働き方改革の進めるときのポイント

(1)均質な働き手から多様な働き手へ

 今、「均質な人が長時間働く時代」から「多様な人が多様な場所・時間で働く時代」への転換期を迎えている。

 ある調査によると、20代男性の約9割、女性の7割が「働き方改革の推進の有無は、就職活動の企業選びにおいて影響する」と回答しているという。

 ほかにもさまざまなケースがあり、抱える事情はさまざまである。 ・育休を取りたいと希望する男性

・子どもが生まれても経験やスキルを活かして働きたいと考える女性

・不妊治療中の夫婦

・学び直しのために大学へ通う人

・介護をしながら管理職をつとめることを会社に言い出せないでいる男性

 多様な背景を持つ人をまずは知り、歩み寄ることから「働き方改革」は始まる。

 

(2)働く場所と時間をフリーに

 次に必要なのは、多様な人が働きやすい環境と制度の整備です。

 テレワークやサテライトオフィスを導入して職住近接をはかったり、短日・短時間制度やフレックスタイムの導入など、さまざまな方法があげられる。

 「働き方改革」は、制度導入で完結しないし、働く側の自律性や向き不向きも影響する。労使が歩み寄って最適解を模索するのが、最も効果的かもしれない。

 

(3)マネジメントは個別最適化へ

 働く場所と時間の多様化が進むと、当然ながらマネジメント手法にも変化が求められる。

 たとえば、リモートワーカーはオフィスワーカーと比べて、「きちんと評価されているのか」と不安を抱えたり、組織へのエンゲージメントが下がりがちです。働く人の経験やスキルはもちろん、志向や背景に理解を示し、的確なタイミングで最適なコミュニケーションをはかるマネジメントが必要となる。

 「働き方改革」によって人材マネジメントの負荷が増すことは念頭に置いたうえで、「個別最適化」マネジメントへ舵を切ることが大切です。人材マネジメントの職につく人は、チーム生産性を高めるといわれる「心理的安全性」、人種、性別、年齢、肥満の度合いなどで無意識に人を判断する「無意識のバイアス」などの概念を学ぶ必要がある。

 

(4)非正規活用の在り方

 「2018年問題」といわれる無期転換がこの春からはじまる。通算5年以上、同じ組織で働いてきた有期契約労働者が「無期雇用の希望」を申し出ることができるのです。企業はこれを断れない。

 また、同一労働・同一賃金の法整備も時間の問題である。これが決まれば、雇用形態だけを理由として待遇に格差をつけることは難しくなっていく。

 人件費のコストを抑えるために非正規を活用するという人事戦略は限界なのである。企業の戦略にあった非正規の在り方を再定義すべきでしょう。

 

(5)働き方改革の弊害を意識

 働き方改革には弊害もある。ひとつは、多様な人の「働きやすさ」だけを追及してしまい、「働きがい」が片手落ちになってしまうことです。人は、仕事で得られる満足度が高ければ高いほど、生産性も成果も高まる。

 ほかにも、業務量の見直しがないまま生産性向上のミッションが中間管理に丸投げされるケースや、仕事が終わっていないのに定時帰宅を強制される「ジタハラ」など、働き方改革の弊害も生まれている。

 働き方改革を確実に進めるための第一歩は、「業務の可視化、業務量の削減」ではないでしょうか。

 

(6)テクノロジーの活用で労働生産性を向上

 業務の棚卸し、業務量のスリム化を進めるにあたり、有効なのはツールの導入です。それを機にBPR(ビジネスプロセスの抜本的な再設計)も進めやすい。

 今は、「勤怠管理」、「経費生産」、「MA」、「BI」、「ビジネスチャット」、「グループウェア」など、さまざまなクラウドサービスが比較的低コストで導入できる。

 

(7)知的生産性の向上へ

 テクノロジーが進化し産業構造そのものを変革しつつある今、「働き方改革」が目指すべきは労働生産性の向上だけでは不十分である。

 多様な人が、それぞれの背景や個性を活かして、イノベーションを起こすことこそが「働き方改革」の最終ゴールである。

 イノベーションとは、何も一握りの人のものではない。現状を見つめ直し、より良い状態を模索する。その繰り返しが大きな変革へとつながっていく。そのためには、働く人ひとりひとりが幅広く情報を集めて物事をじっくりと考え、考えを深化させることが必要です。知的生産性の向上が次世代のテーマとなることは間違いない。

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