プロモーション戦略

コミュニケーション戦略の役割

 プロモーションとは、「販売促進活動」のことを指しますが、顧客に自社の製品やサービスを知ってもらう活動は必ずしも販売促進だけではなく、「情報伝達全般」も含みます。

 マーケティング・ミックスの流れの中で、優れた製品が完成し、適切な値付けを行い、流通経路(流通チャネル)も構築できた。しかし、それだけでは製品を販売することはできません。顧客はその製品を知ることができないからです。とくに、数多くの商品が市場に出回っており、随時更新されている現代においては、周知されていない商品が選ばれるということは極めて少ないでしょう。たとえば、普段の買い物を思い浮かべてみてください。毎日購入する食品から日用品、あるいは雑貨、その他趣味のためのグッズなど、その多くは、知っていたものを購入しているのではないでしょうか。顕著なのは、テレビやラジオのCM、インターネット広告などで見かけた商品などでしょう。

 いかに優れた製品を持っていたとしても、その存在を顧客が知らなければ購入してくれることはありませんし、その製品の存在を知っていたとしても、製品に関しての適切な情報を持っていなければ、数多ある競合他社の製品の中から選ばれることはありません。

 しかし、顧客とのコミュニケーションを適切にとれていれば、競合他社より優位なポジションを築くことができます。そのため、プロモーションを含めた顧客とのコミュニケーションはとても重要なのです。

 そうした消費者側の認知、つまりは製品(企業)と顧客とのコミュニケーションが、これまでマーケティング・ミックスにおいて進めてきた工程の仕上げとして、製品の購買に直接つながるのです。 

 いかに顧客とコミュニケーションを行うか、つまりはコミュニケーション戦略の構築がいかに大事かお分かりいただけることでしょう。

 ただ、顧客とのコミュニケーションを行うにあたっては、とにかく周知させれば良いというわけではありません。

 たしかに知ってもらうことは大事ですが、その製品の必要性を感じていることに加え、購入の意思決定に至る準備ができていない相手に伝えても意味はありません。

 むしろ、必要性を感じていない相手に製品の特徴を説明しても嫌がられるだけでしょう。

また、製品の特徴に興味をもっている人に対し、製品名だけを連呼しても購入には至りません。

 だからこそ、これまでのマーケティング・ミックスで培われたデータを踏まえつつ、「誰が、いつ、どのように」コミュニケーションを行うのかが重要になります。

 コミュニケーション戦略の基本は、「誰が、いつ、どのように行うのか」ということです。

 自社が取り扱う商品の性質をしっかりと把握し、顧客とどのようにコミュニケーションを行うべきかを考え続けることが、マーケティング・ミックス全体の相乗効果をも生むのです。 

 事業拡大に際して、必ずしもマスメディアによる広告が正解とは限らないのです。

 

標的市場とプロモーション戦略の目的の決定
 プロモーションを実施する対象を決定する「標的市場」の設定に関しては、事業ドメイン(企業が事業を展開する領域)を検討したり、新製品開発などに際して行う「ターゲット顧客の設定」と同様の考え方で取り組むことができるため、プロモーション戦略を見直す際に、それほど大きな問題とはならないでしょう。 
 このステップで注意が必要なのは、「プロモーション戦略の目的の決定」です。
 プロモーションの最終的な目的は、消費者に自社製品を購入してもらい、売り上げを拡大させることにあります。このため、プロモーション戦略の目的というと、とにかく「売り上げ増加」と考えてしまう傾向がみられます。しかし、実際に製品を購入する側の消費者は「製品に対するニーズを感じたら、すぐに製品を購入する」といったように、単純に製品の購入を決定しているわけではありません。例えば、自動車などの高額製品や、消費者の関与度(こだわり度)の高い製品については、
 ・認知段階:製品に関する情報収集などを通じて「製品について知る段階」
 ・情動(感情)段階:収集した情報などを基に「製品を評価する段階」
 ・行動段階:評価した結果を基に「実際に製品を購入する段階」
というプロセスを経て製品の購入に至るといわれています。
 そして、これらの各段階によって消費者に対して効果的なプロモーション手法は異なります。
 例えば、「値引き」や「クーポン」といったセールスプロモーションは、「行動段階」においては効果的とされるが、「認知段階」での効果は薄いといわれています。  
 仮に、自社の新商品に対する情報が不足している段階(認知段階)にある消費者が多いにもかかわらず、「値引き」を行っても大きな効果は見込むことができないのです。 
 上記の例でいえば
・認知段階:製品の名称や特徴などを消費者に知ってもらう
・情動段階:「自社製品が消費者のニーズを十分満たす製品である」「他社製品よりも優れている」といった点をアピールし、自社製品に対して好意を抱いてもらい、よい製品であると認識してもらう
・行動段階:自社製品に対して好意を抱いている消費者の購買行動を促す
というように、異なるプロモーション戦略の目的を設定する必要があるのです。 
 なお、消費者の購買プロセスは、製品の特性によって異なります。
 例えば、関与度(こだわり度)の高い製品は、上記のようなプロセスを経て購入に至る場合が多くみられます。
 一方、日用品などの関与度(こだわり度)が低い製品については「取りあえず知っている製品を購入し、実際の使用経験から評価を下す」という、「認知段階→行動段階→情動段階」というプロセスを経ることが一般的です。 
 このため、プロモーション戦略の目的を設定する際には、その製品カテゴリーにおける消費者の購買プロセスの特徴や、自社製品に対する消費者の認知度などを勘案したうえで検討を進めることがポイントとなります。

