流通戦略

流通チャネル

 企業が作った製品は、最終的に市場に投入され顧客のもとに届けられます。そこで顧客が対価を支払うことによって、はじめて売り上げとなり、その売り上げからコストや経費を差し引いたものが企業の収益となります。この収益が企業活動を根本から支えている。収益をあげて成長を続けることによって、企業は存続することを許されているのです。そこで考慮しなければならないのが「流通チャネル」です。

 流通チャネルとは、企業の製品を顧客のもとへ届ける役割を担う流通業者全般のことを指します。

 製造企業がもつ独自の販売網やサービス機関などの内部機関に加え、販売代理店や卸売業者、ディーラーや小売業者などの外部機関など、その種類は多岐にわたります。

 流通チャネルが担う「流通」という言葉には、次の3つの意味があるとされています。

・商的流通

・物的流通

・情報流通

 「商的流通」とは、いわゆる モノ の「所有権」が移動する流れのことです。一般的な商取引における基本的な作用です。

 「物的流通」とは、製品という「モノ」そのものが移動する流れのことです。いわゆるモノの流通そのものです。

 「情報流通」とは、情報が移動する流れのことを言います。情報社会においては重要な役割と言えるでしょう。

 

 それぞれの流通は別個に機能しているわけではなく、大きなマーケット活動の中で一貫して行われています。商的流通は製造メーカーから卸売業者、そして小売業者へ移動していますし、モノも同様に流れています。

 また、情報の流通も相互に行われており、次回以降の企業活動を支えるデータとして厳密に取り扱われています。

 流通チャネルは企業活動を円滑に行うためだけに存在しているわけではありません。 

 消費者にとっても、流通業者が介在することで取引全体が合理化されるというメリットがあります。

 流通チャネルがなければ、消費者はわざわざ製品を製造メーカーに注文しなければなりませんが、スーパーや商店などの小売業者があるおかげでそうした手間が省けるのです。

 それだけでなく、消費者は数多くの商品から好きな物を選択することができるようになり、企業はより顧客の需要に沿った商品を開発しなければならなくなります。

 結果として、私たちの生活がより豊かな方向に向かっていくことは間違いないでしょう。

流通チャネルの存在は、製造メーカーにとっても顧客にとっても経済合理性を高めていると言えるのです。それこそ、まさに流通チャネルの意義そのものです。

 現在では、インターネットの普及のおかげで、自宅の近所にスーパーやコンビニ、ショッピングモールなどの小売店がなくても、たいていのものはネット通販で購入することができるようになりました。まさに流通革命と言っていいでしょう。

 しかし、消費者にとっては、商品の購入手段の選択肢が増えたというメリットがある一方、こういったイノベーションが多くの業界や企業にとって、流通チャネルの改革を迫られることになりました。

 今後、マーケティングの中でも流通戦略はより重要な位置づけとなってくるでしょう。

  流通チャネルの役割は、製造メーカーの製品を販売することだけではありません。

 単なる媒介者として扱ってしまえば、そこから得られるデータや消費者の生の声をみすみす逃してしまうことになります。

 優れた商品開発が顧客から始まるとすれば、そうした情報を定期的に収集し企業活動に反映させることは、事業を成長させるために欠かせないことと言えるでしょう。

 

流通チャネルの機能

 製品を開発した企業がそれをターゲット顧客に届けるまでには、さまざまなギャップがあります。そうしたギャップを埋めるための機能を担っているのが流通チャネルであると考えると、より理解が促されることでしょう。

 流通チャネルの機能は、大きく「主機能」と「販売支援機能」のつに分けられます。

主機能

 流通チャネルの主な機能としては、広告やPRを通じて販売促進を実現するための「プロモーション」や、製品に関するさまざまな「調査」、あるいは製品をより顧客の望みに近づけるための「マッチング」、さらには、見込み客との「接触」や価格や条件面での「交渉」など多岐にわたります。

 流通チャネルが単なる販売の媒介者ではないことがわかります。

販売支援機能

 販売支援機能に特化しているものとして、輸送業務・在庫管理を行う「ロジスティクス」、売上回収や流通に必要な資金の調達・融資を行う「ファイナンス機能」、輸送中の事故などのリスクをとる「リスク分担」などの機能があります。

