製品戦略

基軸となる「製品コンセプト」を策定する

 製品開発において基軸となるのが「製品コンセプト」です。製品コンセプトは、製品の特徴を決定づける要因となり、企画・立案フェーズから、設計・開発フェーズ、製造フェーズ、そして販売フェーズに至るまで全ての事業関係者間で共有され、競合製品との差別化にも不可欠です。また、効果的なプロモーションや以降のブランディングにも重要な役割を果たします。

 製品コンセプトは、主に以下の3つの要素で構成されることを念頭に、まずは基軸となる「製品コンセプト」を策定する事が重要です。

ターゲット(誰に向けた製品か)

 ターゲットの策定には、ペルソナ設定が多く活用されています。ペルソナとは、製品・サービスを購入して欲しいコアターゲットを「架空の典型的ユーザー像」として描き、細部に渡りコアターゲットのライフスタイルや趣味・趣向、さらには人となりまで作りこむ事で、開発チーム内で明確なターゲットの共通認識が持てる他、ユーザー視点での製品・サービス開発が可能になります。
 ペルソナの主な構成要素は、仮名、性別、年齢、学歴、収入、家族構成、居住地域、職業、役職、趣味・趣向、休日の過ごし方、好きなテレビ番組やWebサイト、習慣、所持するパソコンやモバイルデバイス、その他、開発する製品に関連する情報などがあげられます。

利用シーン(いつ・どこで・どのように利用されるか)

 開発する製品が、いつ、どこで、どのように利用されるかを明確化します。基本的な利用シーンに限らず、「こんな時も使えるよね」とか、「こんな風に使ったら面白いよね」など、多角的な視点であらゆる利用シーンを想定していくのがポイントです。

ベネフィット(顧客が得られる価値は何か)

 マーケティングにおけるベネフィットは、「顧客が製品・サービスから得られる恩恵や付加価値」を指しています。混合しやすい概念に「メリット」がありますが、メリットは製品・サービスそのものの特徴や価値を指しています。痩せ薬に例えると、メリットは「痩せる」、ベネフィットは「モテる」になり、人事システムに例えるとメリットは「人事データを一元管理できる」、ベネフィットは「一元管理により現場での業務負荷やミスが減る」となります。メリットとベネフィットを正しく理解し、顧客のベネフィットを正しく設定することで、製品コンセプトをより明確に定義する事ができます。

 製品戦略を検討する場合、「自社の売りたい製品を販売する」という供給者の都合を優先させて売り込むセリングの発想ではなく、「お客様が買いたい製品を販売する」という発想が重要になっています。高度成長期は、大量生産・大量消費が行われ、“製品を作れば売れる” という時代でしたが、モノが溢れ、何でも手軽に手に入る成熟期を迎える日本の市場では、ユーザーは本当に欲しい物にしか興味を抱いてくれません。 製品戦略では、ターゲット市場のニーズを分析し、ユーザーが本当に欲しいと思う製品を開発し供給し続けることが重要なポイントです。

 

消費者ニーズを反映する「製品戦略」

製品戦略の要「ホールプロダクト」

 製品戦略では、製品そのものの機能や性能だけではなく、パッケージ、容器、付随サービスなどを含め、より広義な「ホールプロダクト(Whole product:製品全体)」として製品をとらえていきます。顧客が求めている製品は、製品そのものだけではなく、製品に付随する全てを指して「製品」とするからです。

 

プロダクト3層モデル

 プロダクト3層モデルとは、製品(product)の価値構造を、「①中核」「②実体」「③付随機能」という3層に分けることで製品を分析するマーケティング・フレームワークです。アメリカの経営学者 フィリップ・コトラーにより考案されたこのモデルは、「製品の3層構造」、または「コトラーの3層モデル」とも呼ばれています。

① 製品の中核
 製品の本質的な価値にあたるのが「中核」と呼ばれる中心層です。消費者が実質的な機能として求め、購入するして得られる基本的なベネフィット(便益)を指しています。「消費者が製品を買う基本的な目的」というと分かりやすいかも知れません。自動車であれば「移動手段を得られる」、洋服であれば「寒さをしのげる」、スマホであれば「電話ができる インターネットが見られる」などが例として挙げられます。

② 製品の実体
 実際に販売されている製品そのものにあたるのが「実体」と呼ばれる中心層を囲む2段目の階層です。「機能」「品質」「性能」「スタイル」「パッケージ」、そして「ブランド」など、消費者が入手する製品のあらゆる特性が含まれます。消費者の多くは製品購入の際「実体」を重視して比較・検討を行います。