 

販売促進戦略のあり方

1 販売促進戦略を策定するプロセス
 販売促進(プロモーション)とは、ターゲットとする消費者や企業ユーザーに対して、製品やサービスの特徴や価格、あるいは自社の情報などを提供したり、または販売員などを通じて働きかけたりして、需要を喚起するための一連の活動です。 
 具体的にはさまざまな手法がありますが、より効果的な販売促進活動を実現するためには、「誰に」「どのような情報を」「いつ」「どのように」伝えるか、ということを戦略的(大局的)に検討したうえで、個々の手法を計画・実施していく必要があります。
   

販売促進戦略を策定するためのプロセスは、一般的に以下のとおりです。

(1)ターゲットとポジショニングの明確化 
 まず、販売促進活動のターゲットを明確にします。
 たとえば、消費財であれば、消費者をセグメント化(消費者の諸々の特性によって細分化)し、重点的なターゲットとするセグメントを選択します。
 そして、自社の製品やサービスを競合商品とは異なったものとして、どのようなイメージで印象づけるか、製品やサービスのポジショニングを明確にします。

(2)販売促進目標の策定
 定売上高や認知度、試用率の向上といった具体的な成果目標を設定します。「いつまでに」「何を」「どうするのか」を明確にすることが重要です。

(3)メッセージ・デザインの決定 
 消費者や顧客に印象づけたい製品やサービスのイメージなどに基づいて、「どのようなメッセージを」「どのように伝えるか」を決定します。

(4)販売促進手法の検討 
 販売促進の具体的手法には、媒体(メディア)を介したものと人員を介したものがあり、それぞれにさまざまな手法があります。
 前者がマスメディア寄り、後者は一人ひとりの消費者寄りです。各手法にはそれぞれ特徴があり、どの手法が適しているかは、ターゲットや製品・サービスの特性、あるいは全体のマーケテイング戦略によって異なります。そのため、いくつかの手法を適切に組み合わせて実施することが必要です。
 また、各手法が相互の機能を補完し合うような組み合わせを検討します

(5)販売促進予算の設定
 予算が販売促進手法を選択する際の制約になる場合が多い。
 販売促進全体の予算を決めた後、最大限に効果を発揮するように各施策への適切な予算配分を行なうという順序が必要になります。

(6)プロモーション・ミックスの決定 
 以上のプロセスから、目標を達成し、最終的な利益に結びつかせるために、実際にどのような販売促進手法を組み合わせるべきか、最適な「プロモーション・ミックス」を決定していきます。

 

2 販売促進手法の種類と特徴

 プロモーションの手法は、
 ・広告
 ・パブリシティー
 ・人的販売
 ・販売
の4つに大別することができます。

 

広告
 広告とは、広告主が明らかにされているもので、テレビやラジオといった電波媒体や、新聞・雑誌やチラシなどの印刷媒体を利用したものをいいます。
 広告は広告主が費用を支払うことによって行われます。

テレビ

 メリット
  ・マーケットを広くカバーすることができます。
  ・人の視聴覚に訴えることができます。

 デメリット
  ・製作コストが高い。

ラジオ

 メリット
  ・コストは低めです。
 ・地域別ターゲットの選択がしやすい。

 デメリット
 ・聴覚のみの訴求となります。

新聞

 メリット
  ・信頼度が高いです。
  ・マーケットを広くカバーします。

 デメリット
  ・視覚のみの訴求となります。
  ・露出が短命(一過性)

