マーケティング・リサーチ

 消費者に選択される製品・サービスを開発するためには、どのような点に留意すればよいでしょうか。「需要がある」「必要とされる可能性が高い」「将来的なビジョンが盛り込まれている」 挙げてみればキリがないでしょう。そうしたことを考えるのがマーケティングというものです。

 マーケティング・リサーチ を大別すると、おおむね次の2つに分類できます。

  ・探究型リサーチ

  ・検証型リサーチ

 「探究型リサーチ」とは、製品やサービスを開発する前に行うもの(需要の探求)であり、「検証型リサーチ」とは、構築した仮説が正しいかを確かめる(効果の検証)と認識できます。

 いずれも、マーケティング・リサーチには変わりありませんが、その役割は大きく異なります。

 企業活動のなかでより良い製品やサービスを生み出す過程を考えたときに、代表的なものに「PDCAサイクル」があります。

 Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)という一連の流れで品質の向上を目指すものです。Planの段階では探究型リサーチを行い、CheckやActionの段階では検証型リサーチを行います。そうすることで、企業活動の中において自然と優れた製品やサービスを開発することができ、業績アップへとつながります。

 必ずしもマーケティング・リサーチが成果につながるとは限りませんが、直感や経験を頼りに事業活動を行うよりかは、反省も改善もし易いのが特徴です。

 成功も失敗もそのままにせず、次の機会に生かすという意味において、マーケティング・リサーチは重要と言えるでしょう。

 創業者のワンマン経営によって企業が成長することもありますが、規模が大きくなるにつれて、いずれは限界が訪れます。

 トップダウン型の経営から脱却するには、マーケティング・リサーチなどの手法を取り入れることによって、意思決定の方法そのものを変えなくてはなりません。状況によって変化する姿勢が大切です。一方、検証型リサーチとは、探究型リサーチから構築した仮説が正しいかどうかを検証するためのリサーチです。

 「売れたか」「売れなかったか」だけを調査するのではなく、その原因を探ることによって、次回の商品開発に生かしていきます。

 定期的に調査を行うことで、トレンドの変化やブランドの認知度を調べることにもつながります。

 

マーケティング・リサーチの意義

 それらはどのようにして計測すればよいのでしょうか。もっとも単純に考えてみると、顧客に直接聞いてみるのが一番のように思えます。その商品(あるいは類似品)に関する認知や知識がない人、これから購入を検討している人、または既に購入した人など、ヒアリングする対象者はさまざまです。そうした人から聞いたことをまとめれば、売れる商品というものがおぼろげながら見えてくるでしょう。

 そのような活動を、総称して「マーケティング・リサーチ」と呼びます。

 あくまでも、ゴールが「売れる製品やサービスの開発」という点にあることが、通常のリサーチとは異なります。

 ゴールを明確に設定しておかなければ、単なる調査にとどまってしまいます。

 営利を求めるのが企業である以上、開発は「売れるもの」という前提がなければなりません。あらゆる分野でリサーチが必要となります。

 

マーケティング・リサーチに必要な情報

 マーケティング・リサーチの基本は、必要とされる情報の収集です。そのときに考えなければならないことは、マーケティング・リサーチの目的によって、必要となる情報が異なるということでしょう。

 あらかじめ目的を明確にしておかなければ、いつまで経っても意思決定に活用できるクリティカルなデータは集まらないのです。

 マーケティングの原点が「消費者の需要に対応すること」であるのなら、マーケティング・リサーチの本質は「顧客を獲得するために必要なありとあらゆる情報の収集」となります。

 ただ、PDCAサイクルのどの段階で使う情報かによって、集めるべき情報も異なるということを忘れてはなりません。 

 マーケティング・リサーチにおける情報収集は、集めること自体が目的なのではなく、活用できなければ意味が無いのです。

 具体的に、それぞれのマーケティング・プロセスにおいて、どのような情報が必要となるのでしょうか。

 マーケティングには次のような過程があります。

 ・市場機会の発見

 ・セグメンテーション、ターゲティング

 ・ポジショニング

 ・製品戦略

 ・価格戦略

 ・流通戦略

 ・コミュニケーション戦略

 マーケティング活動の初期段階では、「市場機会の発見」が目的となります。市場にどのような機会があるのかを探ることによって、より消費者ニーズに合った製品やサービスが開発できるのです。企業活動を効率的に進めるためには欠かせません。このときに収集するべき情報は、消費者のニーズ、不満、価値観、ライフスタイル、購買動機、使用実態、満足度、継続購買動向や企業に対するイメージ、ブランド認知、市場規模、シェア、競合企業、製品となります。

