組織を動かすには

 「リーダーとメンバー」「マネージャーとリーダー」「役員と社員」など、立場が違っていても、同じ方向を向いている組織は強い組織であると言えます。

 どうやって同じ方向を向いているチームを作れるのでしょうか? 同じ方向を向いているとは、メンバーとリーダーが共通の目標を共有できており、同じ認識を持てている状態だと仮定することができます。

 組織として、共通の目標があり、上司や部下ともに認識が合っていることが大事です。

 新しい組織やなかなか成績の出ないチームでは、以下のようなことはないでしょうか?

 ・メンバーに部のミッションが伝わっていない

 ・危機的状況にも拘わらず全くメンバーに一体感がない

 ・営業メンバーがなかなか成長しない

参考

 社長が力ずくで従業員を支配しようとしても無理である。戦時中などならともかく、今の日本のように仕事が山ほどあるなかでは、嫌がる従業員はすぐに辞表を叩きつけて辞めていく。一方、社長の仁愛が海ほど深く、従業員に浸透しているならば、集団の士気は山ほど高くなり、めざましい業績を生むことになる。

 一時的にパワーハラスメントまがいの圧力で社員を動かし、業績を伸ばすことが出来たとしても、そんな企業は一気に下降線をたどるでしょう。

 仮に、ある企業の全従業員が、呉起に膿(うみ)を吸われた兵士のように「社長のためなら死んでもよい」と考えてやる気に燃えていたとしよう。果たしてそれだけで勝利という結果を生み出せるか。それだけではダメです。戦略的な行動をしない。自分の役割を理解していないのです。

 メンバーが好き勝手に動いていては、戦力的に敵を上回っていても勝つのは難しくなる。チーム全体の戦略・戦術がまずあって、期待される役割が生まれ、その役割を各自が果たすことで、チーム全体がひとつの意思のもとで動くから勝つ確率が高まる。まるで一人の人間であるかのようにチームがひとつになるのです。

 サッカーの場合、11人で1チームであり、広いグラウンド上に個々の持ち場がある。普通にプレーしていれば、ほぼ休む暇はない。企業においても、小さなチームに所属させ特定の任務を与えることが重要です。

 孫子は、5名を部隊の最小単位とした。企業ではどうか? 5名なら会議中に居眠りしてもすぐにばれる。1人がさぼると20%の戦力ダウンとなり、業績悪化に直結するため、嫌でも仕事に力を注がざるを得なくなる。仮に仕事が少なければ、役割を自分から求めることにもなるだろう。こんな5名1組のチームがいくつもあって、それらを全体の戦略・戦術に応じて使い分ければ、軍隊も企業も環境変化への対応は自由自在。生き残れる可能性が高まるのです。

 例えば、部をあげて1つの仕事に取り組むとき、責任者がオーケストラの指揮者のように指揮棒を振り、部下が自然と動いてくれればよいのですが、実際にはそう上手くはいきません。オーケストラも、それぞれの楽器ごとにリーダーがいて、自分たちのパートをまとめているからこそ、美しい演奏ができるのです。仕事も同じで、全体をまとめるためには、まず少人数の班を編成し、その班のリーダーを上手く動かすよう努力しましょう。そうすれば、チームは きっと自分の思ったように進んでくれるはずです。

 ひとり一人の力をいかに引き出すか。これに長けたリーダーが引っ張る組織は強い。

 ・部下を心から愛する

 ・全体の方向をハッキリ示す

 ・個々に明確な役割を与える

といったことを実践できる者は、全体をひとつの生物のように動かせるリーダーとなれる。

 

企業行動とは社員個々の行動

 企業の実体は「人」であり、「人」が強くなってこそ企業も強くなることができます。優秀な人材を獲得し、育成し、活躍してもらうには、相応の環境や処遇が必要となります。強い企業を作るには、いきなり好待遇を用意する必要はありませんが、継続的に環境改善していく姿勢とその実行が求められます。それが勝つための配慮なのです。社員が健康で元気に働くことができるように、衛生的で明るい労働環境や生活環境を整えてあげることが事業成功の基本となる。

