ストレスチェック

 平成27年12月から、うつ病など、職場の従業員の心理的な負担を調べる「ストレスチェック」の実施が、従業員50人以上の事業所で義務づけられた。過労などでストレスを抱える労働者の増加を受け、「メンタルヘルス(心の健康)対策の強化・充実」が急がれていることが背景にある。

 従業員は年に1回、希望制で、「職業性ストレス簡易調査票」にある57のチェック項目に答える。その内容は、抑うつなどの心の状態、食欲や睡眠の状態、仕事の量や周囲の支えの有無など。調査結果は数値化され、一定以上の数値が出た場合は、「高ストレス者」に該当し、医師の面接指導を受けるよう勧められる。なお、医師と面接したい場合は、企業にその旨を申し出ることになっている。

 企業が従業員のストレスに積極的に目を向け、カウンセリング体制を整えたり、職場環境を改善したりする動機づけになるという点では効果はありそうだ。だが、これは果たして「国が主導してやるべきこと」なのか。スイス人思想家のカール・ヒルティは自著『幸福論』の中で、「仕事は、人間の幸福の一つの大きな要素である」と説いた。ストレスなどの仕事の負の側面よりも、仕事のやりがいや働くことの楽しさ、社会の役に立つ喜びが世の中に広く実感されることが望ましい。

 そもそもストレスの原因となる悩みや苦しみは、宗教的に見れば、心を磨き、人格を向上させる材料だ。人間の本質は「心」であり、多くの学びを求めて、あの世からこの世に生まれ変わってくる。そこで出会う悩みや苦しみには必ず意味があり、人生という一冊の問題集を解く中で、心の糧となっていく。悩みや苦しみが単に人生に邪魔なものではないと捉えることは、ストレスをコントロールする力にもつながるだろう。

 第一に、政府は不必要な法改正によって企業に介入し、活動を委縮させるべきではない。第二に、仕事に対して積極的な意味にも注目し、各企業・各人が潜在的な力を発揮できる環境を作るべきだ。

参考