資本主義国にマルクスの呪い

 社会主義や共産主義と言っても、長い歴史があるわけではない。カール・マルクスが『共産党宣言』を書いたのは1848年。人類の歴史上、極めて特異な思想を説き、「自分が貧しいのは、自分から搾り取っている金持ちがいるからで、彼らから強制的に奪い返さないといけない」という被害妄想と嫉妬を体系化した。それが政治的主張になると、私有財産の廃止、強度の累進課税(高い税金)、相続税の廃止(財産没収)となる。

 もちろん「恵まれない人を救いたい」という善意はあったものの、個人がこの考え方を行動に移したら、強盗と変わらない。しかし、「政府が介在して集団で強盗を働く場合は許される」という思想がまたたく間に広がり、社会主義国家が誕生した。

 「人のものは盗ってはいけない」「働かざる者、食うべからず」という人類的な倫理を踏み外していい、という異常な時代がこの150年余りだった。

 「お金持ちから強盗し続けたらどうなるか」の社会主義の実験は、1989年のベルリンの壁の崩壊、1991年のソ連崩壊で終わった。

 とはいえ、西側と呼ばれた資本主義国で、その実験は生き残っている。もともとは1880年代、ドイツの宰相ビスマルクが社会主義の侵入を防ごうとして、逆に老齢年金や健康保険といった社会主義的政策を採り入れた。イギリスやアメリカも順次採り入れたが、ただ戦前は、国民の負担は所得の5%程度。今はヨーロッパで50~70%に跳ね上がり、日本やアメリカでも40~30%ある。濃淡はあっても福祉国家は当たり前になり、巨額の財政赤字で苦しんでいる。

 資本主義もまた、マルクスの呪いにかかって、終わりを迎えるのでしょうか。

経済 へ

「仏法真理」へ戻る