 せっかくパワーを蓄積していても、それをダラダラと長期間に渡って放出させたのでは、効果が薄い。逆に、短期間に一気に集中して動こうとしても、蓄えられたエネルギーが少なければ大したことにはならないのです。

 

組織を動かすには情報共有と情報伝達が不可欠

 能力のある管理職は、営業活動の「勢い」によって勝利を得ようとするものであり、個人の能力や人材に頼ろうとはしない。適材適所で人を選び、その勢いのままに活動させることができる。

 大きな組織を小さな組織のように統制するためには、合理的に組織編成を行わなければならない。

 組織を常にフレキシブルに動かし、情報伝達および共有を迅速に行うことは、企業間競争を勝ち抜く上で不可欠である。大きな組織を小さな組織のように一丸となって目標に向かわせるためには、指揮命令系統を確立しなければならない。

 組織を動かす時には、情報共有と情報伝達が欠かせない。これはいつの時代にも変わらない 組織運営の原点であるが、時代の変化によってやり方や道具は変えなければならない。

 組織を動かすためには、自分たちは何者で、目的地はどこで、今どこにいるのか、といった情報を共有し、いつ動くか、いつ止まるのかというタイミングを知る情報伝達ができていなければなりません。2500年前の孫子の時代には、それを旗や幟、鉦や太鼓で実現した。時代が変わっても、その本質は変わらず、やり方や道具を変えて実現していかなければなりません。

 

意思統一

 組織が大きくなると、トップからの伝令も、口頭や身振り手振りだけでは十分に浸透させることはできない。様々な媒体を使って伝令をすばやく隅々にまで伝え、組織を統率して、同じ目標に向かって行動させるようにしなければならない。

 情報伝達、情報共有と単純に考えずに、組織を動かす時には、全員が納得し、共感し、魅力を感じる旗印が必要だと考えたい。旗印とは、「理念」「目的」、将来「ビジョン」である。自分たちは何者で、何をしようとしていて、それが実現することでどういう価値が生まれるのかを共有するということであると言ってもよい。それに対して、全員が魅力を感じ、共感共鳴していなければ、日々のマネジメントをいくら厳しくしたところで、有効な行動は導き出せない。この旗印もなく、仮にあっても共有されていない状態で、朝から晩まで「あれやれ、これやれ」「仕事なんだから頑張れ」「給料もらっているんだろ」と社員の尻を叩いても、イヤイヤ義務感で形式的に仕事をしているフリをするだけで、自発的かつ有効な行動は導き出せない。

 そして、「気」「心」「力」「変」によって敵を制する。これも現代の企業経営に通じる。

 社員の気力、モラル、モチベーションは日々変化し、ちょっとしたことで上がったり下がったりする。この「気」をどう扱うか、どう高めていくか、どう敵よりも良い状態にするかが戦いを左右する。  

 次に「心」。リーダーが泰然として、冷静かつ客観的に意思決定を行うことがピンチの時ほど重要である。危機的状況に陥って、慌てて騒いでみたり、人のせいにして怒り狂ったり、泣いたり落ち込んだりしていては、組織を維持し、統率することはできない。窮地に陥った時にこそリーダーの真価が問われる。  

 もちろん、敵、味方の「力」、戦力、戦闘力、力量の見極めも重要であり、無駄なことに労力を浪費せず、備えを充分にして敵に当たる段取りが必要となる。  

 「変」とは、時の流れ、状況の変化を見極め、時機を待つ力である。一糸乱れず整然と旗印を掲げて迫ってくる敵に攻撃を仕掛けたり、堂々とした布陣で攻めてくる敵を攻めたりしてはならない。場合によっては、撤退の意思決定ができる人間が、勝機を待って勝ちを得る指揮官にふさわしいと孫子は言う。

 

