WIN―WINになるためのポイント

「コーヒーカップ理論」で視点が変わる

 常にお客様のことを思い、考えることが大切です。

 この「顧客思考」をするために、大切なのが「WIN‐WIN」という考え方です。これは自社も「WIN」、お客様も「WIN」ということです。自分だけが得するのでなく、相手だけが得するのでもない。両方が損するのでもなく、双方ともに発展・成功することです。

 顧客との関係には4つのパターンがあります。

(1)「WIN‐WIN」==自分と相手が共に発展する共存共栄のパターン。

(2)「WIN‐LOSE」==自分が一方的に得をして、相手が一方的に損するパターン。

(3)「LOSE‐WIN」==自分が一方的に損をして、相手が一方的に得するパターン。

(4)「LOSE‐LOSE」==自分と相手が互いに足を引っ張り合い、共倒れになるパターン。

 この4つのパターンのうち、どうすれば(1)の「WIN‐WIN」を実現できるのでしょうか?

 そこで役に立つのが「コーヒーカップ理論」です。

 あなたと私の間に、直径5メートルくらいの大きなコーヒーカップがあるとします。互いに相手は見えません。私の側からは、コーヒーカップの取っ手が見えているとします。あなたの側からは、デザインされたマークが見えているとします。私はこの取っ手を見て、あなたに言います。「この取っ手がとても持ちやすそうで、気に入りました」と。あなたには取っ手が見えないので、「どこに取っ手が付いているのかな?」と思いながら、自分の側から見える「マークがとても素敵でいいですよ」と言います。これがスタートです。

 私は取っ手の話、あなたはマークの話。こういうやり取りを何度か繰り返します。最初は穏やかに話していた2人の関係が次第に険悪なものに変わっていきます。どうなるのか?

 「私は取っ手の話をしているのに、あなたは何の話をしているんですか? どこに眼をつけているのですか?」

 これに対して、あなたは、「いや、あなたこそどこを見てるんですか? 私はマークの話をしているんだ! それに、取っ手なんかどこにも付いていないじゃないか!」

 そして対立が起きます。

 「あなた、どこを見ているんですか!?」「あなたこそ、どこを見ているんですか!?」

 これが「WIN‐WIN」になっていない状態です。お客様と私たちの間で頻繁に起きている関係です。

 ここで確認しておきたいことが2点あります。1点目は、二人とも、同じ事実の一面を見ているということです。2点目は、どちらも正しいことを言っているということです。どちらも事実に基づき、正しいことを話している。にもかかわらず、相手を否定し始めます。自分の正しさだけ主張し始めます。コーヒーカップに取っ手がついているのも事実だし、マークがついているのも事実です。どちらも事実を述べていますし、間違ったことを言っているのでもありません。

 

相手を変えようとしてもダメ

 どうしたらよいのでしょうか?

 対立関係を解消するには 3つのやり方があります。

 最初は、自分が相手を引っ張ってくる方法です。

 「まあ、こっちに来てください」と、半ば強引に引っ張ってきて、取っ手を見せます。「ほら、取っ手が見えるでしょ」と。事実、取っ手があるわけですから、それを見たあなたは「確かにそうですね」と、取っ手があるという事実は認めます。でも、うれしくはありません。なぜなら、自分の立場を否定されたからです。自分の立場を否定され、無理矢理連れて来られて、うれしいはずがありません。これが一番多いパターンです。

 いけないとは思っていても、つい、やってしまう。と言うより、いけないとすら思わず、やっていることも少なくありません。これを「プロダクトアウトの発想」「製品志向・製品重視の発想」と言います。良い商品を作ったのに、売れないのは、買わないお客様が悪いという発想です。売れないときは考えてほしいんです。もしかしたら、コーヒーカップ理論の第1パターンかなと。

 

 2番目は、コーヒーカップを回す方法です。

 相手を無理矢理引っ張ってくるのはダメということで、コーヒーカップをグルッと半回転させます。そうすると、相手の立場を否定せず、反対側が見えます。互いの立場はそのままで、自分から見えなかった部分が見えます。グルッと回すことで、確かに取っ手が付いていることがあなたも確認できます。私の側からも見えなかったマークを見ることができます。

 第1番目の方法よりもマシです。ただ問題があります。

 最大の問題は、自分の立場を変えないということです。自分の正しさや自分の見方、考え方を変えないということです。自分を変えず、対象物だけを変えるので、「手変え品変え発想」と言います。これがダメなら、あれはどう? それでもダメならこれは? という具合に、相手のニーズなどお構いなしに、一方的に、これはどうだ、あれはどうだと、手を変え品を変え、押し付けていくパターンです。

 

こうすれば相手の立場に立てる

 第3の方法は、自分が相手のところに行くことです。「あなたはそのまま、そこにいてください、私がそちらに行きます」ということです。行ってみると、相手の言っていた通り、なかなかカッコいいマークが見えます。それを見たうえで、「じゃあ、今度は私の側に来て、一緒に取っ手を見てください」と、一緒に動きます。反対側に行ってみれば、私が説明した通り、持ちやすそうな取っ手が付いていることが分かります。ここで初めて、互いの理解が深まります。

 互いに、相手の立場を否定することなく、理解できるので、共感が生まれます。これが対立する関係を「WIN‐WIN」にするパターンです。

 「自分が変われば、相手も変わる」とよく言います。このパターンもその一つです。とは言ってもなかなかできないのが現実です。

 仕事がうまくいっていないときは、コーヒーカップを思い出してください。どの方法になっているか、考えてみてください。第1の方法か、第2の方法をやっているのではないか? と考えます。第3の方法にするにはどうすればいいのか? 一生懸命考えます。

 簡単には、答えが出ないかも知れません。でも、答えを求めようとする姿 勢、考え続けることが道を開くのです。

 何らかの障害にぶち当たったとき、「コーヒーカップ理論」で、自己チェックしてみましょう。

 

 「WIN‐WIN」によく似た考えとして、「GIVE & TAKE」というものがあります。すごく似ていますが、少し違います。

 何が違うのかと言うと、目的が違うのです。

 「GIVE&TAKE」は、コーヒーカップ理論の第1の方法や第2の方法に近い部分がある。目的が、相手に与えること以上に、相手から得ることにあるからです。

 「WIN‐WIN」は相手に与えることです。相手のニーズに応えるのが目的です。目的はどちらにあるのか? その違いです。相手から得ること、奪うことにあるのか? それとも相手に与えることにあるのか?

 普通に商売をやっている限りは、その違いはあまり関係ないかもしれません。「GIVE & TAKE」的な発想でやっていくと、買ってもらうために、いろんな手法、テクニックを使い、うまくいくことも少なくありません。

 しかし、長く続けていくうちに差が出ます。お客様に伝わるからです。あなたも取られる側にいるのはイヤでしよう。だから続かなくなるんです。

 結局は、どれだけ、感謝しているかということです。感謝とは、お客様や取引先、多くの人に生かされていることに気づくことから始まるといいます。

 多くの人に支えられ、生かされていることに気づくからこそ、ありがたいという気持ちが湧きます。その感謝がお返ししたいという気持ちを生み、少しでもお客様の役に立ちたい、満足させるものを与えたいという心につながるのです。

参考

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