うつ病について

 医学的には、うつ病は、人の感情に関わる「神経伝達物質」の量が脳内で減るために起こると考えられており、「心の風邪」などと言われる。確かに薬物療法にも一定の効果は出ているが、それだけでは快方に向かわないケースがあるのはなぜか。

 それは、うつ病の根本的な原因は、本当は「心の状態」にあるためだ。宗教的には、うつ状態とは、人間関係における板ばさみや環境の変化などから来る、度重なる精神や身体のストレスによって心の状態が不安定になり、常時、悪霊の影響を受けている状態であるととらえられる。

 根本的にうつから抜け出すには、悪霊の影響を受けない、明るく前向きな心の状態を取り戻すことが必要となる。そのためには、過度なストレスを受ける環境から離れると同時に、物事に対する見方を変える必要もある。様々な出来事について、「どんな態度を取るか」「自分自身のことをどう思うか」については、自分自身でコントロールが可能だ。

 大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『真実への目覚め』の中で、自分で自分の気持ちを明るくする「自家発電」の方法として、3つのステップを勧めている。

(1)他の人に対する感謝の心を持つ

まずは、「自分が恵まれていた」ことに気づき、感謝することだ。

「『自分は、他の人から、いろいろなお世話を受けている。多くの人々の努力の結果、現在までの自分の人生があった』ということに対して、感謝の心を持つことから始めるべきです」(同書より)

 確かに、悩みの中ではどうしても自分のことに意識が集中しやすい。しかし、周囲の人々の支えに思いを巡らせることで、新しい視点が得られるかもしれない。

(2)「自分は神の子である」という気持ちを強く持つ

次に、大川総裁は「『自分は、本来、神のつくられた子供である。神につくられた光の子供なのだ』という強い自覚を持ち、自分自身に対する重要感を持つことが大事です」と指摘する。

 うつ病になっていると、「自分はいなくてもよい存在だ」と思いがちになる。しかし、よく考えると、性格や能力、心がけを含めて、これまでに他人から褒められたことはあるはず。それを素直に認め、「自分も神の子であり、必要だからこそ今、この世に生きている」と強く信じることで、エネルギーが湧いてくる。

(3)小さな成功を積み重ねる

 最後は、小さな成功を積み重ねることだ。大川総裁は、「大きな成功を狙わず、小さな成功を積み重ねていき、自信をつけていくことです」と語る。

 欠点や失敗は誰にでもある。ただ、小さな成功を積み重ね、自信を蓄えてから反省する方が建設的な気づきが得られ、うつ状態から回復しやすくなるだろう。医療には限界がある。だが、「心の力」を使う宗教的アプローチなら、根本的にうつ病から脱することは可能だ。

参考

 IT(情報技術)化やネット社会の広がりといった環境の変化からくる過労や将来への不安人間関係のあつれき、こうしたストレスが高じてうつや自殺に至るケースが少なくない。特にIT業界の場合、残業や休日出勤も多く、気が休まりにくい。加えて、自分は他の人より技術力が低いのではと焦りや不安に陥りやすく、顧客からの技術的な質問に答えられず自信喪失に陥る人が、うつになりやすいのでは

 最近は、「コンピュータ過剰適応症」といって、コンピュータの二進法的な考え方に適応しすぎて、通常の言葉でのコミュニケーションや人間関係を円滑に保てなくなる人が増えているという。

 一日中人と会話せずにパソコンに向かい、ある日突然、会社に来なくなり、その後うつになっていく人が少なくない。他人との関わりがほとんどない分、ストレスに弱くなっている。

 うつになる人には、職場の人間関係に問題を抱えているケースも多い。多少仕事がきつくても、チームワークがうまく取れ、上司や周囲の人に相談しやすい職場では、自殺にまで追い込まれることはほとんどないと思われます。

 厚生労働省の統計では、週初めの月曜日に自殺する人が多く、最も少ない土曜日に比べ、男性は1.5倍、女性で1.3倍という。データでも、出勤できなかったり、仕事を苦に自殺するサラリーマン像が浮き彫りになっているのだ。

 たまったストレスを週末に発散できず、心身ともにリセットできないまま週明けを迎え、悲観的になるのでは、自殺者の約7割が「うつ病」や「うつ状態」と言われるだけに周囲は目を離せないのだ。

 では、うつなど不調に陥った人自身は、どう対処すればいいのか。

 職場の上司や同僚に相談することも大切だが、根本的な立ち直りのチャンスは、実は自分の心の中にこそあるといえそうだ。

考え方を変えてみる

 「仕事のほうびは上司に求めずに、自分が自分に与えるものと考える」、「上司も、部下には分からないストレスを抱えているはずと相手の立場に立ってみる」。

人との比較に翻弄されない自分づくりを

 ストレスとうまく付き合って、仕事をセーブするのも、回復の方法。頑張り方も自分で気持ちいいと思える程度にとどめるといいでしょう。そうして、職場の人間関係や人との比較に翻弄されない自分づくりを心がけたいものです。

 働き盛りの世代に、容赦なく押し寄せているストレスの波。その影響が心に出るなら、解決のヒントもまた心にあるといえる。焦らず、思いを変え、コツコツと努力していくところから、健康への一歩を踏み出していきたい。

 

うつから脱却するための宗教的な考え方

 ストレスが高じて、うつなどに陥らないためには、自分の心を穏やかに調律していく習慣を持つことが望ましい。そのためには、仏法真理を知ることが重要といえる。

 「人生には心の揺れる時期が何度もあります。しかし、この世は魂修行の場であり、魂を鍛えるために、いろいろな出来事が起きるのです」 (『幸福へのヒント』)

 人生はこの世限りではなく、人は永遠の生命を持っている。そして魂の向上を目指して転生輪廻している存在だ。まずはこの基本的な霊的人生観をしっかり持ちたい。

「他者の存在自体がすでに愛でもある」    (『愛の原点』)

 一見わずらわしく見える人間関係も、他の人がいるからこそ、自分も向上できる。その意味で、他の人の存在そのものが、実は大いなる愛であり、慈悲なのだ。こうした見方を大切にしていきたい。

 「八十パーセント主義でよいから、とにかく生き抜くことです。そして、完全な人生、完璧な人生、欠点のない人生、傷のない人生ではなく、よりよい人生を選び取ることが大事です」 (『大悟の法』)

 うつや自殺に至る人は、自分にも他人にも完璧主義を求めがちだが、人間は元来、不器用な生き物なのである。そう考えて、自分を許す勇気を持とう。

参考