企業再生

なぜ、あなたの会社は傾いたのか

 経営不振が深刻になる前の「転ばぬ先の杖」として、企業再生に必要な心構えと実務知識について整理してみました。

「貧困の悪循環」に陥っていないか

 倒産予備軍の企業には、特有の症状がある。万年赤字で借入金の多い企業には、ある種の共通点がある。まずはチェックしてみよう。

 大事なことは、経営不振の最初の原因は分かっていても、その原因の結果が次の原因となるという「貧困の悪循環」が起きて収拾がつかなくなることである。例えば次のようなケースです。

■大口の得意先が倒産し、大きな貸し倒れが発生する。

■その損失を埋めるために人件費をカットする。

■人件費がカットされて優秀な営業マンが辞めてしまう。

■優秀な営業マンがいなくなることで顧客の情報が入らなくなったり、売上が立たなくなる。

 こんな調子で、次々と悪い連鎖反応が起きると、次第に因果関係を推し量れなくなる。何が根本原因だったかが分からなくなるのです(従って打つべき手が分からなくなる)。

 再生の必要な企業は、大なり小なり、このような形で貧困の悪循環に陥っている。そして、この負の連鎖は、最悪の場合、支払不能になるまで続き、やがて倒産に至るというわけである。

 

なぜ努力だけでは成功できないのか

 しかし、貧困の悪循環に陥った企業がすべて倒産するわけではない。土俵際で踏ん張る企業もある。ただ、多くの会社は必死に地道な努力をしても、なかなか再生できない。

 努力をしていない企業が倒産するのは分かるが、なぜ、努力している企業が再生できないのか。

 ここで大切なのは、うまくいかない「理由」をしっかりと把握することである。実際、多くの企業を見ていると、経営者自身が自分の会社の問題点を科学的・合理的に分析し、その原因をしっかり把握しているところは少ない。

 もし、自社の問題点をしっかり解決できれば、悪循環の流れが変わって、収益が上がるようになり、いつの日か優良企業になっていけるはずです。次第に「善の循環」が始まるのです。「何が問題か」「何が原因か」を正しくつかむことが真の再生の第一歩になるのです。

 

経営困難の真の原因を把握せよ

 ただし、破綻の直接の原因となった事実を除去したとしても、その事実の裏に潜む根本原因を退治しない限り、根本的な再生にはならない。

 例えば、欠陥商品を製造して損害賠償請求を受けた会社があるとしよう。この場合、欠陥品の回収をすると同時に、将来二度と欠陥商品を作らないようなシステムを構築するという対策を取ることになる。検品の強化や新たな品質管理の仕組みを作るわけです。

 しかし、過度にコスト削減の圧力をかける体質や、品質より収益という経営思想が真の原因であったりする。すると、また別の形で欠陥品を作ってしまうことになる。ゆえに、真の原因をつかまなければ本当の意味での企業再生は図れないのです。

 

環境のせいではない 原因は経営者にある

 ここにA、B二人の経営者がいるとする。二人ともバブル時代に不動産を高値でつかんでしまった。経営者Aは、あくまでも不動産の保有にこだわり、「何とかなるだろう」式で特に対策を講じることなく経営していたが、ついに自己破産してしまった。一方、経営者Bは、同じ状況であったにもかかわらず、不動産を保有せず賃借して商売を行う方針に転じたところ、経営は回復軌道に乗り、過去最高益を出すまでになった。

 両者のケースを見比べれば明らかだが、会社が失敗したり倒産したりする原因は経営者にある。経営環境ではない。実際のところ、経営者が考え方を変え、環境の変化にどう対応するかで天と地の差が出るのである。

 しかし、経営者自身は、スタート時点では、自分の考え方や行動のどこがおかしいのか、ほとんどの場合分かっていない。そもそも分かっていれば失敗しないのだが。

 その意味では、外部のコンサルタントなどを活用することも必要です。しかし、それは必ずしも決め手とはならない。難しいのは、経営者の頭の中をどう変えるかということにあるのです。

 これは一つのヒントだが、

①経営者の主たる関心事は何か

②情報を集めているか

③考えて計画を立てているか

④言葉と行動はどうか

⑤他人の協力はあるか(人を惹きつけるものはあるか)

の5つをチェックしていくと、経営者のどこに問題があるのかが浮き彫りになりやすい。

 

