企業の成長

成長企業の経営者は強い志と責任感を持っている

 成長する企業は、経営者自身が強い志と すべてを自分の責任ととらえる姿勢を持っています。中小企業では、よく「取引先といい関係を築いてビジネスが続けばよい」「税金対策で利益は少なくてもよい」などと考える人がいます。しかし、成長する企業は、最初から「世界を目指す」という姿勢を持っていたりします。

 志やビジョンを明確に誰にでも分かる形で「語れる」ということです。

 小さな企業の場合は、その前段階として経営者の「熱意」が必要です。「理屈抜きで絶対やるぞ!」という気持ちです。みんなが反対しても、「そうではない。やるんだ」と言い切れる強さ。この熱意があって、成長できます。

 ただ、熱意だけだと、悪い事業でも成長してしまったりします。そこで「感謝」が必要になります。熱意があれば成長できますが、感謝があれば繁栄します。ここで言う繁栄とは、自分だけの成長ではなく、自他ともに富をもたらすという意味合いです。成長した時に「皆様のおかげだ」という感謝の気持ちを持っていると、さらなる周囲のサポートが得られますし、無用な嫉妬を受けることも少なくなります。その結果、ますます成長するという循環が起きるのです。

 

プロセスがしっかりしている企業は伸びる

 ビジネスは政治とは違うので、ある程度の議論をしたら、早く決断して物事を進めないと、競争に敗れます。成長する会社は、素早く物事を決断できる仕組みを持っています。

 よい商品、よいサービスがあるだけではダメで、それを世の中に流通させるためには、製造におけるPDCAとか、ディシジョン・メイキングなどのプロセスについて、あらかじめ合意ができていて、それを実践するための訓練や教育がなされている必要があります。

 また、プロセス自体を変えていく努力も大事です。一度、プロセスを作っても、新しい状況ができると対応できなくなるので、チャレンジしてプロセスを変えないといけません。その原動力は「情熱」です。情熱があるから、「もっといいものをつくるには、このプロセスではだめだ。何か次のものを考えないと」と思うわけです。これができないと組織が官僚化して成長が止まることになります。

 プロセスには、変えてもいいプロセスと変えてはいけないプロセスとがあります。「議論はウィークリーミーティングでします」「朝礼でします」というのはアプリケーションです。この両者は分けておく必要があります。「全部変えるんだ」といって、原理原則を壊してしまっては組織が混乱するだけになる。

 

違うタイプを使える器をつくれるか

 プロセスを作るには、社長の自己変革が必要です。通常、中小企業やベンチャー企業の社長は営業か技術畑出身で、自分で何でもやってしまう自己完結型の職人タイプが多いのですが、次の段階に行くには プロセスを作る必要があり、そのためには、新たな人材が必要です。その時に、社長は自己完結型であることをやめて、寛容性を身につけないといけません。自分とは違うタイプを認めて、仕事を任せる。これができるかどうか、その度量があるかどうか、それが成長するかどうかを分けます。

 その時に、「この人は自分より上なので降ろせない」と言って排除したりしないか、優秀な人との出会いに感謝して、その人を尊敬することができるかどうか、器量が試されます。これをクリアできれば会社のレベルは一段上がります。

 

「成長の瞬間」はいつ訪れるか

 企業が成長する瞬間というのは、ヒット商品が出た時、新しい技術が世の中に受け入れられた時、あるいは小さくとも新しい市場を創って独占的な立場を確立する時です。成長するとは、お客様ができて、お金をいただくということです。

 ただ、実際にはそのかなり前の段階で、相当な努力が必要で、その事業に投資するという経営判断がなければなりません。可能性のある方向に対して、ある程度広く種をまく活動を着実にやっているケースが多い。もちろん、ある時に社運をかけて「これでいこう」という判断はあります。しかし、それも事前の種まきがあってこその話です。

 また、新しい技術もいずれ衰えていくので、種まきをやり続け、新しい価値を生み出し続けないと成長は止まってしまいます。一つのテクノロジーが世に出るには10年以上かかるものです。つまり、「この分野には将来性がある」という分野に研究開発の投資をすることが大事です。従って、先見性も大事です。