経験知を活かす

 管理職とは、社長の大切な補佐役であり、管理職と社長との関係がうまくいっている企業は成長するが、そうでなければ企業は衰退する。  

 次のような場合は、社長と管理職の関係はよくない。

1.市場の状況が積極的な事業戦略を行うべきではないのに、それを知らない社長が管理職に積極的な営業を命令し、逆に積極的な営業が必要なときに それを止めたりする。

2.営業現場の経験もなく内部の事情も知らない社長が、管理職の頭ごしに社員に直接命令をする。社員はどちらに従うか迷ってしまう。

3.その時々の営業現場の事情により臨機応変に対応していることを、社長が 原理原則ばかりをいって干渉する。社員は社長の能力を疑ってしまう。

 管理職や社員が会社に対して迷ったり疑ったりして、組織がうまく機能しないようになると、企業の競争力も落ちて、他企業に付け込まれてしまう。

組織力(社長、管理職及び社員のそれぞれの責任の認識と協力関係)がなくては、企業の成長はない。

 会社においてよくあるシーンといえるのではないでしょうか。特に、大企業において現場のことをよく知っているのは、社長ではなく現場の幹部・管理職です。よく知りもしないのに口出しをすれば、社員たちは戸惑い、上司を疑うことになります。社長は、現場のことは現場に任せて、幹部・管理職のサポーターに徹するべきなのです。

 業務プロセスの標準化を図り、現場の実体をつかみ、的確な指示が出せなければ、経営者や管理職の指示命令によって社員行動を妨げることになりかねない。

 現場も見えず、現状も ろく に把握してもいないのに、「ああしろ、こうしろ」と指示をすれば、現場はかえって動きにくくなり、経営者や管理職は邪魔な存在となる。では、現場任せにして余計な口出しをしなければ良いかというと、そうではない。特に小さな会社では、経営者が現場のことにまで気を配り、指示する必要がある。

 もし仕事が上手く行っていないのならば、それを一緒にやっているスタッフを見直してみてください。自分の気持ちや考え方を理解してくれていると思いこんでいるだけかもしれません。同じ仕事に取りかかるスタッフが気持ちを一つにして、「一致団結」できるような環境を造ることが何事にも強い体制を造り上げることになるのです。話題の「半沢直樹」でも、彼が「倍返し」できるのは周りに信頼できる仲間がいるからではないでしょうか。仕事は一人でやっているわけではなく、優秀なサポート役がいてこそ満足できる仕事が実現する。

 

セクショナリズムの弊害が生じていないか

 敵から付け入られる隙を与えていないか見直してみる。

 自社内に部門間の壁ができて、セクショナリズムの弊害が生じていないか。中堅・中小企業で、人数も大して多くないのに、部門ごと業務ごとに反目したりいがみ合ったり、ロクに話もしなかったり、ということになっていないだろうか。仕入部門や製造部門、開発部門などと営業部門では、業務上の利害は大きく反する。経理などの管理系と営業系も犬猿の仲だったりすることが多い。お互いに悪意があるわけではなく、それぞれ自分の仕事を忠実に一生懸命やろうと思えば思うほど、部門間の対立が起こりやすくなる。全社の効率を上げるための分業体制が仇となって、効率を落とす結果となってはいないか。部門間の議論や多少の衝突を恐れたり隠したりしてはならない。それを誤魔化しつつ問題の解消を先送りしているから、敵から付け込まれることになる。また、人数の多い部署、部門が幅を利かせ、小所帯の部署が肩身の狭い思いをしているということはないか。人数が多いと、それだけで声が大きくなって何でも優先されるようなことがある。特に時代の変化が激しい時に、従来のメイン業務、主要事業の声が大きくなり、時代の変化に合わせて、新たに設置、挑戦する新規部署、新チームが発する声が通らなくなるというのは避けたい。まだ売上もない、利益も出ていないのに、実績を上げてから言え、などと言ってしまっては、新しいチャレンジはできない。それこそ、社内に亀裂を生じさせることになる。

 

同じ目的や同じ目標を持て

 組織において、立場が違うと対立が発生しやすいのですが、経営者と労働者、上司と部下、親会社と子会社など、それぞれの立場を超越して、同じ目的や同じ目標を持てた時は凄い力を発揮することができます。

