差別化戦略

 差別化戦略というのは、他の企業とは違った視点によって、商品やサービスなどにおける差別化を図り、優位な立場を築いていく戦略のことを言います。

 競合他社と違っていればよいというものでは無い。劣っている方向で差別化しても意味がない。ではどのように違っていればよいかと言えば、「お客様にとって価値がないところで差別化しても意味がない」ということです。差別化とは、「お客様に、より良い価値を提供する」ということが本質なのです。

  あなたが最近行かれた美容院・理髪店を思い出し、なぜ他の店ではなく、その美容院・理髪店に行ったのか、その理由を考えてみてください。これが お客様がある店を選ぶ理由・必然性であり、お店にとっては「差別化ポイント」です。

 この質問には、以下のような答えがでてくるでしょう。
 ・家から一番近いところに行った
 ・いつも行っているから
 ・一番安いところに行った
 ・腕も雰囲気も良いから、繁華街の店に行った
 ・自分の髪質をよく知ってくれているいつもの店に

などです。

 まとめると 3つになります。

 1)早い、安い、便利な店
 2)腕がいい、技術力がある店
 3)いつもの自分のことをよく知っている店

 これが、お客様が店を選ぶ理由であり、店から見ると自店の「差別化ポイント」です。

 差別化戦略とは、大きく分けて この3つになります。これは、元々はマイケル・トレーシー&フレッド・ウィアセーマ両氏のアイディアです。両氏の論を取り入れ、S&T代表がさらに発展させて日本語にしたものです。

 1)手軽軸:早い、安い、便利、で差別化
 2)商品軸:高品質、最新技術で差別化
 3)密着軸:顧客の個別ニーズに応えて差別化
という「3つの差別化軸」です。

 美容院・理髪店はこの通りになりますが、ほぼ全ての業種・業態でこれがあてはまります。

 メーカーの場合、例えばノートパソコンでは、

 1)手軽軸:早い、安い、通販で買えて便利なデル
 2)商品軸:最新技術を使ったユニークなパソコンを出すソニー
 3)密着軸:ユーザーフォーラムをネットに持ち、顧客ニーズに応えるパナソニック
という色分けができます。

 小売店でも、

 1)手軽軸:早い、安い、買いやすいネットショップ
 2)商品軸:自社で独自商品を開発するチェーン店
 3)密着軸:お客様の顔を覚え、個別対応する個店

 などの色分けでしょう。

 業種業態にかかわらず、このような差別化戦略は共通なのです。

 

差別化戦略によってやるべきことが全く変わる

 どの差別化軸を選ぶかによって すべきことが全く変わります。

 例えば、商品について言えば、

 1)手軽軸:低価格で無難な商品
 2)商品軸:高品質で高価格な商品
 3)密着軸:顧客の個別ニーズに応える特注品

となります。

 人材採用・育成については、

 1)手軽軸:手際が良く、効率が良い人材
 2)商品軸:最新トレンドを知る、技術力の高い人材
 3)密着軸:愛想の良い、かゆいところに手が届く人材

となります。

 設備投資についても、

 1)手軽軸:低コストで大量に生産できる設備
 2)商品軸:高品質な生産ができる設備
 3)密着軸:顧客の個別対応ができる設備

となります。

 どの軸を選ぶかによって 人材、設備投資などが大きく変わるのです。これが戦略が人材や資金調達の「前」に来るべき理由です。

 

重要なのは差別化軸のもとでの一貫性

 このように、商品開発、チャネル選択などはもちろん、人事、設備投資まで同じ差別化軸で一貫させるのがポイントです。商品は商品軸、売り方が手軽軸だと、高級な商品を粗品を売るように扱うことになってしまい、売れるものも売れなくなります。商品が手軽軸で売り方が商品軸ですと、気軽にたくさんの人に買って欲しいのに、敷居を高くして売ってしまいます。差別化軸をひとたび選べば、その他の要素がそれに連動して変わるということです。

 

価値を決めるのはお客様

 価値とは、お客様にとっての価値であり、売り手にとっての価値ではない。売り手にとって いかに大変な思いをして作ったこだわりの製品、素材、製法などでも、それがお客様にとって意味がないことであれば、それは「価値」にはならない。

 価値があるかどうかを決めるのはお客様である。従って、お客様にとっての価値が重要であって、あなたにとっての価値は、お客様にはどうでもよいことである。

 あなたが大変な思い入れ・こだわりを入れることが重要でないと言っているわけではない。あなたにとって大変な思いをしてつくったということが、お客様にとって重要であれば、それは立派な価値になるし、それを評価しないお客様にとっては価値にならない。 

価値とは

 価値とは、自分が欲しいモノであるから、煎じ詰めて言えば人間の欲求・欲望である。

1 生存欲求 : 生理的なニーズ 基準は身体的快楽

2 社会欲求 : 他人との関係ニーズ 基準は他人の評価

3 自己欲求 : 自分自身で完結するニーズ 基準は自己満足

の3つである。

お客様は欲求充足を買っている

 お客様は、製品・サービスに対してお金を払うのではなく、価値にお金を払う。

 その価値とは、

 1 生き延びたい、楽をしたい

 2 みんなに認められたい、名誉・ステータスが欲しい

 3 自分のしたいことをしたい、楽しみたい

のどれかである。そうであれば、あなたの提供している製品・サービスが、この3つのどれかを満たしていなければ、それはお客様にとっては「価値」が無いということになる。

差別化とは よりよく欲求を満たすこと

 差別化とは、この3つの欲求をよりよく、または違った形で満たすことである。経営者の仕事は、まず「どんな価値を満たしたいのか」と自らに、そして、お客様に問うことが重要になる。

 ここから先がマーケティング戦略である。人によって欲求が違う。セグメンテーションを行ってターゲティングをし、それにあった製品・広告をつくる などのマーケティング戦略を考えていくことになる。

 差別化戦略とは、「競合他社より、いかに優れた価値をお客様に提供するか」ということになる。当然、より優れた価値を提供する製品・サービスが選ばれる。経営者の仕事は、「どのような価値を提供するのか」ということを決めることでもある。価値を提供するということは、具体的にはどのようなことかが次のポイントとなる。このあたりから、経営戦略とマーケティング戦略の垣根が無くなり、一体となってくるのです。

 

