不況期のトップのあり方

   大川隆法 未来への羅針盤 No.310

 まあ、世の中は、経済の原理は「振り子の原理」で、極端まで行ったら反対側に必ず揺れますので、バランスを取るように世の中というのはできていますから、厳しいことは、いつまでも続くわけではございません。

 やはり、厳しいときに”筋肉”を鍛えて、何とかそこを生き抜くことができたら、そうしたら今度、自分にとって追い風が吹いてきた時には、ますます組織を発展させ、事業を発展させることができるようになるのです。

 特に今、「二代目」とおっしゃいましたけれども、二代目というのは、本当にありがたいことなのです。

 今の時期、うちも起業家を輩出させようとして努力していますけれども、客観的には、新規に事業を立てて会社を起こす人を成功させるのはなかなか難しい。本当に難しいです。

 正確には言えませんけれども、三年以内には、ほとんど九割ぐらいは潰れているはずです。今の時代だったら新規に事業をつくると、三年以内に九割は潰れるはずです。百社起こして、十年生き延びるのは一社と言われているのが今の時代です。それほどの厳しさなのです。新しく事業を立ち上げて、十年生き延びられるのは百社のうちの一社しかないだろうと。三年生き延びられるのは百社のうちの十社で、十年後には一社になる。そのぐらいの厳しさだと言われます。

 それで二代目というのは、それでもありがたいことです。先代がつくってくれた基盤があるわけですから、新規につくる人に比べれば、すでにもう、ある程度の事業のかたち、内容、やり方、人、いろいろなものが揃っているわけです。だから有利なわけで、環境がたとえ悪くても、新規に新しくつくるのに比べれば、ずっとずっと、まだまだ有利な立場にあるのだということを、まず感謝しなければいけないと思います。

 そうした感謝の上に、やはり厳しい時代を生き抜く智慧をつくり上げていかなければいけないのです。

 

トップ自身が全責任を背負うつもりで戦う

 「感謝のなかの厳しい生き方」とはいったい何であるかということですが、こういう、不況がしばらく続くかもしれないという時代において一番大事なのは、やはり、まず一つは、仕事レベルそのもので言ったら、トップ自身が全責任を背負うつもりで戦うことが大事です。

 ですから、「社長一人の責任である」「会社の結果は社長一人の責任である」と思って、業種にもよりますけれども、トップ自らが、製品開発、それから営業、サービスから全部、陣頭指揮を執るつもりで戦うということが、心がけとしては大事な時です。

 危機の時代において生き延びるには、「トップ自らが陣頭指揮を執る」「自らが切り込み隊長として戦う」という姿勢を持って、その困難な時期を乗り越えていくということです。そうしたら、他の社員などはそれについて行きますから。トップはやらないけれども、みんな頑張れよ、というだけでは、やはり無理な時代です。

 

十年後の会社のあり方を考える

 その時代に、それにさらに加えてやるべきことがあるとしたら、やはり、勉強しておくことです。その不況の時代にしっかり勉強して、先を読んで、先の事業のためになるような勉強をしておかなければいけないのです。

 下世話な言葉になりますけれども、将来の会社の”飯の種”になると思われるようなことをつくるための勉強をしなければいけないのです。

 現在ただ今の仕事に全力で打ち込むと同時に、将来、この会社、うちの会社は五年後、どうでなければいけないのか、十年後、どういうふうにあるべきであるのかということを考えて、五年後、十年後の会社のあり方、仕事のあり方、商売のあり方というものを考えなければいけない。その時に必要になるものの武器をつくらなければいけないのです。

 そのためには、まずは「知識」が大事です。そうした知識を用意する、備えておくということが大事なことであると思います。これを言っておきたいと思います。

 さらには会社の規模にもよりますけれども、規模がいろいろと違うので一概には言えませんけれども、もう一つは組織自体を”筋肉質な組織”につくり上げるということです。だから、不況期であればこそ、本当に能力のある人とそうでない人とを峻別しやすい時期なのです。好況で、もう、誰がやってもうまく行くような時代であれば、同じようにみんな平等に扱って言わなければいけないのですけれども、不況期であればこそ大鉈を振るって、要するに、会社にとって今、邪魔になっている人か、あるいは貢献している人なのか、能力的にすごくある人なのか、そうでない人なのか。能力のある人を、単に年功序列的なものとか、今までの流れからそのまま使わないで放置しているというのは、宝の持ち腐れです。