雑誌

 メリット
  ・ターゲットの選別がしやすいです。
  ・情報提供料が大きいです。
  ・露出が長く、保存性があります。

 デメリット
  ・製作期間が長いです。
  ・コストが高いです。

DM

 メリット
  ・ターゲットの絞り込みが可能です。
  ・柔軟に内容を設計できます。

 デメリット
  ・読み捨てられるイメージです。

屋外広告

 メリット
  ・再接触頻度が高いです。
  ・比較的低コストです。

 デメリット
  ・対象の選択がほとんど不可能です。

インターネット

 メリット
  ・低コストです。
  ・対象の選択が可能です。
  ・双方向性があります。

 デメリット
  ・インパクトが比較的弱いです。

 なお、現在、インターネット広告は、量において、新聞、雑誌、ラジオを凌いでいるといわれています。

訴求内容に基づく広告の分類 
 広告は、そこに盛りこまれたメッセージなどの訴求内容に応じていくつかのパターンに分類することができます。

製品広告と制度(企業)広告
 製品広告は、特定の製品について行われる広告であり、私たちが多く目にするものです。
 一方、制度(企業)広告は、個別の製品ではなく、「○○を実現した○○工場」といったように企業自身を訴求する広告をいいます。
 制度広告は、自社のイメージ向上などを目的に行われるケースが一般的です。

情報提供型広告と説得型広告
 革新的な製品については、最初にその製品が消費者にもたらすメリットや製品の使用方法などを消費者に理解してもらう必要があります。
 こうした内容を中心に訴求している広告を情報提供型広告といいます。
 一方、説得型広告とは、私たちが多く目にするタイプの広告で、自社製品などの特長などを訴求し、多くの競合する製品の中から自社製品を選択してもらうために行うものをいいます。

そのほかの広告
 そのほかの広告としては、比較広告とリマインダー広告があります。
 比較広告は、競合他社の製品と自社製品を比較したり、自社の旧式の製品と新製品を比較するなどして、自社製品あるいは新製品が優れていることを訴求するタイプの広告です。
 また、リマインダー広告とは、既に構築されているブランドや消費者の間に浸透している認知度を維持することを目的としたものです。

 広告に使用される媒体はさまざまであり、それぞれに異なった特徴があります。
 利用する媒体を検討する際には、これらの特徴を知っておくことが必要です。

「回覧読者」とは、新聞や雑誌などに関して、自身が費用を支払うことなく、それらに掲載されている情報を目にする読者のことです。例えば、「友人が購入した雑誌を『回し読み』する読者」などは回覧読者に該当します。

パブリシティー
 パブリシティーとは広報活動のことを言います。

 企業が新製品発売の際に、マスコミ各社(新聞社、放送局、出版社など)に対してニュースレターを送り、テレビ/新聞/雑誌などの報道機関に記事として取り上げてもらおうとするプロモーション活動のことです。

 第三者による客観的な視点から評価された情報であるパブリシティーは、信頼性の高い情報として消費者に認識されます。そのため、企業としてはパブリシティーを通じて自社の情報を積極的に発信したいところですが、取り上げる情報を決定する権限はあくまでマスメディア側にあります。 
 従って、パブリシティーを活用するためには、情報の発信者であるマスメディアに注目してもらう必要があります。
 そのため、企業が取り組むべきことは、マスメディアが注目しそうな情報を積極的に発信することとなります。
 発信する情報の内容としては、新製品情報などの本業に関する情報、ボランティア活動などの社会貢献活動、経営者など社内人材に関する情報(執筆した出版物など)などがあります。 
 また、時には、展示会や期間限定の大型プロモーションなどのイベントなどを行ってマスメディアが注目するような話題づくりに取り組むことも有効です。 
 これらの情報を発信する方法としては、プレスリリースや自社のホームページなどを活用するとよいでしょう。

メリット
 ・広告とは異なり、取材を受けるのは原則無料です。
 ・マスコミ各社が主観的に記事として掲載するので、消費者からの信頼は高くなります。

デメリット
 ・記事の掲載の可否をはじめ、記事の内容についても、すべてマスコミ各社の判断となり、企業側からの統制は不可能です。
 ・必ずしも好意的に取り上げられるとは限らず、継続的に採用される保証はありません。

PR活動

 パブリシティは PR(Public Relations)活動の一環です。PR活動とは、企業を取り巻く公衆(パブリック)、に対してのコミュニケーション活動全般といえます。

