発達障害と うつ の関係

 脳の先天性機能障害により発達の不揃いが生じる「(広汎性)発達障害」について、主なものに自閉性障害、アスペルガー症候群、AD/HD(注意欠陥/多動性障害)、LD(学習障害)などがあげられます。

 これらの発達障害は、あくまでも脳の先天的な機能障害であって、親の教育や育った家庭環境が原因で発症するものではありません。 これらの発達障害は、全人口の2~6%を占めるともいわれています。また、AD/HDやアスペルガー障害などの発達障害をもつ人は、躁うつ病の合併率が高いことが指摘されています。 このような障害をもつ人々は、現代社会の過酷な状況下でつまはじきにされ、うつ病や躁うつ病を発症する可能性が非常に高いのです。

自閉性障害

 コミュニケーションがとれず、社会性が身につかない障害で、言葉の発達の遅れや、他人との感情的な交流ができない、反復的な行動をくりかえし、特定のものにしか興味を示さないなどの症状を示します。 その多くがIQ70以下の精神遅滞(知的障害)を伴いますが、なかには精神遅滞を伴わないものもあります。 アスペルガー症候群は、精神遅滞も言語発達の遅れもない自閉症を指します。

アスペルガー症候群

 アスペルガー症候群は、知的障害はないものの、社会的認知機能障害が中心に見られ、対人関係の維持が著しく困難な発達障害です。 軽症を含めれば人口の1%はいるといわれています。

 DSM-Ⅳによると、以下の点がアスペルガー障害の特徴とされています。
 ・相手の表情で相手の気持ちを推測することができない(非言語的行動の使用の障害)
 ・対人的相互反応の著明な障害(目と目で通じ合えない)
 ・発達水準に見合った仲間関係の構築ができない
 ・興味、楽しみ、達成感を他人と分かち合えない
 ・つねに同じもの、限定されたことにのみ興味をもつ
 ・物体の一部に持続的に興味を示す
 ・特定の機能的でない習慣や儀式にこだわる
 ・常同的で反復的な奇妙な運動(手をバタバタさせるなど)

 

AD/HD(注意欠陥/多動性障害)

 AD/HDは、落ち着きや集中力がない発達障害で、知的障害のある場合とない場合があります。 AD/HDも脳神経学的機能不全が原因とされ、多動性(じっとしていられない)や衝動性を伴い、集中力を欠いたり、情報をまとめたりできないのが主症状です。 その特徴をひと言でいうと「おっちょこちょい」、「あわてんぼう」といったところでしょう。そのような子どもが小学校のクラスに1人や2人はおります。

 現代社会は情報が精密化されて、仕事でも学業でも、一定の時間内にミスなく成果をあげることが求められます。 現代社会でAD/HDが増えてきたのではなく、この分単位の時間管理社会だからこそ、ミスが多いAD/HDがクローズアップされ、問題視されているのだと思われます。

 

弱みをもつ人が社会からつまはじきにされ、うつになっていく

 たとえば、アスペルガー症候群の人は、大学に合格しても周囲にうまくなじめず、実習などの共同作業ができなくて卒業できなかったり、就職した後も、他人との交流が苦手なために、先輩に仕事を教えてもらえず、仕事が続けられないといったことが起こります(適応障害)。

  発達障害の患者は、これらのストレスにより、うつはもちろんのこと、記憶喪失や失踪、多重人格などの解離性障害や不安障害を起こしやすいともいわれています。

 AD/HDやアスペルガー障害などの発達障害は、躁うつ病やうつ病の合併率が高いという指摘があります。 さらに、抗うつ薬も効きにくいとの指摘があります。また、AD/HDやアスペルガー障害などの発達障害では、パーソナリティの発達にも歪み(障害)を生じやすいことが指摘されています。