七つの再生プロセス

 以上を前提に、次の「七つの再生プロセス」を丁寧に実行すれば、誰でも再生できる可能性が出てくる。

1 反省

 経営者の大部分は、過去の努力不足については目を向けず、「世の中のせい」「競争会社のせい」「従業員や取引先のせい」「運が悪い」と愚痴を言う。

 しかし、現代では、業種格差よりも企業間格差の方が強くなる傾向がある。不況業種でも、すべての企業が悪いわけではなく、立派な業績を上げている企業も多い。

 成功している企業の研究もしっかりと行い、どこが悪かったのか、どうすれば今後伸びるのか、自分で謙虚に反省することが大切である。「人のせい」にしている限り、再生のプロセスには入れない。

2 強みと役立ちを考える

 経営環境の変化によってお客のニーズはどんどん変わるため、会社もイノベーションが必要になる。そのためには、自社の強みの発見と「いくら努力してもあきたらない」という使命感が必要となる。

3 決意

 経営不振に陥ると会社の雰囲気は悲観的、絶望的になる。だからこそ、経営者は反省ができたら、決意を新たにし、前向きで明るく積極的な姿勢を示さなければならない。

4 夢を抱く

 理想や夢も必要である。それも、その夢が実現すれば、従業員も取引先も株主も幸せになるようなものであれば なお良い。できれば、その夢の実現を財務諸表に落とし込めるところまで具体化すべきである。

5 戦略を立てる

 弁護士や会計士などの専門家と夢を実際に達成するためのルート作りも必要です。「再生計画」の作成である。

6 必要な協力者をそろえる

 ここまで来ると必要な協力者が出てくる。日頃の行いがこういう時にものを言う。

7 実行に入る

 最後は実行である。再生に成功した企業は当たり前のことを着実に実行したところばかりです。とにかく途中で投げ出さないことです。

 「今日できることを、コツコツと実行する」 再生の秘訣はここに尽きます。

参考

こうすればあなたの会社は甦る

 実際に経営を再建するために必要な4つの条件(どれ一つ欠けても再生できない)を紹介する。これが実行できれば会社が甦る可能性はグンと高まる。

1 経営者は自己変革せよ

 企業再生の条件の第一は経営者の自己変革である。

 経営者とは、「会社の構成員を使って会社に成果を上げさしめる人」をいう。成果を上げられない人は経営者とは言わない。

 経営者は成果をもたらす人だから、厳しいが、結果に対して一切言い訳をしてはならない。言い訳をすればそれだけ気分的に楽にはなるが、それでは成果を出すための対策が出てこない。

 業績が上がらないのは、すべて経営者である自分の責任だと捉えて対策を考える。もし考えた対策を実行して想定した利益が出なかったら、さらなる対策をひねり出す。それが経営者の仕事なのです。

 では、成果を上げるためにはどうするか。まず「会社の現状を正しくつかむ」ことが大切です。

 その目的は、現在のやり方で成果を挙げられているかどうか、成果が上がっていなければどこをどう変えなければいけないのかを知るためである。また、現状の強みと弱みを知るためでもある。これができていなければ手の打ちようがない。会社の現状がどうなっているかを知らずして的確な手は打てない。

 次に、新しい事業機会を見つけることが大切です。

 会社が行っている事業は過去にいくら儲かっていても、顧客のニーズが変化したり、競争相手が増えたり、仕入単価や人件費が高くなったりして、いつの日か寿命が来て衰退期に入る。永久に繁栄を保証する事業、商品はない。

 従って、場合によっては既存の事業や商品を切り捨てた方がよい場合がある。ただ、この「切り捨てる」という決断はとても難しい。経営者自身が確信を持てない場合もあるし、社内外に激しい抵抗勢力がいるかもしれない(社内の担当者や取引先など)。

 しかし、経営者が成果を上げるために本当に必要なのは、新しい事業機会を見つけ、社内のヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源を収益性の高い事業機会に配分し直し、会社を作り変えることである。この一言に尽きる。決して既存商品の収益力回復ではない。

 この際に、会社は改めて次の7点を明確にする必要がある。

1.我が社の経営理念と使命は何か

2.顧客・市場・流通ルートはどうあるべきか

3.顧客の要求、ニーズは何か

4.我が社の強みはどこにあるか(品質/価格・コスト/納期/サービス/デザイン等)