 企業の利害関係者はステークホルダーと呼ばれ、顧客、株主、従業員、取引先、金融機関等が含まれますが、PR活動は、これらステークホルダーだけではなく、地域住民、マスコミ、公衆、政府などのパブリックな集団も含めて行います。社会全体と良好な関係を構築、維持し、また信頼性を高めることがPR活動の目的です。

 

販売促進

 販売促進とは、セールスプロモーションとも呼ばれ、消費者の購買意欲、および販売店の販売意欲をかきたてる活動全般をさします。

消費者向け

 消費者のニーズを刺激し、短期間で多くの商品を販売するために行われます。POP広告、サンプル(試供品)、ポイントカード、クーポン、景品やおまけ、抽選、実演販売、展示会、カタログ、パンフレットなど、さまざまな種類があります。

流通業者向け

 販売店の販売意欲を促進するために行われるものとして、以下のものがあります。

①リベート・・・

 取引量に応じてメーカーから流通業者に現金や現物を支払うものです。

②アローワンス・・・

 メーカーが実施するキャンペーンなどの拡販プログラムに参加した販売業者に対して補助金や割引を行います。

③販売店コンテスト・・・

 販売員に対して一定の目標を掲げてコンテストを行い、販売向上を競わせます。

④販売店教育・・・

 販売員に対し、自社製品情報の説明会など、各種研修を行います。

⑤販売員派遣・・・

 小売店に対し、メーカーが自社製品の売上向上を目的に販売員を派遣します。

社内向け販売促進

 社内の販売意識を高めるため、および販売技術を高めるために行います。特別賞与や社内セールスコンテスト、セールス教育、販売マニュアルの作成などがあります。

 

セールス・プロモーション(SP)活動

 セールスプロモーション(SP)活動には、広告量伝と比べて相対的に低コストで実施できるものが多く、中小企業に適するものが多いといえます。 
 具体的には、ターゲットとする消費者(あるいは企業などの顧客)向けと流通業者などの中間業者向けの活動に大別できます。

(イ)消費者向け 
 各種のメリットの提供や、店頭における仕掛けづくりになどによって購入を促すもので、具体的には、販売デモンストレーション、店頭POP、サンプル・景品の提供や値引き販売、ポイントカードによる顧客の組織化、さらに、展示会や消費者コンテストの実施などが挙げられます。
 また、そのほか、パブリシティー(ニュースや編集記事)や口コミも有効な手法です。 
 パブリシティーとは、テレビのニュース、新聞・雑誌記事、インターネット上の記事などに、媒体費無料で取り上げてもらうというものです。 
 消費者の情報に対する受容度が高いという長所がありますが、媒体側の企業と良好な関係を築き、情報にニュース性を加味して提供するなどの取り組みが必要です。 
 口コミでは、口頭のほか電子メールやホームページの役割が増しています。
 口コミの統制は困難ですが、パブリシティー同様、媒体費が無料で情報の受容度が高いという長所があります。
 口コミを活用するには、オピニオン・リーダーへの働きかけなどが重要になります。

(ロ)中間業者向け 
 製品やサービスの取り扱いを促進させることを目的に、流通業者などの中間業者に各種のメリットを提供するもので、具体的には、売上実績に応じたインセンティブやバックリベートの供与、値引きや増量などの優遇、看板や什器、店頭POPなどの提供、展示会や親睦会の実施などが挙げられます。
 また、経営や販売指導、従業員教育、マーケティング情報の提供なども含まれます。

 

人的販売 
 人的販売とは、営業パーソンや販売員などの販売担当者による、個々の顧客に対する会話や情報提供、接客などのきめ細かな活動をいいます。
 こうした活動には、
 ・製品やサービスの提示や試用により購入の決定を促進しやすい
 ・顧客と良好な関係を築くことで固定化を図りやすい
 ・広告宣伝と異なり相手の反対や不満にも対応できる
などのメリットを期待することができます。
 また、消費者の声、競合企業の動向などに関する情報収集が可能であり、これは、マーケテイング活動全体において重要な要素にもなります。
 企業規模の大小にかかわらず、重要な活動であるうえ、対象を絞り込める活動でもあり、経営資源を節約できるというメリットもあります。
 一方、販売担当者の折衝力とモラール(士気)が重要になるため、その能力の向上が重要になるといえるでしょう。