 日頃から「仕込み」をしてヒット商品を出していくというのは王道です。日本の中小企業の場合、もう一つの考え方があります。それは「逆境が成長のチャンスをもたらす」ということです。不況になると、親会社から「納期半分、金額半額、性能は倍」と言ってきます。そこで「できません」と言ってしまうと、他社に乗り換えられてしまうわけです。それが嫌なら、できるようにしなければならない。しかし、これがチャンスとなります。

 

現場にチャンスの種が転がっている

 チャンスを見極める上で失敗するポイントというのがあります。それは「現場を見ない」ということです。思い込みで動いてしまうことです。

 お客様からのフィードバックも大事にしなければいけません。顧客のニーズを間違って把握しないためにも、直接行って生の声を聞く必要があります。100通、200通のEメールよりも、顧客の一言の方が大事だったりします。実際、最後の一言ですべての判断がひっくり返ることもあります。ミーティングの終了後に退席しながら、「まあ一言で言うと、お宅の製品は大きすぎるんですね」とポロッと漏らしたりします。それで初めて「それが問題だったのか!」と分かったりすることがあります。

 部下の報告を鵜呑みにしないためや、いろんな「思い込み」を外したりするためにも、社長が行くということが大事です。全部行く必要はないにしても、要所でチラッチラッと行くだけで、ウソ報告はかなりなくなります。

 「本業でないところで欲をかくな」とも言えます。不動産やデリバティブの資産運用で失敗するのも、知らない分野で欲をかくからです。基本的にビジネスは価値の再生産であり、実体経済に基づくものです。「顧客が喜ぶ」というのがビジネスの基本の「き」です。顧客を喜ばすためにリスクを冒すのは構わないのですが、単に儲けるためにリスクを負うのは間違いのもとです。結局、そこは企業家としての志のところに帰結してくるのかもしれません。「何のために企業は存在しているのか」という軸に合っているのかどうか、その軸がブレなければ怪しい話をチャンスと見間違うことはないはずです。

 怪しい話を持ち込む人は、まるで本業に合致していて、世の中の役に立つかのような説明をしてくるのも常なので、気をつけなければいけません。また、商売が苦しい時ほど、そういう話が舞い込んできて、よい話に見えてしまうので要注意です。

 

成長が失われる瞬間

 成長を果たしても、その次には転落の危険もあります。老舗の悲劇と言って、ブランドが確立すると、今度はそれにぶら下がってしまう。その結果、新製品や新チャネルの開拓といったチャレンジをしなくなる。すると、成長が失われ、衰退に向かいます。ブランドが強い企業ほど、この落とし穴にはまりやすいので注意が必要です。

 社長のマインドが原因で成長が止まることが3つあります。一つは頑固になること。成功することによって人の言うことを聞かなくなり、「私はこうしてきた」「これまではこうだった」といって変化を拒むことです。

 二つ目はお人好しの光明思想。夢みたいな事業にお金をつぎ込み始めるのが典型的なパターンです。

 三つ目は英雄気取り。浮気やギャンブルに走ったりします。自分を飾るためにお金を使うようになるパターンです。それで慢心して経営が傾いていきます。

 経営者は、「諸行無常」という言葉を悟る必要があります。ところが、一度うまくいくと、ずっとうまくいくと考えてしまいます。しかし、どんな優れた技術も商品も いずれは滅びていきます。

 「荒天に準備する」という姿勢が大事です。トヨタなどは、うまくいっても「今日が最悪」と言うそうです。少しでも明日よくしようという精神です。

 うまく行っている時に内部留保を確保しておくことが大事です。企業は絶えず新しい価値を生めるように、お金を使う必要があります。永遠に存続するのが理想ですから、そのためにも、利益を貯めて、価値の再生産のために投資しなければいけません。厳しい時代ほど、これを普段やっているかどうかで差がつきます。

 

成長するために必要なこと

 結局、成長するためには、「お客様を大切にする」ということに尽きます。お客様がお金を払わなければ会社は潰れるわけです。その上で市場を大きくする努力をしなければなりません。

 そして、経営者は楽観主義者であるべきです。

 ただ、その会社の中に、その楽観的なビジョンを現実のものにするリーダーが多数存在します。会社の職位に関係なく、目標を具現化できる実行力のあるリーダーが要所にいるのです。そこが単なる「お祭り騒ぎ」カルチャーとは違うところです。

