流通チャネル構築のプロセス

 流通チャネルは、その性質上、メーカー企業の事業活動を支える支柱となります。

 いくら顧客にとって優れた製品であっても、たとえ膨大な需要があっても、流通チャネルがうまく機能しなければメーカーの商品は世の中に流通しません。

 もちろん、ここで言う流通チャネルには社内の組織も社外の組織も含まれています。

 それだけに、企業活動において流通チャネルは重要な存在となります。

 製品を反復継続して販売していくためには、流通チャネルを適切に構築しなければなりません。

 そのためのプロセスは、次の6つの段階からなります。

ターゲット市場・自社経営資源の把握

 流通チャネル構築の第一段階は、流通させる製品をどの市場に投入するのかを決める「ターゲット市場の選定」です。 

 ターゲット市場の選定は、企業のマーケティング活動における基本要素ですが、流通チャネルの構築においても必要なものとされています。

 また、流通チャネルの構築には莫大な費用がかかるので、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ)を正しく把握しておかなければなりません。

 優れた流通チャネルを構築できても、実際に運用できなければ意味がありません。

チャネルの長さの決定

 次に、「チャネルの長さ」について決定します。

 チャネルの長さとは、流通チャネルの段階数のことを指していますが、具体的には、「直販にするのか」「小売業者を利用するのか」「卸売業者も介在させるべきなのか」などと検討しつつ決めていきます。

 チャネルの長さは、大きく「直販」か「それ以外」に区分できます。どちらを選択するのか検討する際には、「総販売量」「製品特性」「製品単価」「顧客の地理的条件(集中・分散)」「顧客規模」「顧客一人あたりの取引量」などを考慮しなければなりません。

