営業のプロセス

 世の中には似たような商品やサービスがあふれている。もはや「つくれば売れる」時代ではない。顧客と直接コミュニケーションを取って、商品の魅力を伝え、購入・利用を勧める営業の役割が企業の業績を左右する。

 だが、同じような営業活動をしていても、営業マンによって成績は大きく異なる。

「頑張っているつもりなのに、断られ続けて心が折れそうになっている」「どうしたら成果が出るのか分からない」

 一方、人手不足の中、営業に十分な人材や時間を回せないと悩む中小企業も多い。「営業マンが育たない」「大口顧客頼みで、将来に向けた布石が後回しになる」などの課題は、どの企業にもある程度共通しているのでしょう。

 

リーダーの意識改革がすべて

 「徹底」する組織カルチャーはどうしたら根付くのか。最も大切なのはリーダーの意識改革です。例えば、日本電産では、目標が未達の場合、現場リーダーが「やり切る」覚悟で率先して動きます。それも1週間ごとに実績を管理し、徹底して未達根絶に向けてフォローします。プレッシャーだけをかけるリーダーは失格です。

 リーダーが目標から逃げずに戦う。同時に、しっかり組織全体を見て、目標達成のための正しい方向性、作戦を示す。それでこそ社員がついてくるわけです。

 人格と作戦策定能力を備えたリーダーが増えてくれば、社員の意識や組織全体のカルチャーも変わります。人間は誰しも「今日は昨日より良くなろう」と考えているもの。部下たちの良くなろうという思いを強めるのが、リーダーの役目だと思います。

 

 余力を生み出し、営業戦力を最大化させる

 仕事を点検して営業のための時間を生み出す

・品質やサービス向上に資するものを除き、会議はしない。必要なら夕方以降に行う。

・現在行っている仕事を洗い出し、優先順位の低い仕事のいくつかを思い切ってやめる。

・営業部が朝からパソコンを開いてメール処理やデスクワークをしている場合は、すぐにやめてもらう。

・計画立案や未達の原因分析のためにかけている時間、実際に営業に出ている時間がどれだけあるかを計ってみる。

 

「行動」へのスイッチを入れる

・目標を抽象的なものにせず、「月に100件訪問」「24時間以内に見積もり作成」など、数字を含んだ具体的なものにする。

・経営幹部や管理職が営業マンと個別に面談を行い、「モチベーションの問題」「能力の問題」「組織構造の問題」など、成果が上がらない原因を分析し、改善策を示す。

 

全社をあげて営業をサポート

・「顧客対応は営業部の仕事では?」「営業は営業部に任せておけばよい」という考えの社員がいれば、経営陣が中心となって、「営業が会社の価値を生み出していること」を全社員に繰り返し語る。

・「事務スタッフが電話で新規のアポを取る」「製造部門に商品の説明をさせる」「商品を発送する部署が、感謝の手紙を書いて同封する」「経理部門が、数ヵ月後にアフターフォローの手紙を送るか電話かけをする」など、各部門が営業部をサポートする仕事を最低でもひとつ実行する。

 

営業の魔法

 売れない日が続くと、「何とかして売ろう」と焦るものですが、まず、売ろうとするのをやめて、相手の話を聞いてみてください。というのは、営業の仕事とは、ものを売ることではなく、お客様の問題解決のお手伝いをすることだからです。そして、営業マンにはお客様と成長の感動を共有する使命があります。

 お客様の仕事がよりよくなるお手伝いをすることで、自分自身も人間として成長していく。すると、より高いレベルのお手伝いができるようになります。お客様はさらに喜ぶ。そうやって、成長の感動を分かち合うことで強い絆が生まれるのです。

 

誰を幸せにしたいか

 売ることを目的にすると、価値観の合わない人にも売ろうとします。誰でもいいから売る活動は必ずトラブルを生むものです。

 営業だけにとどまらず、働くことの使命は、「誰を幸せにしたいのか」という問いへの答えを探すこと。「なぜ売れないのか」「どうすれば売れるのか」という問いを繰り返す営業マンは、プレッシャーにつぶされます。いつも自分へ正しい問いかけをすることです。すると、商品に込められた作り手の思いや、それを売るあなた自身が大切にしている価値観に共鳴するお客様が目の前に現れます。

 正しい問いかけは、私たちの思考と行動を正しい方向へ導いてくれます。

 あなたの売っている商品を一番喜んでくれる人は誰ですか? あなたは誰に商品を売っているのですか? 知らず知らずのうちに、「この人は買わないだろう」「ここはやめておこう」と自分で決めつけて、可能性を狭めていませんか? この決めつけを打ち破ることで、新しいお客様を創造することができるのです。

 大切なのは、「この人を幸せにしたい」という、正直で誠実な心です。

 

売れない人の共通点

 売れない人と売れる人の違いを考えてみましょう。

 売れない営業マンは、買うつもりのない人、「ノー」の人を、「イエス」に変えようとしています。一方で売れる人は、買おうとしている「イエス」の人をもっと喜ばせて、気持ちのいいイエスにするにはどうすればよいかを考えています。

