北方領土問題

 北方領土の帰属をめぐる交渉は明治時代にさかのぼる。1875年、日露の領土を確定させるため、千島・樺太交換条約が結ばれ、樺太(サハリン)はロシア領に、千島列島が日本領になった。1905年、日露戦争に勝利した日本は、ポーツマス条約で南樺太を手に入れる。

 

日露の認識のずれ

 今日の北方領土問題の原因は、1945年の終戦時における両国の認識のずれがある。

 日本とソ連(現在のロシア)の間には日ソ不可侵条約が結ばれていたが、ソ連は1945年8月9日に千島に侵攻。日本側は「一方的に日ソ不可侵条約を破棄された」と認識している。かたやロシア側は、「1945年2月のヤルタ協定で、アメリカとイギリスの承認を得て対日参戦した」と、正当性があると考えている。1951年のサンフランシスコ講和条約で、日本は千島列島及び南樺太を放棄したが、北方四島は千島列島に含まれていない。

 一般のロシア人の見方は様々である。「北方領土がロシアのものであることは当然で、議論するのもバカバカしい」「日本と対立しているなんて知らなかった」といった声もある。

 現在、北方領土交渉の基礎となっているのが、1956年の日ソ共同宣言である。ここでは、平和条約を締結して色丹島と歯舞諸島の二島を返還すると約束されている。これが北方領土交渉の基礎であると、2001年の第一次プーチン政権当時の日露首脳会談で確認された。

 北方領土には、ロシア人が約1万7000人住んでおり、ロシアによるインフラ整備も進む。ロシア軍の関連施設も設置されており、太平洋に面した不凍港として軍事的にも重視されている。

 なお、ソ連・ロシアはサンフランシスコ講和条約の締約国ではないということで、南樺太と千島列島の帰属は未定であるというのが日本の立場です。

 幸福の科学大川隆法総裁は、2016年12月7日、千葉県・幕張メッセで エル・カンターレ祭大講演会「真理への道」を行い、国際情勢が混迷する中で2017年以降世界が進むべき方向性を示した。この講演では、直後の15、16両日に控えていた日露首脳会談にも言及。「会談は乏しい成果に終わる」と見通し、安倍政権に対して国家戦略を基にした外交方針を描く必要性を説いていた。

 首脳会談は、この見通し通りに終わったが、以下に今回の会談を振り返ってみます。

事実上の「ゼロ回答」に終わった

 安倍晋三首相は、これまでロシアのプーチン大統領と多くの会談を重ねており、今回で16回目となった。お互いの信頼関係を構築し、北方領土の返還を模索してきた。

 今回の会談で、日本側はエネルギーなどの8項目で3000億円規模の経済協力に合意。また、北方領土をめぐっては、特別な制度の下で「共同経済活動」を実施することや、元島民が北方四島へ自由に往来できるように議論を進めることでも一致した。

 しかし、多くの国民が期待していた領土の返還をはじめ、トータルで事実上の「ゼロ回答」に終わった。

 

領土返還を遠ざけた安倍外交

 目立った成果のない首脳会談の結果に先立ち、大川隆法総裁は、講演会で、2014年のウクライナ問題に端を発する対ロシア制裁を引き合いにして以下のように語られた。

「もし、私の意見をきいて、ロシアに対する経済制裁をせず、『大半はロシア系住民が住んでいるクリミアにおいて、プーチン大統領が”邦人保護”のために動いたことに一定の正当性がある』ということを認めたならば、今年、少なくとも北方四島のうちの二島は返ってきたでしょう。

この機会を逃したのは、現在の外務省と安倍政権です。この見通しのなさについては、十分に反省してもらいたいと思います。まさに、行き当たりばったりで、基本的な理念や方針がありません。まことに恥ずかしいことです。

 日本がロシア制裁に参加しなければ、領土の返還が実現した可能性があったのです。

 確かに、ロシアにとっては、制裁を行っている国から「友好関係を結ぼう」と言われても戸惑うはずです。日本が本当に日露関係の未来を考えているのなら、制裁を解除するぐらいの強い意思を示すべきだったのです。

 

「哲学なき外交」を露呈

 安倍首相が政治家生命を賭けてまでも、領土返還を実現させたかったのであれば、もっと大胆な外交をすべきであった。

 例えば、日本側は会談に向けて、秋田犬の贈呈を打診したり、プーチン氏を山口県の温泉に入浴させたりして関心を引こうとした。友好関係を演出する意図が見え見えだが、果たして大統領が喜んだかは疑問です。

 経済協力についても、日本との領土問題がないミャンマーに対しては、ロシアの2倍を超える8000億円規模の支援を行う予定であり、ロシアへの経済協力は物足りない印象がある。さらに、今回の会談で、プーチン大統領を「国賓」として待遇しなかった点も、アメリカを含む制裁参加国への配慮が強くにじんでいる。

 日本がこのような小手先の「哲学なき外交」を続けていれば、プーチン氏を説得できるはずもない。

 

中国への対応が第一優先

 さらに、日本にとって重要な問題は、中国の驚異的な軍拡にどう対応するかである。

 大川隆法総裁は以下のように語られている。

「北方四島の問題をいったん棚上げしてでも、平和条約を結ぶべきだと、私は考えています。日本が、ロシアとの関係を強化し、アメリカとの関係を強化することが、次の『対中国戦略』につながるのです

 日本は、拡張する中国の進出を前に、戦力を尖閣諸島などに集中させなければならない。にもかかわらず、中国への警戒心が薄い欧米陣営の制裁に参加したために、ロシアを「中国寄り」にさせた経緯がある。ロシアを国際的に孤立させることが本当に日本の国益にかなうのか、再考すべきです。

 日本は、ひとまず北方領土問題を脇においてでも、ロシアとの平和条約の締結を優先させるべきでしょう。中国とロシアとの接近を分断し、中国の野望をくじかなければならない。

 日本が世界の平和と繁栄を守るためにも、今後の外交はますます重要性を帯びてくるに違いない。哲学を背景にした国家戦略が必要です。

 

 植民地問題のなかで、日本が北方四島の返還を要求してもロシアが返さない理由がある。ロシアはほかにもたくさん領土を取っているため、北方四島を返したら、ほかの国にも返さなければいけなくなるからです。

歴史認識 へ

「仏法真理」へ戻る