レッド・オーシャン戦略
競合企業がひしめき、飽和状態の市場をレッド・オーシャンと呼び、新しい市場を開拓し、競合企業のいない市場をブルー・オーシャンとしています。 成長市場、成熟市場で戦うのがレッド・オーシャン戦略です。
レッドオーシャン市場で事業を始める
まずは、市場のあるレッドオーシャンで事業をはじめます。
よくビジネスでは、レッドオーシャンではなく、まだ、誰も開拓をしていないブルーオーシャンを狙った方がいいという方もいますが、そもそもブルーオーシャンは見つけることも難しく、認知までにも時間が掛かるため、レッドオーシャンから可能性を見つけていくことも充分にできます。
事業を差別化する
自社の事業が決まったら、差別化をして、ターゲットを絞り、自社のポジションを確立していきます。
仮に自社でサロンを立ち上げるとします。カットやカラーなどができるサロンなんて山ほどあるので、差別化をする必要があります。
サロンでは、もちろん美容師も必要ですがヘッドスパが出来る従業員を雇い、サロンという体ではなく、ヘッドスパ専門店でカットもできる店舗にします。ヘッドスパ専門店とて差別化をし、サロンに行きたいというユーザーだと競合店舗に取られる可能性があるので、ヘッドスパに行きたいユーザーをターゲットにすることで自社独自のポジションを確立することが可能になります。
自社の差別化やポジションを明確にすることによって、その市場に需要があれば、それがブルーオーシャンに変わることもあります。レッドーシャンの中にあるブルーオーシャンであれば、需要がある可能性も大いにあります。
レッドオーシャンでの差別化が上手く出来れば、十分に生き残っていくことも可能なので試行錯誤をしてみましょう。
レッドオーシャンでは差別化・価格競争を行う
レッドオーシャン市場で勝つためには、他社との差別化が必要となります。そこで、巨大なレッドオーシャン市場の中にあるブルーオーシャンなカテゴリを探し当てることに注目してみましょう。
例えば、特定の年齢層にヒットしている商品を他の年齢層に広げるために、どのような工夫が必要か検討してみることで差別化に繋がることもあります。例えば、文具メーカーのパイロットはすでに飽和状態の「ボールペン」市場に「消せるボールペン」という新たな切り口を作り、大ヒットしました。
レッドオーシャン市場では、その市場に大きな需要があることは明白です。市場の将来性を見据えたうえで、勝てる道を探し出しましょう。
現在、多くの市場は飽和しているように見えますが、それでも切り口を変えることで新たな市場を創造するチャンスは無限にあります。
全く新しいものを開発することが難しい場合でも、既存商品に新しい価値を付与することで、新規市場の開拓につながることもあるのです。また、差別化は新機能の付与をメインに考えがちですが、任天堂Wiiのように「多すぎる機能を減らし、シンプルにすること」が新市場の開拓となった事例もあります。
レッドオーシャンで生き残るには、次々と参入してくる競合他者に負けないようにし続けなければなりません。
絶対的なシェアを誇っていたとしても、競合他社はそのシェアを奪うために様々な切り口で参入・構成に出ようとするため、現状維持だといずれ生き残ることができなくなるでしょう。
アイデアで勝負する
既にレッドオーシャンとなる市場でシェアを獲得していたとしても、新しいアイデアを生み出してそれを投入してはいけないというルールはありません。
時代の変化に合わせて消費者の需要も変わってくるので、新しいアイデアをいち早く生み出し、時代の先取りをするのがいいでしょう。
レッドオーシャン市場で戦っている間に、消費者傾向など膨大なデータが蓄積されているはずなので、そういったデータを用いて他社が簡単に真似することができないアイデアを生み出してみてください。
コストを考える
レッドオーシャンで戦っているノウハウを通して、どれくらいのコストでいくら利益ができるのか分析することができるでしょう。
また、既存の製品・サービスのコストカットを考える余裕もあるかもしれません。
そういったコスト面の問題を改善し、より消費者に届きやすい価格帯で提供することもできるでしょう。
ただし、価格帯を下げすぎると市場の崩壊やシェアの取りすぎての独占禁止法に抵触する可能性すらもでてくるので注意が必要です。
体験価値を大切にする
体験価値・付加価値を大切にするとよいでしょう。
レッドオーシャンには様々な企業などが参入してくるので、同じような製品やサービスが乱立します。
その中から差別化できるように体験価値や付加価値を重要視し、より魅力的に見せることも大切です。
たとえば、歯ブラシの場合、歯ブラシの種類によってブラシの大きさ・太さ・柔らかさが全然異なります。ブラシが自動で動く電動歯ブラシもあるでしょう。