 ただし、取り扱う製品によって流通チャネルの役割が異なることに注意しておきましょう。

 たとえば、台所用品などの日用品はプロモーションがメインとなりますし、工業機械の場合には交渉がメインとなります。

 

流通チャネルの種類

 メーカーとユーザーを結ぶのが流通チャネル(流通業者)です。いくら素晴らしい製品を魅力的な価格で供給しても、その製品がユーザーの目にふれなければ購入される機会を得ることができないことから、流通チャネルの構築は製品販売に不可欠であることがわかります。近年では、インターネットによるメーカー直売の流通戦略を行う企業も多くなりましたが、流通チャネルを介して製品を市場に供給するのが一般的です。流通チャネルは、企業独自の販売網やサービス機関の他、卸売業者、販売代理店、小売業者などの外部組織によって成り立っており、製品販売における中核的な役割を担っています。

 流通チャネルは、自社独自の営業部門やサービス機関に加え、卸売業者・販売代理店・小売店などの外部流通組織によって成り立っています。流通チャネルは、メーカーから顧客の手元に届くまでの物流パイプラインを担っており、流通の中心的役割を果たしています。近年ではインターネットによるメーカー直売の流通戦略を行う企業も多くなりましたが、流通業者を介すことで流通経路が合理化され、メーカー・顧客の双方に流通コスト削減による様々なメリットをもたらします。

 製造メーカーを例にとると、作った製品を市場から消費者へと提供する役割を担う流通チャネルには、いくつかの種類があります。大きく「自社の流通組織(営業)」と「外部の流通組織」があり、さらに、外部の流通組織は「小売業者」と「卸売業者」にそれぞれ分類することができます。

 流通機能を分社化していたり、グループ会社に委託している場合には、外部ではなく自社の流通組織として考えたほうが良いでしょう。

自社の流通組織(営業)

 自社の流通組織ですが、端的に言えばこちらは社内の営業担当者ということになります。

 そもそも、営業の基本的な役割は、注文を受注し契約を締結、最終的には製品を販売することです。

 その他にも、価格や条件面における交渉、クレームの処理、あるいは小売店で製品の陳列状況を監督したりなど、その業務内容は多岐にわたります。

 そして、社内の営業担当者が外部の流通業者を訪問する際には、製品に関することや販売方法についてのレクチャーだけでなく、在庫調査や補充、注文、さらには流通業者の業務管理に対して改善計画を示すこともあります。

 このように、自社の営業担当者は、内部にいながら流通チャネルと同等の働きをしています。

 加えて、営業相手が法人、とくにエンドユーザーの場合には、流通業者に対して自社の製品を注文するように働きかけることも可能です。

 たとえば、バイクのモーターを作っているメーカーが、配送業者に「バイクのモーターはぜひ自社のものを」と営業をかけるような場合です。

 そうすることによって、配送業者から外部の流通チャネルへと注文をうながすことにつながるのです。

外部の流通組織

 外部の流通組織ですが、消費財の場合には流通チャネルというとこちらのことを指すのが一般的です。

 組織の規模によって特定の製品だけを取り扱う業者もあれば、複数の製品を取り扱う業者もあります。

 本来、製造メーカーと流通業者の関係性は明文化された契約に基づいているため、流通業者は一定の供給源を確保でき、さらに、メーカー側は販売トレーニングや新商品情報、あるいは技術支援などを行うことで販売力を強化することが可能となっています。

 ただし、近年では流通業者の交渉力が向上していることも見逃せません。

 コンビニなど、全国に幅広く展開している小売店などの場合には、どのような商品が売れるかを地域ごとに把握しており、また、そうした情報を蓄積したビックデータの活用によってメーカーに対して交渉力を強めています。