 人的販売を行う販売員の役割は、「オーダーゲッター」「オーダーテイカー」「ミッショナリー」の3つに大別することができます。
 オーダーゲッターは、新規顧客の開拓が役割、オーダーテイカーは、既存取引先との関係性の維持が役割、ミッショナリーは、受注の獲得ではなく、消費者との良好な関係構築や消費者が必要としている情報の提供などが主な役割となります。 
 営業部門における人事・労務面の施策などを こうした視点から見直すと、取り組みが不十分な点や今まで見落としていた点などを見つけることができる場合があります。
 例えば、「新規顧客の獲得1件に付き、○円支給」といったように、「オーダーゲッター」の役割に対しては さまざまなインセンティブ制度を設けている企業は少なくありませんが、そのほかの役割に関しては、こうした施策の必要性についてすら検討していない企業は少なくないでしょう。

 

プロモーション手法を検討する際の基本的な考え方

 プロモーションの手法は、非常に多岐にわたり、個々の手法の効果も異なります。
 一般的に、企業がプロモーションを行う場合は、これらの手法の中から自社の目的に合ったプロモーション手法を選択し、複数の手法を組み合わせて(プロモーション・ミックス)取り組みを進めていくことになります。 
 自社の目的に合ったプロモーション手法を検討する際には、「製品のタイプ」「プロモーション戦略の基本方針」「消費者の購買プロセス」「製品ライフサイクルの段階」、の4つの視点から考えることが基本となります。

製品のタイプ 
 製品はその販売対象者によって生産財と消費財に分けることができます。
 この製品のタイプによって効果的なプロモーションは異なります。
 生産財の場合は、「人的販売」「セールスプロモーション」「広告」「パブリシティー」の順に効果が高いといわれています。
 消費財の場合は、「広告」「セールスプロモーション」「人的販売」「パブリシティー」の順に効果が高いといわれています。

プロモーション戦略の基本方針(「プッシュ戦略」と「プル戦略」) 
 プロモーション戦略の基本方針は、プッシュ戦略とプル戦略に大別できます。
 プッシュ戦略とは、製造業者が小売業者などに対して、自社製品を積極的に販売してもらうようにする戦略をいいます。
 プル戦略とは、消費者に自社製品の魅力を直接訴求することで、購買意欲喚起して、「自社製品の指名買い」を促す戦略をいいます。
 このプロモーション戦略の基本方針によって、重視すべきプロモーションは異なります。
 プッシュ戦略では、人的販売や企業間プロモーションが重要となります。
 一方、プル戦略の場合は、広告や消費者プロモーションが重要となります。

消費者の購買プロセス 
 消費者は、「認知段階」「情動(感情)段階」「行動段階」などのプロセスを経て製品を購入しています。これらの各段階に応じて、効果の高いプロモーション手法は異なります。 
 「認知段階」においては、当初は多くの情報を提供することのできる広告や「第三者の信頼できる情報」としてパブリシティーの効果が高いといわれています。
 消費者の商品に対する認知が深まってくると、広告やパブリシティーよりも詳細な情報を求める傾向があることから、対話を通じて自身が必要とするさまざまな情報を得ることができる人的販売の効果が高くなります。 
 製品の評価を行う「情動(感情)段階」においても、人的販売の効果が高くなります。 
 実際に製品を購入する段階である「行動段階」においては、値引きなど実際に製品の購入を促す効果の高いセールスプロモーションが有効になります。
 また、購入するか否か迷っている消費者に「最後の一押し」を行う存在として人的販売も有効といわれています。

製品ライフサイクルの段階
 製品ライフサイクル(PLC:Product Life Cycle)とは、生物などと同様に、製品には新規に開発されて市場に登場する「導入期」から「成長期」「成熟期」を経て「衰退期」を迎えて市場から消えていくという、ライフサイクルがあるという考え方です。
 PLCの各段階とプロモーションの関係をみると以下の通りとなります。 
 製品に対する十分な知識がない消費者の多い導入期においては、製品のもたらすメリットや製品の使用方法など さまざまな情報を伝えたり、製品自体の認知度を向上させることのできる広告やパブリシティーの効果が高くなります。
 また、製品を使用したことがない消費者に実際に製品を使用してもらい、その製品のメリットを体験してもらうために、サンプル配布などのセールスプロモーションの効果も高くなります。 
 企業間競争が比較的穏やかな成長期においては、製品の認知度が高まっていることもあり、プロモーションの規模を縮小することができます。 
 企業間競争の激しさが増す成熟期では、消費者の購買行動を促す効果の高いセールスプロモーションの効果が高くなります。
 また、多くの競合製品の中から自社製品を購入してもらう必要があることから、消費者に自社製品を強く印象付けたり、他社製品にはないメリットを知ってもらうための広告も重要となります。 
 市場が縮小している衰退期では、消費者からみると、機能面など製品自体の持つ魅力(メリット)などは非常に小さくなっています。
 このため、値引きなどのセールスプロモーションの効果が大きくなります。
 そのほかのプロモーションでは、消費者の購入意欲を刺激することが困難なため、セールスプロモーション以外のプロモーションは縮小する必要があります。

