プッシュ戦略とプル戦略

 コミュニケーション戦略にはさまざまな手法があります。具体的には、「広告」「販売促進」「人的販売」「パブリシティ(広報)」「クチコミ」などがその代表的なものでした。それらの手法を状況に応じて駆使することによって、より最適なコミュニケーション・ミックスが実現できるのです。

 そのようなコミュニケーション戦略を考えるうえで、考慮しておきたいのが「プッシュ戦略」と「プル戦略」という分類です。

 これらは、流通チャネル全体を俯瞰したときに、どのチャネルに対してアプローチするのかという視点で分類したものですが、流通チャネル戦略を考えるときだけでなく、コミュニケーション戦略を考えるうえでも考慮しておきたいことです。コミュニケーション戦略を実践する際に、その広告なり販売戦略がどのチャネルにどのような影響を与え、どういった効果が生まれるのかということを具体的にイメージするためには、プッシュ戦略とプル戦略を理解しておくことが欠かせません。 つまりは、施策対効果のイメージを促進させるための分類なのです。

 販売促進戦略は、大きく分けてプル(pull)戦略とプッシュ(push)戦略の2つに類型化することができます。

 

プッシュ戦略

 プッシュ戦略とは、製造メーカーから流通業者を経て消費者に製品が流通する過程において、メーカーから卸売業者へ、卸売業者から小売業者へと、上から下へ働きかける戦略のことです。

 たとえば、メーカーは卸売業者に対して「製品の説明」「販売方法の指導」「リベートの設定」などを行います。

 販売マージンを他社の製品より高めに設定することにより、自社の製品を積極的に販売してくれるように、卸売業者や小売業者に働きかける戦略などがこれにあたります。

 メーカーの支援をうけた卸売業者は、小売業者に対して同じような支援を行い、最終的に小売業者が消費者に対してメーカーの製品をプッシュすることになります。

 流通戦略の構築と平行して、コミュニケーション戦略を行う手法がプッシュ戦略であると言い換えても良いでしょう。

 

プル戦略

 プル戦略は、製造メーカーが卸売業者や小売業者に対してアプローチするのではなく、直接消費者にマーケティング活動を実施する戦略のことです。

 消費者向け広告や販売促進などのプロモーション活動を展開し、そのメーカーの製品を指名買いしてもらうのが目的です。

 化粧品メーカーなどは、テレビCMなどのマス広告を駆使して、このプル戦略を行っている企業の典型です。

 プル戦略においては、消費者に直接選ばれるようなプロモーション活動を行います。結果的に、消費者が小売業者へ、小売業者が卸売業者へ、そして卸売業者が製造メーカーへと需要の矢印が向くことになります。

 需要が下からあがってくるという意味において、「プル」(引き寄せる)戦略なのです。

 

 プル戦略とプッシュ戦略のいずれを基本戦略に選択するかは、ターゲット、販売促進予算、製品やサービスの特性、販売チャネル、あるいは競合関係などによって異なります。中小企業の販売促進戦略としては、ターゲットを絞り込み、個々の顧客や取引先に対応したきめ細かな販売促進活動を行なうなど、一般的にプッシュ戦略が適しています。どちらかの戦略に特化するのではなく、いずれか一方を基本戦略としながら、各販売促進手法の最適な組み合わせを検討していくことが必要です。

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