マズローの欲求5段解説

 人間は皆何らかの形で、自分の存在の意味を考えるものです。 ある人は金持ちか貧乏かで、自分を計るかもしれません。ある人は強いか弱いか、体力で自分を計るかもしれません。  いずれも相対的な他者との比較において自分を推し量るのですが、人間には周りとの関係で自分を見るのに、いくつかの共通のレベルがあると主張した学者がいます。ブランデーズ大学のA.H.マズロー(Maslow)教授です。そのレベルを発案者の名前を取って「マズローの欲求5段解説」と呼んでいます。

 

5つの欲求  

 マズローの欲求5段解説では、人間の欲求は階層のように順序が連なっています。  そして下位の欲求が満たされるまでは、その上の欲求を満たすことは難しいとしています。しかも、人間が自己成長を求めるとときは、順に上位の欲求へと求めるものを高めていくものなのです。

1.生理的欲求

 人間の三大欲求である食欲、睡眠欲、性欲のことです。 種の存続の観点からも重要な欲求ですが、これにばかり捕らわれていると即物的、刹那的暮らしになってしまいます。また、この欲求は満たされてしまうと、急速に自分を駆り立てる欲求ではなくなります。

2.安全の欲求  

 危険を回避したい、生命の安全を確保したいという欲求です。より安全な場所に住みたいとか、水のきれいなところ、有機栽培の食べ物を食べたいなどというのもこの欲求の表れです。

3.帰属の欲求  

 グループや社会に属していたいという欲求です。すなわち、人に嫌われたくないとか、愛されたいという欲求で、自分自身のことから周りとの関係で欲求を考えるレベルです。

4.尊敬の欲求  

 人から認められたい、尊敬されたいという欲求です。グループの中で調和をとって良きメンバーでいたいというレベルから一段上がり、リーダーとなり、注目を浴びたいという欲求のことです。

5.自己実現の欲求  

 人から認められたいというレベルを超え、自分の信じることを自分の意志でやり通したいという欲求のことです。そのことで自分の生きてきた証になると考えるのです。
 

人間の欲求を促進する2つの要因

 アメリカの行動科学者F.ハーツバーグ(Herzberg)は、人間の欲求は2つの要因により促進されると言っています。  

 第一の要因とは、衛生要因といわれ、主に労働条件、対人関係、金銭など外的(環境的)要因のことです。「給料が上がると思うと頑張る」というようなものです。  

 第二の要因は、促進要因または動機付け要因といわれ、仕事への興味、達成への意欲、責任の増大、成長への期待など内的な要因のことです。  前者を「外発的要因」、後者を「内発的要因」と呼ぶこともあります。 

外発的な動機と、内発的な動機

 外発的要因による動機は、あまり長続きしません。満たされた時には一時的に不満は解消されますが、すぐに不足感に見舞われます。 反面、内発的な動機による欲求は、長く続きます。ある段階が満たされてもまた、先への期待となって欲求を高めていくことができます。内発的な欲求による動機で動く方が、心身ともに健全な前進が図れるということです。

 マズローの欲求5段解説に、ハーツバーグの外発的・内発的動機付け要因を合わせて、更に「利他」の想いの大小を加味しています。そして、動機が内発的で欲求のレベルが自己実現的で、しかも、その想いが利他的である欲求を『志』と呼んでいます。  逆に、欲求のレベルが第1段階の生理的欲求で、動機は外発的であり、「利自」(利己的な想い)の欲求を『欲望』と呼ぶのだと思います。

 本当の自己実現、それは「利自即利他」すなわち自分の自己実現を成し遂げることが、社会や人々の役に立つ奉仕の観点に裏打ちされていることが条件となります。  そのような自己実現の夢を、志と言ってよいと思うのです。

 「自利利他」とは自らの悟りのために修行し努力することと、他の人の救済のために尽くすこと。  この二つを同時に行うこと。また自らの努力により得たものを他人にも還元する、他人の為に動くことで自分も成長し何かしらのものを得ることです。社会・組織の構成員同士が互いに助け合う相互扶助にも通じるところがあります。

 「自利利他」は修行の有無、僧俗問わず、すべての人々を救う事を目的にする大乗仏教の根幹であり、他者に対する慈悲を重視し,悟りに到達しようとする宗教的実践でもあります。  この実践を専門用語で「菩薩行」と言います。日本に伝わる大半の仏教は大乗仏教でありますので、古来より日本仏教において重要視されてきました。

 何から始めれば良いのか、思いやりある言動とは何でしょうか。

 思いやりのある行動とは一口で言うのは難しい。他人のためとは言っても、相手にとって良かれと思ってやっても本当に相手の為になるのかわからないことも多々あるのも現実。

 利他の実践とは言うものの、実際に他人を救う、困ってる人を助けるのも専門的なスキルが必要になる場面も多々あり、ハードルが高いと思われるかもしれません。

 ですが、難しく考える必要はありません。色々ありますが、まずはこの3つから

・他人の幸せを祈ったり、他人の成功を称賛する。

・他者をねぎらい、些細なことでも感謝の言葉を口にする。

・なるべく笑顔でニコニコして過ごす。

 これで十分。利他は行えます。 そして、徐々に自分なりの利他行を実践してください。

 「他人の幸せ」は「自分の幸せ」「自分の幸せ」は「他人の幸せ」

 さすれば、自利利他の真髄「自利とは利他をいふ」「利他を以って自利と為す」に到れるかと思います。