 

「口コミ」の威力 
 企業はさまざまな手法を活用しながらプロモーションを実施しています。
 こうした状況を消費者の視点からみると、「氾濫する情報の中で、信頼できる情報がどれか分からない」といった問題をしばしば引き起こします。
 こうした中、注目を集めているのは「口コミ」です。
 知り合いや該当製品に精通している ほかの消費者が発信する情報である口コミは、「信頼性の高い情報」として、消費者の購買行動に影響を及ぼすことは以前から知られてきました。改めて口コミが注目される背景には、インターネットの普及があります。
 従来、口コミは、フェイストゥフェイスの限られた関係の中で広がることが主流であり、市場に与える影響も限定的なものでした。しかし、インターネットの普及によって、口コミがバーチャルな世界を経由して広範囲に広がり、その影響が市場全体に及ぶようになったのです。また、誰もが手軽に情報を発信できるブログの普及は、こうした傾向に拍車をかけました。

 こうした口コミの威力に多くの企業が注目し、プロモーション戦略の一環などとして取り組んでいるケースもみられます。
 現在のところ、企業による取り組みは、
・口コミとして取り上げられるような話題を積極的に提供する
・「ホームページ」「ブログ」「SNS」などを活用して、消費者が自由な意見を述べ、口コミが流通する場を設ける
といった「口コミの活性化」を目指したものが主流です。 
 しかし、企業がプロモーションの一環として積極的に口コミを活用する試みは歴史が浅く、試行錯誤の段階にあるというのが現状であり、多くの問題も抱えています。例えば、活性化された口コミの中で、自社にとって都合の悪い情報が流通するというリスクにどのように対処するのかといった問題があります。
 また、口コミの威力の源泉である「信頼性の高い第三者の意見」という点を喪失させることなく、当事者である企業はどこまでかかわることができるのかという根源的な問題もあります。 
 しかし、消費者の購買行動に大きな影響を与える口コミの企業による活用は、今後も活発になっていくことが予想されることから、企業としてはその動向に注目しておく必要があるでしょう。

 

購買意思決定プロセスと態度変容モデル

購買意思決定プロセス

 コミュニケーション戦略を展開する場合には、顧客がどのような過程を経て購買に至るのかを理解することが大切です。それによって、適切なアプローチ方法やその内容、タイミングを図ることができるようになります。

 一般的な消費者が製品を知ってから購入に至るまでの心理状態の推移は、「購入意思決定プロセス」と呼ばれ、説明するモデルには AIDA などがあります。

 注目(Attention)を得るためには「認知度向上」のための施策を、興味(Interest)を得るためには製品の「評価育成」、欲しいという欲求(Desire)を起こするためには「ニーズ喚起」、最終的な行動(Action)に結びつけるには「購入意欲喚起」をする必要があります。

態度変容モデル

 AIDA のような購買意思決定プロセスを実際に活用するために、消費者が今どの心理的ステップにいるのかを測定する手法として「態度変容モデル」を活用します。

 具体的には、「認知(Awareness)」「記憶(Memory)」「試用(Trial)」「本格的試用(Usage)」「ブランド固定(Loyalty)」からなる AMTULモデルが使われます。

 それぞれ、再認知率や再生知名率、あるいは使用経験率、主使用率、今後の購買意向率などを計測して調査していきますが、重要なのは、顧客が今どのステップにいるのかを正しく把握し、適切なコミュニケーションを行うことです。

 

コミュニケーション戦略の実践

 AIDA(Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動))やAMTUL(Awareness(認知)、Memory(記憶)、Trial(使用)、Usage(本格的使用)、Loyalty(ブランド固定))などを駆使して、顧客の状況を確認したら、次はそれぞれの状況に合わせた最適なコミュニケーション手法を模索していきます。

 自社の製品が顧客にどのように受け入れられているのかを把握するだけでは、コミュニケーション戦略を実行に移すことはできません。具体的にどのような手法で伝達していくのかを決めなければ、いつまで経っても認知度は高まらず、積極的にアプローチすることはできないのです。