 他社が経営者と労働者で対立してストライキをしている時に、かたや自社は経営者と労働者が顧客のために心を一つに頑張って働いて、稼いだ収益で経営者も儲かってそれを労働者に還元することができれば、その会社はますます伸びていきます。

 優れたリーダーとは、立場の違う者に同じ目的と目標を示して、上下の利害を一緒にして引っ張っていける人です。

 ビジネスの場でも、本社のトップは現場が働きやすい環境を作り、現場は部長や課長などの現場の指揮官に任せて干渉しないことが大事です。

 現代のようなマーケットがすごいスピードで変化している状況においては、トップが細かい事に口出しせずに、現場にある程度の決裁権を与えて、部下に任せるほうが変化に強い組織になります。

 

個人に頼るな 組織で勝て

企業でいえば、経営計画が重要ということになる。計画の立案段階で「これなら勝てる」と

いう方法論まで示すことができれば、勝利の道筋が見え、給料アップや昇進・昇格まで夢みて社員の士気は高まらざるを得ない。ところが、中小零細企業では、「売上目標、昨年の5%アップ」などという根拠のない数字を示すのみというケースが多く、これだけでは、社員は高いノルマが課せられるばかりで、逆に苦しくなる。当然、士気は上がらない。

多くの企業は数値計画を作るだけで満足しているが、それだけではダメである。行動計画を練りに練ることが重要である。さらに、経営計画書を上層部だけの秘密資料にせず、忙しい中でも、年に一度は発表会を開き、全社員にきちんと説明しなければならない。そうすることで、「何のために戦うのか」「どう戦うのか」が明確化し、全社一丸となる。ここまでやれば、戦いの前に組織に「勢い」を生み出すことが出来るのです。

ただ、やる気が高まったとしても、実際の現場で苦しい状況が続くと、人間は希望が持てなくなり、モチベーションがダウンしてしまう。そんなときはどうすればよいのか。うまくいかないとき、成功するための方法を考えるより、「何とでもなれ」と開き直ってしまう方がよい結果が出る。このままいけば、減給、降格、望まない部署への配置転換などマイナスの結果となるかもしれないが、それを甘んじて受け入れる覚悟を固められたとき、人は力を発揮する。上司に共に危機を乗り越えようとする姿勢を見たとき、部下の心に勇気が満ち溢れ、最後まで頑張り通せるのである。

 個人でなく組織で戦うように集団を作り変えよう。能力の低い者、臆病な者も力を出せる組織作りは、リーダーの意識改革から始まる。自分が引っ張るのでなく、皆が動きやすいよう支える役割に徹することである。

 

組織編成の重要性

 戦いに臨むに際して、孫子は5つの重要性を説いています。

 第一の戦ってよいときと戦いを避けるべきとき。これは、行動を起こすときのタイミングの重要性を説いています。

 マーケットの状況が悪いときに、新商品を売り出すなど愚の骨頂。タイミングをうまく計って行動を起こすことです。

 第二の大軍の動かし方、小部隊の動かし方については、組織の編成についての重要性を説いています。

 小規模の会社なら、一人のリーダーが指揮権を握った上で、全員に意思伝達が可能です。しかし、何百、何千といった大きな組織となると、事情は変わってきます。トップ一人で全員を束ねることは困難です。そこで、大人数をいくつかの組織に分けて、各小組織にそれぞれリーダーを据えます。そして、トップから末端の兵士まで意思伝達がスムーズに伝わるようにしなければなりません。

 第三に、一つの目標に向かって組織が一丸となって邁進しているかどうか。

 リーダーから人心が離れれば、組織はあっという間にバラバラになってしまいます。上に立つ者と従う者の心が離反してしまっていては、組織がうまく機能しません。

 部下たちの心を一つにまとめあげるには、リーダーは、難敵に対して一歩もひるまない断固たる姿勢をもって臨む、という姿勢をアピールしなければなりません。

 第四は、戦う前の用意周到さの重要性を説いています。

 第五は現場主義の重要性です。

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