5.我が社の優れたノウハウは何か

6.1~5を満たす我が社の商品・サービスとは

7.儲かる事業のやり方とは

 これらの問いに答えていくことが会社を作り変えていくためのポイントになっていく。この作業を通じて、経営者は「自己変革し、これまでの自分自身の考え方、行動パターンを抜本的に変えない限り会社を再生できない」ことが分かる。社長自身が、自分の頭にある会社が泥沼の中でもがき苦しんでいるというイメージを消去でき、多少の迷いはあるが大空を新たなる目標に向かってまっしぐらに突き進んでいっているという感じをつかめたら、必ず再生できると言える。

 

2 事業のイノベーションを図れ

 第二の条件は、事業のイノベーションを図ることです。

 永久に繁栄を続けられる事業や商品はない。市場や顧客の要求はどんどん変化するため、経営者はそれを見極めて会社の事業を儲かる方向に作り変えなければならない。そして、儲からない事業は捨てなければならない。経営資源を最大の機会、最大の成果の上がる新しい分野に移さなければならない。

 なお、捨てるべき事業の特徴は次の通りである。

 

 なお、捨てるべき事業の特徴は次の通りである

・売上は大きいが利益に対する貢献度は低い

・価格ダウンや販促、広告、アフターサービス等に相当力を入れることで、かろうじて現在の売上を維持している

・収益力が徐々に、または急激に低下してきている

3 実現可能な再生計画を立案せよ

 三番目は、実現可能な再生計画(再生計画、再生手法とプロセスを書いた工程表)を立てることである。

 再生計画はコンサルタントに作成を手伝ってもらうとしても、経営者自身が決意し、実行しなくてはならない。

 ここで大切となる考え方は、事業というのは自分自身が習慣的にやっているというだけではダメだということです。経済活動は、自社の製品やサービスを通じての他者への役立ちなのである。

 自分が頑張っているつもりでも、お客の満足と適正な対価の支払いがない限り利益は上がらない。成果が出ていないのであれば、自分がどんなに頑張っているつもりであっても、それはお客に役立っていない。

 だからこそ、再生には現状分析と反省とリーダーシップとが決定的に大切なのである。

 よく練られた再生計画書は、いわば再生を可能にする「魔法の書」である。実行すれば必ず再生できるものでなくてはならない。そのためには、計画の立案は、必要な利益やキャッシュフローから事業のやり方を考えていく、つまり、逆算によって行うことが大切である。

 再生期間は3~5年の長きにわたるが、出口となる最終年度で会社が立ち直り、正常企業や優良企業となるために、現時点で何をしなくてはならないのかを知るための知恵の書なのである。

 再生計画作成の最大のポイントは、「実現可能か」ということである。計画だけ立派でも実行できないものでは意味はない。甘い見通しのもとで立てた計画は頓挫する。現実をしっかり見据えて、再生計画を練ることが大切である。

 

4 金融機関の協力を仰げ

 最後は「関係者の協力」である。関係者とは、従業員、取引先、そして金融機関である。いずれも再生に当たっては重要な協力者である。

 とりわけ重要なのは金融機関の協力である(現在取引のある金融機関だけでなく、新規の金融機関、再生ファンド等を含む)。金融機関は経営不振に陥った中小企業の生殺与奪の権限を握っている存在です。付き合い方を一歩間違うと、即倒産である。従って、金融機関の協力(リスケや金利減免、新たな貸出等)を仰ぐには、金融機関の取引先に対する行動パターンをある程度知っておくことが必要である。

 金融機関は融資先企業を5つのランクに分けている。「正常先」「要注意先(要管理先)」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」である。

 この5つの格付けに応じて、金融機関はそれぞれの融資残高に対して計上しなければならない貸し倒れ引当金の割合が決められている。

 金融機関によって差はあるが、正常先企業への引当率は債権の3%程度で、「要注意先」になると10~15%になる。「破綻懸念先」だと60~75%もの引当率となる。信用格付けがワンランク異なるだけで、金融機関側の引当金の負担は大きくなり、銀行の業績や財務体質に重要な影響を及ぼす。従って、金融機関は「破綻懸念先」以下の企業への融資は腰が引けることになる。

 残念ながら、企業側から自社のランクを金融機関に訊ねても、まず答えてくれることはない。

 従って、信用格付け制度の仕組みをよく知って、金融機関の融資に対する態度を研究しておくことが大切です。その上で、自社の信用格付けをランクアップしていく。

 では、どうすればランクアップできるのか。その決め手となるのが優れた「再生計画」なのです。そして、優れた再生計画を作るために、経営者は自己変革をし、事業のイノベーションを図る必要があるというわけです。

 

再生を成功させるための四条件

  1 経営者は自己変革せよ

  2 事業のイノベーションを図れ

  3 実現可能な再生計画を立案せよ

  4 金融機関の協力を仰げ

 

あなたの会社はどのランクに分類されていますか?

