介護はほんとうの愛を学ぶ機会
介護に投じられる税金と保険料は、2000年当初は3.6兆円であったが、2015年に10.1兆円になった。2025年には21兆円になる様子。
65歳以上が毎月払う介護保険料は、2015年から2017年の平均で5,514円。15年間で約2倍増となった。2020年には6,711円、2025年には8,165円となってしまう。
介護保険サービス費用も1人当たりの保険料負担も増え続けています。
介護費用
要支援2 の場合(日常生活の支援が必要な状態)
(自己負担割合が1割の場合) 1ヵ月にかかる介護費用 約3,400円
要支援3 の場合(食事、入浴、排せつなど日常的な動作すべてに介助が必要な状態)
(自己負担割合が1割の場合) 1ヵ月にかかる介護費用 約24,000円
要支援5 の場合(寝たきりで、日常生活のすべてに介助が必要な状態)
(自己負担割合が1割の場合) 1ヵ月にかかる介護費用 約39,000円
介護施設は月々5~30万円が目安
特別養護老人ホームを利用する場合(要介護3以上)
公的施設である特別養護老人ホームには初期費用はなく、月額で利用料がかかる。
補助金や助成金が入るので、利用料は民間より安い。
相部屋 月額 約5~10万円
個室 月額 約13~15万円
民間の有料老人ホームを利用する場合
民間の施設は提供できるサービスが幅広い。
利用料は特別養護老人ホームより高い。
設備などによって価格差が大きい。
入居時に払う費用 0~数千万円
月額利用料 約12~30万円
介護施設の問題点
・施設では、利用者の安全やサービス効率を重視する。
施設に入ると自由な行動が制限されがち。その結果、寝たきりになったり、認知症が悪化するケースもある。
・思いやりにあふれた施設もあるが、利用者の要介護度が上がると施設の補助金が増える現在の仕組みでは、施設が利用者の自立を支援するモチベーションを持ちづらい。
これからの介護施設のあり方
自立を支援するプロがいること
けがなどで一時的に介護が必要になっても、リハビリによって再び元気になれる施設
認知予防のグループホーム
気の合うご近所さんや友人たちと助け合いながら過ごせば、認知症の予防にも役立つ。
人生の最期まで健康で社会に貢献する「生涯現役社会」の構築が急務ですが、介護が必要になるケースもあります。
政府はお金の面から在宅介護を進めていますが、大切なのは、どうしたら介護する側もされる側も幸福になるか、という視点ではないでしょうか。
施設から家庭へ
死という人生の卒業式を迎えるにあたって大切にしたいもの。それは、愛する人との絆ではないでしょうか。やはり、家族の温かみを感じられる自宅が介護の場に適しています。「自宅で穏やかに最期を迎える」という視点から、家族を支援する税制優遇や、医療・介護サービスの充実を考えていくことが必要です。
もちろん、在宅介護が難しい方や身寄りのない方で、施設を利用される方もおられるでしょう。その場合も、縁ある人たちとつながり、最期まで夢を持って生きられる道を考えたいものです。
介護する側は大切な人に愛の心で接し、介護される側はそれを感謝で受け止める。そんな時を過ごせたなら、介護はきっと幸せなものになるはずです。
自宅で穏やかに過ごすために
生涯現役が基本
・75歳まで働き続けられる社会の実現
地域のサポート体制
・地域コミュニティやNPOが介護者を精神的にサポート
在宅医療・介護サービスの充実
・訪問診療や訪問看護などを担う人材の養成
・介護者を助けるデイサービスなどの充実
減税で家族の介護を応援
・固定資産税や相続税の免除
・住民税などの減税
「人間はあの世からこの世に生まれ、人生で様々なことを学んでこの世を卒業し、あの世に還る」という人間観・人生観が介護の前提であるべきです。人生の終末期において家族の絆を強めることも、日本の福祉の未来をひらく鍵になるでしょう。
介護はほんとうの愛を学ぶ機会
介護する側は、その無私な行為を通して、「与える愛、尽くす愛、奉仕とは何か」を考え、他人に対する献身の心を学ぶ機会と捉えることもできる。厳しい環境であったとしても、いかに明るく、朗らかに生きられるかが、本人の魂を光らせるための試練になっているという考え方もある。
もともと、介護職は菩薩行をもとにした仕事だとは思いますけれども、その中に魂を込めることが大事です。
「関係のある人たちが、みんな幸福になっていきますように」という気持ちをいつも持っていることが必要です。
介護は単に苦しいことではなく、魂修行のための大事な機会であると気づくことで、ストレスや葛藤から解放される人がたくさんおられる。
政府は「税と社会保障の一体改革」による消費増税で社会保障の予算を増額し、ヘルパーを頼みやすくするなどの支援を予定している。しかし、すべてがお金で解決する問題でもない。介護に関わる人が、人を愛すること、人に尽くすことの意味を知っておくことが大切です。
唯物論的な介護だけでは十分ではない
介護を受ける人が求めているのは、他の人の愛であり、慈悲であり、優しい心だと思います。それから、「自分がこの世に存在することの意味を教えてほしい」と思っているはずです。
「自分のように人のお世話になる立場の人が、この世に存在する意義があるのかどうか」というようなことで悩んでいらっしゃるのです。50代、60代以降での自殺者も数多くいますけれども、「自分はこの世で役に立たない」と思って死んでいく人がたくさんいるのです。そういう人たちに光を与えることは、やはり大事な仕事だと思います。
もちろん経済政策も同時にやらなければいけませんが、お金だけでは人は救えません。
介護現場に誇りと生きがいを
高齢者の命を預かる介護施設で働くためには、心身ともにストレスがかかります。それなのに、施設での仕事に必要な専門性や能力を身につけるための十分な人材養成システムがなく、介護職の社会的地位や給料も低いままという問題があります。
「超少子高齢社会」を迎える日本で介護人材不足を解消するには、例えば「給料を1万円上げる」などといった場当たり的な待遇改善では効果が期待できません。介護士が仕事に誇りや生きがいを持てるような教育制度や、キャリアアップができる制度も必要でしょう。