 また、対象顧客を見定めるために行う「セグメンテーション」や「ターゲティング」時においては、消費者を正しく分類しなければなりません。そのために必要な情報としては、ユーザー・プロフィールやセグメントの特性などがあります。

 これらを元に、ターゲットとなるペルソナを設定します。

 自社の立ち位置を決める「ポジショニング」においては、「企業イメージ」や「競合他社のポジショニング」、「製品戦略」においては、「製品コンセプト」や「デザイン」「品質」についてなど、「価格戦略」においては、「価格の妥当性」や「競合の価格」、「流通戦略」においては、「チェネルのニーズ」や「商圏」、「コミュニケーション戦略」においては、「広告コンセプト」「市場浸透度」「キャンペーンの効果」などが必要となります。

 ただし、これらはあくまでも一般的な指標にすぎません。企業のフェーズによっては、その他の要素をリサーチする必要性が発生することもあるでしょう。

 流動性の高い顧客ニーズをできるだけ正確に把握するためには、マニュアル化された手法をくり返すのではなく、より柔軟な姿勢をもって対応することが求められます。

 マーケティング・リサーチは、企業活動を促進させるために重要な役割を担っています。しかし、ただ闇雲にデータを収集しても意味はありません。目的に沿った収集と、目的外で収集されたデータを上手に活用することによって、使える資源を最大限に有効利用できるのです。調査の方法についても工夫が必要です。

 

データの種類

 データの種類を把握しておくことによって、データに偏りがないかどうかもチェックできますし、それぞれのフェーズによって、どのような情報を収集するべきかがわかるようになります。

1次データと2次データ

 あらかじめ何らかの目的があり、そのために収集するデータのことを「1次データ」と言います。

 企業が顧客のニーズを探るために、どのような趣味嗜好があるのかを調査して収集したデータの場合には、こちらの1次データとなります。

 場合によっては、外部機関に委託してリサーチを依頼することもあるでしょう。

 一方、政府系の機関がリサーチによって収集したデータや、外部機関が公表している統計情報、あるいは事業活動の中で他の目的として社内に蓄積されたデータベース等は「2次データ」と言います。

 スーパーやコンビニ等が行っているPOSシステムのデータを新規事業の開発に使うなどの場合は、2次データの利用と言えます。

 1次データの場合には、目的に応じて情報収集することもあって、より的確なデータが集められるメリットがある反面、資金や労力を投じなければなりません。そのため、2次データもあわせて活用するなどして、バランスよくマーケティング・リサーチを行うことが大切です。

 

定量データと定性データ

 日々の販売履歴を蓄積したPOSデータは、数値として把握できるという特徴があります。

 何人の顧客が訪れて、男女比はどのくらいで、年齢層はどうなっているか。そのように、数値化できるデータのことを「定量データ」と言います。グラフ化などによって目視でも把握しやすくなります。

 「こんな商品があったらいいな」「営業時間がもう少し長ければ」「店内のここを改善して欲しい」など、数値化できないデータを「定性データ」と言います。グループインタビューや個別のアンケートを行うなど、収集するのに手間はかかりますが、定量データでは把握できないニーズも集めることが可能です。

 

マーケティング・リサーチのプロセス

 たとえ、方法論を理解していても、それを実際に行う過程を把握しておかなければ、チーム全体でマーケティング・リサーチを前に進めることは難しい。

 マーケティング・リサーチは、企業活動の一環として行うものです。そこには、商品やサービスを販売するなど、利益に結びつくゴールがあるはずですし、マーケティングという活動の目的そのものが企業の存続や成長、顧客の創造にあることも事実です。だからこそ、目的設定からスタートする確固たるプロセスが存在しているのです。