   債務者区分 金融庁「金融検査マニュアル」

1 正常先

 正常先とは、業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者をいう。

2 要注意先 要管理先

 要注意先とは、金利減免・棚上げを行っているなど、貸出条件に問題のある債務者、元本返済もしくは利息支払いが事実上延滞しているなど、履行状況に問題のある債務者の他、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など、今後の管理に注意を要する債務者をいう。

 また、要注意先となる債務者については、要管理先である債務者とそれ以外の債務者とを分けて管理することが望ましい。

3 破綻懸念先

 破綻懸念先とは、現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む)をいう。

 具体的には、現状、事業を継続しているが、実質債務超過の状態に陥っており、業況が著しく低調で貸出金が延滞状態にあるなど、元本及び利息の最終の回収について重大な懸念があり、従って損失の発生の可能性が高い状況で、今後経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者をいう。

4 実質破綻先

 実質破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど、実質的に経営破綻に陥っている債務者をいう。

 具体的には、事業を形式的には継続しているが、財務内容において多額の不良資産を内包し、あるいは債務者の返済能力に比して明らかに過大な借入金が残存し、実質的に大幅な債務超過の状態に相当期間陥っており、事業好転の見通しがない状況、天災、事故、経済情勢の急変等により多大な損失を被り(あるいは、これらに類する事由が生じており)、再建の見通しがない状況で、元金又は利息について実質的に長期間延滞している債務者などをいう。

5 破綻先

 破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者をいい、例えば、破産、清算、会社更生、民事再生、手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている債務者をいう。

参考

マネジメントサイクル

 どんなに計画が完璧でも、実行して成果を上げることができなければ計画は絵に描いた餅となる。成果を出すには再生計画の実行を管理する仕組みを確立しなければならない。この仕組みは一般に「マネジメントサイクル」と言われる。これはPDCAサイクルとも言う。

P プラン=再生計画を策定する

D ドゥ=計画を周知徹底して実行する

C チェック=計画の進捗状況を管理する 

  計画と実績を速やかに把握し、乖離要因を分析する

A アクション=計画達成に向け修正行動をとる

 このPDCAを繰り返して回し続けることで、再生を進めていくわけである。

 計画通りに進捗していれば問題ないが、そうでない場合には、未達成の原因をタイムリーに把握し、修正行動をとる必要がある。

 優良企業は、たいてい優れた経営計画だけでなく、このPDCAサイクルを的確に素早く回す能力を持っている。計画を立てただけで、このサイクルを回しきれていない企業が計画通りの実績を上げるということは奇跡に等しい。

 再生企業は一般的に経営計画の実行力が弱い。そこで、再生の実行力を強化する5つのポイントを紹介する。

1 月次検討会議を早くやる(できれば1ヵ月以内に)

 この場合、報告事項で隠し事をしない、検討事項で聖域をつくらないことが大事である。

2 計画との差異の原因を分析する

3 月次検討会ではいろんな角度から討議する

4 課題、アイデア等の共有

 合宿を行って討議するとよい。チームとして情報を共有し、目的意識を明確化し、問題解決能力を上げる。

5 計画をオーバーしたら、安心せず前向きの会議、活動に移る

 

業務改善の実践ノウハウ

 業務改善と収益性改善についても整理しておく。

 業務改善とは、業務の見直し、改善活動を通じて売上高の増加や製造原価・販売費及び一般管理費の引き下げを行い収益力の向上をはかる活動を言う。

 今やIT化やグローバル化の流れの中で、相当レベルの優良企業でも油断すると生き残れない時代である。ましてや、再生を必要としている企業であれば、経営力不足、人材不足、資金不足、技術力や販売力の不足から、環境の変化に対応できずに、ますます泥沼に入り込んでいくことが多い。そこで、この業務改善が必要となるわけである。