 企業が顧客とのコミュニケーションを行う際に活用できる情報伝達方法は、大きく次の5つに分類されます。

 ・広告

 ・販売促進(セールス・プロモーション)

 ・人的販売(セールスフォース)

 ・パブリシティ(広報)

 ・クチコミ

 製品を市場に投入した初期の段階では、広告や販売促進活動によって認知度を高めるのが最も無難でしょう。

 しかし、製品の認知度が十分に高まっているのにも関わらず、人的販売に力を入れたりクチコミの形成をおろそかにしてしまえば、その製品に対してマイナスのイメージをもっている顧客をフォローすることはできません。

 また、企業が直接的に配信する広告よりも、パブリシティ(広報)によってメディアに取り上げてもらう方が信憑性が高まります。インターネットメディアの台頭によって、一般的な広告やこれまでの広報とは違った情報伝達の方法も広がっていますので、それぞれの特性を生かして上手に使い分けることが求められます。

 コミュニケーション戦略を全体として俯瞰すると、「企業側ができること(「広告」「販売促進(セールス・プロモーション)」「人的販売(セールスフォース)」)」と、「企業側ではできないこと(「パブリシティ(広報)」「クチコミ」)」に分類されます。

 

消費者の購買意思決定プロセス

 代表的な消費者の購買意思決定プロセスのモデルには、購買行動モデルの元祖「AIDMAの法則(アイドマの法則)」、カタログ通販、DM通販、TV通販などに用いられる「AIDAの法則(アイーダの法則)」、ネット時代の基本モデル「AISASの法則(アイサスの法則)」、ネット比較&口コミチェックを加えた「AISCEASの法則(アイシーズの法則)」などがあります。その他、コンテンツ発見型の消費者行動モデル「DECAXの法則(デキャックスの法則)」、長期的な購買意思決定プロセスのモデル「AMTULの法則(アムツールの法則)」なども有名です。

 

購買行動モデルの元祖「AIDMAの法則(アイドマの法則)」

 Attention(注目)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)の略であり、代表的な購買意思決定プロセスとして多く用いられています。

AIDMAの法則からMemory(記憶)を抜いた「AIDAの法則(アイーダの法則)」

 Attention(注目)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Action(行動)の略であり、AIDMAの法則からMemory(記憶)を抜いたモデルです。興味・欲求からダイレクトに購買行動に移る、カタログ通販、DM通販、TV通販などに用いられる購買行動モデルです。

ネット時代の基本モデル「AISASの法則(アイサスの法則)」

 Attention(注目)、Interest(興味)、Search(検索)、Action(行動)、Share(情報共有)の略であり、インターネット上で購買行動が完結する近年では、代表的な購買意思決定プロセスとして広く用いられています。

ネット比較&口コミチェックを加えた「AISCEASの法則(アイシーズの法則)」

 Attention(注目)、Interest(興味)、Search(検索)、Comparison(比較)、Examination(検討)、Action(行動)、Share(情報共有)の略であり、AISASの法則にComparison(比較)、Examination(検討)、を加えたモデル。SNSが普及し、コミュニケーションが多様化する現代において、主流となりつつある購買行動モデルです。

コンテンツ発見型の消費者行動モデル「DECAXの法則(デキャックスの法則)」

 Discovery(発見)、Engage(関係)、Check(確認)、Action(行動)、Experience(体験と共有)の略であり、買い手が自ら売り手を探し、購買に至ることを念頭に置いた購買行動モデルです。SNSの普及やコンテンツマーケティングの重要性が増す近年において、覚えておきたいモデルです。

長期的な購買意思決定プロセスのモデル「AMTULの法則(アムツールの法則)」

 AMTULの法則とは、A(Awareness:認知)、M(Memory:記憶)、T(Trial:試用)、U(Usage:本格的な使用)、L(Loyalty:固定客)の略であり、AIDMAの法則やAIDAの法則と同様、消費者の購買意思決定プロセスのモデルです。AIDMAの法則やAIDAの法則が短期的な購買意思決定プロセスのモデルであるのに対し、AMTULの法則は長期的な購買意思決定プロセスのモデルす。AMTULの法則を用いることにより、各段階でのプロモーション施策の効果を定量的に把握しやすくなり、製品の購入前だけではなく、購入後の消費者の心理状態も段階的に計ることができます。

 