 具体的なプロセスは次のとおりです。

 ・リサーチ目的の設定

 ・仮説の設定

 ・リサーチの設計と実施

 ・データ分析と仮説の検証

 「リサーチ目的の設定」とは、そのリサーチによってどのような結果を得たいのか、という目的を明らかにすることです。

 闇雲に調査をするだけでは、公的機関が行う統計調査のような結果しか得られません。必ずしも商品開発やマーケティングに生かせるものとは限らないでしょう。無駄が多くなってしまうのです。そうならないためには、「何のためにリサーチをするのか?」ということを、あらかじめ煮詰めておくことです。もちろん、「誰が」「どのように」「いつまでに」「予算規模は」などについても検討しておくことが大切です。

 マーケティング・リサーチの目的を設定しておかないと、リサーチ活動にも一貫性を保てないでしょう。

 次に「仮説の設定」です。

 マーケティング・リサーチの目的を設定することは大切ですが、目的だけではリサーチをスタートさせることはできません。マーケティング・リサーチは企業活動の一環だからです。もし、そこに無駄があるのなら、あらかじめ排除しなければなりません。仮説を構築せずにマーケティング・リサーチを行うとどうなるでしょうか。不必要なデータまで数多く収集しなければならなくなるはずです。

 目的を決めて、さらに仮説によって「アタリ」をつけておくことで、リサーチするべき対象が絞られ、より無駄がなくなるのです。

 コスト感覚の乏しいリサーチは、マーケティング・リサーチではご法度です。

 仮説を構築したら、次は「リサーチの設計と実施」です。

 当初の目的で決めたような「誰に」「何を」「どのような方法で」「どのくらい」などを、より具体的に煮詰めていきます。

 実際には次のような項目を定めていきます。

 ・サンプルの設定

 ・質問の設計

 ・リサーチ手法の選択

 リサーチ対象者を決めて、どのような質問をするのかを考案し、そして具体的な手法にまで落としこみます。そのような過程を経てはじめて、マーケティング・リサーチを実践できるようになります。

 目的や仮説をかたちにすることで、リサーチのやり方も共有できるようになります。

 最後は「データ分析と仮説の検証」です。データを収集しただけではマーケティング・リサーチは終わりません。

 仮説とすり合わせてどの程度正しいか、あるいは、異なっているのなら何が原因として考えられるのか、そうしたことを検証しながらマーケティング・リサーチのレポートをまとめていきます。

 マーケティング・リサーチで得られたものは、上層部や各部署にプレゼンすることが多いでしょう。そうした場合には、内容の整合性はもちろんのこと、正しく伝える技術についても身につけておかなければなりません。誰が説明しても問題ないように、よりわかりやすくまとめるようにしましょう。

 

リサーチ手法と分析手法

リサーチ手法

 「リサーチ設計と実施」のプロセスにおいて行うべきなのは、どのようにリサーチを行うのかを具体的に決め、それらを粛々と実行することです。

 ポイントとなるのは次の3つの項目です。

 ・サンプルの設定

 ・質問の設計

 ・リサーチ手法の選択

 無作為にアンケートやインタビューを行う調査もありますが、マーケティング・リサーチにおいては、目的が明確に定められているので、「サンプルの設定」に関してもより適切な対象を選ばなければなりません。この過程を「サンプリング」と言います。

 サンプリングが正しく、そして、より具体的に行われれば、それだけリサーチの精度も高まります。

 また、対象者に対してもっとも最適なアプローチ手法を考案できるかどうかも、サンプルの設定が正しく行われているかによって変わってきます。

 30代の男性サラリーマンにインタビューしたいのなら、新橋や丸の内あたりで街頭調査をする必要がありますし、女子高生の意見が聞きたければ、学校関係者にアポイントをとる必要があるでしょう。

 さらに、調査対象の数に関しても注意しなければなりません。

 どのくらいのサンプル数を確保すればデータの信憑性が高まるのか、コストとともに把握することが大切です。

 無限に調査を続けてしまえば、目標を達成するどころか、事業活動として問題があると認識されてしまいます。最適なサンプル数を割り出しましょう。

 「設計」ですが、こちらは内容だけにとどまらず、形式についても考えておきましょう。「Yes or No」の2択が最適な場合もあれば、事細かく質問できるほうが優れているという場合もあるでしょう。