 成長するためには、まずお客様を創るという努力が必要です。企業とは利益追求ではなく、顧客の創造です。そして、お客様をリピーターにし、さらに他の客に勧めてくれる営業マンへと変えていくわけです。

 しかし、お客様をどれだけ増やしても、それは全体の一部に過ぎません。現在お客でない人を見込み客に変えていく必要があります。「なぜAさんは買ってくれたが、Bさんは買ってくれないのか」の研究が必要なのです。

 また、理念を固め、ビジョンをつくり、判断につなげるための論理を構築する訓練も必要です。日本の企業はまだ理念やビジョン、スローガンの定義を曖昧にしています。これがごちゃごちゃになっていると、立派な理念を掲げても、日頃の活動につながらないのです。ある百貨店の理念は「お客様の満足」ですが、行動指針として「ゴミをまたいで歩かない」と言っています。「ゴミを見つけたら処理をせよ」という意味です。こうすると理念と行動がつながります。「今日の行動をどうすべきか」まで理念を落としこまないといけません。これができると強い企業になります。

 これからは、安心、安全、平和、繁栄、豊かさといった目に見えないものの価値を、商品やサービスに付加できるかどうかが大切になるでしょう。これは、世の中を幸福にするためのキー・コンセプトです。日本はこの分野で世界に貢献できる可能性を持っています。それを堂々と世界に向かって発信しなければなりません。

 結局、志の問題に戻ります。志を大きくすると、自我を捨てて他者を受け入れることができるようになる。そうすると、人々が手助けしてくれるようになるので、事業も大きくなっていく。こうして成長の循環が始まるわけです。

参考

成長に伴うリスク

 企業の成長がもたらすものの一つに経済的な豊かさの実現がある。経済的な豊かさの実現は、人々の多くの悩みを解消する。悩みの7、8割は、経済力がつくと以外に解決するものなのです。

 さらに、企業の活動を通して、経営者および従業員が仕事に天命を見出し、人生をかけて取り組み、人々に喜ばれる財・サービスを提供することが出来れば、世の中の幸福前進を推し進めることになる。

 

「経営とは難しいものです。急発展したために潰れる会社もあるのです。

 単品商売を行い、ワンパターンの勝ち方をして、一気にシェアを取った場合には、割とうまくいきますが、シェアを取り切れなかった場合には、やがて反撃に遭って潰れることもあります

 「発展したあと どう生き延びるか」ということには、けっこう難しい面があります。兵線が伸びすぎると、経営が緩くなってくるので、撤退戦が出来なくなることもあるのです。

 したがって、今、成功しているものが今後もよいかというと、必ずしもそうではありません。先のことについては どうなるか、まだまだ分からないところがたくさんあるのです。」

「社員数が十人程度の会社が、やがて三百人や五百人の規模になったときに、その十人のうち、会社に残っているのは 二人か三人と思わなくてはいけません。

今は一緒に和気あいあいと仕事ができていても、会社が大きくなるにつれて従業員たちが落ちこぼれてきます。能力が足りなくなるからです。十人規模の会社でよく働いている人であっても、従業員が増えて部下を持てば、仕事がうまくできなくなってくるのです。

百人、二百人、五百人と従業員が増えていく過程で、最初のころにいた従業員の多くはいなくなります。十人のうち七人か八人は辞めさせられたり、自分から望んで他社に転職したり、病気になって入院したりしまったりします。残念ながら、人間の能力というものは それほど急には大きくならないからです。

 ですから、そのへんのことをよく知らなくてはいけません。家族主義的でアットホームな雰囲気、社員が和気あいあいとしていることが好きなのであれば、現在の規模か、それに毛の生えたぐらいの規模にとどめるべきでしょう。急に規模が大きくなると、現在の社員のほとんどと別れるようになるのです。

 社員がいなくなるうちはまだよいのですが、会社がもっと大きくなると、人様に任せないと経営ができなくなり、社長自身も会社を去らなくてはいけなくなります。

 あらかじめ それを知った上で、「自分が経営者であろうとなかろうと、どちらでも構わない」と考えるのであれば、あるいは、その会社の仕事に公益性が強く、「自分が経営者でなくても構わない」という気持ちがあるのであれば、それでもよいでしょう。

 会社が時代の潮流に乗りすぎると、そういうこともありえます。それを知らなくてはなりません。」(『未来創造のマネジメント』P-71~72)