強みを活かせ

 価値を提供するにあたっては、あなたが一番得意とすることを活かす必要がある。弱みで差別化するということは普通ありえない。差別化は強みを使って行うのである。

 差別化とは、よりよい価値をお客様に提供することである。そのよりよい価値は、あなたがどんなことが得意かで決まる。あなたが不得意なことでは「よりよい価値」は作り出せない。

 あなたが一番強いところで勝負して、それで負けたのであればどうしようもない。その時点で、競合があなたの強みを上回っていたということである。あなたの強みを磨いていくしかないのです。

 

自社の売り込みたいポイントや伸ばしていきたいポイントを明確にする

 差別化戦略を成功させるためには、自社のアピールポイントが何でどこにあるのか、を明確に示す必要があります。また、その商品やサービスのメリット、どういうことに役立つのかということを自覚しておかなければいけません。その中で、見落としがないかということを徹底的に調査し、いろいろな視点や角度から見つめ直します。 そして、その商品の売りをどこにするのかを改めて決めていきます。今まで漠然としたイメージで販売していた商品を、例えば、利便性を売りにしたいなどとすることです。 あるいは、他社の商品と比較し、今までにはなかった機能を搭載してみて、そこを売りにするということも差別化戦略を成功させるために考えなければならないポイントとなります。

 

ユーザーの共感を呼ぶ

 差別化戦略を成功させるための具体的なポイントは、「誰」にその商品を買ってもらうかということを徹底的に考えることです。「誰」というのは、もちろんユーザーということになりますが、そのターゲットとなるユーザーを特定の人格(ペルソナ)として明確に想定することが大事です。自社の商品を購入するユーザーの年代や性別、どこでどのように使うのかなど、細部にわたって具体的なイメージをもつようにします。特化したペルソナに対して、商品を販売していく場合、ユーザーは今、どのようなことを悩んでいるのか、また、どのような嗜好をもっているのかなど、傾向が把握しやすくなってきます。その上で、顧客の悩みや理想などに添った商品やサービスを外すことなく提供することが可能となります。

 

差別化戦略を進める3ステップ

 企業が差別化戦略を導入する際に、具体的にどのような手順で取り組めばよいのでしょうか。

 「自社の分析」「顧客ニーズの把握」「ペルソナとストーリーの設定」というつのステップについて説明します。

1 自社の分析

 まず、自社の商品・サービスの分析を行います。
 自社のアピールポイントの内容や特性をさまざまな視点から徹底的に洗い出します。

 自社の分析をスムーズに進めるためには、「商品・サービス」「価値」「歴史」などいくつかの項目をあらかじめ用意することがポイントです。

 「ロジックツリー」と呼ばれる思考法を使うと、抽出する項目の漏れを防ぐことができます。

2 顧客ニーズの把握

 次に、顧客ニーズの把握です。
 例えば、「顧客が比較している競合企業」「顧客が重視している価値」といった項目を、あらゆる方法で収集します。

 顧客ニーズを把握する際のポイントは、自社目線ではなく顧客目線で行うことです。
 実践するのは難しく、差別化戦略の3ステップのなかで最も難易度が高いとされています。

 顧客ニーズの把握には、顧客へのアンケート調査や問い合わせフォームの記載事項を確認することがおすすめです。
 些細な一言のなかにヒントが隠されている場合が多くあります。

3 ペルソナとストーリーの設定

 ペルソナとストーリーを設定して顧客の共感を獲得します。

 ペルソナの設定とは、ターゲットの人物像をできるだけ具体化することです。
 性別や年代だけでなく、ライフスタイルや価値観などを出来るだけ詳細に想定します。

 ストーリー設定とは、ユーザーの心を動かすために必要な手法です。
 ユーザーが商品・サービスに関心を持ちやすくなるように、その製造・販売の経緯や自社の

 歴史などを、具体的なストーリーとして描きます。

 

差別化戦略を実現するための手法

 実際に他社製品との差別化を図るために どのような手法が取られるのでしょうか。

 ここで気をつけなくてはならないのは、差別化とはただ「競合との違いを作る」ではないということです。ほかとは違うというだけでは購買の動機にはならないのです。大切なのは、顧客のニーズに答えるような差別化をすることです。

 

USPにならって差別化戦略の骨子をつくる

 差別化戦略において欠かせない3つのポイントがあります。これらは頭文字をとって「USP」と呼ばれます。1960年代にアメリカのコピーライターであるロッサーリーブス(Rosser Reeves)が提唱したもので、今でもマーケティングの重要な視座とされています

 USPは、この3つの単語の頭文字を集めたものです。

 U: Unique (独自性があること)

 S: Selling (提供すること)

 P: Proposition (提案すること)

 これが意味するのは「自社の製品・サービスだけが提供できる価値を提案する」ということです。競合製品と比較するときに、USPによって示されている強みが自分にマッチするものがあれば、消費者はその商品を選びます。

 1960年代から有効とされているUSPですが、これだけ商品の選択肢や情報が増えている現代ではさらにその重要性が増しているといえます。

 

マーケティング視点で差別化要素を出す

 USPの視点の他に、マーケティングによる視点から差別化できるポイントを見つけることもできます。入念なマーケティングリサーチと自社製品や競合の客観的な分析、そして、ユーザーのニーズの発見から得た差別化は、優位性の獲得に大いに役立つはずです。

競合を徹底的に調査する

 まずは、競合他社やその製品、サービスを徹底的にリサーチしましょう。これがマーケティングの第一歩であることは言うまでもありません。

 いま分析しようとしているマーケットでは、自社はどのように位置づけられているのでしょうか。自社および競合他社の商品力、価格、サービスの質、材料・原料、歴史、ブランド力、販売経路、プロモーションの内容など、さまざまな視点から企業や商品を見つめることが大切です。

 マーケットリサーチを通じて、自社の商品やサービスの独自の強みを見つけることが重要。あるいは、競合が持っていない独自の強みを創り出し、マーケットに投入することも可能です。競合と違って、ニーズのある強みを持つことが差別化には大切なのです。

ユーザーが求めることに自社の強みをマッチさせる

 また、マーケティングリサーチからは、ユーザーのニーズを見つけることが最重要課題です。ユーザーが何を求めているのか発見できれば、自社の強みをそこにマッチさせるという手法が可能になるのです。

 ユーザーのニーズは、「ある問題や課題を解決したい」という形で表現することができます。自社の強みが その問題や課題にアプローチできる ということをユーザーに示すことで、ニーズと自社製品・サービスの独自の強みをマッチさせることができるのです。