 たとえば、製品単価が安く顧客が地理的に分散している場合には、直販という選択は非経済的でしょう。

 私たちが普段使っている日用品や消耗品は、卸売業者や小売業者が介在している場合がほとんどです。

 製品単価が高くターゲット市場が地理的に集中している場合には、直販が有効になることもあります。

 ある地域の一定の工場にしか提供していない部品メーカーには、卸売業者も小売業者も必要ありません。

 継続的な営業活動やアフターケアのことを考えても、直販がベストと言えるでしょう。

チャネルの幅・排他性の決定

 チャネルの長さを決定したら、次に「チャネルの幅・排他性」について検討していきます。

 チャネルの幅とは、それぞれの段階においてどのような流通業者を使うのか、種類と数の両面のことを指します。

 流通チャネルの幅を決める際には、「顧客の利便性」と「流通業者への配慮」を天秤にかけることになります。

 顧客の利便性を重視するのなら、流通チャネルの数は多くなりますし、特定の流通業者に配慮したいのなら、業者の数を制限しつつ、担当範囲を広くする必要があります。

 流通チャネルの幅は、次の3つの政策を参考にしつつ決定すると良いでしょう。

 ・「開放的」流通政策

 ・「選択的」流通政策

 ・「排他的」流通政策

開放的流通政策

 販売業者を限定せず、製品をより幅広く展開したい場合にとるのが「開放的流通政策」です。

 広く社会に認知される可能性が高まりますので、一般大衆向けの最寄り品などで採用されることが多いのが特徴です。

 一方、流通業者間の競争が激しくなり、思わぬ価格競争が生じてしまうこともあります。

 多種多様な流通業者が介在すれば、それだけ製造メーカーがコントロールすることも難しくなり、場合によっては製品イメージの低下にもつながりかねません。

選択的流通政策

 一定の基準を満たした流通業者にのみ自社の製品を取り扱ってもらうという政策が「選択的流通政策」です。

 「開放的流通政策」と「排他的流通政策」の中間に位置します。

 業者を選定する基準には、「メーカーへの協力度」「競合製品の割合」「立地条件」などがあります。

 流通コスト低減に寄与するだけでなく、流通業者をある程度コントロールできるというメリットもあります。

排他的流通政策

 特定の地域、あるいは代理店・特約店などの販売先を選定し、排他的・独占的に販売権を与える政策です。

 製品によっては、他社の取り扱いを禁止する場合もあります。

 主に自動車や家電製品などの業界で採られる政策で、メーカーのマーケティングや販売戦略を浸透させつつ、コントロールできるというメリットがあります。

 反面、コストが高くつきやすく、流通業者の主体性や創造性が失われやすいというデメリットもあります。

 その他、自社の流通チャネルと他社の流通チャネルの調整にも配慮しなければなりません。

 インターネットを利用した直販によって小売店の売上が圧迫されてしまうようでは、良好な関係を築くことは難しいでしょう。

 また、業者間の摩擦を防ぐために、販売比率を微調整するなどの工夫が必要となる場合もあります。

展開エリアの決定

 チャネルの幅や排他性を決めるのとほぼ同時に、製品の展開エリアについても検討し始めましょう。

 流通業者は、ある一定の地域に根ざしていることもあれば、全国に幅広く展開している場合もあります。

 製品のエリア政策、すなわち、「地域を限定して販売するか」「徐々に拡大していくか」「最初から全国展開していくか」などにあわせて、展開エリアも決定していきましょう。

 それによって最適な流通チャネルが絞られることもあります。

チャネルメンバーの選定

 ターゲット市場、チャネルの長さや幅、展開エリアが決まったら、いよいよ「チャネルメンバーの選定」を行っていきます。

 チャネルメンバーを選定する際の基準となる要素には、次のようなものがあります。 

 ・企業の健全性(財務内容など)

 ・果たしうる機能

 ・得意とする製品カテゴリー

 ・販売組織の確立度

 ・顧客の数と質

 ・対顧客交渉力

 ・顧客との人間関係

 ・小売店での売り場獲得力

 ・取引条件

 ・物流能力

 ・情報武装のレベル

 ・コントロールのしやすさ

 何を重視するのかは、それぞれのメーカーによって異なるでしょう。たとえば、独身男性をターゲットとする飲料の場合、値崩れを防ぐという意味でもコンビニ限定にて販売する戦略が採られることもあります。

チャネルの動機づけ政策の決定

 流通チャネルに対して、取り扱いや販売の「動機づけ」を検討します。

 動機づけとは、流通業者がその企業の製品をもっと売りたいと思えるようなモチベーションアップのための手法と言い換えても良いでしょう。

 動機づけの具体的な方法には、「流通業者へのマージン」「量によるディスカウント」「その他インセンティブ」の3つがあります。

流通業者へのマージン

 「流通業者へのマージン」は、分担してもらいたい機能が増えるほど、あるいはリスクが大きくなるほど高くなります。 

 在庫維持や現場での販売、配送といった機能までも負担してもらう場合には、流通業者に対して相応のマージンを支払わなければなりません。

量によるディスカウント

 1回の注文で大量の商品を仕入れる業者に対して、1個あたりの単価を安く提供するのが「量によるディスカウント」です。

 全国に展開する大手小売店の場合には、独自の販路や棚スペースを保有することで、莫大なディスカウントを得ています。

その他インセンティブ

 「その他のインセンティブ」としては、小売店を対象としたコンテストなどがあります。

 期間や製品ごとに売上・販売数を競わせ、販売を促進します。

 商品には各種商品券や旅行などがあり、とくに家族経営の小売店などでは効果があるとされています。

 流通チャネルの構築は、マーケティング戦略の一環として入念に検討しなければなりません。

 そのプロセスにおいて考慮しなければならないことはたくさんありますが、事業を継続して行うためには欠かせない作業と言えるでしょう。

 

流通チャネル構築時に考慮したい6つの要因

人口動態

 年齢、性別、職業など、どのような顧客がどのくらいいるか検討します。

製品特性

 製品のイメージ、使用方法、価格などの要素を検討します。

顧客の購入スタイル

 配達やまとめ買いなど、顧客の購入スタイルを検討します。

経済性(投資額、維持コスト)

 流通チャネルへの投資や維持コストを検討します。

 社内で完結できない流通チャネルは、それだけ投資もコストもかかります。

競合の流通チャネル政策

 顧客に対してより影響力のあるチャネルを使うことで、競合に打ち勝つ戦略を構築できます。

自社のブランド力、製品ライン、サービスの競争力

 ブランド力があり、製品ラインやサービスにも競争力があれば、流通チャネルへの交渉力は高まります。それらが乏しければ、好条件を提示しなければ取り扱ってもらえない場合もあります。

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