流通チャネルの変更

 製造メーカーにとって、流通チャネルの存在は、自社の利益を確保し、継続的に営業活動を行うための重要な基盤となります。

 優れたマーケティング戦略を背景に、製品を企画・開発し、いざ顧客に提供しようと思っても、流通チャネルが正しく機能しなければ、売上をあげることはできません。

 だからこそ、流通チャネルの構築とその維持に関しては、マーケティング戦略の一環として連動させつつ熟慮しなければならないのです。

 たとえ、社内に強力な営業部隊を抱えていても、専門の販売部があったとしても、既存の卸売業者や小売業者の協力を取り付けなければ事業を拡大できないこともあるでしょう。

 流通チャネル構築の初期段階においては、次のような要素を考慮する必要があります。

 ・人口動態

 ・製品特性

 ・顧客の購入スタイル

 ・経済性(投資額、維持コスト)

 ・競合の流通チャネル政策

 ・自社のブランド力、製品ライン、サービスの競争力

 ただ、長期的な視点で考えると、流通チャネルは一度構築すればそれで良いということではなく、環境の変化に応じて柔軟に変えていかなければなりません。

 初期の段階から環境の変化に応じて変えることを意識すべき要素は、次のとおりです。

 ・買い手の行動

 ・買い手の求める情報

 ・製品の技術的特徴

 ・競合の流通戦略

 ・利用可能なチャネル

 ・法規制

 企業活動全般においても言えることですが、変化に対応できない組織はやがて衰退してしまいます。生物と同じで、環境に応じて適切に新陳代謝が行えないからです。かつて日本を代表する優良企業ともてはやされていた企業が、硬直した組織体系から抜けだせず、衰退していく例は枚挙にいとまがありません。同じように、流通チャネル一つとっても随時適切に変えていかなければならないのです。

 どのような要素が流通戦略に変化の必要性をもたらすのでしょうか。

「市場の拡大と成熟度」の観点から

 ・製品の細分化

 ・市場の細分化

 ・新しい市場分野の出現

 ・購買行動の変化

 ・買い手の求める情報の変化

 ・大口顧客の出現

 ・コスト要素の変化

 ・新しいチャネルの出現

 ・法規制による制約の変化

「製品の進化」の観点から

 ・技術の成熟化

 ・製品ラインの更新

 とくに、市場の成長によって、メーカーと流通業者との力関係が変化することは往々にしてあります。たとえば、類似商品が多数登場し、それによって価格競争に陥ればメーカーの意向を無視してでも安値で販売する業者も現れるかもしれません。

 流通業者側としても、売るという究極的な目的のためにメーカーに要求を突きつけることもあるのです。そのなかでは、希望小売価格の見直しやプライベートブランドの投入などもあるでしょう。

 外部組織を利用することが多い流通チャネルの構築においては、相手との関係性にも配慮しなければなりません。

 ともに成長してきた間柄であれば、環境の変化という理由で簡単に切り離すことはできないでしょう。

 全体のバランスを考えつつ、適切な判断が求められます。

 流通先を限定させると、販売網が縮小するため、顧客獲得の機会を失ってしまうと思われがちです。 しかし、より最適なターゲットに訴求することができる場合があるのです。とくに、お菓子のようなコモディティ化している商品の場合、販売先を限定することによって流通チャネルを変更すれば、無理に厳しい競争環境で争う必要がなくなります。 

 売れ筋の商品が生まれれば、流通チャネルへの影響力も強まるでしょう。

 

ハイブリッド・チャネル

 時代や環境の変化による流通チャネルとの関わり方について考えていきます。

 流通チャネルも企業であるために、時代や環境の変化によって栄枯盛衰があります。

 かつて、商品の購入先としてもっとも栄えていた商店街も、今やシャッター街となっている状況を鑑みるとそれは明らかでしょう。

 だからこそ、製造メーカーとしては、流通チャネルを単一のものに頼るのではなく、複数確保しておくことが重要です。

 また、チャネルや購入者層の多様化にともない、ターゲット層に合わせて流通チャネルを変えるという努力も必要になるでしょう。

 たとえば、若年層にはスマートフォンサイトや動画投稿サイトからECサイトに誘導し、購入をうながすことが最も適したアプローチかと思えば、主婦層には量販店での陳列販売が有効なこともあります。

 自動車などの高価な製品は、間にディーラーを挟んだ方が良いでしょうし、訪問販売の場合は営業マンが必要となります。

 このように、一つあるいは複数のセグメントに対して一つの流通チャネルを利用するのでなく、複数の流通チャネルを確保しておくという考え方を「ハイブリッド・チャネル」と呼びます。

 それぞれのチャネルの特性を生かし、適時適切に運用していくことが大切です。

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