 「このタイプの商品は効果が高いけど、寿命が短いので導入しにくい」というユーザーに対し、自社は他社に比べ寿命の長い製品を作れるとすれば、「同じ値段でも寿命が長いので、日常的に使うことができます」という提案が可能です。

ユーザーにとって斬新で新しい価値を提供する

 消費者が考えもしないような新しい価値を持った商品やサービスがあれば、強力なアピールをすることができます。新しいことは当然競合他社の商品にはない特徴なので、それだけで差別化を図ることができます。

 マーケットリサーチの結果からニーズを読み取り、今までに提供されていなかったソリューションを見つけ出すことができれば、ユーザーはそこに大きな価値を見出すはずです。

競合他社がやりたがらない商品を出す

 ニーズがあったり、価値を生むとわかっていても、競合他社がやりたがらないことを見つけ出すことができれば、差別化の大きな一歩を踏み出すことができます。

 例えば、コストが高すぎたりリスクが大きすぎるもの、あるいは、小さなニーズはあるが、大きな利益は期待できないものなどもこれに含まれます。他社がやりたがらないことにはもちろん理由があります。しかし、これを自社でチャレンジすることができれば、他社は真似することができず、独自性を大いにアピールすることができます。

 価値の高い商品をつくり出すことができれば、それを安値で売る必要はありません。価格競争に巻き込まれないので、安定して高い収益を生み出すことも可能です。

 

ビジネスで使える差別化ポイントのつくりかた

 機能的な価値、コンセプトやストーリー、そしてデザインといった面は、差別化がしやすいポイントです。

機能で差別化(優位性)をつくる

 私たちからもユーザーからもわかりやすいポイントですが、機能や効能、品質といった面で差別的価値を持たせることです。

 この機能というのは、家電の機能のようなことだけを指すわけではありません。飲食店であれば「国内産の安全性の高い食材だけを使っている」とか、美容院であれば「コンテストで受賞歴のあるスタッフがカットを担当する」というような価値もここに加えることができます。

 商品がもたらす効果全般を指して機能面での差別化と考えることができます。比較的訴求がしやすい差別化ポイントと言えます。

コンセプト・ストーリーで差別化要因をつくる

 

 2つめはコンセプトやストーリーで差別化を図るというものです。

 コンセプトというのはわかりにくい概念かもしれませんが、「全て手作業で、厳選された原料を使って焼いたパンを、少しだけ豊かな朝食を楽しみたい方のために、1日30斤のみ限定販売」というようなものが考えられます。誰のために、どんな商品を提供するのか、商品のコンセプトを他社の商品とは異なる独自のものにすることができます。

 同様に、ストーリーも差別化要因として有効です。例えば、「20年ものあいだサラリーマンとして昼夜なく働いていたが病気で倒れてしまい、人生の見方を変えて自分の好きな音楽だけを売るレコードショップをはじめた」というような、ビジネスや商品開発の背景にあるストーリー、これがユーザーにとって興味深いものとなるなら、利用しない手はありません。

デザインで差別化を図る

 デザインも差別化しやすいポイントです。商品がお洒落だったりカッコよかったりするだけではなく、それが商品のコンセプトをよく表しているものであったり、品質の高さを感じさせるものであったり、ということも含まれます。

 機能面よりもデザインのような視覚面の方が早くその価値を感じることができます。したがって、商品のデザインにおける差別化は効果が高いと言えます。商品そのものだけでなく、Webサイトやパンフレット、パッケージ、あるいは商品の陳列の仕方など、あらゆる面で統一して価値を感じるデザインを利用すると良いでしょう。

差別化戦略策定後には施策に落とし込む

 マーケティング分析をした上で大切なのは、その分析結果をもとに行うマーケティング戦略の施策と戦術の実行です。
 しかし、ほとんどのケースで見受けられるのが、

・そもそも適切な分析ができていない

・分析はできたが、それを支える戦略と戦術まで落とし込めていない

・分析や戦略までは組み立てたが、戦術と連動していない

という問題の発生が多くあります。
そのため、多忙な中で分析や戦略策定をしたのにもかかわらず、成果に繋がらなければ、あなたの貴重な時間もお金も無駄にし、また、練り直さなければなりません。
 時間がさらにかかれば、状況も変わり市場からさらに置いてかれること可能性もあります。

 

差別化戦略のメリット・デメリット

差別化戦略が競合企業に勝つための万能戦略であるかと言われたら、必ずしもそうではありません。

企業が差別化戦略の導入を考える際には、メリットとデメリットの双方をしっかりと把握した上で、自社に最適な方法であるのかを検討することが大切です。

また、差別化戦略の導入が決定した場合には、デメリットをどのように補うのかを事前に考えておかなければなりません。

メリット:価格競争を回避できる

 差別化戦略の最大のメリットは、競合企業との価格競争を回避できることです。

 差別化戦略によって自社の商品・サービスの付加価値を高め、ブランディングすることも可能です。
 ブランドのイメージが消費者に認知されれば、アピールポイントとしてマーケティングに活用し、商品・サービスの営業につなげることもできます。

 

デメリット:顧客離れの可能性

 差別化戦略の導入により懸念されるデメリットは、価格を上げざるを得なくなる可能性があることでしょう。
 理由としては、付加価値を高めるために、開発費用や原材料費の増大などが考えられます。

 競合企業の商品・サービスよりも価格が上昇すれば、従来の顧客のニーズを満たすことができなくなり、顧客離れが進むリスクもあります。

 仮に差別化戦略が成功したとしても、競合企業が模倣する可能性があることも押さえておきましょう。

 

差別化は4P+顧客の視点で行う

 差別化と一口に言っても、さまざまな施策が思い浮かびます。例えば、商品の差別化や営業エリアの差別化などです。業種や業態によって、差別化すべきポイントは異なります。そこで、どのような業種・業態であっても活用できる汎用的な視点があると便利です。

 推奨する、差別化を考える際の視点は「4P+顧客」です。4Pとはマーケテイングミックスの4Pと呼ばれるもので、「製品(Product)」「価格(Price)」「流通(Place)」「プロモーション(Promotion)」の4つのことです。それぞれの頭文字をとって「4P」といいます。 

 この4Pに顧客を追加した5つの視点で差別化を考えると、アイディアがまとまりやすいと思います。つまり、「製品の差別化」「価格の差別化」「流通の差別化」「プロモーションの差別化」「顧客の差別化」を考えていくということです。