AIDMAとの関係

広告

 「広告」とは、消費者に対して直接的に製品やサービスの宣伝をすることによって、購買意欲を喚起し、指名買いしてもらうための手法です。

 AIDMAの中では、とくに消費者のAttention(注意)に影響を与えます。

 初期段階への影響があることを考えると、より多くの顧客ターゲットに対してインパクトのあるものを打ち出す必要があります。

 具体的な方法としては、テレビやラジオなどのCM、新聞・雑誌広告、インターネット広告、電車の中吊り広告、看板などがあります。

 社内で自主的に行うことも可能ですが、一般的には専門家である広告代理店に任せることが多いでしょう。

 それだけ専門的な技術が必要なメディアである証拠です。

 

販売促進(セールス・プロモーション)

 「販売促進(セールス・プロモーション)」ですが、こちらは広告によって高まった消費者意欲や関心を確実に購買へと導くための手法を言います。

 具体的には消費者と流通業者の双方に対して行います。

 直接的に顧客に働きかけるというよりは、流通業者に働きかける場面が多いのが特徴です。

 流通業者向けの販売促進としては、報奨金やリベートの設定、あるいは小売店舗への販売協力などを行います。

 また、消費者向けの販売促進としては、サンプルの提供やクーポン券の配布、あるいは講演やスポーツイベントへのスポンサー活動も販売促進の一環とされています。

 消費者心理としては、Attention(注意)からAction(行動)まで幅広く機能します。

 

人的販売(セールスフォース)

 「人的販売(セールスフォース)」とは、販売員や営業パーソンが直接的に行う営業活動のことです。

 消費者と直接的にコミュニケーションを行うことで、不満や不安を解消し、購買へと導くことができるという特徴があります。

 場合によっては、消費者に嫌がられることもあるため、製品やサービスによっては選択しないほうが良い場合もあります。

 担当者には相応のスキルが必要となるため、人選も重要となるでしょう。

 AIDMA理論ではAction(行動)に直結する活動となります。

 

パブリシティ(広報)

 「パブリシティ(広報)」とは、企業や製品についての情報をテレビや新聞、あるいは雑誌などのメディアが自主的にニュースとして報じるという情報伝達方法です。

 メーカー企業が自ら行うのではないという点が広告とは異なります。

 AIDMA理論のなかでは、Attention(注意)、Interest(関心)、Memory(記憶)に大きく影響を与えますが、悪い情報もニュースになることがあるため、いかに情報を管理するかということが企業側には求められます。

 

クチコミ

 クチコミは消費者自らが積極的に行うプロモーション活動です。かつては、人為的に発生させることが難しいとされてきました。しかし、最近では、インターネットのシェアやリンクという特徴を生かし、意図的にクチコミを起こすことも可能となっています。

 AIDMA理論においては、とくにAction(行動)への影響力がある手法と言えます。同じような欲求をもっている人の評価には信憑性があり、より高い満足を得られると考えられているためです。

 ただし、広報と同じように悪評の伝播には注意しなければなりません。

 

販売員活動が効果的に行われているか

 中小企業のプロモーションの成否のカギを握るのは、「販売員活動」であるといっても過言ではありません。中小企業は、販売員への感情が企業全体への感情に結びつきやすいからです。
 一口に「販売員活動」といっても、2つのイプに分けることができます。1つが、「フレンドリー・サービス」(挨拶、言葉づかい、親しみやすさなど)であり、もう1つが「人を通じた情報の伝達」です。具体的には、顧客に対するきめ細かなアドバイスや一人ひとりの顧客にあわせた提案などです。競争優位の源泉となるのは後者です。販売員は、取扱商品のことを熟知しなければならないのは当然であり、顧客の一歩先を行くことが不可欠です。そのためには積極的な販売員教育への投資が必要になります。

 

顧客へのダイレクトメールを有効に活用しているか

 ダイレクトメール(DM)は、顧客ごとに異なるメッセージが伝達できるので、ターゲット(対象顧客)を絞り込んだプロモーションには有効です。例えば、ある商品を購入した顧客に対して関連商品をすすめるDMを発送すれば、不特定多数にDMを送る場合と比較して はるかに高い効果が見込めるでしょう。
 とはいえ、今日、顧客はさまざまなダイレクトメールを日常的に受け取っているため、DMを開封せずに、廃棄することも多くあります。従って、手書きの宛名や、手書きのメッセージを入れるなどによって、開封率を上げる工夫も必要です。
 また、顧客の移転などは頻繁にありますので、住所データベース(宛名)の管理をしっかり行うことが大切です。

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