 同業他社の努力や お客様が何を選ぶかという結果をよく見て、自分に与えられた「分」や器などを見通す目も必要であって、「自分にふさわしい結果が現れてくる」ことを知らなければならない。

 人間には欲があり、ある程度のところまでは これを伸ばすかたちでやっていけるが、ある成長点を超えたあたりから、今度は欲を捨て欲を畳んで絞り込むことが必要になってくる。

 このように、変わってくる成功の原理に対応できる人が さらなる成功を続けることになる。

 総裁は、『リーダーに贈る「必勝の戦略」』で以下のように説かれました。

「「チェーン店を広げよう」と思っている経営者は、「自分の会社のチェーン店が、日本中に、何百、何千と広がっていくことこそが理想である」と考えているでしょう。しかし、世の中には、自分の会社だけが存在するわけではなく、同じような仕事をしている同業他社がたくさんあります。
 同じようなコーヒーチェーンもあれば、同じようなラーメン屋も、同じようなスーパーもあります。
 「外食産業では、開店して三年以内に約七十五パーセントが撤退する」というのは、「過当競争によって同業者が潰し合っている」ということでしょう。日本の人口自体は、いま、ほとんど増えないので、過剰な供給があれば、結局、「お客様に選ばれる」というかたちで淘汰されることになります。
 自分の会社が発展することだけを考えている人から見れば、それは、なかなか受け入れがたい結果であるかもしれません。
 ただ、もう一つ別の視点、すなわち、全体を見る目も必要です。同業他社の努力や、「お客様が何を選ぶか」という結果をよく見て、自分に与えられた「分」や器、与えられるべき名誉というものを、じっと見通す目も必要なのです。
 「自分にふさわしい結果が現れてくる」ということは、知っていなければいけません。「希望は実現する」とはいえ、やはり、理想の難度が高くなればなるほど、実現の可能性が低くなることは事実です。
 人間には欲があります。その欲は、ある程度までは、その人を成長させるための原動力になります。しかし、その欲が拡大していく過程では、足が絡まって倒れるようなかたちで、うまくいかなくなることもあります。
 船の底にカキ殻がたくさん付いてくるように、成長に伴い、いろいろな欲望が付随して現れてきて、邪魔になってくることもあれば、他の人の考えや人間関係などで、しがらみができることもあり、ストレートにいかなくなるときがあるのです。
 ある程度のところまでは、欲に基づき、「欲を伸ばす」というかたちで元気にやっていけますが、ある成長点を超えたあたりから、今度は、「欲を捨てる。欲を畳んで絞り込む」ということが必要になってきます。このように、成功の原理が変わってくることがあるのです。
 槍術では、「槍は突くよりも引くほうが難しい。引く速度がかなり速くなければ名人にはなれない」と言われています。槍を突いて穂先が刺さっているあいだは、槍を縦横無尽に使うことができないからです。引くのが速い人の場合は、槍を自由に動かせる時間が長く、その範囲も広いのです。
 欲は次から次へと出てきますが、「これは、自分には、ふさわしくないものだ。自分の器、自分の適性から見て、ふさわしくない」と思ったとき、あるいは、時流や時期を見て、「いまは、ふさわしくない」と思ったときには、欲を畳み、そして、次に備えることが大切です。それができる人が、さらなる成功を続けることになるのです。」
(151~154ページ)

 

世界一を目指す経営

 現実の厳しさを知りつつ理想を求めることが、企業の成長には必要になります。

 大川隆法総裁は、『未来創造のマネジメント』で以下のように説かれました。

「常に「世界初」「世界一」の商品なり、技術なり、サービスを心掛けていく必要があります。

 実際上、なかなか世界一にはなりませんが、どんなに小さな企業であっても、あるいは隙間産業であっても、「この工夫は世界一」「この技術は世界一」「商品のうち、この部分は世界一」ということは可能です。小さなものでもよいので、まず「これは最高だ」と思えるものをつくり、それを「面」に広げていくことが大事なのです。

 先発の大きな企業といきなり全面戦争をしても勝てるはずはありません。後発のものは、必ず狭いところ(ニッチ)から攻めていかなければ駄目なのです。それは商品力でもよいし、サービス力でもよいし、工夫した技術でもよいのですが、まず狭いところから入っていくことです。その狭いところで多少自画自賛もあるのでしようが、「世界一だ」と思うものをつくらなければ駄目なのです。