小売業者

 外部の流通組織の一端を担う小売業者ですが、彼らは製品を広く消費者に伝え、届けるために重要な役割を果たしています。

 日用品や食品はスーパーやコンビニに行って買うのが一般的ですし、自動車ならカーディーラー、電化製品なら家電量販店を訪れるはずです。

 こうした消費者の購買行動を促進させるための集客力こそ小売店に求められているもっとも重要な機能です。

 製造メーカーが小売店に対して行うべきなのは、商品を取り扱ってもらうことはもちろん、どのフロアにどのような陳列の仕方で置いてもらうかまで考慮しなければなりません。

 直接消費者と相対する立場にある小売業者に適切なアドバイスができなければ、製品のコンセプトやターゲット、あるいは目的を達成することは難しいでしょう。

 こうした小売業者は出店に際してさまざまな経費をかけています。

 地代や建設費を含めた設備投資に加え、スタッフへの給料や販売促進費なども捻出しなければなりません。

 そのため、卸売業者よりも高額のマージンを得られることが多く、正礼価格をキープしている百貨店ではその4~5割程度がマージンとなります。

卸売業者

 一方、卸売業者は、メーカーと小売業者との間に介在して、製品の特徴や地域にマッチしたものを消費者に届ける役割を担っています。

 また、顧客からの情報を収集する機能も有している点では小売業者と同じです。

 買い手の数が増えれば増えるほど、小売業者は多種多様になるため、卸売業者の存在がより重要になっていきます。

 通常、卸売業者の働きは、最終消費者に意識されることはほとんどありません。

 しかし、流通合理化の圧力は、製造メーカーからも小売業者からもかけられることが多く、両者の板挟みに苦しむことも少なくないのが特徴です。

 メーカーと小売業者との接触回数を必要最小限に抑えるために奔走しなければならず、結果的に労働集約的な組織体系になることも少なくありません。

 マージンという観点から考えると、メーカーから商品を買い取ってから小売業者に流通させるか、あるいは売り手と買い手の取引を仲介することで、その利ざやを得る卸売業者に分かれます。

 在庫を抱えるリスクが高まるだけに、前者のほうがよりマージンが高くなる傾向にあります。

   消費者の視点からのみ考えてしまえば、流通に携わっている企業や業種の全体像がイメージしにくいかと思います。そこで、直接相対する業者(ヒト)をイメージするのではなく、製品そのもの(モノ)の流れをイメージするようにしてみてください。そうすることで、それぞれの業者が担う役割も俯瞰できることでしょう。

 消費者の数が増えれば増えるほど、また、消費者の需要が多種多様になればなるほど、製造メーカーが独自に製品を流通させるのは難しくなります。たとえITを駆使しても限界はあるのです。

 より最適な市場に製品を投入し、ターゲット顧客に周知されるためには、卸売業者を介して小売業者へとアプローチすることが効率の面から考えても重要なのです。

 