③ 製品の付随機能
 消費者にとって、製品の価値を高める要素が「付随機能」と呼ばれる最も外側を取り囲む段目の階層です。製品やサービスに付随する配達、設置、保障、アフターサービスなどが例としてあげられます。

 プロダクト3層モデルにおいて、「製品の中核」を見失わない、「製品の実体」が最も顧客が重視する点であり、製品を通して顧客に提供したい価値をしっかりと定める、そして、選ばれるために必要な「製品の付随機能」をしっかりと整えるということです。
 ニーズの多様化する現代において、消費者が数ある製品から当該製品を選ぶ理由は、「自身の欲求を満たせるか」という1点に帰結すると言えます。だからこそ、メーカーは、製品製造の際にセグメンテーションからコアターゲットを定め、明確なコンセプトが まっすぐ強く伝わるよう、3層モデルをしっかりと定めていく事が大切です。

 

 具体的にマーケティング・ミックスを実践する場合には、製品について考えなくてはなりません。

 次の3つのレベルで分類することができます。

 ・製品のコア

 ・製品の形態

 ・製品の付随機能

 「製品のコア」とは、顧客の本質的なニーズを満たす機能のことです。

 顧客にはニーズがあり、そのニーズを満たすウォンツを具現化したものが製品であるからこそ、最終的な購買行動をおこしてもらえます。

 製品のコアとは、顧客が本当に欲しいと思っているベネフィットと言い換えても良いでしょう。

 たとえば、飲料水であれば液体そのものですし、書籍であればその内容となります。

 「製品の形態」とは、製品をイメージした時に まっさきに浮かぶであろう外観など直接的に体感できる特徴のことです。具体的には「製品特性」「デザイン」「スタイル」「ネーミング」「パッケージ」「品質」「ブランド」などがあります。

たとえば、自動車であればボディやカラー、操作性などが製品の形態を表していると言えます。

 「製品の付随機能」ですが、これは製品そのものではなく、製品を取り巻くサービス全体を表しています。

 具体的には、アフターサービスや保証、配送、信用供与、取り付け代行などがあります。たとえば、パソコンを購入するだけではすぐに使えないという点を考慮して、無料で設置や操作方法をサポートしてくれるサービスなどは製品の付随機能となります。

 これら3つの要素のどれを重要視すべきかは、商品によって異なります。

 誰にでも使い方が分かり、毎日使うような商品であれば、見た目やブランドイメージなどの製品の形態が売上を左右するかもしれません。

 パソコンのソフトであれば、不明点などを丁寧に説明するサポートが欠かせないでしょう。

 もちろん、喉の渇きをうるおすという製品のコアが欠けていれば、通常の飲料水は売れません。

 このように、マーケティングミックスにおいて製品を考えるときには、さまざまな角度から検討する必要があります。それが既存の製品であればまだしも、いまだ顧客が触れたことのない新商品であれば、いかに訴求できるかということが重要になってきます。

 そのときに、デザインやパッケージにこだわっているだけでは、長期的に購買されることは難しいでしょう。

 複数の視点で「何が顧客にとって大切か?」ということを検討する必要があるのです。

 ひとくちに製品やサービスと言っても、その種類は多岐にわたります。

 身の回りを観察してみると、実にたくさんの商品やサービスがあることが分かるでしょう。

 それらがどのように分類されているのかを理解することによって、製品というものの本質がみえてきます。

 

製品の分類

製品特性を見据えたカテゴリー分類

 マーケティングを行う上で、製品は、その特性により有意義なカテゴリー分類を行う必要があります。「物理的特性による分類(耐久財、非耐久財、サービス)」「購買行動による分類(最寄品、買回品、専門品)」「使用目的による分類(消費財、生産財・産業材)」などへの分類は、製品戦略を策定していくうえで重要な要素す。

 

物理的特徴による分類

非耐久財(Non-durable goods):食料品、飲料、文具 など
 非耐久財とは、使用回数が少なく、使用期間も短い有形製品を指しており、一製品あたりの単価が安く、販売個数が多いのが特徴です。非耐久財のマーケティングでは、初期購入のみならず、継続的な購入を促すことが課題となり、そのためには継続的なマス広告での宣伝告知や、店頭での陳列シェア獲得が重要になってきます。