 

製品の差別化

 競合企業が取り扱っていな製品や同種類の製品であっても、高クオリティのものを販売することにより、自社を選んでもらえる可能性が高くなります。

 居酒屋の例で言うと、他店では通常扱っていない全国から集めた地酒を豊富に取りそろえていれば、強力な差別化となるでしょう。さらに、このような特殊な商品を扱っていれば、想定している商圏外からも、口コミでお客が来店する可能性があります。

 また、サービス業の場合は、サービス自体が製品となりますので、サービスの差別化も重要です。例えば、マッサージ店を経営している場合、通常のマッサージだけではなく、「女性専用の小顔マッサージ」を取り入れてみれば、他店が集客できていない若い女性客を取り込むことができるかもしれません。

 このように、まずは製品(商品・サービス)で差別化することで、競合企業との違いを生むことが重要です。

 当然ながら、商品・サービスで差別化するのが第一です。

 典型的な方法は4つです

 1) スピード:同じことをより早くできる

 2) 同じことをより便利にできる

 3) 高品質:同じことをよりよくできる

 4) 差異化:違うことができる

 製品を売っている場合、例えば、ビデオデッキを買うとしよう。あるビデオデッキだけにはCMカット機能がついていた。それが便利なのであれば、それを買うかもしれない。小売店の場合、売っているものは同じにしても、商品・サービスについて、色々教えてくれる、相談できる店員がいるところのほうがよい。

 

価格の差別化

 価格を差別化することで、成長する企業もあります。例えば、マッサージ店の場合、従来は1時間6千円(10分1000円)ほどが相場でした。しかし、近年、時間3千円のマッサージ店が急成長しています。

 1時間6千円では高価な買い物となってしまうので、多くの人々は特別なときにしかマッサージ店に通えませんでした。しかし、1時間3千円という手ごろな価格であれば、頻繁に通えるようになったのです。

 このように、通常、価格を下げればお客は増えます。しかし、弱者が価格で差別化する場合に値下げは推奨できません。なぜなら、値下げをするということは、粗利が少なくなるということだからです。

 粗利は企業のガソリンです。粗利が少なくなれば、経営が苦しくなります。いずれ、体力勝負で大企業に負けてしまうでしょう。弱者は粗利率を上げる施策を取らなければなりません。そのため、弱者が価格で差別化を図る場合は、価格を上げる方がベターです。

 もちろん、ただ値上げするだけでは、お客は離れていってしまいます。価格を上げるには、それ相応の理由がなければなりません。そこで、製品の差別化とも重なり合いますが、他店では扱っていない「レア」な商品を販売すれば、価格を上げることができます。

 人は希少性にとても弱く、レアであるというだけで高いお金を出して消費することがあるのです。例えば、旅行に行った際に、「ご当地限定」というお土産があれば、多少高くてもついつい購入してしまうことがあるのではないでしょうか。

 これと同じで、他店では買えない希少性の高いものを販売できれば、価格を上げることができます。また、サービスの面でも同じことがいえるでしょう。例えば、同じ商品を扱っていたとしても、他店より接客などのサービスがよければ、多少価格が高くても選んでもらえる可能性が高くなります。

 マッサージ店が従来の価格の半額にしても経営が成り立つのは、手技のみの提供のため、売上のほとんどが粗利となるためです。つまり、元々粗利率が非常に高い業態なのです。

 このように、価格で差別化を図ることも可能ですが、弱者はなるべく価格を上げる工夫をしましょう。

 

流通の差別化

 流通とは、流通チャネルや営業エリアのことです。例えば、メーカーが製品を作って消費者の手元に届くまでには、多くの業者が介在します。1次卸、2次卸、小売業者などです。これらの流通チャネルにおいて差別化できないか考えます。また、店舗運営を行っている場合は、商圏(エリア)の差別化も考えなければなりません。

 しかし、卸などの流通チャネルを使う手法は、広域戦となり、強者の戦略となります。そのため、弱者は、なるべくエンドユーザーに接近して販売をしなければなりません。つまり、メーカーであれば、直接小売業者に卸せないか、もしくは通信販売で消費者に直接商品を届けることができないかを考える必要があります。

 弱者はエンドユーザーと近ければ近いほど有利になります。強者を出し抜くには、最終的な購買意思決定者に直接アプローチする工夫をするべきです。

 また、エリア戦略は大変重要となります。まず考えなければならないのが、いかにライバルと競合しないようにするかということです。つまり、商圏が重ならない立地に店舗を構えることができればベストでしょう。

 中国の古代の兵法書である「孫子」には、「戦わずして勝つ」と書かれています。つまり、敵と戦わないで勝つのが最も良い戦略だということです。店舗ビジネスの場合、競合店と商圏が重なっていなければ、戦う必要がないので、戦わずして勝つことができます。

 この考え方は、ブルーオーシャン戦略とも呼ばれます。ブルーオーシャン戦略とは、競合ひしめくレッドオーシャン(赤い海、血で血を洗う競争の激しい領域)ではなく、ブルーオーシャン(青い海、競合相手のいない領域)で魚を独り占めしようという考え方です。

 魚がいっぱいいる(お客がいる)ブルーオーシャンを見つけることができれば、戦わずして勝つことができます。しかし、現実にはそのようなエリアは少ないでしょう。そこで次に考えなければならないのが、孫子にある「勝ちやすき(易き)に勝つ」という考え方になります。

 これは、自社よりも弱い競合しかいない領域で戦うべきであるということです。商圏が重なっていても、自社の方が商品が良かったり(武器効率が高い)、経営資源が豊富(兵力数が多い)であれば勝てます。

 つまり、「弱い相手とだけ戦え」ということです。弱い相手を倒していくうちに力をつけていけば、いずれ強者にも勝てるときがきます。

 このように、競合他社にはない流通チャネルやエリアを見つけることで、差別化を図っていきます。

 

顧客の差別化

 顧客の差別化とは、顧客層、顧客ターゲットの差別化とも言い換えられます。全ての顧客を狙うのではなく、ターゲットを絞り込んでアプローチをしていくということです。

 モノが溢れかえり、価値観が多様化している現代では、全ての顧客を満足させる商品やサービスなどありません。ニーズを細かく分析し、絞り込む必要があります。ある一定の層だけに響くものを届けられれば、ビジネスは成り立つのです。