そういった体験価値を大切にすることでレッドオーシャンでも生き残り続けられる可能性が高まります。
レッドオーシャン戦略のメリット・デメリット
レッドオーシャンにはレッドオーシャンならではのメリットがあります。
メリット
レッドオーシャン戦略のメリットは、既に市場規模がそれなりに大きくなっているということです。
競合争いが激しいという問題がありますが、既に顧客が存在する市場ということであり、参入することに成功すれば一定の売上を確保することができます。
競合他社よりも魅力的な製品やサービスを持ち出してレッドオーシャン市場に参入した場合、他社のシェアを奪って出し抜くこともできるでしょう。
デメリット
レッドオーシャン市場のデメリットは、参入することが難しいということです。
レッドオーシャン市場はユーザー数や市場規模がそれなりにあって、軌道に乗れば大きな利益を生み出しやすい・利益になる可能性がある市場を探しやすいメリットがあります。
しかし、そのメリットを生かそうと思うとレッドオーシャン市場で成功しなければなりません。
レッドオーシャン市場でシェアを獲得しているのはいずれも成功している企業であり、なおかつその市場で生き残る・利益を出し続けられる企業です。
そのため、鋭い切り口から攻めて参入しないと何も成果を得られず撤退することになるでしょう。
幸福の科学大川隆法総裁は、『忍耐の時代の経営戦略』で以下のように説かれました。
「「レッド・オーシャン」と言うのは、はっきり言えば「血の海」です。それは、業界での競争が熾烈になっていて、「一方が勝てば、もう一方は必ず負ける」という状況です。
例えば、「ここで買わなくても、あそこで買えばよい」というようなことでしょう。スーパー同士がそうですし、あるいは、八百屋が二軒、三軒並ぶとなったら、どれかが勝てばどれかが負けるようになります。それは、魚屋でも電器屋でも同じでしょう。
こうした競争から守られるためには、昔の薬事法のように、「新たな薬局を解説する場合、五百メートル以上離れていなければいけない」という法令で規制してもらうことです。そうすれば潰れずに済みますが、薬局が隣に二軒、三軒と並んだら、どこかが潰れ始めるでしょう。一般には、売れるものの場合、他の参入がどんどん増えていくのです。
例えば、熱海の温泉旅館が、今は経営が黒字で非常に安定しているので、ずっといけると思っていても、突如 川向こうの景観のよい所に、関係のない大きな資本が20階建てのホテルを建てたとしたら、その老舗旅館は突然の危機が来るわけです。
あるいは、客室の稼働率が80パーセントを超えていて、十分に黒字でやっていけると安心していた老舗ホテルであったとしても、突如近場にオーシャンフロントの海まで眺められるホテルができたとしたら、これまた突如の危機でしょうけれども、こんなことが起きないわけではないのです。
このように、ある程度のシェアがあるような業界では、一般には、お互いの地を流すような戦いがくりひろげられており、これを「レッド・オーシャン戦略」と言います。厳しい競争戦略ですが、「『食うか食われるか、斬るか斬られるか』の戦いをして、それで勝つ」という方法です。そうした「相手よりも強い戦いをして勝つ」というやり方があるわけです。」(P-132~135)
「もちろん、「品質の勝負」「サービスの勝負」等によって勝つべくして勝つ戦いも当然あります。
例えば、「味がよい」とか「素材がよい」とかいうところで、勝つべくして勝つ戦い方もあるのですが、その場合、相手はたいてい死にます。つまり、ライバルを消すかたちの勝ち方になるのです。
かつて、ダイエーのようなスーパーが出たときにも、いろいろな店が潰れたはずですが、レッド・オーシャン戦略には、ある程度覇道的な面があるでしょう。ただ、大きくなった企業のなかには、そういうものも多かったと思います。
また、このレッド・オーシャン戦略には、サービスや品質の戦い以外に、「労働時間」等での戦いがあります。
これは、ランチェスター法則の日本版や地方版をつくっている、竹田陽一という人の意見ですが、ランチェスター法則を応用し、「田舎企業、二流企業が勝つにはどうしたらよいか」ということについて、「とにかく一日十二時間働け」と言っています。「同じ仕事をしているのなら、よそが八時間働いているところを、十二時間働けば、内容の質はともかくも、競争には勝てる」ということです。
そのように、ランチェスター法則の変形として、「時間戦略」で相手に勝つ方法を教えている人もいます。
いずれにしても、基本的に、レッド・オーシャン戦略を自然体で実行すると、そのようになることが多いでしょう。」(『忍耐の時代の経営戦略』P-136~138)