段階別にみる流通チャネル

 流通チャネルを段階別にみていきます。

 流通チャネルは、その性格上、取り扱う製品によって関わり方が変わってきます。

 また、業界によっては、直販のところもあれば卸売業者を介在させているところもあります。

 一般的には、製品がコモディティ化するほど、間に入る流通業者は多くなるとされています。

ゼロ段階チャネル

 製造メーカーが顧客に直接製品を販売する形態が「ゼロ段階チャネル」です。

 間に卸売業者や小売業者は入りません。

 たとえば、訪問販売に特化している製薬会社や化粧品会社、あるいは、通信販売会社が当てはまります。

 販売活動をコントロールしやすく、他社の製品に気を使わなくて良いという特徴があります。

1段階チャネル

 製造メーカーと消費者の間に流通業者がひとつ介在するのが「1段階チャネル」です。

 自動車や家電などは、販売店(小売店)のみが関係する1段階チャネルの代表です。

 これまでは、メーカー側が主導して販売方法などを指導してきましたが、最近では多くの製品を取り扱う大型小売業者の発言力が強まる傾向にあります。

2段階チャネル・3段階チャネル

 3つ目は、製造メーカーと顧客との間に複数の流通業者が介在する「2段階チャネル・3段階チャネル」です。

 消費財の多くは、卸売業者と小売業者が間に入る2段階チャネルとされています。

 また、食料品や日用品など、比較的低単価で購買頻度が高い最寄り品の場合には、さらに二次卸が間に入る3段階チャネルとなっています。

その他の形態

 段階別では分類できない特殊な形態の流通チャネルをみていきます。 

マルチレベル方式

 「マルチレベル方式」とは、消費者のネットワークをフルに活用した販売システムです。

 核となるメンバーが新しい会員を増やしつつ、また、個人事業主として製品を買い取って販売することにより、消費者に製品を届けています。

 傘下の会員が売り上げを伸ばすことでバックマージンが増える形態のため、詐欺まがいのマルチ商法やネズミ講などと勘違いされるマイナス面もあります。

フランチャイズ方式

 ビジネスの提供者であるフランチャイザーから、製品やトレードマーク、システム使用権を得て行うのが「フランチャイズ方式」です。

 代表的なものにコンビニエンスストアや各種飲食店があります。

 販売促進のためのさまざまなサポートを受けられる反面、店舗側は一定のロイヤリティを支払わなければなりません。

ライセンス方式

 ブランドやキャラクターの使用権などを他社に貸し出すビジネスが「ライセンス方式」です。

 認知度が高く、社会的に受け入れられているブランドやキャラクターを使うことで、製品の販売を拡大することが可能となります。

 もっとも活用されているのが映画やコミックなどのエンターテイメント業界です。団体や個人のスポーツ選手なども活用されています。

 

段階別チャネル

 段階別流通チャネルとは、「直販」「一次販売店」「二次販売店」などの段階を表しています。

 何段階の流通チャネルを用いるかは、業界や製品の特性によるところが大きく影響し、「消費者の数が増え、消費者ニーズが多様化すればするほど、メーカーが独自に製品を流通させるのが難しくなる」と言われています。また、製品がコモディティ化するほど、間に入る流通業者が多くなると一般的には言われています。

「ゼロ段階」チャネル

 いわゆる「直販」にあたり、メーカーが直接顧客に製品販売を行います。近年ではインターネットの普及により加速度的にゼロ段階チャネルが増加していますが、主な例として、不動産の建売販売や、ブランド品販売など、高価格帯製品を取り扱うビジネスにあてはまります。その他、訪問販売ビジネスを行うポーラ化粧品やアザレ化粧品なども直販にあたります。

「2段階、3段階」チャネル

 メーカー・小売業者ともに好都合なのが2段階チャネルで、消費財の流通チャネルに最も多くみられます。出来るだけ多く消費者の目にふれることが売り上げ増加につながる消費財の最寄品は、不特定多数の小売店に少量販売することで消費者ニーズを満たし、機会損失を防ぎます。また、小売店は、卸売業者が介在することで迅速な在庫補充が可能となり、欠品による客離れを防ぐことができます。 その他、農産物や海産物などは3段階チャネルが多く、生産者⇒仲買業者⇒卸売業者⇒小売店を介してようやく消費者に製品が届けられていましたが、近年では、インターネットを介した0段階・1段階チャネルや大型量販店による2段階チャネルが台頭し、人気を博しています。

 

概念にとらわれない3つのチャネル

 流通チャネルの概念にとらわれないチャネルも存在します。代表的な例として、「フランチャイズ方式」「ライセンス方式」「マルチレベル方式」などが挙げられます。メーカーやサービス提供元はリスクを抑えて事業展開できるメリットがあり、事業運営側は、ノウハウや商標を一から構築する必要がなく、認知されたブランドを使用し、いち早くビジネス展開ができるメリットがあります。

フランチャイズ方式

 フランチャイズ方式とは、フランチャイザー(ビジネス・システム提供元)がフランチャイジー(フランチャイザーから提供を受ける事業者)にシステム、ノウハウ、商標使用権などの全てを提供し、運営サポートを行う見返りに、ロイヤリティを受けるビジネスモデルを指しています。フランチャイザーは、他者の経営資源を活用して事業規模を拡大できるといったメリットがあり、フランチャイジーはノウハウや商標を受けることで、からビジネスモデルを確立する労力なく、リスクを抑えて事業を開始できるメリットがあり、互いのニーズを補い合うことができます。

ライセンス方式

 ライセンス方式とは、自社の持つブランドやキャラクターの使用権を貸与し、商品の生産・販売をさせることで、売上に応じたロイヤリティを受けるビジネスモデルを指しています。ライセンス方式を採用している代表的な例として、人気キャラクターを有する「ディズニー」や「サンリオ」、人気漫画の「ドラえもん」や「北斗の拳」などがあげられます。

マルチレベル方式

 マルチレベル方式とは、メーカーが流通業者を介さず、消費者のネットワークを活用し商品の普及を行うビジネスモデルを指しています。親となる消費者は、子となる会員を増やし、子となった会員がさらに子を増やすことで、雪だるま式に売上が向上し、それに伴うバックマージンが増加します。店舗を構える必要が無く、商品陳列スペースの確保も必要としないマルチレベル方式は、低リスク・ハイリターンであるといえますが、消費者のネットワークを活用するビジネスモデルだけに、製品の普及には多大な時間を要する同時に、詐欺まがいの勧誘から消費者間のトラブルも後を絶ちません。