 また、収益性改善のプロセスは、収益性分析から始まる。

 社内にデータがない場合は、まずデータをつくる。再生を必要としている企業は、たいていデータが大幅に不足している。

 具体的には、部門別、製品別、取引先別などに分析し、趨勢や他社の分析を行う。そのデータを顧客ニーズと突き合わせ、低収益の原因となっている事実をあぶり出す。その事実に関して会議を行うだけでなく、現場を観察して「こうすれば改善できる」という仮説を立てるのである。

 その仮説に基づいて、時間と費用、成果を見積もり、実行するか中止するかを決めるのである。

 再生が必要な企業は、たいてい収益性の低い事業を抱えている。しかし、このようなプロセスを経ることで、業務改善の余地が出てくる場合が多い。

 

専門家の支援も欠かせない

 再生は経営者の自助努力が大切になることは言うまでもない。しかし、企業単独ではなし得ない部分もたくさんあるのも事実である。特に、再生を成功させるには、再生資金の調達と再生に至る知恵や経験、金融機関や取引先、従業員などに対する交渉力等を備えた様々な専門家の支援が欠かせない。自助努力は大切だが、独り善がりではだめで、活用できるものは活用していく姿勢が大事である。

 特に、再生専門家は、様々な業界、企業や職種で多様な経験を積み重ね、的確な戦略を助言できる人物が望ましい。物事の本質を見抜き、問題を迅速に解決する力、新しいアイデアを生み出したり、新しい事業を考えたり、競争企業を上回る戦略を立てる力がなければ、企業の再生は果たせないからである。

 

優良企業への道

 再生の道を歩み出した企業を観察してみると、経営者自身が随分変わることに気づく。

 例えば、見る目が変化する。

 何キログラムというレベルではなく、何トンもの重圧をかけられて生き延びてきた経営者は、モノを見る目も変化しているはずである。物事を表面的に見るのではなく、本質に迫ろうとする。

 「どうしてなんだ、うまくいかないのは?」と徹底的に考え抜き、その解決のプロセスを創造しようとするようになる。つまり、バイタリティーが出てくる。

 経営の問題というのは、常人の目で表面的に見て、そこからスタートして考えても、まともな答えが出ないことが多いからである。だから相当な力が必要とされる。

 その力は、

■ 商品を見る目

■ お客のニーズを感じ取る力

■ 従業員のやる気を出させる力

■ 取引先と付き合う力

■ 銀行との交渉法

 など、様々な活動にプラスをもたらす。ある意味では、苦しみを解決した人が持つ 目に見えないものを認識する能力(ノウハウ)とも言える。

 特に、苦境や極限状況にある時に、経営者は、出会った人々は自分を見離した人、逆に助けてくれた人にはっきり分かれるという現象に出くわす。

 このことがあってから、経営者は、この人は付き合っていい人か、悪い人か、何となく事前に分かるようになる。事業を始める前に協力してもらえるかどうかある程度予想がつけば失敗することが少ない。再生という厳しい局面で、体験としてつかむことができる素晴らしいノウハウである。

 さらに、助けてくれた人だけでなく、取引先や従業員・金融機関等も含め、他人の有難みに気がつき、感謝できるようになることが多い。そういう経営者は、さらなる発展を続けて何年かすると会社が見違えるようになっている。感謝の念いが、よい仕事をするエネルギーに変わるのです。

 つまり、苦境から再生することによって、経営者は失敗から学び、成長していくのである。

 ほかにも、人の何倍も努力する習慣や良きアドバイザーの獲得、投資の大切さへの気づき、信用の回復など、再生のプロセスから得られるものは数多くある。

 再生企業と言いながら、再生期間に入ってから毎年の実績値が再生計画値を大きく上回り、優良企業並みの実績を上げている会社も決して少なくない。そのような会社は、もともと優良企業になれる素質を持っていたが、何かの重しによって その勢いが抑えられていたように見える。

 再生企業と言っても、ピンチを前向きにとらえ、正しい再生プロセスを踏めば、努力次第で十分優良企業になり得る。企業が繁栄しているということは、よりたくさんの顧客に満足してもらっているということでもある。顧客への役立ちに志を立て、もっともっと大きなエネルギーを注いでいく、その工夫を考える、影響力を増す。それができれば、さらなる発展ができるのは自然な流れであろう。

 また、地域経済という観点から見れば、その企業が再生することで、暗かった地域に小さなあかりが灯る。次にその企業が時間とともにさらに発展することにより、繁栄と喜びが次々と広がっていく。そういうダイナミックなことが実際に起こっている。

参考

経営・マネジメント へ

「仏法真理」へ戻る