 例えば、酒屋の場合、60歳以上のシニア男性だけをターゲットにして商売をするという戦略が考えられます。若い人は、居酒屋に行ったり、スーパーマーケットやコンビニでお酒を買うことが多いでしょう。しかし、シニア層(特にお酒をよく飲む男性)は、従来のように酒屋でお酒を買うという習慣が残っています。そのようなシニア・男性向けの商品を扱ったり、御用聞きのような昔ながらのスタイルで営業をしたりすれば、多くの顧客を取り込むことができるでしょう。

 日本は超高齢化社会ですので、シニア層はとても多いのです。シニア向けビジネスは今後も広がりを見せるはずですので、決してターゲットを絞りすぎているということはありません。むしろ、絞りすぎだと思うくらいが、メッセージが明確になり、成功する可能性が高いのです。

 どれか一つを差別化するのではなく、全ての視点で差別化できないか考えてみましょう。しかし、注意点もあります。あまりに差別化しすぎて、市場がない(お客がいない)ということは避けてください。

 あまりにニッチすぎる市場ですと、顧客の絶対数が足りないということがあります。例えばマッサージ店であれば、「手の指専門のマッサージ店」などと絞りすぎてしまえば、おそらく需要がないでしょう。このような失敗がないように、大前提として「需要がある」ということを念頭に置きながら戦略を練るようにしましょう。

 

プロモーションの差別化

 プロモーションとは、お客とのコミュニケーション全般を指すものです。例えば、広告であったり、情報提供であったり、特典であったりします。

 プロモーション戦略を差別化することは重要です。扱っている商品やサービスがコモディティ化している(他との違いがほとんどない)場合は、差別化を図りづらく、価格や流通・立地も容易に変更することができないからです。

 しかし、プロモーションだけは容易に差別化を図ることができます。例えば、広告の場合は、広告を打つ媒体を変えてみたり(新聞、チラシ、雑誌、WEB、SNSなど)、広告文やデザインを変えてみたりすることもできるでしょう。

 現在であれば、ブログやSNSで定期的に情報提供を行い、お客とコミュニケーションを図っていくのも有効です。商品でライバルと違いが出せないのであれば、購入者特典などを付けて差別化することも可能です。テレビショッピングでは、セールス文句の最後によく特典が付いてきますが、今でも効果的な手法です。

 このように、他で差別化ができなくても、プロモーションで大きく差別化を図れば、顧客を取り込むことができます。

 

「ブランド」で差別化できるか

 ブランドは、作ろうとするものではあるが、基本的にはお客様によって作られるものである。お客様が、商品・サービスそのものや、その提供方法、広告などのコミュニケーション、全てがからみあった認識である。

 

提供方法で差別化

 1) スピード:より早く提供される

   同じものを買うのなら、早く手に入れられる方がよい。

 2) 利便性:より便利に買える、入手しやすい

   同じものを買うのなら、買いやすいほうがよい。

 この場合には、組織力が強みになります。全員が一体的につながり、効率よく、早く提供できるような特性を持っていれば、より早く、お客様により便利な提供方法を考え、実行することができる。

 チームワークに優れ、効率的に働ける社員が多い場合には、その強みを活かすに当たっては有効な差別化方法となる。

 

顧客対応力で差別化

1) 安心・信頼

 同じものを買うにしても、安心できるところで買えるほうがよい。

 同じものを買うなら、信頼できるところ・人から買いたい。特に高額な買い物や大法人顧客相手のビジネスの場合には、リスクが大きいので、若干価格が高くても、信頼できるところに任せたい事も多い。

2) 情報提供

 同じモノを買うなら、色々なアドバイスをしてくれるところがよい。特に、高額な買い物、売り手と買い手の知識のギャップが大きい買い物の場合はそうなる。

 スーツ・洋服を買うなら、最近のファッションのトレンドや、顔色とスーツの色の相性などのアドバイス・情報を提供してくれるところで買いたいでしょう。パソコンを買うなら、色々な機種の性能の違いが使う際にどう影響するのかを教えてくれる店員がいるところがよい。

 愛想がよく、お客様対応が好きな人好きのする社員が多いのであれば、それを活用する手はある。同じモノを買うなら、信頼できる人、愛想の良い人から買いたいものです。

 また、商品知識だけでなく、お客様が求めるものについての知識を豊富にもつマニアックな社員が多いのであれば、その知識自体がお客様にとって価値のあることかも知れない。イタリアンレストランであれば、愛想が良く、ワインの知識が豊富な店員は店にとって強力な差別化となりえる。

 競合相手と同じことをすると、相手の強みと自分の強みがぶつかります。逆に、競合相手の弱いところを研究して、そこに自分の強みをぶつけていけということ。マーケティング戦略的には「差別化」という概念と近い。

 矛盾のマネジメントが経営者の仕事だとも言えます。「選択」「集中」ということで、ある一つのことだけをやっていれば楽かもしれません。しかし、それではリスクが大きすぎます。分散しすぎると、自分の得意分野への集中が損なわれて、それもまずい。集中と分散をどのようにバランスを取るか、というのが経営的意思決定の一つでもあるのです。

 困難に見える事業でも、ライバルの参入していないマーケットで展開すれば、失敗の恐れは少なくなる。ライバルの弱点を逆手にとって事業展開すれば、新規参入しても成功できる。

 ライバル会社が強大で、資金も人員も相手が優っているようであれば、真正面から対決することは避けるべきです。強者に対しては「差別化戦略」をとることです。

 強者は弱者を潰して、さらにシェアを広げるために、真正面からの対決を挑みます。この戦略は特に「ミート」と呼ばれています。弱者としては、この強者の「ミート」をできるだけ避けるような戦略をとらなければ生き残れません。それには、相手の動向を探り、観察することによって基本戦略を知り、差別化する必要があります。先行したヒット商品の二番煎じで売り出す戦略もありますが、これは一時的な売上しか見込めません。長く生き残るには、マネではなく、違いを出すために相手を探るのです。

 

