抗精神病薬による悪性症候群

 悪性症候群とは、ある種の抗精神病薬によって引き起こされた無反応状態をいいます。

 抗精神病薬による治療を受けた人の最大3%が、通常は治療開始から数週間以内にこの症候群を発症します。興奮しているために、薬の投与量を急激に増やしたり、最初から大量の投与を受けたりした男性患者に多くみられます。

 筋肉のこわばり、危険なほどの高熱、心拍数の上昇、速い呼吸、高血圧、昏睡などの症状が生じます。損傷を受けた筋肉はミオグロビンというタンパク質を放出し、これが尿に排泄されます。ミオグロビンによって尿が茶褐色になります。この状態(ミオグロビン尿)は腎臓の損傷や腎不全を起こす場合もあります。

 この症候群の患者は、通常は集中治療室で治療を受けます。抗精神病薬を中止し、発熱を管理します(患者の体をぬらして風を送って冷やすか、または特殊な冷却毛布をかけるなど)。また、筋弛暖薬(ブロモクリプチン、ダントロレンなど)を投与します。炭酸水素ナトリウムを静脈注射して尿をアルカリ性にすると、ミオグロビン尿を防ぐのに役立ちます。

 この症候群の患者の約30%が死亡しますが、残りの大多数は完全に回復します。回復後に同じ抗精神病薬を投与すると、最大30%の人が再びこの症候群を発症します。