サービス(Service):宿泊施設、運送、美容 など
 サービスとは、主に機能や人的対応を商品としたもので、無形製品を指しています。有形製品とは異なり、人が行う事柄を指すことから、一定の製品クオリティを保つのが容易ではありません。また、生産=消費となることから、提供後の返品や交換もできません。形のない製品だけに、信頼性の重要度が高く、リピーターを獲得することで高い収益性が可能となります。

 

購買行動による分類

最寄品(Convenience goods):雑誌、電池、石鹸 など

 最寄品とは、ユーザーが特別な労をかけずに頻繁に購入する製品を指しており、製品単価が低く、最寄りの店舗で購入されます。最寄品は突発的に購入される事が頻繁なことから、多くの店舗にできるだけ多くの製品を陳列してもらうことが製品販売の決め手となります。

買回品(Shopping goods):家具、電化製品、服飾品 など
 買回品とは、ユーザーが複数の製品を比較・検討したうえで購入する製品を指しており、製品単価が高く、複数の店舗を回遊し、優位性の高い店舗でニーズに合った製品を購入します。

 買回品は、耐久品であることが多いことから、一般的に価格と品質がKBF(key Buying Factor:購買決定要因)の決め手となります。

専門品(Specialty goods):高級ブランド製品、特定メーカー製品など
 専門品とは、購入にあたりユーザーの趣向性や特別な知識を要する製品で、製品単価が高く販売店は限られますが、ユーザーの強い購買意欲によりその製品を指名買いします。競争力を保つためには、ブランド構築・維持を最優先課題としたマーケティング戦略が必要となってきます。

 

使用目的による分類

消費財(Consumer goods):食料品、飲料、文具など
 個人消費を目的に不特定多数のユーザーに向けて提供される製品を指しており、主にマス・

 マーケティングでユーザーにアピールしていきます。競合も多く、短期間で消費される製品が中心であることから、製品のもつイメージが製品購入のKBF(key Buying Factor:購買決定要因)となる傾向が強くあります。

生産財・産業材(Industry goods):製造機器、印刷機、工業機械など

 事業者(生産者・政府機関など)などを対象に提供される製品を指しており、主に集中化型マーケティングでターゲットにアピールして行きます。消費財市場よりも客単価が高く小規模なのが特徴です。また、専門知識を有していることが多く、競合は少ないがコストパフォーマンスを客観的に比較・検討する傾向が強くあります。

 

製品・サービスの独自性(差別化要因)を作る 

日本で作れるものは、今では中国などのアジアの国々で簡単に作れるようになった。
 日本の加工技術が世界に輸出されたからですが、そのことが裏目に出ている現実があります。
 日本の技術の要、ノウハウまでもが真似されてしまっていることが実態です。
 例えば、日本の大手電機メーカーが、アジア地域を拠点とするある工場に生産委託してテレビを造っていた。
 しかし、その製造方法を習得した現地会社は、同じ製造ラインで造ったテレビを、別のブランド名で、それも日本に輸出しているという。
 もともと日本から渡った技術が真似され、日本にフィードバックされ、市場を乱す原因となってしまったのです。 
 日本でもアジアでも、どの企業もある一定の技術レベルやサービスレベルは持っています。
 持っていなければ、持っている会社とコラボレーションすれば良いわけです。
 世の中は似たような製品・サービスだらけになってしまったのです。 
 こうした状況の中での問題は、このように増えた供給元(メーカーやサービス提供者)がすべて経済的に成り立つかということです。
 つまり、供給過剰の問題です。今では、大手メーカーといえども企業合併を繰り返して、資本力や技術の相乗効果を利用して競争力をつけようとしているのです。 
 企業が大きいことは確かに良い点もありますが、大きさだけでは生き残っていけません。なぜならば、さらに市場シェアの大きな会社が登場すればそれで終わりだからです。
 そこで、重要とるのが、会社の独自性や差別化となる要因です。製品やサービスを開発する場合には、その会社しかできない独自性を持つことが重要なのです。そうでなければ、資本力のある会社が、同じ製品をすぐに作り出して市場を制してしまいます。
 食品メーカーの競争などはその良い例でしょう。 
 その会社しかできない差別化要因をもつことで、競争力がつくのです。
 また、差別化要因が会社の位置づけとして決定し、顧客への浸透が進みます。
 つまりブランド化です。
 何を差別化要因とするのかを徹底的に考えてもらいたいのです。
 マーケティングとは、差別化要因を見つけ、それを具現化する作業と言い換えることもできるのです。