 では、どうすれば「イエス」の人に会えるかということですが、少なくとも、店に来てくれた人や商品について聞いてきてくれた人は、基本的に「イエス」の人です。興味や関心がなければ私たちに接点を求めません。

 会えたなら、その人は「イエス」の人なのです。だからこそ、「い感じ」で接するのです。せっかく会ってくれるのですから、気持ちよく過ごしていただける努力を怠らないこと。第一印象がよくない人はプロになれません。

 さらに言えば、売れない営業マンは、お客様に断る理由を与えています。

 例えば、洋服の販売で「いかがですか」とお勧めしたとき、お客様から「ちょっと色がねえ」と言われる。これが3回続くと、4回目には、「ちょっと色は悪いかもしれませんが、いかがでしょう」と、断りやすい言葉をかけるようになります。

 多くの人が、本来イエスと言ってくれるお客様に対しても、このように断られることを前提に話しかけています。

 自分から売れなくしているにもかかわらず、さらにしつこく「いかがですか」と聞くので、売れない上に悪印象を残してしまうのです。

 一方、売れる営業マンは、「この洋服を着てどこに出かけますか」と、イエスを前提に未来をイメージさせます。この根本的なスタートの違いで、お客様をイエスにもノーにもしているのです。

 

「技術」ではなく「魅力」

 営業には技術も必要ですが、何よりも求められるものは「人間的魅力」です。どんな人に人間的魅力を感じるかというと、素敵な笑顔、正しい言葉遣い、謙虚な態度、清潔感など、たくさんあります。自分の想像する限りの素敵な人を目指せばよいのです。

 他にも、靴の揃え方や髪が伸びないうちの散髪など、営業としての凡事を「知っている」だけでなく、「している人」は成績を上げています。

 売れない人には魅力がないのです。営業として当たり前のことを「知っている」だけで、「していない」うちは売れません。しかし、あるとき突然「し始める」と売れ始めるのです。

 また、売れる人を見ていると、常に「自分がどうしたいか」ではなく、「人から自分はどのように見えているか」「自分は何を期待されているか」を意識しています。自分がしたい髪型や着たい服を選ぶのではなくて、周りの人が望む自分になる努力を惜しみません。

 好感を持たれる姿勢とは何かを考え、「俺が俺が」という「我」を捨てる。そして、「おかげさまで」という感謝の思いで生きるのです。

 売れない日など長く続きません。なんでも「知っている」だけのつまらない人から、なんでも「している」実践の人になれば、誰でも売れる人に変われます。

 営業は神様に選ばれた人しか就けない職業です。そして、今あなたが営業をしているなら、間違いなくあなたは神様に選ばれた人なのです。

 

売れるマインドと言動を身につける

  売れないマインドを持っていないか点検する

・「売ろう売ろう」とするのではなく、「お客様をどうやって幸せにするか」を考える。

・「ノー」と言われることを想定するのではなく、お客様は本来「イエス」と言ってくださる存在だと信じる。

・ごまかしてでも売りたいと思っていないか、反省の時間を取って振り返る。

・買ってほしいと思うあまり険しい表情や物乞い調にならないよう注意し、悠然と構える。

・お客様が「買わない」という選択をしたとしても落ち込み過ぎず、自分に足りなかった点を学び、次に生かす。

 

気持ちよく買ってもらうための言葉を学ぶ

・「ちょっと値段は高めですが」などネガティブな商品紹介をしていないか点検する。

・「このワンピースを着たらどちらに行かれますか」など、ポジティブな声がけをする。

・深い商品知識を身につけ、商品に込められた思いやこだわり、商品を使うことで生活がどう変わるのかを、イメージしやすい言葉でストーリーとして伝える。

・一方的に話すのではなく、時には「間」をつくり、お客様に深く考えさせる。

・「もし、仮に○○を設置された場合、お色はブルーとベージュどちらにされますか」などと質問して、お客様の潜在的な購入意思を確かめる。

 

習慣づくりで感動を生む営業マンになる

・お客様のよき理解者となるため、一人一冊ずつノートをつくり、些細な情報まで書き留めておく。

・心を養い言葉を磨くために、良書を読んで心に残る言葉をストックしておく。

 

顧客との関係を深める視点

 継続して成果を上げるには、顧客との関係を深めていくしかありません。それには、顧客の課題や困りごとを発見し、それを解決していく努力が大事です。これは、営業マン個人任せでは限界もあります。

 企業の営業力は、「個別顧客対応力」「新規顧客開拓力」「顧客価値創造力」の合計に、「好印象頻度」を掛け合わせて決まると考えられます。

 「新規顧客開拓力」は、文字通り新しい人間関係を築いていくことです。個人の努力としては、人脈に関する情報を集め、実際に会いに行く努力が必要です。さらに、相手の困りごとに対して、まずはこちらが努力して相手に救いの手を差し伸べ、感動させるところまでいけば、相手は心を開きます。

