年金は大丈夫 (4) 公的年金と「ネズミ講」

賦課方式は「ネズミ講」とおなじ

 年金制度が実質「賦課方式」に変わったのは1954年の改正だと言われている。

 当時は高度経済成長期であり、インフレと人口増によって、積立金の価値が目減りしていくこともあって、賦課方式にすれば現役世代の保険料も安く抑えられ、高齢世代の給付も高いという、双方にとってメリットもあった。

 ところが、バブル崩壊から長期不況へと変わり、少子・高齢化で年金を受ける人は増える一方、保険料を払う現役世代がどんどん減り続け、様相は一変した。

 「賦課方式」といえば聞こえはいいが、原理は「ネズミ講」と同じです。経済学者の鈴木亘氏も「賦課方式のメカニズムは、経済学では『ねずみ講』とまったく同じ構造であることが、大昔から知られています」と指摘している(『だまされないための年金・医療・介護入門』)。

 ネズミ講とは、「出資金以上の配当を得て得をする」と称して加入者を増やし続ける詐欺商法です。加入者が無限に増え続けることが前提になっているが、どこかで限界が来て破綻する。賦課方式というのは「現役世代の人口増」を当てにしたシステムであり、後から生まれてくる世代ほど損をするという制度なのです。公的年金はいつの間にか「国営ネズミ講」となり、巨大な詐欺システムと化している。

 

年金とネズミ講の共通点

1 後から入った者が必ず損をする

 このネズミ講と公的年金制度を比較すると、まず共通しているのは、「必ず先に入った者が得をして、後に入った者が損をする」システムだということです。

 2 必ずどこかで破綻する

 ネズミ講は「無限に加入者が増えていく」ことを前提に「絶対に損はしない」と言って加入を勧める。ネズミ講というのは「永遠に加入者が増え続ける」ことを前提にしているが、どこかで必ず限界が来て、集金システムそのものが成り立たなくなり破綻するのです。

 1点目は、年金は「国家規模のネズミ講システム」であるということ。人口ピラミッドで、年金を負担する現役世代と受給する高齢者を説明されることがある。そして、1990年には「現役世代5:高齢者1」が、2015年には「現役世代2:高齢者1」と説明される。日本の公的年金制度は、後から入ってお金を払う人が次々に増え続けない限り、どこかで成り立たなくなるシステムであり、ネズミ講と年金システムは同じであるということなのです。

 公的年金はネズミ講と何が似ているのか。ネズミ講の代表として有名な「天下一家の会」と比べるとよく分かる。天下一家の会は、1968年から1972年にかけて熊本県を中心に全国に広がり、最盛期は会員1800万人を数えた巨大なネズミ講である。その手口は、会員が4人の子会員をつくり、さらに孫会員、その下の会員と、次々と会員を増やしていく。会員が増えれば増えるほど、先に会員になった人は多くの配当金を手に入れる。しかし、いつまでも増やし続けることはできないから、当然どこかで限界が来る。そうなると、新たな会員は配当がなく損失を被る。その結果、末端会員から各地で訴訟が起き、主催者は脱税容疑で逮捕された。この事件を契機に、1978年にはネズミ講を禁止する「無限連鎖講の防止に関する法律」が制定された。

 「国がネズミ講をやるなんて、そんな馬鹿な」と思うかもしれませんが、ネズミ講というものは、それに関わる人が、「ネズミ講だ」と気づかれないからこそ成り立つのです。そして、驚くことに、この年金制度も、ネズミ講と同じであることが国民に気づかれないよう仕組まれていたフシがあるのです。

 2点目は、年金は「自分の積立金では無い」ということ。 多くの人は、「年金は自分が現役時代に長年払い続けたお金を受け取るもの。だから、きちんと払っておけば老後は安心」と思っていたと思います。 しかし、ある時点で すり替え が行われていたのです。「私たちが納めた保険料」は、ずっと、「その時点の高齢者の年金」に使われて消えてきたのです。ところが、厚生省が「修正積立方式」という紛らわしい呼び方をしてきたため、あたかもまるで 積立方式 であるかのような大きな誤解を招き、ずっと、年金が 国家規模のネズミ講 であることが気づかれにくかったというのが歴史の真相なのです。

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