人と衝突への対応法

 人と人とが集まって仕事をすると、どうしても摩擦や衝突が起きるもの。しかし、職場がギスギスしていては、仕事で思うような成果を上げることはできません。

 

衝突への5つの対応法

 職場での衝突はどうしても避けられないものですが、その時に「どう対応するか」によって、その後の展開は変わってきます。

 そこで、衝突への対応法を紹介しましょう。

 まずは「逃避型」です。「回避型」とも言います。「衝突を避ける」という対応です。主張もしなければ協調もしない、ただ避けるのです。

 次は「迎合型」です。とにかく相手の言い分を聞いて、相手を優先する方法です。「ルーズ・ウィン」(Lose‐Win)の関係です。自分は何も取らないで、相手が全部取ってしまいます。

 三番目は「対立型」です。これは、逆に「ウィン・ルーズ」(Win‐Lose)の関係になります。部下に残業を頼んで断られても、「命令だ。やれ!」とか言って、押しつけてしまう対応をします。

 迎合型も対立型も、必ずしもよい方法ではありませんが、少なくともどちらかはうれしいという結果になります。

 四番目は「妥協型」です。「ルーズ・ルーズ」(Lose‐Lose)の関係です。上司が部下に「2時間残業してほしい」と頼む時に、部下が断ったとします。その時に、真ん中を取って「1時間残業する」という形にします。一見、よさそうな対応ですが、両方に不満を残した関係になります。上司は2時間残業してほしいのに1時間しかしてもらえないし、部下は残業をしたくないのに1時間残業させられるという結果になっているからです。妥協型は双方にマイナスになるやり方なのです。

 そこで目指すべきは五番目の「協働型」ということになります。

 

ウィン・ウィンの関係になるために

 協働型だと「ウィン・ウィン」(Win‐Win)の関係になります。お互いの思惑や気持ちなどの価値志向をすべて吐き出した上で、互いに納得できる第三の道をつくっていくという方法です。

 時と場合によって他の方法も使う必要があります。

 部下が新人なら、「君ならどうする?」と聞くより、対立型で、「まずは言う通りにやりなさい」とやったほうがよい場合もあるでしょう。

 また、力量があり「自分で試したい」と思っているような部下なら、「今日は君に任せよう」と迎合型でやったほうがよいかもしれません。緊急性が高く話し合う余裕がない場合は、いったん妥協して折り合いをつけることも必要かもしれません。

 基本は「協働型」ですが、それ以外の選択肢が不可ということではないので注意してください。

 

正しい衝突を生みだす三つのルール

 ウィン・ウィンの関係を築くことができるなら、衝突はむしろ必要なものだと考えることができます。

 もちろん、衝突がすべて正しいというわけではありません。正しい衝突と正しくない衝突とがあります。いがみ合いやののしり合いなどの感情的な対立はよくありません。あくまでも、知性と理性に裏打ちされた、お互いを尊重したものでなければ、正しい衝突とは言えないのです。

 そこで、正しい衝突を生みだすための3つのルールを紹介します。

ルール1 人ではなく、問題に焦点を当てる

ルール2 反対意見を出す場合は、必ず代替案を出す

ルール3 たとえ違っていても、チームとして合意に達した場合は、必ずそれに従う

 こうしたルールに則ってやれば、衝突は決して怖くないし、力に変えていくことができるのです。

 

衝突は相手を理解するチャンス

 衝突とは、互いに理解を深め、よりよい解決策を探るためのものです。決して相手をやっつけたり、自分の主張を押し通したりするための技術ではありません。

 仏教に「仏性」という言葉があります。仏性とは「仏の性質」です。私たちはすべて等しく仏性を持っているという考え方です。ぶつかったり、軋轢が生じたりしても、心の深いところでは、仏性があってつながっているのだ、自他は一体なのだという思想です。

 こういう思想、人間観を持っていると、表面的に激しくぶつかっても、「あきらめずに努力すれば必ず分かりあえる」という信念を持ち続けることができます。

 違う個性、違う考え方の人間が一緒に仕事をすれば衝突や摩擦は避けられません。それは、実は互いに相手のことをよく「知らない」から起きているのです。逆に言えば、衝突は悪いことだと思って、互いの価値観をぶつけていないために、深く理解できていないのです。

 その意味で無関心こそ衝突の真の原因です。従って、衝突対応にはいろんな方法論はあるのですが、根本は「いかに相手を理解するか」です。

 その意味で、衝突は相手を理解するチャンスです。だから、衝突を避けるのではなく、違いがあることを喜び、互いに尊重し、異質なものとの対話の中から新しい価値をつくっていこうと考えれば、仕事はずっと楽しくなるし、成果も出るようになるはずです。

参考

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