会社をつぶさないための反省ポイント
1 すべての責任は社長一人にあると自覚せよ
「デフレでモノが売れない」「円高で輸出企業は苦しい」 新聞やテレビが日々伝えるニュースの多くは暗い。
経営が苦しい中小企業の社長は、そうしたニュースに接するたびに、「そうだ。会社が苦しいのはオレのせいではなく、景気が悪いからだ」と妙に癒されるかもしれない。
だが、そう考えたところで経営が改善するわけではない。
まず、社長が理解すべきは、「会社が存続するには、お客様に必要とされ続けなければいけない」ということです。裏を返せば、「お客様に必要とされない会社はつぶれる」ということです。
どんなに不況といっても、潰れない会社のほうが多いし、業績を伸ばす会社もある。厳しい見方をすれば、景気が悪くなって倒産した企業は、それまで外部要因に下駄を履かせてもらっていたとも言える。
これに加えて、社長に欠かせない大事な心構えがもう一つある。幸福の科学大川隆法総裁は、経営書『経営入門』でこう指摘された。
「『小さな会社では、社運の九十九パーセントがトップ一人で決まる』と言っても過言ではないのです。したがって、トップというものは、従業員の働きが不十分であることを責めるよりも、まず、自分自身の能力と責任について思いを向けなくてはなりません。」
2 経営に必要な数字に強くなれ
中小企業の社長の多くが、経営に必要な数字を知らない。
たとえば、「利益」一つとっても、いくつか種類がある。「売上」から「仕入れ」を引いたものが「粗利(売上総利益)」で、そこから経費を引いたものが「営業利益」。さらに、そこから営業外損益をプラスマイナスしたものが「経常利益」で、そこから特別損益をプラスマイナスしたものが「税引き前利益」。そして、そこから税金を引いたものが「純利益」となる。
こうした数字すら知らずに、会社を経営している社長が少なくない。これでは、なぜ業績が振るわないのかという原因を正確に分析することは難しい。
さらに、業界全体の売上規模や平均値、今後の見通し、その中で自社がどのレベルに位置しているのかなどについて、ほとんどの社長が把握しないまま、日々感覚的な経営を行っている。
数値信仰に陥って、数字さえ上がれば手段は問わないようになっては本末転倒だが、経営にまつわる数字は会社の状態を表す。健康診断のように、身長や体重、視力や聴力、血液検査などの個別の数値とトータルを見ながら、どの部分が弱っているか、どこを強みにして次はどんな手を打つかなどを考えなければいけない。
3 事業計画のない経営はありえない
ほとんどの中小企業には事業計画がない。
事業計画書には、事業目的をはじめ、事業内容や売上・利益の目標、資金繰りなどの財務計画などを記すが、そうした「ビジネスにおける羅針盤」とも言えるものを持たずに、大海にこぎ出そうとしている企業がほとんどである。
事業計画のない社長は「勘と度胸と場当たり主義」で会社を経営しているというが、その勘が過去に形成されたものであれば、時代の先が読めず会社が傾く。
また、事業計画のない経営は、ゴールや走行コースを設定しないまま走り出すマラソンのようなもので、社員もどの方向に どれだけ走ればいのかが分からないまま走らされ続けるので、どんどん疲労とストレスがたまっていく。従業員に正しい努力をしてもらうためにも、事業計画は欠かせないのである。
社長は、『とにかく売上を上げろ!』と社員をどなり散らすが、事業計画のない会社は、何のためにいくら稼ぐ必要があるのかという認識が共有できていないので、結局社員が社長の顔色ばかりをうかがうようになる。
しかし、その社長自身がどこに向かって走り、今どの地点にいるのかということさえ分からないので、当然のように会社は迷走する。
4 絶えざる勉強と研究を
経営者は日々経営の勉強をしないといけません。同業他社の研究も欠かせない勉強の一つです。
「中小企業の社長のほとんどが井の中の蛙で、視野が狭い」と指摘するが、業界の標準的な努力や伸びている他社の研究もせずに成功しようと思うほうが間違っている。
5 お人好しをやめ集金力を高めよ
お人好しの社長によくあるのが、売掛金の回収先で「もう少し支払いを待ってほしい」と泣きつかれ、情にほだされて本当に待ってしまうことです。だが、このパターンは結局自分の会社の首を絞めてしまう。心を鬼にして早いうちに取り立てなければならない。
集金ができなければ支払いができず、支払いが滞れば、結局多くの人に迷惑をかけてしまう。同様に手形取引も原則やめるべきである。企業が倒産する原因の多くが手形の不渡りと言われる。自分の会社が悪くなくても、取引先の受取手形が不渡りになれば連鎖倒産の危険が出てくる。
理想的なのは現金決済である。手形取引をやめれば、「入るつもり」「払えるつもり」のお金がなくなり、現金決済にすれば、収入も支出も明確になって、資金が足りているか否かが一目瞭然になる。「手形取引をやめることはできない」というのは思い込みであり、努力をすればかなりの程度まで減らすことは可能です。