差別化戦略の事例

任天堂

 任天堂は、世界中のユーザーを対象に競合が少ない新しいマーケットを創出し、付加価値が高く低価格の商品を提供して成功を収めています。この戦略は「ブルー・オーシャン戦略」とも呼ばれています。具体的には、家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」や携帯用ゲーム機「ゲームボーイ」、ゲーム専用機ビジネス「任天堂Switch」などです。任天堂の経営戦略の大きな特徴は、ゲームが好きな層だけでなく、ゲームに関心の薄かった層も取り込んでいることです。任天堂は花札の製造やトランプの製造から始まりました。やがては、生活必需品ではないからこそ面白いものを提供したいという考えのもと、ファミリーコンピューターを展開。
これをきっかけに任天堂を知らない人がいなくなったと言っても過言ではありません。任天堂は、今は国内ユーザーだけでなく海外ユーザーも狙った経営戦略を立てており、ゲーム専用機ビジネス、スマートデバイス向けモバイルゲームビジネス、そして、IPビジネス(知的財産)を柱に展開しています。

 

スターバックス

 「サードプレイス」という独自の理念を掲げて成功を収めているのがスターバックスです。サードプレイスとは、自宅や職場以外に自分らしく過ごせる第3の場所のことです。サードプレイスで心のこもった時間と空間を提供することで、他社との差別化を図っています。また、ターゲットを女性に設定し、全面禁煙を徹底していることも大きな特徴です。男性サラリーマンが主な利用者だった従来の喫茶店の代わりに、女性が利用しやすい空間づくりを目指したことも成功要因です。

 スターバックスコーヒーが差別化したのは「商品」と「店内環境」。他のコーヒーチェーンに比べて客単価は高いのですが、それでも集客ができて利益を出し続けることができたのは、まさに他のチェーンにない価値を生み出していたからです。

 スターバックスでは、提供しているドリンクの種類が多く、しかも、自分でカスタマイズができるという特徴があります。もちろん、スターバックスのコーヒーが他のチェーンにない美味しさを持っていたことも挙げられます。また、各店にバリスタがいたり、全面禁煙になっていること、店内の内装を店舗ごとに工夫を凝らしている、といった環境面でも差別化しています。総じて、これらの差別化が「居心地よくお洒落な空間で質のいいコーヒーを楽しむ」という高級感を演出したのです。他のコーヒーチェーンでは味わえない体験を持っていることで、スターバックスは独自のポジションを築き上げることに成功しています。

 

モスバーガー

 ハンバーガー業界において、業界トップのマクドナルドに続き、2番手の地位を保守し続けているのがモスバーガーです。モスバーガーの差別化の特徴として おいしさを追及している点にあります。国産肉100%にこだわるなど、厳選した材料を使用しています。提供時間の短縮を目指す企業が多いなかで、一貫して手作りにこだわっているのも特徴です。差別化のポイントは価格設定にもあります。低価格路線のマクドナルドと高級路線のハンバーガー店のどちらでもなく、その中間にあたる「中価格」を設定しています。こうした差別化が成功し、業界2番手の地位を築いているのでしょう。マクドナルドに対し、高品質・高価格なサービス・商品を提供する戦略をとったモスバーガー。これにより、マクドナルドとの価格競争に巻き込まれずに独自の地位を築き上げました。マクドナルドは、提供するメニューの数が少ないため、オペレーションの負担が少なくなります。また、限られた食材を大量に仕入れるのでコストが低く、販売価格を下げることができます。モスバーガーは、その逆で、メニューが多いので顧客の好みに幅広く応えられるサービスを提供しました。その分価格は高くなりますが、豊富なメニューや味へのこだわりを実現しています。1990年台後半のハンバーガー価格競争が起きたときも、モスバーガーは価格を維持し続けました。また、マクドナルドは繁華街や駅前に立地しているので、回転率が高くなるような店舗ディスプレイやデザインをしています。モスバーガーはその反対で、観葉植物や居心地のよい雰囲気など、長時間滞在できる店舗づくりをしました。モスバーガーの強みは、高品質(高価格帯)であることです。これによって、マクドナルドとの差別化を明確にしています。高品質を訴求している中で、どのような工夫をしているのかを見ていきます。立地戦略については、基本的に駅前などマクドナルドが出店しているようなところは避けて出店しています。健康志向や食材については、有機野菜や国産素材を活用し、品質へのこだわりを追及しています。また、作り置きすることなく、注文を受けてから作る方式を取り、作り立てを提供している点も大きな差別化となっています。

 

マクドナルド

 マクドナルドは、一時的に赤字となり大苦戦をしていましたが、現在は黒字化、行列が絶えないファーストフード店に戻りました。マクドナルドには、従来から店舗を「Fun Place to Go(行くと楽しい場所)」と捉えて、遊び心ある戦略を作ってきました。そして、常にマクドナルドのファンの声に耳を傾け、ファンが食べたくなるような商品開発やプロモーション戦略を取ることによって、ハンバーガー業界では60%以上のシェアを誇る巨人となりました。

 

セブンイレブン

 コンビニ業界において店舗数・売上ともに1位のセブンイレブン。セブンイレブンは、マーケティング部がなく、マーチャンダイザーがマーケターの役割を担っています。明確な差別化戦略をするのではなく、セブンイレブンがお客様にとっての生活サービスの拠点として取り入れてもらえるよう、お客様と距離の近い視点が必要であるからこそです。そのため、ブランド認知に向けたテレビCMなどには投資をせず、年間70%以上の商品の入れ替えやプライベートブランドの採用などを行い、あくまでもお客様がセブンに来たくなるような経営戦略を展開しています。

 

 

ファミリーマート

 現在、コンビニ業界でトップを走っているのはセブンイレブンです。セブンイレブンの強みは商品を開発する力です。新しい商品とその充実した品揃えは誰もが納得の地位であると言えます。 対抗するファミリーマートは、店内環境を差別化戦略に打ち出してトップを狙っています。セブンイレブンに勝つために、商品開発力にあえて力を注ぐよりも、もともとファミリーマートの特徴であった店内環境をさらに磨くことこそ勝利をおさめる近道になると考えました。店内環境を整えるというのは、イートインスペースを充実させることにあります。顧客のニーズをくみ取り、集客を増やすための戦略として、イートインスペースを充実させて、セブンイレブンに対抗することにしました。外回りのサラリーマンや学生など、コンビニでお弁当や飲み物を買っても、食べる場所のない人たちに場所を提供することにしました。 最近はわずかな空間でもイートインスペースを作っていたり、さらに過ごしやすいように電子レンジや湯沸かしポットなどが置かれていたりするファミリーマートも見受けられます。セブンイレブンという絶対的なライバルがいることで、ファミリーマートの新たな戦略が生まれたということになります。

