科学とひらめきの深い関係

 「科学的」というと、どのようなイメージを持つでしょうか。論理的、間違いのないもの、あるいは、そもそも難しくてイヤ など、様々な印象があるかもしれません。

 しかし、科学史に残るような発見には、こうした固いイメージとは遠い、「ひらめき」が大きく関係していることがよくあります。発明王エジソンは、「天才は1%のひらめきと99%の汗」という言葉を残していますが、科学者たちは並外れた集中力で研究に没頭する中で「ひらめき」を得てきました。

ケクレ ベンゼン環を発見した化学者

 ドイツの有機化学者で、「ベンゼン環」の発見で有名なアウグスト・ケクレ(1829~1896年)は、いまや化学の基礎となっているこの化学構造式を、夢から得たインスピレーションを元に研究する中で発見しました。

 ベンゼンは、原油に含まれる化合物の一つで、甘い香りのする引火性の高い液体です。ケクレは、炭素(C)6個と水素(H)6個でできているこの化合物が、亀の甲羅のような構造を持っていることを発見しました。この構造のことを「ベンゼン環」と言います。

 この瞬間を、ケクレはこのように書き残しています。

 「私は座って教科書に書き込みをしていましたが、仕事ははかどりませんでした。別のことに気をとられていたのです。椅子を暖炉のほうに向け、少しうとうとしました。するとまた、私の目の前で原子たちの踊りが始まったのです。ときどき長い列が互いにぴったり寄り添い、まるでヘビのように絡み合ったりもつれ合ったりしていました。でもどうしたんだろう、見てください! 一匹のヘビが自分の尻尾をくわえて、まるでからかうように私の目の前をぐるぐる回っているではありませんか! まるで稲妻が走ったように、私は目が覚めました」

 ケクレは、夢の中で、原子が生き物のように動き回っているのをよく見ていました。この夢をもとに、ベンゼンが円環状の分子構造を持っているという仮説を立て、それまでは謎だった現象を説明できたのです。

 

レーヴィ 神経伝達物質を発見した生物学者

 オーストリアの生物学者で、神経刺激が電気的なもののほかにも物質を介して化学的に伝達されることを発見したオットー・レーヴィ(1873~1961年)も、寝ている間に天啓を受けています。

 ある晩、レーヴィは、小説を読みながら寝入ってしまいます。その最中、何か天啓が心の中に湧き出てくるのを感じて目を覚まし、そのエッセンスを書き留めました。ところが、翌朝目覚めると、そのアイデアは思い出すことができず、書き留めたメモも理解不能なものでした。その日は研究室で前の晩のメモを理解しようとしますが、どうしてもわからず落胆して家に帰り床に就きます。ところが、しばらくして目が覚め、そのアイデアが彼の心の中でもう一度光り輝き、今度はもっと注意深く書き留めました。この翌日、レーヴィは、カエルの心臓を使った実験を行い、神経伝達物質の存在を発見したのです。

 

メンデレーエフ 元素の周期表を作成した化学者

 理科の教科書に載っている元素の周期表も、ロシアの化学者ドミトリ・メンデレーエフ(1834~1907年)が夢の中で見た一枚の表が元になっています。

 メンデレーエフは、元素はある法則に基づいて分類できるはずだと考えていました。彼は、その法則を見つけようと、三日三晩ほとんど不眠不休で元素の名前を書いたカードを机の上で何度も繰り返し並べ替え、考え続けました。しかし、ぼんやりとした概念をはっきりさせられないまま、とうとう疲れ果てて机で眠ってしまいます。この時のことを、メンデレーエフはこんなふうに語っています。「私は夢の中で一枚の表を見ました。そこにはすべての元素が要求される場所に収まっていました。目が覚めると、私はすぐにそれを紙に書いたのです」

 これをもとに、元素の周期表ができました。メンデレーエフは、当時作成した周期表で空欄になっているところは、まだ見つかっていない元素で埋められるはずだと、新しい元素の発見を予言しました。後に そのとおり発見されたのです。

 

アインシュタイン 相対性理論を発表した物理学者

 20世紀最大の物理学者とも呼ばれ、相対性理論や光の粒子性と波動性など、数々の科学史を変える発見をしたドイツ生まれの理論物理学者アルベルト・アインシュタイン(1879~1955年)も、夢からインスピレーションを得ています。

 ギムナジウム(高校に相当)に通っていた ある晴れた日のこと。アインシュタインは、学校の裏の丘で空を眺めながら寝転んでいました。いつのまにか眠り込んでしまい、そのとき、自分が光の速さで光を追いかけている夢を見たのです。

 彼は、この後、もしも光の速さで動いていたら物の運動はどう見えるかという思考実験を始めます。これをずっと考え続け、大学を卒業し、スイスの特許局に勤めていたとき、相対性理論として発表したのです。

 相対性理論は、「星の重力によって光が曲げられる」ことや重力波の存在を予言しており、次々と実証されてきています。

 

 神様が、研究に集中し努力している者に一瞬だけ見せてくれる未来の科学。天才とは、それをキャッチし、世の中に表していった人たちのことなのかもしれません。

   (参考書籍)『ヘウレーカ! ひらめきの瞬間』(ウォルター・グラットザー著/化学同人)

科学と霊界へ

「仏法真理」へ戻る