 

コンセプトをつくる

 製品、サービスを独自化するには、コンセプトづくりが大事です。 
 コンセプトとは、直訳すると「概念」と言えます。
 ひと言で言えば、“ものごとを生みだすワンメッセージ”です。「分かりやすいユニークな特徴をワンメッセージで表した、新たな気づきを起こさせるもの」。 
 すべてがこれに集約できます。分かりやすくなければ伝わらず、さらにユニークでなければ多くの人は気づくことはありません。
 評判にならないし、多くの社員を動かすこともできません。
 この定義を内包したワンメッセージがコンセプトといえます。 
 今や工業製品や電化製品の分野などでは、どの会社でも技術力があり、製造能力もあり、品質が高いものを生産することは可能だと言えます。

 自動車業界、1社がある新車で大ヒットをとばせば、半年も経たないうちに他社が同じ仕様の自動車を投入してきます。 
 すると、もはや自動車メーカーの競争力の源泉は、技術力ではなく、デザインであったり、ブランド力であったり、その自動車のフィーリングが大きな部分を占めることになります。
 このような他社には真似が難しいソフト(アイデア)部分ならば、独自の差別化をすることが可能です。

 

コンセプトづくりのポイント
 コンセプトづくりのポイントは、3つのポイントを押さえて検討することにあります。 

 ひとつは、ターゲット。
 これは、購入するべき顧客層は誰かということです。
 誰が購入すると最も高い価値を感じるかを考えてみましょう。 

 2つめは、利便性です。
 マーケティングではベネフィットといっています。
 これは、商品、サービスを得ることで、一番の利便性はどこにあるかを考えることです。
 購入する目的は、何らかの利便性を得るための消費活動であるので、それを追求するのです。 
 しかし、ここで注意しなければならないのは、実用的な利便性よりも その背後にある購入の心理を読むということです。
 これは、アンケート調査結果なども参考にして、未来の種をつかみましょう。 
 3つめは、気づきのキーワードです。
 これは、コンセプトは意外性が高くないと一般には浸透しません。
 だから、多くの消費者が共感する、意外性のあるキーワードを導き出してみるのです。 
 このワードは、最終的にプロモーション展開をする時に参考となります。

 3つのポイント、ターゲット、ベネフィット、気づきのキーワードを考えることで、1つのコンセプトの柱が整理されます。
 それをワンワードで置きかえてみれば、コンセプトになってきます。

 

コンセプトを理解する
 コンセプトづくりは、製品開発やサービス開発の要であす。
 このコンセプトが明確になることで、マーケティングプロモーションやチャネル開発が分かりやすくなります。 
 例えば、広告コピーの考えの背景となるのが、このコンセプトになるのです。また、重点的に強化するチャネルなども、このコンセプトが柱になっています。
 多くの人が携わるマーケティングでは、最初のコンセプトづくりが重要なポイントとなるのです。 
 地面に深い根をおろすことで、大木となるように、コンセプトは、深い根の柱であり、これができれば、あとは大きくなるのを待つだけなのです。

パッケージ力を高める
 パッケージとは、もともと梱包や包装することを言いますが、もう少し大きな意味で捉えてみましょう。
 ここでは、様々な技術、要素を1つのまとまり、固まりとして見せていくことができるという意味で考えるとよいでしょう。 
 例えば、同じ技術であるならば、顧客は当然魅力的に映るほうの商品を選びます。そこで、様々な技術、サービスを集めて、このようにすれば活用できるということを世の中に問わなければなりません。
 これがライフスタイルの提案です。 
 近年では、パッケージ型の優位性が年々高まってきています。私たちの生活を彩るためには、1つの製品、1つの商品だけでは不十分であり、すべてがグループとして機能する必要があるからです。   

 今後の製品開発やサービスは、パッケージで提案できる企業が優勢になります。
 また、パッケージで提案できないならば、複数の企業が自社製品を持ち寄ってパッケージにして提案すればよいのです。
 「ワンパッケージ」 や「ワンストップ」 はこれからの消費で重要なキーワードになっていくでしょう。

付加価値を高めた企業が有利 
 付加価値とは、希少性であったり、差異性であり、期待性のことです。この人しかできない、この会社しかできないという希少性。

そして、この製品はほかと違うという差異性。
 この製品を触るとワクワクするとか、成長していることが分かるなどの期待性。
 この3つの価値観が付加価値となって伝わってヒットするのです。 