 

ローソン

 ローソンは、コンビニ業界ではセブンイレブン、ファミリーマートに続いて業界3位を走っています。ローソンは、業界1位2位と戦うべく、現代人の思考に沿った差別化戦略を展開。例えば、健康志向のナチュラルローソンや100円均一のローソンストアの展開。コンビニエンスストアという規模であれど、多様化した顧客ニーズに合わせた店舗展開を行うことで独自の地位を築きあげています。

 

無印良品

 無印良品は、さまざまな競合他社が差別化に走っている中、消費者にとってもっとも届けるべき商品の本来の姿を重要視しています。差別化が盛んになるとお客様が本来欲しかった欲しいからズレてしまうのではという考えのもと、「感じ良い暮らし」ができる商品開発を行なっています。また、デザインも一目見ただけで無印良品の商品であるとわかるような工夫が凝らしてあります。

 

ユニクロ

 ユニクロは、コストリーダーシップ戦略と差別化戦略を駆使し、高品質な衣類が低価格で買えるという消費者にとっての革命を起こしました。そんなユニクロの差別化戦略はターゲットをあえて明確に絞らず、服を割り切って「これでいい」と使われるファッションアイテムとして差別化をしました。

 

今治タオル

 タオルは、水分を拭き取るという機能だけなら、100円で買ったものでも十分用が足ります。商品の機能だけで差別化を図るのは難しいものです。水分の吸収が良く、肌触りがいいと言われても、普段使いのタオルは安い輸入物になってしまうのが関の山。多くの国産メーカーがこの事実に悩んでいたように、今治タオルも安いタオルに押されていました。このままではタオルが売れないということで、機能ではなく、ストーリーによる差別化へと方向転換したのです。

 今治タオルは、以下のようなタオル生産の背景にあるストーリーを前面に出して訴求しています。

 ・タオル産業が120年前から昔から栄えている今治で生産されていること

 ・今治は柔らかいタオルの生産に適した水が豊富であること

 ・水に浮かべて5秒以内に沈む、吸水性の高さを品質基準としていること

 機能性の高さをアピールだけでは感じられない、「このタオルは高品質なんだ!」とユーザーに思わせる、感情に訴えることのできる要素で、安いタオルとの差別化を図ったのです。その結果、贈答品としても今治タオルは購入されるようになり、非常に価値が高いものとして人気が出るようになったのです。

 今治タオルは、いまや誰もが知っている、白くて高級感溢れるタオルのブランドメーカーのイメージが強いのですが、製造しているのは四国タオル工業組合の組合員である企業です。大手の企業ではなく、その上、海外から輸入した安い商品におされて、販売が厳しい状況に陥 っていました。そこで、今治タオルは、自社の「強み」はどこかを改めて探してみることにしたのです。外部からの意見なども真摯に聞いて受け止め、自社が掲げてきた「安心・安全・高品質」をもう一度見直してみました。そこにこそ答えは隠されていたのです。「安心・安全・高品質」をさらに徹底的に追求することで、今まで、高度な技術を要して作られる柄物を諦め、あえて真っ白で無地のタオルのみで勝負することを決断したのです。今では、今治タオルと言えば、清潔感溢れる真っ白な生地で、肌に優しく、誰もが安心して使える「よいタオル」というイメージを作りあげ、定着させることができました。 自分たちの強みをしっかりと見極めて、決断し、迷わず突き進んでいくことが差別化戦略を成功させる大きな鍵であると言えるでしょう。

 

Amazon

 Amazonは、今では誰しもが知っていますが、最初は本しか扱っていませんでした。しかし、本は品質・価格差異がなく、管理コストもあまりかからなかったこと、ユーザーが決済をしたらすぐにAmazon側にお金が入るというビジネスモデルがAmazonの成長を後押しすることになりました。今では、自動的に最も安い値付けができるシステムや登録商品の多さ(ロングテール)、翌日には商品が届く利便性の高さを身につけて成長をし続けています。

 

ソニー

 製品において競合との差別化を図った事例にはソニーが挙げられます。その技術力を持って、他社がつくれないものを開発し、市場に出すことで差別化を図ったことで、トップメーカーに君臨したのです。過去には、ウォークマンやハンディカムという画期的な商品を世に出したソニー。近年でも、各社が開発している4Kテレビは、ソニーの高画質なものが注目されており、価格が高くてもソニー製品が売れるという現象が起きています。

 

ディズニーランド

 有名なエピソードとして、ゴミを拾っているスタッフに「何を拾っているのですか?」と聞くと「星のかけらを集めています」と答えた、というものがあります。これは、マニュアルでそう答えるように決められているのではなく、スタッフが自発的に答えたものだそうです。ディズニーランドのスタッフは、自らがディズニーブランドのファンであることが非常に多いことが特徴。彼らは、自らディズニーブランドの中に入り込み、ブランドを体現しているのです。これによって、ディズニーランドは、内発的にブランドのストーリーや価値を生み出し、それが訪れる客を魅了しています。ディズニーのブランドそのものの価値は誰もが認めているところですが、東京ディズニーランドで提供されるサービスの中にも、ブランドの価値が浸透しており、それが他のテーマパークとは違う独自の地位を築き上げているのです。

 

サービスの差別化戦略事例

タカラスタンダード

 タカラスタンダードは、システムキッチンやシステムバスを提供している住宅設備メーカーで、競合他社はLIXILやTOTO、パナソニックが挙げられます。タカラスタンダードが行った差別化戦略は、看板技術である「ホーロー」の品質の高さ。鉄よりも硬い性質を活かして、ワイヤーブラシで擦ったり、ハンマーで叩いたりする演出などを行いました。

 

スタジオアリス

 スタジオアリスは、写真館はプロカメラマンが撮らなければならないサービスであるという常識から脱し、あくまでも子供との思い出を残すための子供写真館として「ブルーオーシャン」を開拓しました。この戦略が功を奏し、今では500店舗近くまで全国に展開しております。また、子供の成長とともに、継続的なアップセルを実現する妊婦のタイミングでユーザーを囲い込む営業戦略も成長要因の1つです。

 

ゾゾタウン

 ゾゾタウンは、大手ECモールが通販業界を牽引している中、ファッションに特化をしたECモールを展開するという差別化集中戦略を選びました。また、大手ECモールでは手が届いていなかった受託販売をビジネスモデルに組み込むことで、高い収益率を実現しています。