レッド・オーシャンでは、基本的に体力勝負の消耗戦になりやすい面があります。したがって、弱者の場合は避けなければならない戦略です。にもかかわらず、多くの企業はレッド・オーシャンに入っていきます。なぜ、そうなるのでしょうか。それは、一般にレッド・オーシャンは市場規模が大きいため、参入したら儲かりそうに見えるからです。「そんなに皆が儲かっているなら、わが社が一社参入したところで、いくらかは稼げるだろう」と考えてしまうのです。
しかし、成熟市場では、ほとんどの場合 値引き合戦を中心とした潰し合いになっています。例えば、コンビニエンス・ストアなどは ほぼ全国に行きわたり、同業同志が潰し合う典型的なレッド・オーシャンになりつつあります。そのなかで売上を伸ばして黒字がするには、そうとうな努力と工夫が必要です。
レッドオーシャンから脱却する方法
レッドオーシャンから脱却するポイントは以下の5つです。
1 市場の絞り込み
レッドオーシャンから脱却する1つ目の方法は「市場の絞込み」をすることです。
エステであれば、脚に特化するとか、ヘッドスパや脱毛に特化するといったように得意なものに市場を絞り込むということです。
2 顧客の絞り込み
レッドオーシャンから脱却する2つ目の方法は「顧客の絞り込み」をすることです。
年齢でも、男女でも、マニアックな趣味嗜好でもいいですが、お客さんも絞り込むことをしないといけません。
商品ありきで考えると市場はうまくいきません。
お客さんが何を望んでいるかをもう一度経営者や幹部同士で議論して、そういう商品に改定できるのであれば、市場を選定して、商品を合わせていくといった改善が必要だと思います。
3 付加価値で差別化&参入障壁の構築
レッドオーシャンから脱却する3つ目の方法は「付加価値で差別化&参入障壁の構築」をすることです。
付加価値で差別化して、参入障壁を構築することが一番重要です。
市場やお客さんを絞り込んで、アレンジした商品を投入していけばヒットするはずというのは仮説ですが、3番目のこれは努力が必要です。
大手企業が参入しづらい障壁をつくっていくためには付加価値をアレンジして差別化していく必要がありますが、その付加価値には人的な要素を入れておいてください。
人的な要素というのは、匠の腕や、面倒くさいフォローなどです。大手がもうお金をかけても人を集めても市場性がとれないようにすれば、障壁をつくれます。
そのためには市場を狭くすることです。
4 M発想→C視点&人的サポート
レッドオーシャンから脱却する4つ目の方法は「M発想→C視点&人的サポート」をすることです。
M発想とはメーカー発想のことです。
昔の大量生産のように、「いい商品を作ったから買ってください」というメーカー発想はもうダメです。
この発想の会社は意外と多いですが、今はまったく通用しません。
C視点とはカスタマー視点、つまり顧客視点です。
市場を絞り込んで、「お客さんはこういうものを好きだろう」というお客さん視点で付加価値を改善していくことです。
5 SNS等ネットマーケティング
レッドオーシャンから脱却する5つ目の方法は「SNS等ネットマーケティング」をすることです。
紙の媒体や広告代理店まかせというのもダメです。
飲食業でも旅館業でも、BtoBの会社でも自社のホームページを作って ツイッターやFacebookなどのSNSやLINEなどいろいろなマーケティングツールがあります。
LINEなどで会員を集めて、登録した会員にだけ特別な情報を流してリピート顧客に結びつけていくといった手法が必要です。
例外なく、このSNSやホームページのマーケティングを組み込まないと今のビジネスはうまくいかないと思います。
競争しないことで高価格・高利益を実現する
「競争相手が増えるにつれて、利益や成長の見通しは厳しくなっていく。製品のコモディティ化が進み、競争が激しさを極めるため、レッド・オーシャンは赤い血潮に染まっていく」(有賀裕子訳『ブルー・オーシャン戦略』より)
シルク・ドゥ・ソレイユの場合、レッド・オーシャン(既知の市場空間)での戦いは従来のサーカスと同じように高額のパフォーマーを雇い、維持コストの高い動物を使い、ターゲット顧客である子どもたちを大手と争って獲得する、というイメージです。しかし、レッド・オーシャンの言葉通り、これでは投下した資本を高い効率で利益に転換できません。市場の広がりがなく、他社と比較して独自の魅力もないからです。レッド・オーシャンでの戦いは、激烈で儲からないのです。
企業がレッド・オーシャンの戦いを重視する理由は、過去の戦略論の概念が原因です。「領土が限られているため、敵を打ち負かさないと繁栄できない」という、歴史上の戦争の制約条件をビジネスに持ち込む誤解が不毛な戦いを助長しているのです。
リアルなビジネス界では、新たな市場の開拓で成功した事例が溢れています。ブルー・オーシャンを生み出すことを狙った新規事業は、レッド・オーシャンでの新事業に比べて利益の面で企業により大きく貢献している点も指摘されています。