 そして、それを「点」から「面」へと しだいに広げていくことが大事です。一ヵ所で勝ったら、次は別の点で勝ち、さらに別の点で勝つというように、三つぐらい「点」で勝てば「面」をつくることができます。そのようにして だんだん広げていくわけです。

 理想は大きく、しかし、実際の戦いにおいては、手堅く攻めていって勝たなければなりません。」(P-185~192)

 

成長企業は徹底的に与えている

なぜ、与えることができないのか

 「まずは与えなさい」という教え自体は古くからある。

 「自分がしてほしいことをまず人にしてあげなさい」という黄金律(ゴールデン・ルール)もそうだし、「損して得とれ」という言葉もある。誰もが「与えること」の大切さは知識としては知っているわけだが、実行となるとなかなかできないのが現実です。その結果、「与えたのはいいけど、後で戻ってこなければ、丸損になってしまう」と考えて、与えることを躊躇してしまう。かといって、確実に利益になるようなサービスは、すでに他社もやっていることが多い。他社と差別化を図るには、「そこまでやるか?」というような与える行為が必要になってくるのです。

どうすれば与えることができるのか

 与えれば目先の損が出て、与えなければ差別化できないという ジレンマ の中で、どうすれば確信を持って与えることができるのでしょうか。

 そのためには、与えると豊かになるということが、単に「なるかもしれない」という可能性の問題ではなく、また昔から言い伝えられた教訓だからという道徳レベルの話でもなく、いつ誰にでも当てはまる法則だと腑に落とすことが大切です。

 『リーダーに贈る「必勝の戦略」』には、次のような法則が紹介されている。

「この世においては、物を与えれば、与えた分だけ自分から減るように見えます。しかし、霊界の法則においては、与えれば与えるほど、その人がますます富むようになっているのです。『与えれば与えるほど、与えられる』というのが霊界の法則なのです」

 この世には「商品を一つ売れば、その分在庫が減る」という目に見える物理的な法則のほかに、目に見えない法則も数多く存在している。「引き寄せの法則」や伝統的な仏教でも説いている「原因・結果の法則(縁起の理法)」などがそうです。それと同じように、「与えるほど与えられる」という法則が存在しているというわけです。

より多くの人に最高のものを与え切ろう

 この法則は私たちが日常的に経験していることでもある。

 例えば、同じ商品を扱っていても、満面の笑顔で代金をいただく店と、お礼も言わず無愛想に代金をもらう店とでは、「笑顔を与える」店を選ぶ。また、必死の経営努力でコストを下げ、1円でも安く売る店を選ぶ。あるいは、自宅まで商品を届けてくれない店より届けてくれる店を選ぶ。

 顧客は常に「与えてくれる」方を選ぶ。その結果、「より多くの人に最高のものを与え切ろう」と思って生きる者が栄えていくことになる。

 もちろん、世の中には「奪って成功する」というパターンがないわけではない。しかし、そうして得た成功は一時的なもので終わる。「泥棒」や「振り込め詐欺」で大企業を築くことはできない。

 ただ、「与える」にあたって、一つの注意点がある。与えれば豊かになるからと言って、商品をタダで与えてしまえば会社は潰れるしかない。

 長く与え続けるためには、変化する顧客のニーズを的確につかんで適正な利益を確保する必要がある。知恵が必要だということです。

 まして、現在のような厳しい経済環境においては、顧客の目は非常に厳しいものになっている。生半可な与え方では生き残れない。そのためには、常に新しいものを生み出し、日々に創意工夫を続ける必要がある。ただ与えればよいというわけではなく、知恵を絞ってよりよく与えていかねばならない。でなければ「現状維持は破滅への道」となってしまう。

 しかし、厳しい道程を経て与え続けることに成功すれば、大きな繁栄の循環が始まる。地方のシャッター街から繁盛店が生まれ、量販店に包囲された電器屋の利益は大幅に増加し、価格が半減した衣料品業界で7期連続最高益を叩き出す優良企業が創り出される。

 カーネギー、フォード、松下幸之助など、洋の東西を問わず大富豪と呼ばれた人々も、みなこの法則の実践者である。

 どのような状況にあろうと、最高のものを人々に与えようと志し、努力し、創意工夫をすれば、必ず道は開けるのです。

参考

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