 

シェア獲得に影響を及ぼすチャネルの幅

 流通チャネルには、段階別チャネルにあげられるチャネルの長さの他、チャネルの幅の選択が必要となります。

 チャネルの幅が広くなればなるほど、商品供給は加速する一方、コントロールが困難になる点が課題となります。

 流通チャネルの幅は、幅の広さにより大きく以下のつに分けて考えられています。

開放的流通政策

 開放的流通政策とは、自社製品の販売先を限定せず、広範囲にわたり開放的に製品を流通させる政策です。流通の幅を広げることで、加速度的に一気にシェア拡大をできるメリットがある一方、流通業者が多岐にわたることから、チャネルのコントロールが難しくなり、販売管理の複雑さが増すデメリットが生じます。また、同じ製品を流通業者間で販売競争させる結果を生み出すことから、価格競争が生じ、ブランド力の低下や製品のイメージダウンにつながる可能性が高くなります。このことから、開放的流通政策は、高級品の専門品には不向きであり、薄利多売型の消耗品に向いている政策であると言えます。

選択的流通政策

 選択的流通政策とは、流通業者の販売力、資金力、協力度合い、競合製品の取り扱い状況などに応じて流通チャネルを選定する政策です。流通業者を一定範囲に限定することで、チャネルのコントロールがしやすくなるメリットがある一方、開放的流通政策と比較するとシェア拡大に時間を要するデメリットが生じます。適切な流通業者を選定することで、理想とするシェア拡大速度やブランド維持を図ることも可能なことから、流通パートナー選定が重要な鍵を握りると言えます。

排他的流通政策

 排他的流通政策とは、特定の地域や製品の販売先に独占販売権を与える政策で、一般的に代理店呼ばれる特約店を設ける政策です。流通業者を専任業社に特定することで、チャネルのコントロールがしやすく、販売管理が容易になるメリットがある一方、チャネル維持コストが大きくなる点や流通チャネルがメーカーに依存し、主体的に販売しなくなる傾向があるなど、メーカー側の負担が大きくなるデメリットが生じます。

 

流通チャネルの多様化

 流通チャネルには、製品ライフサイクルと同様にライフサイクルが存在し、新チャネルの登場により従来の流通チャネルが衰退する可能性を秘めています。

 代表的な例が、インターネット販売による0段階・1段階チャネルで、消費者ニーズにマッチした製品構成で高品質・低価格を打ち出すことで急激に人気が高まっており、3段階以降の流通業者は多大な影響を受けています。

 ひとつの流通チャネルに対する過度な依存は、売上低下につながるばかりでなく、経営自体を揺るがしかねません。流通業者への卸売り、インターネットでの直販、直営店舗での販売など、自社の経営資源に合わせ流通チャネルを多様化し、セグメント別に活用していくことが大切です。

 

商品特性、会社の規模からチャネルを考える

 流通チャネルは、商品の特性にあったものを設定しなければならない。
 商品差別化がなく、店頭で選ばれる機会が多い商品などは、卸主導、メーカー主導、小売主導のチャネルが合っている。卸はバイイングパワーがあり、全国を網羅する営業力、販売力を有するので、一気に全国のチャネルに投入できる機会が高いからです。 
 また、メーカー主導や小売主導のチャネルは、比較的大手メーカーに限られてくるでしょう。なぜなら、直接小売りを管理するため、小売業に売り場ノウハウやマーチャンダイジングできる能力が求められるからです。
 それには、当然、全国規模に対応する専門家の育成も必要となるため、現実問題として、できる企業とできない企業に分かれるのです。 
 特に、小売り主導型は、卸が間に入る場合も多いが、小売りが直接メーカーとやりとりしながら納入数を決めていくやり方となるため、この場合、小売り側に規模の論理が働くので、規模が小さいメーカーでは小売りの要求に対応できない案件が出てくることも多い。 
 そのような商品を専門店型チャネルで展開する場合には条件が限られてきます。それは、自分で製造できる能力があり、店舗も構えられる能力のある一部の限定されたメーカーになるでしょう。
 そうした条件を満たすメーカーが専門店型で展開すれば、一気通貫の売り方となるため、コスト管理ができ、自前でチャネル調整できるメリットがあります。 
 ダイレクト販売の場合ですが、中間の介在を無くしたことで、消費者に直接届けることができるが、商品が比較的低価格の場合、手間がかかり、顧客との接点も限定されるので向かないでしょう。 
 しかし、自前でチャネル構築できない小規模店や単価の高いもので特定ニーズに対応する商品であれば、一番効率が良い販売方法かも知れません。 
  このように、それぞれの流通チャネルには特徴があります。しかし、ここで一番考えなければならないのは、いつ、どこで、どのように商品が顧客に届けられるかの過程を考えることです。

