ES細胞

 ES細胞とは、受精卵が細胞分裂し細胞が増えていく過程で内部にできる細胞です。さまざまな細胞に分化できる万能性をもった細胞(胚性幹細胞)です。英語の頭文字を取り ES細胞と呼ばれている。

 生体外にて、理論上すべての組織に分化する分化多能性を保ちつつ、ほぼ無限に増殖させる事ができる。

 人間の細胞は1個の受精卵から始まる。それが細胞分裂を繰り返して様々な臓器や神経や皮膚や骨を作り、1つの生命体としての人間を形成する。出来上がった臓器や皮膚や骨の細胞は、他の臓器の細胞になることはないが、受精卵はあらゆるものになる可能性を秘めている。ES細胞はこの段階の細胞です。受精直後、人間であれば受精後5日前後の受精卵の中の一部分の細胞を指す。受精卵をシュークリームに例えると、シュークリームの皮に相当する部分は栄養外胚葉と呼ばれ、子宮に着床するための部分です。中に入っているトロトロのクリームに相当するのは、内部細胞塊と呼ばれる部分で、ここは体のあらゆる部位を作ります。この内部細胞塊は、将来何になるかまだ決まっていない状態なので、可能性としては何にでもなることができます。ES細胞はこの部分の細胞です。

ES細胞を目的の細胞へと導く  

 内部細胞塊は、受精後、時間的な経過が進むにつれて、その部分が将来何になるかが徐々に決まっていく。三胚葉分化といって、外胚葉、内胚葉、中胚葉という3つの大まかな部分に分化する。外胚葉は皮膚や神経などに、内胚葉は内臓などに、中胚葉は筋肉や骨などに分化し、それ以外にはなれない。従って、時間的に受精後5日前後のものしか ES細胞になり得ない。ES細胞と呼べるためには大まかに2つの基準があります。1つは三胚葉のどれにでも分化できること。2つ目は、半永久的にずっと培養し続けることができる、つまり無限に増やすことができることです。ES細胞を目的とする細胞に分化させるのに最もよく用いられる方法は、培養液にサイトカインと呼ばれるタンパク質を入れるのです。サイトカインとは、細胞から分泌されるタンパク質で、特定の細胞に情報伝達を行う。様々な種類があり、免疫治療の現場などでもよく用いられる。サイトカインのほかにも様々な薬剤を入れて、細胞の周りの環境を整えることによって、目的となる細胞へと引っ張っていこうとします。これによって、心筋細胞や肝細胞、神経細胞などを作ることができます。ただし、まだ細胞レベルの話であって、心臓や肝臓のような臓器そのものを体外で作るという段階ではありません。再生医療の入り口の段階なのです。 

倫理上の問題  

 ES細胞の研究が進めば、将来的には臓器を作ることもできる。そうすれば、今問題となっている移植用臓器の不足の問題なども解決する可能性を秘めている。故障した機械のパーツを取り替えるように、不具合を起こした臓器を新しいものに取り替えることができれば、医療に革命が起きる可能性がある。ただし、倫理上の問題がある。ES細胞はどこから持ってくるかというと、一般には不妊治療などで使う人工受精卵のうち、胎内に戻さない受精卵を使う。ES細胞の材料となる受精卵は、子宮に入れて着床して成長すれば当然人になる。人になる可能性を秘めたものを壊して目的とする細胞に分化してよいのかというものである。現在の日本では実験の場で利用できるのは14日までの受精卵と定められています。研究者たちも、胚に対しては単なる細胞以上の配慮を持って接していることは間違いありません。

拒絶反応の問題  

 もう1つの問題は拒絶反応です。どんな ES細胞であっても、そこから作られた臓器は患者にとっては自分の臓器ではない。受精卵を胎内に戻せば人になるわけだから、その別人になる可能性のある臓器を移植すれば、当然拒絶反応の対象となる。例えば、同一女性の卵子から受精卵をつくり、そこから ES細胞→臓器を作っても、そこにはその女性とは別人の男性の遺伝子が含まれており、女性だけの臓器ではないのだから拒絶反応を引き起こす可能性がある。  こうした拒絶反応、倫理上の問題をクリアにする可能性を秘めたものとして、注目を集めているのが iPS細胞なのです。

 

 ES細胞に関しては、結果的に受精卵そのものを破壊することになるため、倫理的な是非が問題になるうえ、大量に培養・増殖できるものの移植後に拒否反応が起きやすい難点がある。

 こうした問題を解決するものとして研究されているのが、「クローン胚」を使ったES細胞です。クローン胚はクローン技術を応用したもので、卵子から核を取り除き、代わりに他の人の遺伝子情報が入っている核を移植して作る。これを培養してES細胞を作り、核を提供した人に移植すれば、遺伝情報が同じになるため、拒否反応が避けられるというわけです。しかも、大量に作り出すことも可能。

 しかしこのクローン胚は、そのまま母胎に戻せばクローン人間が生まれるため、その是非を巡って議論が起きてきた。

 そうしたなか、政府の生命倫理専門調査会(薬師寺泰蔵会長)は、基礎研究に限ってクローン胚を容認することを決めた。同調査会は、クローン人間が生み出されることを事前に防止する枠組みが整備されるまでは、研究を解禁しないとしているが、クローン人間つくりに歯止めがかけられるのかなど懸念も強い。

 霊的真実から言えば、人間の肉体には人間の魂が宿っているが、クローン技術で作られた人間は、通常の生殖過程を経ないために、動物霊などの低級霊が宿る可能性があるとされる。

クローンES細胞はクローン人間につながるか 生命倫理の問題は宗教と不可分

再生医療 へ

「仏法真理」へ戻る