 前者はとにかく数を稼ぎたい場合、後者は顧客の幅広いニーズを収集したい場合に向いています。

 いずれにしても、顧客から回答を回収できる見込みがなければなりません。

 いくら詳細な意見が欲しいからと言っても、対象者が忙しい人であれば、ほとんど回答を得られない可能性もあります。

 サンプルの属性を考慮しながら、現実的な部分にも配慮しつつ質問を設計していきましょう。

 「リサーチ手法の選択」です。

 リサーチ手法には、おおむね次のようなものがあります。 

定量調査

 ・訪問面接
 ・留置調査 : 調査員が調査票を届け、後日回収する
 ・郵送留置 : 郵送で調査票を配布する
 ・ホームユーステスト : 実際に使用現場で使ってもらう
 ・セントラルロケーションテスト : 通りすがりの人に商品を使ってもらう
 ・郵送調査
 ・電話調査
 ・インターネット調査

定性調査

 ・キーマンインタビュー
 ・デプスインタビュー : 個人の深層心理や価値観にまで及ぶ分析
 ・ペアインタビュー : 意思決定がペアで行われる商品が対象
 ・グループインタビュー
 ・行動観察調査 : カメラなどを使い、対象者の行動を観察する

 こうすることで、リサーチ会社に調査を依頼する際にも、選択肢を広げて提案することが可能となります。社内でリサーチを行う場合でも同様です。

 

分析手法

 「分析手法」には次のようなものがあります。

・相関分析 : 変数間の相関関係を調べる手法

・因子分析 : それぞれの変数における共通の特性を探る手法

・クラスター分析 : 類似性の高いものを集めて分類する手法

・コレスポンデンス分析 : 変数間の類似性や関係の深さを調べる手法

・コンジョイント分析 : いくつかの製品属性を組み合わせた代替案を提示し、選好を分析する手法

・回帰分析 : 結果となる変数に、要因となる変数がどのくらい影響を与えているかを調べる手法

 

マーケティング・リサーチの注意点

 マーケティングに関する特性を理解していれば、マーケティング・リサーチは、そのために必要な調査という認識を持つことができますので、その意義や重要性についても無理なく理解できることでしょう。

 マーケティング・リサーチにおける注意点は、おおむの次の3点に集約できます。

 ・目的を見失わないこと

 ・仮説にとらわれすぎないこと

 ・リサーチを疑う姿勢をもつこと

1 目的を見失わないこと

 マーケティング・リサーチには、必ず目的があります。 

 目的がないマーケティング・リサーチは、ただの調査であり、本来のマーケティング・リサーチとは異なるものです。

 企業の活動は営利を目的としている以上、そこには明確な方向性や戦略、そして、ひとつひとつの戦術(施策)があってしかるべきです。

 マーケティング・リサーチは、そういった企業活動を支援するために、明確な目的を掲げなければなりません。

 もし、目的を明確にしないままリサーチをしてしまったら、どうなるでしょうか。得られたデータや情報の多くは、使用されないまま蓄積されるだけになってしまうでしょう。そもそも目的がなくリサーチの方向性も示されていないまま調査をしているだけなので、得られるものが限られてしまうからです。

 このように、運や結果論だけでマーケティング・リサーチはできません。

 また、目的を設定していても、当初の目的を見失ってマーケティング・リサーチを行ってしまえば、結果的に得られるものは限定的でしょう。

 マーケティング・リサーチに投下できる時間や資金、労力を含めたリソースは限られているはずなので、ポイントを絞らなければ、焦点がボヤけたまま不要な情報ばかりが集まってしまいます。