 

商品寿命の短命化がチャネルの再構築を促す
 近年、流通チャネル戦略が重要になってきている。それは、各メーカーが製品の差別化を実施しているのは当然ですが、必ずしもそれが競争優位を生み出すことにつながっていないからです。 

 例えば、シャンプーや石けんなどは、開発に10年かけた製品でも、2~3年でほかのメーカーも同じタイプの製品を投入してきます。そうなると、先行投資の利益はわずかなものであり、商品自体の短命化も進みます。そして、このような状況になってきた場合、流通チャネルを整備し、それに対するマネジメント力で商品に付加サービスを提供できる企業が優位になってくるのです。

 

チャネル強化のためのリサーチ方法 
 競合商品の台頭、先行者利益の喪失という状況を打開するために、企業はどのような行動をとればよいのでしょうか。それには、流通チャネルの選択と集中、そして、強化が必要となります。
 そして、そのためには、顧客の購買行動を通じて、顧客の好み、行動を理解する必要があるのです。
 そのための最も有効な方法の1つが、現場からの情報のフィードバックを通じて顧客の声を聞く方法です。 
 以下に顧客の声を聞く方法を列挙します。 
・消費者から手紙、アンケートなどをもらう
・全従業員を通じて、日常的な会話から消費者情報を拾う
・パネル調査を実施し、製品、サービスについて話し合う
・消費者を対象に、製品、サービスの選択の理由を聞いてみる また、消費のための優先順位を聞いてみる
・専門家との意見交換会を実施し、今後のトレンドを聞いてみる
・モニタリングを行い、ブランド価値や使用状況を分析してみる
・情報システムを通じてデータを分析し、仮説をたててみる

 

情報のフィードバックが売れる仕組みを支える 
 流通チャネルが必要とされる理由は次の3点に集約できる。
・自社の商品の機会を拡大するということと同時に取引コストを下げるという役割を持っている
・市場にスピーディーに商品を供給する(納期の短縮)
・市場の情報を収集し、顧客ニーズに合う商品を供給していく

 ここで大事な点があります。情報のフィードバックによる関係性の維持です。マーケティングでは、市場の情報が重視されているように、販売時の情報も今後の製品開発や製造を計画するうえで無くてはならない情報になっています。
 30年前からPOS(販売時点情報管理)システムが小売店に導入され、単品管理による流通情報システムを整備している企業が多いと思いますが、ここで大事な視点があります。それが、情報のスピードです。 
 従来の販売システムは、単品管理の数値だけ見て満足していましたが、実際には、モノが移動すると共に情報も移動するので、常にタイムリーな情報が求められるのです。つまり、時間を軸とした情報の精度です。 
 例えば、小売店舗において、棚で在庫切れを起こしていたとしましょう。すると、せっかく購入しにきた顧客は、購入機会を失い、販売機会ロスとなってしまいます。これが、例えば、全国に多店舗展開している企業を考えてみると、1店舗で1日あたり機会ロスが何店かあれば、それが全国規模なので、売り上げ数値に換算すると、年間では決して小さくない数字になるでしょう。 
 小売りの現場では最新の情報を取得して、常に製造現場、物流業者(卸、物流部門)に対して情報のフィードバックをスピーディーにすることが求められているのです。
 情報の流れが早くなることで、モノの流れも早くなり、例えば販売機会ロスを起こさず、マーケティング活動を長期で支える仕組みができるのです。 
 情報感度が悪いと、今後ますます商売もうまくいかなくなる可能性は大です。
 流通チャネルと同時に、スピーディーなフィードバックができる情報システムを構築することも成功の大事な要素の一つなのです。

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