大川隆法総裁は、『未来創造のマネジメント』の中で次のように指摘する。
「『現金決済を中心にして、常にキャッシュフローを考える。そして、手元か銀行に資金を置くようにし、借金はなるべく早く返していく』というのがデフレ時代の基本戦略です」
6 強みに特化して徹底した努力を
中小企業が、100倍の資本や1000倍の人員を誇る大企業に正面からぶつかって勝つことは万が一にもない。中小が取るべき戦略は自社の強みを生かすこと。安易な多角化を図るべきではない。
本業が不振になると、無理な新規事業に手を出してしまいがちだが、多くの場合失敗に終わる。本業の収益部門を伸ばすことに経営資源を集中し、徹底的に努力することが大切です。
不振企業の多くは、単純な努力不足、工夫不足であることも多い。どうすれば我が社が生き残ることができるかを、寝ても覚めても考え、夜に日を継いで研究してこそ道は開ける。日中から「客が来なくてヒマだ」と愚痴をこぼしているようでは会社がつぶれても仕方ない。
また、環境が激変する中では、新規開拓や新規事業も大切になる。しかし、本業が不振になって不安が高じてくると、普段なら引っかからない詐欺まがいの儲け話につい乗ってしまうことがある。会社が傾くと、”怪しい話”が集まってくるので要注意である。わらをもすがる心境になったときこそ、安易な儲け話に乗るのではなく、自らの強みを冷静に見極める必要がある。
強みに特化して、徹底した努力を積み重ねている真面目な社長は、安易にうまい話には乗らないし、悪い虫も寄ってこない。
7 必要に応じてリストラの断行を
何よりも必要なのがリストラである。デフレの時代には、モノの値段がどんどん下がっていくので、他社との競争が熾烈を極める。
大企業のメーカーでさえも、人件費の安い中国に工場を建てたと思ったら、今度はもっと安いタイやベトナムに建てるなど、各社とも乾いた ぞうきん をさらに絞るようなコスト削減で、他社よりも1円でも多く商品の単価を下げる努力を行っているのが現状である。
社会全体に「値段は下がるもの」という認識が広がっているので、中小も赤字ギリギリの価格で売れるように、仕入れを叩いて原価を下げたり、流通の中抜きを外して、直接消費者に売り込むなどの創意工夫が欠かせない。
無駄なコストを削り、無駄な仕事を削り、それでもダメなら人員削減も必要になる。
景気のよいときに、親戚や知人から頼まれた人を雇ったりして、業績には結びつかない余計な人件費を抱える会社も多い。だが、パナソニックのような大企業が万単位の人員削減を発表したことからも分かるように、会社そのものの存続がかかっている緊急事態では、非情な決断も必要です。
リストラには反作用も大きい。恨まれもするし、罵詈雑言も浴びる。しかし、それを断行しなければ、社員全員が路頭に迷うことになりかねない。この腹が括れるかどうかが会社の運命を決める。
中小企業には、びっくりするぐらいの割合で、経営計画や事業計画というものがほぼないと言っても9い。
こうしたものは夢を実現するための羅針盤です。羅針盤のない航海では、自分がどこに向かっているのかさえ分かりません。
従業員もどこを目指して走ってよいか分からないので、何のために売上を上げなければいけないのか分からず、社長の顔色だけをうかがうような組織になります。経営者は、事業が伸び悩んでいるときこそ経営計画や事業計画を作るべきです。
苦しいときに中小企業でありがちなのが、「勘と度胸と場当たり主義」だけで乗り切ろうとする経営者。それは、過去の成功体験の上に築かれたものなので、時代の先を見通した判断になることは少なく、業績を回復させるのは難しいでしょう。
経営が苦しいことを環境のせいにしてはいけませんが、環境は冷静に分析しなければいけません。自分の会社の産業規模や業種の将来性などをよく見極める必要があります。
とことんキャッシュにこだわる
経営者の多くが日々の資金繰りに頭を悩ませていると思いますが、資金繰りが悪化するということは、今ある既存の商品やサービスが売れていないということです。こういうときに、いちかばちかの設備投資をする経営者もいますが、そんなものが上手くいくはずがない。会社を立て直すためには、まず、支出を収入の範囲に収めるということから始めなければなりません。
利益が出ていてもキャッシュ(現金)がショートしたら、倒産することだってあります。デフレ下では、現金の価値が高まるので、余計なベンツや不動産など現預金以外の資産を現金化したり、なるべく手形取引をやめて現金取引にしたり、滞留した売掛金は取り立てにいくなど、とことん現金にこだわらないといけません。連鎖倒産は たいてい手形が原因です。
「頑固な経営者」というのもカッコイイかもしれませんが、結果が出ていないのなら今のやり方に間違いがあると知るべきです。大きな時代の流れの中で、いかにバランス感覚を持って対応できるか。そのためにも、これからの経営者は、日本だけではなく世界の政治経済情勢にも関心を持ち、20年先、40年先から今のあり方を考えるという、空間的にも時間的にも広い視野を持つことが必要です。