食料・医療分野で活用されるゲノム編集 「神の領域」に立ち入りつつある新技術

 遺伝子を自由に改変できる「ゲノム編集」という最先端のバイオ技術が、農作物や家畜、養殖魚の品種改良、病気治療などの研究分野に急速に広がっています。

 ゲノム編集とは、狙った遺伝子をピンポイントで改変できる技術です。

 1970年代から用いられてきた「遺伝子組み換え」技術も、遺伝子を改変するという点では同じです。しかし、その成功の確率は1万分の1と言われるほど、操作の精度が低く、組み換え技術を適用できる生物も限られていました。さらに、操作方法も難しいという難点を抱えていました。

 一方、ゲノム編集では、9割近い高精度で狙った遺伝子を改変できます。また、ほぼすべての動植物に適用できて、操作も簡単で使いやすい。訓練すれば高校生でも使えるといいます。つまり、ゲノム編集とは、短期間・低コストで、簡単に思い通りに遺伝子を変えられる画期的な新技術なのです。

 

食料や医療に変革をもたらす

 このゲノム編集は、世の中に大きなメリットをもたらすと期待されています。

 例えば、食料分野。すでに、肉量が多い牛や魚、腐りにくいトマト、褐変しないマッシュルーム、収量の多い小麦、干ばつに強いトウモロコシなど、さまざまな新たな動物種が生み出されています。日本でも、初めて農業・食品産業技術総合研究機構(茨城県つくば市)が、ゲノム編集された稲の野外栽培を始めました。今後は、これまでの品種改良ではできなかった、安心でおいしく、健康に配慮した食品を低コストでつくることが可能になります。

 しかし、現在のところ、食品メーカーは、消費者の安全性への懸念に配慮しているようです。「植物油に加工された際にトランス脂肪酸を発生しない大豆」を開発した食品メーカーは、植物油として一般家庭に提供するのでなく、企業が揚げ物で使う油やスティック糊として商品化する予定です。

 医療分野では、エイズや白血病、がんに対する免疫療法、自閉症や筋ジストロフィーの治療など、さまざまな病気に対する応用研究が行われています。これまでの医療は、外科手術や薬剤投与が中心でしたが、今後は病気を引き起こす遺伝子変異を改変し、病気の根源を断つという治療法に変わっていくことが予測されます。

 

人の遺伝子を変える未来社会

 一方で、ゲノム編集技術が大きなデメリットをもたらす可能性も否定できません。

 特に懸念されるのが「人への影響」です。親が生まれてくる子供の遺伝子を改変して望みの子供をつくる「デザイナー・ベイビー」は、技術的に可能なところまできています。

 現在のところ、ゲノム編集で人の遺伝子を変えることの安全性は確認されていません。

 ゲノム編集は、社会に大きな変革をもたらし、人間を創り変えることすらできる技術です。今後問題になるのは、科学が「生命創造という神の領域」に入りつつある中、それをどこまで許容するかという点です。これを考えるのは宗教の役割になるでしょう。

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