拡大した。

 同じように、21世紀の日本で「交通革命」を興せば、劇的に時間が短縮され、未来に大きな価値を生んでいく。世の中のあらゆる価値は「時間」という資源によって生み出されるが、この貴重な資源を何倍にも増やしてくれるのが「交通革命」なのです。

 企業誘致を進めるために地方自治体がなすべきは、企業に対する税の優遇です。法人税を減免するなどし、ベンチャー企業を育てる土壌をしっかり作ることが重要でしょう。

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