 目的を設定した後は、その目的を見失わないように努力しなければならないのです。

 もっとも避けるべきなのは、リサーチのためのリサーチになってしまうことです。

 マーケティング・リサーチは、データや情報を収集することが目的なのではなく、マーケティング施策を前に進めることが目的です。

 意思決定に役立たない情報ばかりを収集してしまえば、それは経営上のロスでしかありません。

 後々に役立ったというようなことは稀ですし、それはリサーチを専門とする企業が行うことでしょう。

2 仮説にとらわれすぎないこと

 マーケティング・リサーチの目的を見失わないことと同様、重要なのが設定した仮説にとらわれすぎないことです。

 目的の設定とともに仮説を構築することで、得られたデータや情報から「何がわかるのか」「どのような意思決定ができるのか」ということが明確になります。

 そうしたリサーチ後の成果こそ事業活動を前に進めるために必要です。

 仮説の設定はマーケティング・リサーチには欠かせないのです。

 ただ、設定した仮説にとらわれすぎてしまうのも問題です。

 「この製品は若い女性の支持を得られるので、絶対に成功するはずだ」というような仮説を立てていた場合、あまりに仮説を意識しすぎて、例えば「この製品が好きですか?」「好きな場合、どんな理由で好きですか?」というような、当たり障りのない質問を構築してしまう場合が少なくありません。それでは反対派の意見を聞くことはできません。

 マーケティング・リサーチで得られたデータをプレゼンテーションで使用したり、企画書に落としこむことはよくあることです。そうすることで説得力が高まるからです。ただ、仮説を信じこんでしまった結果、偏ったデータを収集してしまい、最終的に他の類似品を圧倒することができず、結局市場から撤退せざるを得なくなってしまったという事例は枚挙にいとまがありません。仮説はあくまでも仮説に過ぎません。

 マーケティング・リサーチを進めるうえで必要なことではありますが、推測の域を出ないということを理解しておきましょう。

 そして、賛成派だけでなく、反対派の意見も収集できるような質問を構築することができれば、よりマーケティング・リサーチの精度は上がります。それが本来の意味での仮説を利用するということになります。

3 リサーチを疑う姿勢をもつこと

 3つ目は、リサーチそのものの結果を疑う姿勢をもつということです。

 仮説と照らしあわせて望ましい結果になったとしても、反対に大きく予想を覆すようなデータが得られたとしても、一喜一憂してはいけません。

 そのリサーチ結果そのものが必ずしも正しいとは限りませんし、リサーチの方法が100%正確なものかどうかもわからないのです。

 どこかでミスがあれば、それだけでリサーチ結果は揺るぎます。

 そもそも、リサーチの結果を絶対に正しいものと認識してしまえば、それだけでマーケティングの可能性は限定的になってしまいます。

 本来であれば、リサーチでは得られないような顧客のニーズについても加味しつつ、商品開発を進めていくことが求められます。商品開発はマーケティング部門だけで行っているのではなく、開発部や販売部でも行っているからです。リサーチの結果は絶対ではないのです。

 マーケティング・リサーチの結果を盲信して企業活動を進めてしまえば、変化する時代の流れや顧客の需要についていくことはできないでしょう。

 リサーチの結果は、正解ではなく、調査の結果得られたひとつの方向性でしかないということを忘れないことです。その認識さえあれば、マーケティング・リサーチの結果は大きな武器になります。

 大まかな市場の傾向を把握することはできますし、消費者の多くがどのような製品を求めているかということはリサーチ結果から明らかになるでしょう。

 リサーチの結果を疑いつつ、有効活用するという発想が大切です。

 世間一般の常識が、必ずしも顧客の心理を反映しているとは限りません。大きな時代の流れや需要の変化についても、それらは大まかな傾向だけを表しているだけということが少なくないのです。

 仮説を盲信して行うマーケティング・リサーチは、結論ありきの調査になってしまうことがありますので、注意しなければなりません。

 

コミュニケーション・ツールとしてのマーケティング・リサーチ

 リサーチの結果は、プレゼンテーションや企画書に活用することができます。データや情報が説得力を高めるという役割を担うのですが、それは、社内でのコミュニケーションを円滑にするということです。論理的なコミュニケーションには、裏付けとなるデータが欠かせません。また、社外に目を向けてみるとどうでしょうか。商談や自社製品の紹介、あるいはサービスについて説明するときなども、同様にデータを示すことが重要となるでしょう。ただ「いいですよ」「オススメですよ」と言うだけでは、会話に説得力が生まれません。最悪の場合、そのことが取引先の時間を無駄にしてしまう可能性もあるのです。コミュニケーションを円滑にするために、マーケティング・リサーチを含めた調査を積極的に行い、数字や意見を提示することで、論旨が明確なやりとりをするようにしたいものです。

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