2004年公的年金制度改革

 第1に、社会経済と調和した持続可能な制度の構築であり、将来の被保険者の負担を過重にしないようにしながら、老後生活を支えるにたる公的年金として適正な給付水準を確保するという、いわば相反する内容を伴いながら、もって制度に対する信頼を確保することである。

 第2は、多様な生き方、働き方に対応した制度を構築することである。

 まず、信頼性の確保という観点から、従来の財政再計算期ごとの見直しがかえって加入者の不信感を招いてきたので、今後は財政再計算を廃止し、5年ごとの財政検証 にとどめたうえで、保険料(率)の上限を設定し、それに対応して給付水準の自動調整のシステムを導入したことである。また、それに伴い、国庫負担割合も2009年度までに段階的に2分の1まで引き上げを行うこととなった。国庫負担割合を2分の1に引き上げても、今回の改正前の旧制度における最終保険料率(基準ケース)は、厚生年金の総報酬ベースで 23.1%(2030年以降)、国民年金で月額 2万0500円(2016年以降、1999年度価格)に上昇することが予想された。

 そこで、過大な負担とならないように保険料(率)の上限を設けることが検討され、2002年12月の『年金改革の骨格に関する方向性と論点』段階では、厚生年金は 20%、国民年金1万8100円(1999年度価格)を中心に試算が示された。しかし、この上限は高いという批判が出され、改正法案では、厚生年金では現行の 13.58から毎年 0.354%ずつ引き上げ、2017年9月以降 18.3%で固定し、国民年金では現行の 1万3300円から2005年度以降毎年 280円づつ引 き上げ、2017年度以降 1万6900 円(2004年度価格)で同じく固定することを、引き上げ過程も含め法律で明記されることになった。

 2004年改正時の再計算は、厚生年金の今後の給付費用と財源についての見通しを示した。それによれば、今後100年間の給付と財源を2004年度の現在価格で換算(賃金上昇率 2.1%で割り戻す)して一時金で表示すると、2004年度末までの拠出に基づく過去期間に係る分は 900兆円で、2005年度以降の拠出に基づく将来分に係る分は 1730兆円で、計2630兆円にのぼる。そのうち、過去期間に係る分の国庫負担の 190兆円、将来期間に係る分の国庫負担の 340兆円の計 540兆円の国庫負担で賄われる。また、積立金と運用収入が 260兆円見込め、保険料は 13.58%に相当する分が1390兆円なので、差し引き450兆円が不足する。これを今後の保険料収入で賄わなければならず、2017年度まで段階的に18.30%まで引き上げることによって財源を確保することとした。

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