 一方、既存顧客に対しては「顧客を教育する」という視点が必要となります。顧客が取り組むべき課題を発見し、営業側から解決のための情報や知識をあらかじめ提供するということです。

 縁がある顧客でも、しばらく何もしなければ、自社の商品に興味を示してくれなくなったり、競合他社に仕事をとられたりすることもあります。ですから、より顧客に近づき、顧客の課題を次から次へと見つけることで、関心を持ち続けてもらわなければなりません。

 

営業は創造性の高い仕事

 「顧客価値創造力」とは、営業部がアンテナとなって市場のニーズを探り、営業・宣伝部、開発部、製造部などを巻き込んで、今までにない商品やサービスを世の中に生み出すことです。これは、新規顧客の獲得にも既存顧客の売上増にもつながります。

 こうしてみると、営業とは、単なるセールス(売ること)ではなく、企業活動そのものであることが分かります。

 企業活動とは、「世の中に新たな価値を創り出し、それを提供することで見合った利益を得て、従業員を養い、世の中に継続して存在すること」です。ですから、全社を挙げて取り組むべきものです。

 特に、顧客との接点が多い営業部には、たくさんの情報が集まります。時には経営陣に掛け合って会社の仕組みを変えたり、新しい商品の提案をしたりして、新しい価値を創り出す使命があるのです。「私は営業部だから、他部署に口出しはできない」などと考える人が多ければ、会社は傾いていきます。

 営業とは知的で創造性の高い仕事なのです。

 

全体観の構築には理念が必要

 全社員が「営業」に当事者意識を持つには、「私たちはどんな企業を目指すのか」ということを考え続けることが大切です。

 維新後の日本は、国家としても崇高な志を持ち、企業も顧客を喜ばせたいという商人精神を持っていました。不幸にも戦後の日本は、効率よく儲けることを目指した結果、分業が進み「自分の仕事だけやればいい」という空気が蔓延しています。

 この哲学、理念不在の経営が発展の限界になっているのではないでしょうか。「どんな企業になりたいか」「どんな仕事をしたいか」という「思い」こそ、会社をまとめ、強くするのです。

 

営業のプロセス

 情報収集(一次訪問)

  ↓

 アプローチ(正式訪問)

  ↓

 関係構築

  ↓

 ニーズ把握

  ↓

 受注調整(商談・クロージング)

  ↓

 請求回収

  ↓

  アフターケア

 顧客の課題や困りごとを解決することで関係が深まり、 企業の営業力も高まる。

 

営業力の公式

  企業の営業力

  = (個別顧客対応力 + 新規顧客開拓力 + 顧客価値創造力) × 好印象頻度

 それぞれの力を磨きつつ、会社全体として好印象を積み重ねることが大切。

 営業部以外の社員が顧客と接した時に与える好印象、商品の使いやすさや良いイメージなど、すべてが営業力アップにつながる。

 

営業は企業活動そのものであり、全社を挙げて取り組むべきもの

 

世の中に価値を生み、売上を最大化するために

組織として営業マンを育てる

・営業リーダーは、営業マンの成果(売上、新規顧客数)だけでなく、営業マンの行動(営業プロセス)に注目して評価し、アドバイスする。

・時には、営業マンに同行し、強みと弱点を把握する。それによって、営業マンを正しく評価し、育てていく。

新規顧客を獲得する

・新規顧客となりそうな相手の悩みごと、困りごとを丁寧に聞く。

・顧客になってほしいという相手に対して、時には会社を挙げて困りごとを解決する。

・顧客とのコミュニケーションで得た知見を元に、商品やサービスに関する改善提案を行う。

既存顧客と関係を深める

・既存顧客のもとに最低でも月に1回以上足を運び、コミュニケーションをとり、 情報を集める。

・集めた情報をもとに、顧客(顧客企業)が解決すべき課題とは何かを常に考える。

・顧客から商品やサービスに対する要望やクレームを受けたら、本社の関係部署にすぐに報告を入れ、その結果を顧客にも伝える。

 成果を上げる営業マンや営業部には理由がある。それは、相手のニーズを探り、それを満たすために徹底的に努力しているということです。商品やサービスを売ること自体を目的とするのではなく、あくまで相手のニーズを満たす手段と考える。

 幸福の科学大川隆法総裁は、法話「繁栄を招くための考え方」で、以下のように述べている。

「自分が売りたいものかどうかではなく、相手がどういうものを欲するか。いろいろなところへ行って、会社の事情や必要なものを聞いて、お客様のニーズに応えようと努力している。そういうところが不況でも生き残っているわけです」

 営業とは、相手の幸福を願う「与える愛」の実践行為と言える。営業の本質に気づき、「愛の実践」をできる人が増えたなら、その組織は「勝てる組織」へと脱皮できるに違いない。

参考

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