『マネジメントへの挑戦 復刻版』

「実現可能なもの」を実現させるのは 誰にでもできる

本書で特徴的なのは、経営にまつわる「言葉」の定義である。例えば「経営計画」とは何か、に対する解釈。一般的には、経営ビジョンや目標を達成するための行動計画といった広い意味を指す言葉だが、一倉先生の考え方は少しばかり違っている。

「死に物狂いの努力をしなければ『そのとおりやる』ことができないような計画」こそが「ほんとうの(経営)計画」であり、実現可能、無理でない、科学的といった世間でいわれる経営計画の考え方に対しては、「綺麗ごとの観念論」だと一蹴している。

「予算」についても同様です。経費の予算について、多くの会社では、各部門の要求を経理担当者がまとめて決めているが、一倉先生にとってそれは悪習と映る。企業活動は、経営者が売り上げと利益の目標を設定することから始まる。ゆえに、そこから逆算し、事業運営を賄うために算出する経費こそが「予算」だという。

一倉先生によると、「実現可能なもの」を実現させることは 誰にでもできる。それなら、経営者は不要だ。会社が生き抜くためには、「不可能なことを可能にする」必要があり、そこに経営者の存在価値があるのだという。

事実、一倉先生は、自身が接した企業が「赤字」と知らされると、じっとしていられず、どんなに多忙でも指導の時間を割いたという。そして、社長の姿勢が変わり、黒字の兆しが見えると、「もう大丈夫」と指導を終了。新たな赤字会社に目を向けたそうです。

一倉先生の謦咳(けいがい)に接した社長たちは、「後にも先にも、あれほど強烈に『社長の生き方』を指し示した人はいない」と口をそろえたというが、コロナショックが直撃し、多くの企業経営者が「あるべき経営のかたち」を模索する今だからこそ、先生の言葉が多くのマネジメント層に刺さるのではないだろうか。

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