 

ヤマト運輸

 「サービスは先、利益は後」の理念で、ユーザーニーズに愚直に耳を傾けてきたヤマト運輸。宅配手配をしたら明日届く、という現代の宅配スタンダードを世に産み出しました。また、業界課題である再配達率の改善や受取手段の多様化による、さらなる顧客満足度の追求を同時に追求しています。

キーエンス

 キーエンスは、自動制御機器など製造現場の効率化に焦点を当てた製品を開発販売している会社です。驚くべきポイントは、顧客の課題解決ができる製品開発のピンポイントさと早さであり、徹底的な営業効率も手伝い営業利益50%以上を誇っています。

 

ドンキホーテ

 豊富な品揃えと低価格な商品が支持されているドンキホーテ。若者をメインターゲットに設定しています。夜間営業や圧縮陳列など、他社が行ってこなかった戦略で、独自のポジションを築いています。最近では、AIを活用したプライシングやMEGAドンキの出店なども開始。徹底したターゲティングとポジショニングで新市場を開拓し続けているのが強みです。

 

ドトールコーヒー

 ドトールコーヒーの差別化ポイントは価格と品質。材料や焙煎方法にこだわったコーヒーを開発しながら多様な業態で収益基盤を強くすることで低価格を保っています。ターゲットをビジネスマンに絞っているのも特徴。おしゃれすぎない外観や喫煙席の設置など、ターゲットに合わせた店舗経営を行っています。

 

セリア

 100円ショップのセリアは、衛生用品だけでなく、SNS映えを狙ったコレクター向けの商品開発を力を入れて差別化を図っています。

また、他社100円ショップでは100円以上の商品ラインナップが存在しますが、セリアの商品はすべて100円で統一されているのもポイントです。

 

ロイヤルホスト

 ロイヤルホストは、競合他社がファミリー層向けに安く提供している定番メニューではなく、1品2000円前後のホテルや洋食店で食べられる高級メニューに特化をして差別化を図っています。また、ユーザーニーズに着目をしてプチ贅沢がしたいユーザー向けの商品開発、営業時間を敢えて短縮してスタッフの英気を養い、接客品質の向上などサービス面での差別化にも取り組んでいます。

 

製品販売の差別化戦略事例

ファンケル

 ファンケルが商品販売で行った差別化戦略は、直営店舗、通販、小売店舗への流通網どれにも限らずファンケルのこだわりを貫くことでした。さらに、化粧品事業では無添加化粧品に対するこだわりを見せ、健康食品事業では健康に関心のある60代をターゲットに集中的に商品展開をしました。

 

オープンハウス

 オープンハウスは、不動産業界で7位にまで上り詰めた成長中の企業。戸建てやマンションの商品開発において顧客の声を反映してきました。特に、お金の事情で都内物件を買いづらいという顧客に向けて納得度のあるコスト削減を実現すべく、顧客にとって魅力的ではないところは削り、都内で駅近であるといった欲しい条件は削らないことを徹底してきました。

 

リクシル

 リクシルは、商品に競合他社にはないデザイン性を重視した差別化戦略を導入しています。海外展開にも積極的に着手し、海外においても差別化された商品展開することで、幅広い客層にアプローチができる企業戦略に取り組んでいます。

 

サントリー

 サントリーは、サントリーリンクというシステムを使って、流通データを管理、店舗ごとの客単価までわかり、顧客の品切れの際にはリマインドができるなど、自社商材の販促から顧客満足度の向上ができています。また、データを活かした商品開発を行い、甘くないレモンサワーやノンアルコール系の開発、また、コロナ禍で需要が増えた宅飲みに対応したビールサーバー「神泡サーバー」も展開しています。

 

ホンダ

ホンダは、お客様の研究がマーケティングの核であると考えて、商品開発その結果軽自動車のN-BOXが新車販売台数1位(2020年上半期)に輝いています。ターゲットとして、車好きではなく子どもがいる母親に絞り、母親視点で必要な機能を追い求めたことがコロナ禍でも選ばれている要因にもつながっています。

 

ブランドの差別化戦略事例

レッドブル

 ブランディングで差別化を図っている代表のひとつがレッドブル。他の栄養ドリンク、エナジードリンクは、含有成分の多さやカロリーの低さなどをアピールしています。レッドブルがそれらの競合商品と一線を画しているのは、成分などの製品のスペックは一切語らないところです。「レッドブル、翼を授ける」というコンセプトとブランドメッセージを常に掲げています。また、スポンサーとしてスポーツイベントに広告を出す場合も、敢えて商品を前面に出した広告にはしていません。選手たちとともに、協賛しているスポーツの認知を高め、シーンを盛り上げるための姿勢を掲げています。これによって、疲れたサラリーマンのための栄養ドリンクではなく、エキサイティングな日々を乗り越えるためのエナジードリンクとしてのイメージを作り上げ、若者からの絶大な支持を獲得しました。

 

au

 auは、競合との価格競争ではなく、顧客体験を重視した「お客様体験価値向上プロジェクト」を発足しました。その取り組みの1つとして、「au WALLET Market」という顧客のタッチポイントを増やしました。また、自社サービス利用ユーザーの行動データを活用して、「世界データ定額サービス」に興味がある層を特定して限定的なアプローチをしています。

 

サービスの差別化戦略事例

大塚家具

 大塚家具は、元々は会員制が導入された家具屋であり、高級路線ながらも結婚などの人生の節目に家具を買ってもらえるなど幅広い層に支持されていました。社長交代時には、高級路線からニトリが参入しているようなカジュアル路線に戦略変更。今もなお苦戦はしてはいますが、顧客の購買履歴などをしっかり管理をした上で営業担当がレコメンドしていく営業戦略は素晴らしいものです。

 

ワークマン

 ワークマンのメインターゲットは工事現場で働く職人たちでした。職人たちは日中仕事であるため、それに耐えうる機能性と低価格であることを求めていました。そんな職人たちから愛されたワークマンが見つけたブルーオーシャンが、スポーツやアウトドア市場における高機能かつ低価格というポジションです。ファストファッション分野においては、さまざまな競合他社が参入済みですが、この分野では競合がほとんどおらず、自社技術が活かせる市場だったのです。そして、その市場に「ワークマン+」というプライベートブランドを提げて差別化戦略を展開。アウトドアやスポーツを嗜む女性にまで選ばれるようになりました。

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