 不況の時期というのは、そうした能力のある人が社内にいたら、そういう人に思い切って権限を与えて仕事をさせるべき時だし、そういう不況の時であれば、能力がないのに例えば部長を張っているとか、課長を張っているとかいうような人たちに、済まないけれども、ちょっと脇に離れてもらって、部下を取らしてもらうけれども、能力のある人をちゃんと抜擢してその地位につける。そうした能力本位の”筋肉質の組織”につくり変えるチャンスなのです。

 だから不況期は、未来事業のための勉強のチャンスでもあるし、社内を筋肉質に体質改善する、そういうチャンスでもあるということです。そういうことが言えると思います。

 ただ、原点に戻って言えば、最初に言いましたように、トップ自らがやはり動かなければならない時であるということです。トップ自らが「トップ営業」をやらなければいけないし、トップ自らが商品開発に当たらなければいけない、トップ自らがお客様、顧客のニーズを聴いて歩かねばならない、そういう時期であるということです。そういう辺りを考えておけば何とか乗り切れると思うし、やがて全てが好転してくると思います。

 

不況期にこそ投資が必要

 ここで間違えてはいけないことの一つは、不況になりますと、収入が減ってくると思って、皆、財布のひもは当然締まってくるのですけれども、やはり「消費」あるいは「経費」と、「投資」の区別がつかない経営者が多くなるのです。

 単なる「経費」あるいは「消費」に当たる部分のお金なのか、それともこれは「投資」に当たる部分なのか、ということを、よく区別しなければいけない。

 不況期であっても投資に当たるものはやらなければいけないのです。不況期にこそ、投資しなければいけない。不況期に投資しておれば、やがて景気が回復した時に、その投資が生きてきて花開いてくる。不況期に投資したところが伸びるのです。

 不況期にただただ、縮まっていただけのところは、実は、好況になっても今度は壊れていく側に回るのです。不況期というのは、新しい設備投資とか新商品開発、あるいは土地の購入、工場の建設、いろいろと本当はやるべきチャンスでも、またあるのです。だから不況期には投資をしなければいけない。お金をむしろ使わなければいけない時でもあるのだということを知っておくべきです。

 経理的に言うと、不況期になるとまず、支出を「カット、カット、カット」と皆、してしまいますので。今の政権(当時)みたいに仕分けなどと称して、予算の「カット、カット、カット」ともう入っているけども、あれをやったら、その後に企業の倒産が続いてくるわけなのです。企業の倒産が続いて不況が深刻化してくれば、税収がさらに減ってきます。今でさえ七割以上の会社が赤字なのですから、これはもっと倒れてくる。たくさん潰れてくる。建設業界、ゼネコン系なども、これは一番に大風が吹いてくる筆頭のところです。

 当会がつくっている幸福実現党のほうはその正反対でして、ゼネコンであろうが、航空機業界であろうが、断固救うつもりでやっています。未来につながるものは、完全に、うちのほうは肯定する思想を持っているのです。だから鳩山さん(首相〔当時〕)の思想なんかでも、「コンクリートよりも人へ」と、コンクリートより人が大事だと言っているけれども、それは短絡的というか、単純すぎる考え方です。

 だから、那須に学校をつくっても、それはやはり、建物、コンクリートは大事ですよ。校舎から、寮、食堂、体育館、プールと、コンクリートは大事です。建物がきちっとできたら、那須の冬にも耐えられて、子供たちが安全に暮らせて快適な環境で学習することができます。これを、コンクリートを無視してトタンで建てるとかプレハブで建てたら、それは大変なことになって「人命危うし」になりますので、そんなに単純には、私は考えていません。

いずれ実力相応の世界が展開する

 ですから全て、未来に向けて、未来にとって必要になっていく方向であれば、やはりそれは押していくべきだと、基本的に全部考えておりますので、その方向でやっていきたいし、政策もまた、誘導して行きたいと思います。この国を奈落の底に沈ませないように、再び「黄金の復活」を果たせるように持っていきたいと思っています。

 だから、しばし耐えて頑張っていただきたい。実力相応の世界が必ず展開してくるはずです。厳しい環境が来て厳しい判定が出たら、「まだまだ未熟だ」と言われているのだと思って精進に励むことが大事です。頑張りましょう。

参考

 

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