 

製品戦略を考える視点

1 製品の差別化

製品の差別化とは、市場での優位性を確立するために、製品やサービスの機能を特徴づけ、買い手に強調することを指します。
 「同種製品に対する需要は同質である」ということを前提に、水平的な市場シェアの獲得を目的にする戦略です。 
 中小企業は、規模の経済による低価格を競争手段とすることが比較的困難であり、また、単純な価格競争はさらなる価格競争へと悪循環を招きがちです。
 差別化により製品の競争優位を築くことができれば、シェアを維持でき、高価格を設定できるため、利益を高水準に維持することも期待されます。
 ローカル市場やニッチ市場で利益を確保しなければならない中小企業にとって、とくに重要な戦略といえるでしょう。 
 また、ターゲット市場で評価を得られる製品の差別化を、販売促進戦略とともに継続して実践することができれば、ブランドカの確立を通じて競争力をさらに強化することにつながります。
 中小企業は比較的、販売促進費用が捻出しにくいという側面があり、その点でも、顧客志向に基づいた製品の差別化を徹底し、口コミによる販売促進効果を狙うことが重要といえます。

 差別化の対象となるのは製品やサービスの機能であり、具体的には、
 ・機能、素材、品質、デザインなどの中心的な機能
 ・企業イメージ、ブランド、ネーミング、ラベル、広告などのイメージ面の機能
 ・アフターサービス、借用供与などのサービス面の機能が差別化の対象
になり得ます。 

 新製品の成長期には、性能や機能で差別化を行なうケースが多くみられ、その後、イメージやサービス面での差別化を図るようになるのが一般的です。
 しかし、製品が高度に発達した分野では、性能や機能での差別化が困難であるため、イメージやサービス面での差別化が多くなっており、技術開発力が相対的に弱い中小企業では、とくにそうした差別化が重要になるといえるでしょう。
 また、いったん差別化に成功しても、一時的、流動的なものであり、たえず市場の把握に努め、差別化の方策を追求し続けることが必要になるのです。
 製品の市場投入当初から製品の衰退に至るまで、製品を差別化すべき内容は変化するものです。

2 市場細分化による製品対応

 市場細分化とは、特定の指標に基づいて顧客層(市場)を部分市場に分割することです。
 市場細分化戦略とは、細分化した部分市場ごとに、ニーズに合った製品やサービスを投入する戦略であり、「同種製品に対する需要は異質である」という異質市場を前提に、特定のターゲット市場への集中、あるいは複数のターゲット市場での市場シェアの獲得を目的とするものです。 

 市場を細分化する指標としては、
 ・消貴著の年齢、職業などの人口統計学的基準
 ・ライフスタイルや趣味などの社会心理学的基準
 ・消費者や企業の購入機会や動機、追求利点などの行動科学的基準
 ・地域、都市などの地理的基準
が一般的です。 
 消費が成熟化するにつれ、消費者のニーズやライフスタイル、価格観までが ますます多様化・個性化しています。
 こうした市場環境では、顧客ニーズの多様化・個性化にきめ細かく対応していく市場細分化戦略の重要性が増しているといえるでしょう。

 市場を細分化したうえで、どの部分市場にターゲッティングするかを考えることになりますが、それにはいくつかの視点があります。
 そして、どの部分市場をターゲットにする(ターゲッティングする)かによって、市場細分化戦略はいくつかに類型化されています。
 市場細分化戦略は、コスト高を招き企業の利益を圧迫する可能性もあるため、まず収益性を考慮したうえで戦略を検討することが重要になります。
 大企業の場合、総合対応型の戦略をとり、各部分市場に対応するという可能性もありますが、経営費源が相対的に乏しい中小企業では、ローカルやニッチの単一の部分市場に集中してシェアの拡大を図る戦略が適しているといわれています。
 大企業と競争することは容易ではありませんが、大企業が手薄な特定の部分市場をターゲットに設定し、経営資源を集中して展開することで、部分市場でシェアを獲得する可能性が大きくなると期待されます。
 実際に、中小企業が大企業のシェアを凌駕している成功事例も数多く存在しています。 
 また、市場細分化戦略を追求すると、多品目化が進み、高価格政策の必要性が高まると考えられます。
 その点で、製品の差別化との連動により力を入れるべきといえます。

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